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 昔、大帝国のお姫様ととある国の貴族が恋に落ちて結ばれ、仲良く幸せに暮らしていました。


 ある日、お姫様が子どもを身籠ります。

 二人はとても喜びました。

 なぜなら二人は子を望んでいたからです。


 でもその喜びも束の間、お姫様は体調を崩してしまいます。

 元からあまり身体が強くなかったお姫様。お医者様から


『無事に出産できるかわからない』


 そう告げられてしまいます。

 けれどそれでも二人は子を産もうと決めました。

 それだけ子を望んでいたのでしょう。


 しかしお医者様の言葉通り、お姫様の出産はかなりの難産になりました。一時は生死を彷徨うほどに。

 ですが何とか男の子を出産することができました。

 それにお姫様は奇跡的に回復し、家族三人、平穏で幸せな日常を過ごしていました。


 ですがそんな日常を過ごしていると、お姫様は次第にこう思うようになります。


『この子にキョウダイを作ってあげたい』


 ただそうは思っていても、最初の出産が原因でお医者様からは次の出産は難しいと言われていました。

 もし望んだとしても、母子ともに命を落とす可能性が高いと。


 お姫様を深く愛している貴族からは、命を落とす可能性があるのなら二人目はいらないと言われてしまいます。


 お姫様は悩みました。


 それでもやっぱり息子にキョウダイを作ってあげたい。

 命の危機があると分かっていても、その想いが消えることはありませんでした。


 そしてお姫様は決めました。

 また貴族もお姫様の想いを知って、愛する人の望みを叶えてあげたい、そう思うようになりました。


 お姫様も貴族も、もしもの時のことを覚悟したのです。


 それから幸運なことに二人目を授かることができましたが、やはり今回もお姫様は体調を崩してしまいました。

 なんとか出産することはでき、女の子が産まれましたが、お姫様の身体には負担が大きかったのでしょう。

 体調が良くなることはなく、そのまま亡くなってしまったのです。


 貴族は悲しみました。


 もしものことは覚悟していた。

 ですが貴族は、お姫様の死を受け入れることができませんでした。


『なぜこんなことに……』


 そしてあろうことか、産まれてきた子を憎み、いないものとして扱うようになったのです。


『お前さえ産まれてこなければ』と。


 そうして望まれて産まれたはずの女の子は、誰からも愛されず、一人ぼっちになってしまいましたとさ――


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