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 今日の私は朝からソワソワしている。

 なぜなら今日、アナベルが我が家にやって来るからだ。

 友人を家に招くのは前世を含めれば初めてではないものの、現世では初めてのこと。

 楽しみではあるけど、どこか緊張している自分がいて。

 ああ、なんだか落ち着かな――



「お嬢様。お友達との待ち合わせはお昼過ぎでしょう?今はまだ朝ですよ。少し落ち着いてください」


「……マーサ」



 さすがマーサだ。

 緊張しているのを気づかれないよう普通を装っていたというのに……



「ほら、手が止まっていますよ?」


「……」



 今は朝食を食べているところなのだが、マーサに言われ目の前にある料理に目を向けると、あら不思議。全く減っていませんでした。



「緊張されているのは分かりますが、スープは温かいうちに食べてくださいね」



 うん、普通にバレてましたね。



「ごめんなさい。すぐに食べるわ」



 ケーキだけでなく、マーサが作る料理はどれも絶品である。

 それなのにそんな極上スープが冷めてしまうなど、絶対にあってはならない。



「そんなに急いで食べなくても料理は逃げませんよ」


「だって~」


「だってじゃありません」



 相変わらずマナーに厳しいマーサ。

 でもそれは私を思ってのことだと分かっている。だから腹が立つことはない。

 それに完全に胃袋をつかまれている。

 そんな私がマーサ相手に勝てるわけがないのだ。



「……はーい」


「もう……」


「まぁお前も落ち着きなさい」



 しかしここで強力な味方の登場である。



「ディラン!」



 ディランはマーサほど厳しくはない。むしろ甘すぎるくらいだ。きっと私の肩をもって……



「お嬢様がめずらしく子どもらしいんだ。微笑ましいじゃないか」



 え、子ども……?



不思議な力(前世の記憶)をお持ちだからか、お嬢様は昔から大人びていただろう?私はお嬢様が特別な存在であることを嬉しいと思う反面、少し寂しくも思っていたんだが、お前は違うのかい?」


「……いいえ。私も同じです」


「だろう?だからたまにくらい子どもらしくしたっていいんじゃないか」


「そうね……私たちにとってお嬢様はいつまでもかわいい子よね」


「ああ、そうだとも」


「ディラン!」


「マーサ!」


「……」



 えっと、なんか思ってたのと違うんですけど。なぜか二人は熱く握手を交わしているけど、前世合わせるとアラフォー、いやアラフィフの私には恥ずかしい話で。

 もう子どもみたいなことをするのはやめよう。うん、そうしよう。



 ◇



 アナベルとは領都の広場で待ち合わせをしている。せっかくだし色々と散策をする予定だ。

 約束の時間より早く着いたからか、まだアナベルの姿はない。

 それから少しして、まもなく約束の時間というタイミングでアナベルがやってきた。



「ダリア様!」



 手に大きな鞄を持ったアナベルが駆け寄ってくる。

 まるでドラマのワンシーンのようだ。

 令嬢が走るなんてと言われるだろうが、アナベルは走る姿すら愛らしい。



「ベル、久しぶりね」


「お久しぶりです!お待たせしちゃいましたか?」


「私もさっき来たばかりよ。元気だった?」


「はい!」



 日にちにしてみれば大したことないが、これまで学園で毎日会っていたのだ。

 たった数日でも久しぶりな感じがする。

 それにアナベルの私服姿を見るのは初めてだ。

 制服姿も尊いが、ワンピース姿もまたよき。



「それじゃあ早速……っとその前に。少し失礼するわね」


「ダリア様?」



 私はアナベルが持っている鞄に手を触れる。

 ずいぶんと大きな鞄だが、それもそのはず。

 今日はただ家に招待しただけではない。なんとお泊まりなのである。



「これは内緒よ?」



 でもこんなに大きな鞄を持っていたら疲れちゃうもんね。だから……



「え……き、消えた?」



 ついさっきまであった鞄はどこにも見当たらない。

 まるで消えてしまったような……そう転移魔法を発動したのだ。



「荷物があると大変でしょう?私の家に送っておいただけで、消えたわけじゃないから安心してね」



 さらっと言ったものの、心臓はバクバクである。

 目の前で転移魔法を見たアナベルは、果たしてどんな反応を……



「さすがダリア様です!もちろん内緒にしますのでご安心ください!」



 口元に人差し指を当てるアナベル。

 か、可愛すぎる……!

 あまりの可愛さに悶えそうになるけど、ここは堪えないとね。



「ありがとう。それじゃあ行きましょうか」


「はい!」



 それからの私たちは本を見たり、かわいい雑貨を見たりと楽しい時間を過ごした。


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