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「ジーク!?」



 急いで外へ飛び出すと、見間違いでも幻でもなく、そこにはたしかに彼がいた。



「リア、久しぶり」


「久しぶり……ってどうしてここにいるの?一体どうやって……」



 王国と帝国の距離は遠い。

 私は転移魔法を使えるので、好きな時間に行き来することができるが、私以外の人で転移魔法を使える人はいない。

 だから船に乗って海を渡る方法しかないのだが、こんな夜遅くに着く船なんてない。

 それなのにどうしてジークはここにいるのか。



「それは……今は秘密だ」


「秘密って……ジーク、あなたふざけて」


「しー」



 立てた人差し指を口にあてて微笑むジーク。



「っ!」



 そうだ。満月でだいぶ明るいが今は夜。

 このままでは近所迷惑になってしまう。

 こっちは突然の不意打ちでいっぱいいっぱいだというのに、あの余裕な表情……腹が立つ。

 でもここはグッとこらえなくては。

 まだジークの口からきちんと答えを聞けていないのだから。



「……場所を変えましょう」


「分かった」



 私はジークの服の裾を掴み魔法を発動した。



「ここは?」



 そしてたどり着いたのはこの場所。

 さすがにもうこんな時間だからか、人は誰一人としていない。



「ここは城の訓練場よ」



 お祖父様と伯父様から好きに使っていいと言われている。

 ここなら周囲に人はいないし、私の作った魔道具が設置されているので、防音防護もバッチリだ。



「訓練場……ここならちょうどいいな」


「今何か言った?」


「いや、なんでもないさ」



 たしかに何か呟いていたはずなんだけど……まぁいい。

 それよりも今まで何をしていたのか、そしてどうしてここにいるのかを問い詰めるのが先だ。



「そう……それで?ジークはこの半年間一体何をしていたの?それに秘密だって言うけど、どうやって帝国に来たの?私が納得するように説明を……」


「リア」


「え?……っ!これって……」



 突如ジークから投げ渡されたもの。それは一本の剣だった。

 木でできたどこにでもありそうな訓練用の剣。

 そしてこれは、いつも私とジークが手合わせをする時に使っている剣でもある。



「なぁリア。今から手合わせしないか?」



 一体何を言い出すのかと思えば、手合わせ?



「手合わせって……ジーク。何をふざけたことを言って」


「頼む」


「っ……」



 こんなに真剣な顔のジークは初めてだ。

 本当ならふざけたことを言うなと怒っていいはずだし、私にはその権利がある。でも次の言葉が出てこない。

 ただその理由は分かっている。

 なぜなら彼の目が、何かを強く決意した者の目をしていたから。



「……分かったわ」



 これまで様々な経験をしてきて、こういう目をした人を何人も見てきた。

 だから分かる。

 何かを決意した者は、その目標にたどり着くまで決して折れないことを。


 ……それならこの格好じゃ動きづらいね。

 私は魔法を発動し、服を着替える。

 それから髪を一つに結わいて準備完了だ。



「ルールは?」


「どっちもありで」


「……いいのね?あとから文句を言うのはなしよ?」


「ああ」



 剣だけの手合わせなら五分五分といったところだけど、魔法もありの場合は全て私が勝ってきた。

 だから本当にいいのかと確認しても、ジークは大丈夫だという。


 それならば仕方ない。

 でも私は手合わせだからといって、手を抜くつもりはさらさらない。



「行くわよ」



 コインを大きく投げ上げる。これが開始の合図となる。


 そしてコインが地面に触れた瞬間、剣と剣が交わった。


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