アナベル②
入学式。
私が会場に入ると、コソコソと話しながらこちらを見ている人が沢山いました。
やっぱりここでも同じか。
頑張ると決めたのに、心が急速に萎んでいくのが分かりました。
ですが学園を辞めるわけにはいきません。
両親が無理をしてまで送り出してくれたのです。
一人でも頑張ろう。
そう思いながら自分のクラスへ向かいました。
教室に着いて自分の席に座ろうとしたその時、一人の女子生徒が教室へと入ってきました。
美しい青の髪を靡かせて。
それがダリア様でした。
ダリア様が視界に入った瞬間、今までに感じたことのない胸の高鳴りを感じました。
これを運命と言うのでは?
そう直感的に感じた私の足は、気づけばダリア様の元に向かって進んでいたのです。
ダリア様は強さ、賢さ、美しさ、全てを兼ね備えている本当に素敵な人です。
上級貴族であるにもかかわらず、下級貴族の私にとてもよくしてくれます。
それにダリア様は、一度も私の色を気にする様子がありません。
むしろ可愛いと褒めてくださるばかり。
両親以外の人から褒められた経験がない私は、どう反応をするのが正解なのか分かりません。
ですが私がどんな反応をしようとも、ダリア様は必ず笑ってくださいました。
ただ実を言うと、私は学園に通うまでダリア様のことを全く知りませんでした。
なぜなら私自身がほとんど社交の場に出ていなかったからです。
だから学園でダリア様の噂を耳にした時は驚きました。
病弱令嬢や我儘令嬢、それ以外にも……
それはもう信じられないものばかり。
あまりにも失礼でとても腹が立ちましたが、ダリア様本人は気にも留めず、気にしてないと言って笑っていました。
その姿を見て、衝撃を受けたと同時に自分が情けなくなりました。
私は自らの不運を嘆くだけで、それを笑い飛ばしてしまうほどの努力をしたでしょうか。
ですが今さら過去を嘆いても仕方ありません。
ダリア様のように強くなりたい、ダリア様に釣り合う人間になりたい。
だから私はこれからもダリア様とお友達でいられるよう、もっと努力しようと心に決めたのです。
そんなある日、ダリア様の兄と名乗る生徒が私たちの教室にやってきました。
大声で怒鳴り、偉そうに話す姿はとても不愉快でした。
さらにこの時、ダリア様の発言に耳を疑いました。
血の繋がった家族であるにもかかわらず、これまで一度も会ったことがなかったと言うのです。
私はどう声をかければいいのか悩みました。
ダリア様にはこれまでたくさん家族の話をしています。
もしかしたら嫌な思いをさせてしまったかもしれない……
ですがダリア様は私に大切な家族を紹介したいと言ってくれたのです。
私はそのお誘いを受けることにしました。
そして夏季休暇中に、ダリア様のお家でお泊まりをすることになったのです。




