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 楽しい時間はあっという間に過ぎていくもの。

 もっと遊んでいたいけど、そろそろ帰らなければ。

 今日のメインイベントはこれからなのだから。



「ねぇベル。この後なんだけど、帰ったら私の家族を紹介してもいいかしら?」


「もちろんです!えへへ、すごく楽しみです!」



 嬉しそうに笑うアナベル。

 その姿に私も嬉しくなってくる。

 それからアナベルと他愛ない会話をしながら、歩いて家へと向かった。



「さぁ着いたわ。ここが私の家よ」


「「おかえりなさいませ」」



 扉を開けると、ディランとマーサが出迎えてくれた。



「二人ともただいま。ベル、紹介するわね。ディランとマーサよ」


「アナベル様、ようこそいらっしゃいました。私は執事のディランと申します」


「うふふ、お嬢様のお友だちとお会いできて嬉しいですわ。侍女のマーサと申します」


「は、初めまして!アナベル・ホワイトと申します。今日はよろしくお願いします」


「二人はね、私の親同然の存在なの」



 私を優しく、時に厳しく導いてくれたディランとマーサ。

 今があるのは間違いなく二人のおかげ。

 そんな大切な二人と、大好きな友人が仲良くなってくれたらすごく嬉しい……




 ……いや、嬉しいんだけどね?



「そ、そんなことが……!それは間違いなく可愛いですね!」


「そうなのよ!あの時のお嬢様はそれはもう可愛らしくて……」


「その時の写真があるので、あとでご覧になりますか?」


「わっ、見たいです!」



 ものの数分で仲良くなっていましたよ。

 嬉しい。嬉しいけど……



「お嬢様はとても可愛らしくて」


「大変努力家で」


「それにすごく優しいです!」


「「よく分かっていらっしゃる」」


「ちょ……そ、そこまで!もう勘弁してちょうだい!ほら早く中に入りましょうよ!」



 なぜか三人して私を褒め出すんだもん。

 仲良くなってくれて嬉しいし、褒められるのだってそりゃあ嬉しい。

 でもね?恥ずかしくて居た堪れないのよ。

 そういうことは、せめて私がいないところでやってください!


 それよりも夕食までまだ少し時間がある。

 ひとまずアナベルを部屋に案内しないと。



「この部屋を使ってね」


「わぁ!すごく素敵なお部屋です」


「気に入ってもらえてよかったわ。荷物はテーブルの脇に置いてあるから、あとはよろしくねマーサ」


「かしこまりました」


「じゃあまた夕食でね」


「はい!」



 マーサにアナベルをお願いし、私はディランを連れ自分の部屋へと向かった。



「そういえば二人はいつ頃帰ってくるのかしら?」



 二人と言うのはもちろんジークとアンナのこと。

 彼らも大切な私の家族。きちんと紹介したい。



「お二人とも夕食には間に合わないと仰っていました。おそらく食後のお茶の時間には帰ってくるでしょう」



 二人とも忙しそう。

 でもその時間なら紹介できそうでよかった。

 それよりも……



「少し緊張するわね」


「アナベル様に別の姿をお見せに?」


「ええ」



 今日、私はアナベルに自身の秘密を明かすつもりだ。

 待ち合わせ場所で見せた転移魔法はそのはじまりである。


 この世界で初めてできた友達。

 隠していたことをさらけ出すのはどうしても不安になる。

 失いたくない。でもこんな私を受け入れてほしいと願っている自分もいて。

 矛盾しているのは分かっている。

 けれどそう思ってしまうのだ。



「……」



 もしも嫌われちゃったら、私はどうすれば……



「大丈夫ですよ」


「えっ?」



 ディランの言葉に我に返ったが、一体何が大丈夫だというのか。



「アナベル様はどんなお嬢様でも受け入れてくださるはずです」


「……どうしてそう言いきれるの?」


「それは、お嬢様の人を見る目はたしかだからです」



 人を見る目……



「私たち四人がその証拠にはなりませんか?」


「!」



 その言葉にハッとした。

 こんな私を信頼してくれている人たちがいる。

 それならもっと自分を信じないといけないのでは?

 そうじゃないとみんなに、そしてアナベルに失礼だ。



「……ディランありがとう」


「いえ、私はただ事実を言ったまでです。それでは私は夕食の用意をして参りますので、一旦失礼します」


「ええ、よろしくね」



 一人になった私は、ソファにもたれ目を瞑った。


 緊張なんてらしくなかったな。

 ……うん、大丈夫。

 きっとベルは受け入れてくれる。信じよう。


 私の心はもう定まった。


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