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有魂機人ツクモス The Comrades  作者: 霜月立冬


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第五十一話 雑談

 西暦二千百三十年、十二月三日(日)。

 地球軍上層部の面々が高笑いしていた頃。笑われている側の人間、名取耀平(ナトリ・ヨウヘイ)はムラマサの中で読書をしていた。


 一寸(ちょっと)休憩。


 現在時刻は午後一時半。昼食は、既に摂り終わっている。

 今日の午後の予定は「二日後の準決勝に備えた特訓」である。開始時間は――午後二時。

 耀平は作業の合間のリラックスタイムを楽しんでいた。

 

 やっぱり、ムラマサの中は落ち着くなあ。


 耀平にとって、ムラマサは「第二の家」と呼べる憩いの場である。その中で静かに読書に耽ると、それだけで心身に溜まった疲労が癒えるように錯覚した。


 夢の中にいるみたいだ。


 耀平は、余りに心地良さに耐え切れず、ウツラウツラと舟を漕ぎ始めていた。その最中、耀平の脳内に聞き慣れた声が響き渡った。


((耀平))


 中世的な男性の声。それが聞こえた瞬間、耀平の目がパッチリ開いた。


「何?」


 耀平は顔を上げて返事をした。すると、再び脳内にムラマサの声が響き渡った。


((『二刀流』って強いのか?))

「え?」


 二刀流。その言葉を聞いた瞬間、耀平は首を傾げた。しかし、直ぐにムラマサの意図を直感した。


 耀平の右手には「宮本武蔵」という題名の時代小説が握られていた。

 

 宮本武蔵。二天一流という二刀流の流派を作った江戸時代の剣士。最強の剣豪という呼び名も高い。その最強の技に、ムラマサは興味を覚えていた。

 ムラマサの想い(好奇心)は、ムラマサの中にいる耀平も何となく直感していた。


 これ、もしかしたら次の戦闘の役に立つかもしれない。


 耀平は、開いていた本をパタリと閉じた。続け様に、大きな声で独り言を告げた。


「まあ、使い(こな)せれば強いよ。軽量級の連中とか、良く使っているみたいだし」


 軽量級の連中。その言葉を聞いて、ムラマサの脳内(?)で過去の記憶が閃いた。


((ああ。一回戦のアレか))


 アレ。ディルムッドの「二槍」である。ムラマサの言葉に、耀平はコクリと頷いた。


「そう」


 耀平の返事は素っ気ない。耀平としては、これで話は終わりだと思っていた。ところが、ムラマサは尚も食い下がる。


((輝平はやらないのか?))

「俺?」


 ムラマサの声は少し上ずっていた。それを耳(脳)にした瞬間、耀平は「自分(ムラマサ)もやってみたい」と言われているように錯覚した。

 しかし、耀平はムラマサの想いに応えなかった。そもそも、その必要が無かった。その理由が、耀平の口を衝いて出た。


「いや、俺達も似たようなことやってるじゃないか。二丁拳銃って」


 二丁拳銃。右手アサルトライフル、左手大口径ライフルという、耀平の定番装備。その事実を告げられて、ムラマサは(くだん)の戦闘スタイルを想起した。


((ああ。アレもそういうことになるのか))


 二刀流を拡大解釈すれば、「左右それぞれの手に武器を持っている」となる。


「まあ、厳密に言えば違うと思うけど。俺の場合、メインの武器は銃で、刀はトドメ用たから」

((なるほど))


 耀平の言葉を聞いて、ムラマサの脳内(?)で、過去の戦闘の光景が閃いた。それら一つひとつを反芻して、一先ず納得の得た。しかし、満足していない。

 ムラマサの剣術に対する興味関心は、尚も高まっていく。


((他に何か有るか?))


 何か。その漠然とした質問に、耀平の首が盛大に傾いだ。しかし、回答は直ぐに閃いた。


「『三刀流』っていうのも有るけど?」


 三刀流。耀平の脳内には「腹巻を撒いた某海賊団の剣士」が閃いていた。その剣士の知識は、ムラマサの中には無かった。


(三刀流? どうやるんだ?)


 ムラマサは即応で質問した。それに対して、耀平も即答した。


「三本目の刀を()に咥えて――」


 耀平としては、三刀流を丁寧に解説するつもりだった。ところが、ムラマサの思念が割って入って、話の腰を折った。


((俺には無理だな))

「え? あっ。まあ――そうだな」


 残念ながら、ムラマサには口が無い。その事実を想起して、耀平は「口が無くともできる技」を考えた。すると、直ぐに閃くものが有った。


「『無刀取り』って技も有るけど」


 無刀取り。二刀流、三刀流と来て、耀平は敢えて刀の数を減らした。その逆転の発想は、ムラマサの好奇心を刺激した。


((それはどんな技だ?))


 ムラマサは即応で食い付いた。その反応は、耀平の予想通りのものだった。


「ははっ。無刀取りは――」


 耀平は苦笑しながら、無刀取りを解説した。ところが、


「その名前の通り、刀を持たない技だよ」

((刀を持たない?))

「うん。でも、刀を使わないって訳じゃない」

((どういうことだ?))


 耀平の回答に、ムラマサは困惑した。その反応、実は耀平の予想通りのものであった。そもそも、(わざ)と謎掛けをしていた。だからと言って、答えをはぐらかす気も無い。

 耀平はシニカルな笑みを浮かべながら回答を告げた。


「相手の刀を奪うんだよ」

((詳しく))


 相手の刀を奪う。その言葉は、ムラマサの好奇心を一層激しく掻き立てていた。

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