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私たちはあのあと一度寮に戻ることにした。
貸衣装の店で準備をしてもよかったけど、アナベルは貴族。
今回お店を使えるのは平民の生徒に限定しているので、寮で準備した方がいいだろうと判断した。
それにアナベルのドレスはギリギリまで秘密にしたいしね。
「この魔道具すごいですね!これもダリア様が作ったのですか?」
アナベルの言う魔道具とは、例のアレのことだ。
「アイデアを出してくれたのはマリーナ姉様で、作ったのは私よ」
アナベルには、すでに母やお祖父様のことは話してある。
実はパレット帝国から帰ってきたあと、私は約束どおりアナベルの家に泊まりに行っていた。
その時に自分の素性について話したのだ。
どんな反応をするかドキドキしたけど、アナベルは驚きながらも瞳を輝かせて『さすがダリア様……!』なんて言ってたっけ。
それにアナベルのご両親にもようやく挨拶をすることができた。
すごく温かい人たちだったなぁ。
少し話しただけでアナベルのことを大切にしていることが伝わってきて、微笑ましい気持ちになったよ。
あ、でもちょっと羨ましいなって思ったのは内緒。
そんなことを思い出しながら髪をセットしていく。ほんとこういう時に魔法って便利だよね。
そうしてセットが終わると……あらなんてことでしょう。
目の前に超絶可憐なお姫様が!
「すっごく可愛いわ!」
先ほどのドレスに、髪はゆるく巻いてハーフアップ。
うん、完璧です。
もう完璧すぎて、これはみんなアナベルに惚れちゃうんじゃない?
「ダリア様もとっても素敵です!」
ん、私?
ああ、私は青のグラデーションのマーメイドドレスだ。髪は一つに束ねて編んだけど……私のことなんてどうでもいいの!
ああ、アナベルが変な輩から狙われないか心配だよ~
準備も終わったので、パーティー会場に向かう。
遅めの時間を狙ったので、もうほとんどの生徒が会場にいた。
そんな中でのアナベルの登場。当然会場がざわついた。
みんなアナベルの可憐な姿に釘付けである。
顔を赤らめている男子生徒が何人も……うん、その顔覚えたよ?アナベルに何かしたら許さないからね?
……とまぁ、そんな感じで作戦は大成功。
そして会場に着いて少しすると、パーティーが始まった。
踊ったり、食べたり、おしゃべりしたり……みんな思い思いに過ごしている。
そういう私たちは踊りはせず、軽食を食べながら楽しくおしゃべりに花を咲かせていた。
それからしばらくして、アナベルが飲み物を取りに行くと言って席をはずした。
あんなに可愛いアナベルを一人にするのは心配だから、一緒に行くとは言ったんだよ?でもね、
『女神……いえダリア様にそんなことさせるわけには!すぐに戻ってきますのでちょっとお待ちください!』
そう言って行っちゃったんだよね。
……ねぇ、女神って何ですか?
アナベルの私への評価が非常に気になるところだけど、行ってしまったのなら仕方ない。
だから休憩場所で、大人しくアナベルが戻るのを待っていたんだけど……
「師匠」
「ダリアローズ嬢」
なぜか仲のよくない二人、ランドルフとマティアスが私の元へとやってきたのである。




