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 ――ダミアン・ブルー


 上級貴族ブルー家の嫡男。青い髪に青い瞳をした、攻略対象唯一の年上キャラ。

 そして悪役令嬢ダリアローズの兄でもある。

 学園では三学年の経営科に在籍している。

 大好きだった母が突然いなくなり、寂しさを抱え育っていく。また父を見て育ったことで、母が亡くなったのは妹のせいだと思うようになる。

 そんな中アナベルと出会い、彼女の優しさに触れ、これまで抱えていた寂しさが消えていることに気づく。

 そしていじめられるアナベルを見て、自分が守らなければとの想いを強くし、さらに妹への憎しみを増やしていく……



 ……ダミアンルートはこんな感じだったかな。

 もちろんダミアンルートも攻略はしたけど、他の攻略対象同様あまりよく覚えていない。

 だけど唯一、前世の私が思ったことがある。



(母親のいない寂しさをヒロインで埋めるなよ!)



 もちろんこういう男性が好きな人もいるとは思うよ?でも私は受け付けなかった。

 正直気持ち悪いとさえ思ってしまったくらいだ。


 チラリと隣のアナベルを見やる。

 うん、なんだこいつ?みたいな顔をしてるね。

 これならダミアンに好意を抱くことはないだろう。よかった、よかった。

 よし、ひと安心できたことだしそろそろ退場してもらおうか。



「分かりました。ひとまずあなたは私の兄だということにいたしましょう」


「……なんだと」


「それで?何か私に言うことがありますよね?()()()早く帰りたいんです。ですからさっさとおっしゃっていただけます?」


「みんなだと?お前は何を言って……っ!」



 ようやく気づいてくれましたか。

 教室にいる全員が、あなたを冷たい目で見ていることに。



「な、なぜ……」



 そりゃあブルー家の嫡男が突然やって来たかと思えば、大声で叫んで妹を力ずくで連れていこうとしているんだもん。誰だってあんな目になっちゃうよ。



「さぁ早く私に()()()()()()()


「は……?謝るだと?」


「ええ。いくら妹とはいえ、ブルー家の嫡男ともあろう人間が女性に対してあのような態度はちょっと……ねぇ?」


「そ、それはお前が」


「ですからここで過ちだったと潔く認めてください!そうすればお兄様を悪しきように言う者はいないでしょう!」


「くっ……」



 きっと今、己のプライドと周囲の評価を天秤にかけているのだろう。

 この男はプライドが高い。だから私の予想が正しければ……



「~~っ、失礼する!」



 それだけ言って教室から出て行きました。

 うん、予想通りすぎる。

 まぁ長年勝手に憎み続けている相手に、謝りたくなんてなかったんだろうね。

 紳士として最低だけど、別に気にしない。

 私も謝ってほしいなんてこれっぽっちも思ってないし、あの男がどうなろうと関係ないしね。



(……でも疲れた)



 魔法でぶっ飛ばしてしまえば早かったけど、さすがにそれはやめた。

 だから仕方なくあんな回りくどいやり方をしたけど、あの男のことだ。諦めないだろう。

 めんどくさいな……よし、次は魔法を使おう、そうしよう。


 次は一発入れてやろうと決意していると、アナベルとなぜかマティアスも側にやって来た。



「ダリア様!」


「ブルー嬢大丈夫か?」



 なぜマティアスも?とは思ったが、嫌味を言いにきたわけではないならいいやと気にしないことにした。



「ええ大丈夫よ。だけどちょっと疲れちゃったわ」


「あの人は本当にダリア様のお兄様なんですか?なんだかすごく嫌な感じでした……」



 はい、ダミアンルートもナシが確定です。



「ああ間違いなく彼はブルー嬢の兄君だ。だがあんな一面があるとは……」



 面識のあるマティアスは、普段とのギャップに戸惑っているようだ。



「ブルー嬢は兄君とは、その……」



 ハッキリとは言わないが、実際のところどうなのか気になっているのだろう。


 片や上級貴族の嫡男、片や存在すら不明だった娘。


 気になるのは当然のこと。それに特別隠すことでもない。



「あの人が兄だというのはもちろん分かってるわ」


「そ、そうか」


「でも顔を合わせるのは本当に初めてよ」


「え……」


「私がこれまで表に出てこなかったのは、父と兄に疎まれていたからなの」


「ひどい……」


「そんなことが……」


「ああ、でもそのおかげでやりたいことができたから私は全然気にしていないの。だから心配しないで」



 あの二人はただ生物学上、ただ血が繋がっているだけ。

 私には大切に想う家族と大好きな友人がいるので、あんな二人はこちらから願い下げなのだ。



「……君がそう言うのなら」


「私はいつでもダリア様の味方です!」


「ふふっ、二人ともありがとう」



 そうしてこのあとは何事もなく、無事帰路に就いたのだった。


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