アナベル①
私――アナベル・ホワイトは、下級貴族ホワイト家の長女として産まれました。
家族は父と母と弟と私の四人家族。
自分で言うのもなんですが、とても仲の良い家族です。
ホワイト家には治める領地はなく、父が王宮に出仕することでもらえる手当だけで生活をしなければなりません。
ですので貴族とは名ばかりの生活を送ってきました。
もちろん生活は楽ではありません。
ですが大好きな家族がいるので、辛いと思ったことは一度もありませんでした。
家族と過ごすのは幸せ……ですが家族以外の人と関わるのはとても辛かったです。
なぜ辛かったのかというと、その理由は私の見た目にあります。
父と母、それに弟は髪も瞳もよくある茶色なのに、どうしてだか私だけ、白い髪に何色とも呼べない不気味な色の瞳をしているのです。
幼い頃は気づきませんでしたが、成長していくにつれ、どうして自分だけがみんなと違うのかと疑問を抱くようになりました。
そしてその疑問は弟が産まれたことによって決定的となります。
なぜなら弟は両親と同じ色を持って産まれてきたから。
その事実を知った時はとても衝撃を受けました。
ですが思い返してみると、家族以外の人たちは私に対してどこかよそよそしく、またジロジロと見られていると思えばコソコソと話していたり。
きっと私の見た目について話していたのでしょう。
なぜ両親の色と違うのかと。
気づいてしまったら、怖くて怖くてたまらなくなりました。
父にどうして私だけ違うのかと泣きついたことは、今でも覚えています。
父は優しく抱きしめてくれ、そして色が違う理由を教えてくれました。
父の話によると、ホワイト家には稀に私の様な色を持つ子どもが生まれてくるそう。
しかしその理由は分かっていません。
たとえ両親がどんな色を持っていたとしても、生まれてくるらしいのです。
ですが分かっていることもあります。
それはその色を持って生まれてきた子どもは、回復魔法の素質が突出しているということ。
そして私も例に漏れず、回復魔法だけは幼い頃から使えるようになっていました。
もちろん魔法が使えることは嬉しく思いましたし、父が教えてくれたことを理解することはできました。
ですが周りはそんな事情を知っているわけありません。
だから私を見る視線が変わることはありませんでした。
それから時は流れ、私は学園に入学することになりました。
『きっとあなたという一人の人間を見てくれる人に出会えるはず』
両親はそう言って送り出してくれました。
ですがこれまで私には友達と呼べる人はいませんでした。
きっと学園でも友達なんてできないし、嫌な思いもするかもしれない。
でもこのままじゃダメだということも分かっていました。
だから頑張ろう。
もしダメだったとしても私には愛する家族がいる。
そう思って迎えた入学式の日。
私はダリア様に出会ったのです。
 




