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「んなっ!?ま、魔法だと!?王宮内では魔法が使えないはずなのになぜだ!?」
国王が驚きから声を上げた。ちなみに姿が変わったと同時に、先ほどの魔法は解除してあげた。
「驚くところはそっちですか?……まぁいいでしょう。その件はあとで教えてあげますよ。さぁ陛下、よく見てくださいな。この姿に見覚えはありませんか?」
「はっ、見覚えなどあるわけ……っ!いや、見覚えがある……?ま、まさか……」
どうやら思い出してくれたようだ。
「ふふっ。思い出してくださってよかったです」
「へ、陛下?」
「……」
「あら。お父様はご存じないようですね。私、ブルー領でも有名なんですよ?」
「なんだと?私はお前など知らん!」
「そうですか。この姿では冒険者のリアと名乗っているのですが、知らないのなら仕方ないですね」
「冒険者だと?」
「ええ。ちなみにS級冒険者なんですよ」
私は首に掛けていたギルドカードを、取り出した。そのギルドカードの色は、S級を示す金色だ。
「「S級冒険者だと!?」」
S級冒険者はこの国に五人しか存在しないが、その内の一人が私だ。父、そして王太子は本当に知らなかったようで、ずいぶんと驚いている。
「……」
唯一冒険者リアを知っている国王は、先ほどからずっと黙ったままで、どんどん顔色が悪くなっていく。
「六年前、王都に突然現れたドラゴンを一人で倒しましたが、その功績で陛下から直接褒美をいただいたのですよ。もしかしてこの事件をご存じではない?」
「た、確かにそんな事件があったのは覚えているが……」
あの日はちょうど用事があって王都に来ていたのだが、着いて早々ドラゴン騒ぎが起こったのだ。
ドラゴンは王宮騎士団を全投入しても倒せるかどうか分からない。ちなみにゲームでは、ラスボスと化したダリアローズがドラゴンを使役していた。
そんな最強の魔物をちゃちゃっと一人で倒したことで、S級冒険者になったのだ。たださすがに他のS級冒険者では、一人でドラゴンは倒せないと思う。私は規格外だからできたけど。
無事にドラゴンが討伐されたことで王都は喜びに沸いていたが、そろそろS級になろうかな~と思っていた私にとっては、ただちょうどいい出来事だったなという感覚であるが。
「それで陛下から直接褒美をいただいたんです」
「そ、そんなことが……」
「ふふっ、そんなことがあったんですよ。変身魔法を使っていましたが、実際は九歳の子どもだった私。……あぁそういえば王太子殿下の剣の指導をと頼まれましたが、絶対に嫌だったのでお断りしましたね。どうです陛下、ちゃんと思い出せましたか?」
「……」
間違いなく思い出してるはずだが、黙ったまま。でも余計なことを言わない分、賢い選択かも知れない。
「まぁ時間がもったいないので次に行きましょう。二度目は五年前でしたね」
また指を鳴らすと、私の姿は先ほどの冒険者の姿から、藍色の髪に金色の瞳の青年に変わった。
「はっ!」
「あら。この姿にはしっかり見覚えがあるようですね?」
「うっ……そ、そなたは間違いなくコーリア殿なのか……?」
「ええ、正解です」
「「なんだと!?」」
王太子と父の息がピッタリ合っていた。が、それはどうでもいい。実は私は魔道具なんかも作ってみたりしていて、まぁそれが大成功。気づいたら魔道具師ギルドで、一目置かれる存在になっていた。
そしてある時、国からギルドに王都を覆う結界の魔道具を作るようにと依頼が来たのだ。その前の年に、ドラゴンの襲撃があったからだろう。
これまで一人用の魔道具は存在していたが、広い王都を覆うほどの魔道具なんて存在するわけがなく。たとえ作れたとしても、それこそ膨大な魔力が必要で、ほぼ不可能だと考えられていた。
しかしその問題を解消して、魔道具を完成させたのが私もといコーリアなのである。
そのあとにも学園で乱闘騒ぎがあったからと、指定した範囲で魔法が使えなくなる魔道具も依頼されて作ったりもした。たしかこの魔道具は王宮にも納品している。
転生チートの私は、基礎さえ学べば魔道具も簡単に作ることができたのだ。
「結界魔道具の報酬をいただく際にお会いしたのが二度目です。あぁ、先ほど王宮でなぜ魔法が使えるかと言いましたよね?それはその魔道具を作ったのが私だからです。仕組みさえ分かっていれば使うことができるんですよ。まぁこの世界に私くらいしかいませんから安心してください」
「……」
国王の顔色がどんどん悪くなる中、他の二人はどうやら理解が追い付いてないようだ。ずいぶんとまぬけな顔をしている。
「さて無事に正解しましたので三度目の説明をしましょうか。……あれは三年前のちょうど今頃でしたね」
再び指を鳴らし魔法を発動する。するとコーリアの姿から、金髪に桃色の瞳の小柄な女性の姿になった。