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 さあやって来ました、パレット帝国。

 夏季休暇を利用して、久しぶりにお祖父様に会いに来ました。


 学園に入学してからは何だかんだで忙しかったり、休日は予定があったり。

 転移魔法があるので、すぐに会いに行こうと思えば行けるけど、まぁこれが遠い遠い。

 カラフリア王国からパレット帝国に行くには海を渡らなくてはならず、たどり着くのにおよそ二週間はかかる。

 さすがの私でも、一日で二週間分の距離を往復するのはちときつい。

 だから最後にお祖父様に会ったのは、学園入学前だ。

 まぁ手紙のやりとりはずっとしていたんだけどね。


 お祖父様は元気にしてるかなぁ?




 ◇




 私が初めてパレット帝国を訪れたのは七歳のこと。

 お祖父様と伯父様に会いに、ディランとマーサと一緒に訪れたのだ。


 二週間船に揺られ、帝国の港に着いた私たちを出迎えてくれたのはなんとお祖父様。


 え、お祖父様って先代皇帝だよね?護衛も付けずに何やってんの?


 そう言葉にはしなかったけど、まぁあの時は驚いた。



『お嬢様に会いたくて仕方がないのは分かりますが……』


『城で大人しく待っていてくださればいいものを……まぁあの方を止められる人はいませんものね」



 そう言ってディランとマーサも呆れていた。

 お祖父様はずいぶんと自由な人らしい。


 船から降りると、お祖父様が私たちのもとに駆け寄ってきた。

 遠くからじゃ分からなかったけど、近くで見るとかなりでかい。



『おお、よくぞ無事だった!ディラン、マーサご苦労だった』



 二人に労いの言葉をかけたあと、その場でしゃがむお祖父様。

 どうしたのかと思ったけど、どうやら私に視線を合わせてくれたようだ。



『さて……そなたがダリアローズか?』


『はい』


『よく顔を見せておくれ。……ああ、あの子によく似ておる……』



 大きくゴツゴツした手が私の頬に触れる。

 あの子……きっと母を思い出しているのだろう。ディランとマーサの話によると、私は母にそっくりなんだそう。



『話はそこの二人から聞いておる。今まで辛い思いをさせてすまなかった。不甲斐ないわしを許してくれ」



 私の手を優しく握り、許しを乞うお祖父様。その目にはうっすらと涙が滲んでいた。


 でもそもそもの話、悪いのは父であってお祖父様は何も悪くない。

 王国と帝国では距離が離れているし、いくら先代皇帝でもできることは限られている。


 だから気にしなくていい。

 お祖父様が気に病む必要はない。


 そう伝えなければ。

 なのにどうしてだか涙が溢れてきて止まらなかった。




『ダリアローズ……!』



 お祖父様はそんな私を優しく抱き締めてくれた。

 きっと幼かった頃のダリアローズの感情が溢れてきたのだろう。


 そしてそのまま私はお祖父様の腕の中で、泣き疲れて眠ってしまった。

 次に目が覚めた時にはもう城に着いていて、マーサからその話を聞いた時は、恥ずかしくて顔から火が出るんじゃないかと本気で思ったほどだ。


 だって前世も合わせたら、四十歳は優に越えてるんだもん……



 ……とまぁ、とんだ黒歴史になってしまったけど、これが私とお祖父様の出会いである。


 あ、ちなみに伯父様との初対面は伯父様が終始泣きっぱなしだったけど、私は泣かなかったよ。


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