表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/72

15

 

 ようやく授業が始まると思っていたのに、どうしてだか魔法科対騎士科の試合をすることに。

 教師いわく、どうやら毎年最初の合同授業は先ほどの二人のような者が必ずいるのだそう。そして他の生徒も感化され荒れる……というのが恒例の流れになっているようで、それを止めるために考えられたのが、クラスの代表者同士で勝負をさせること。

 勝っても負けてもめんどうなことになりそうではあるが、要するにガス抜きだ。こうでもしないと落ち着いて授業を始められないのだとか。


 一体何のために学園に通っているのかと言いたくなる……まぁ私が言えたことではないけれど。


 この場にいる生徒の中で女子は私とアナベルの二人だけ。それ以外は全員男子だ。みな若いからか血の気が多くて困る。

 そんなくだらない争いは勝手にやればいい。だから私たちを巻き込むなと思っていたのに……



(はぁ……めんどうね)



 クラス委員長が代表者に選ばれてしまった。

 魔法科は私、騎士科はランドルフだ。脳筋でもさすが攻略対象。騎士科で一番賢いようだ。



「女だからって手加減しないからな」



 ……前言撤回。

 運営さん、こんなやつが攻略対象でいいんですか?

 チラリとアナベルの方を見てみると……



「最低です。このような方が騎士を目指しているなんて……」



 言葉と表情から嫌悪感が滲み出ていた。

 アナベルの反応は当然だろう。騎士とは弱き者の味方。まだ騎士ではないものの、騎士を目指すのであればさっきの発言はいただけない。

 私が弱き者の枠に入るのかは置いておいて、選ばれてしまったからには仕方ない。



「こんなくだらないことはさっさと終わらせましょう」


「ダリア様……」



 アナベルが心配そうに私を見る。だけどその心配は無用だ。



「大丈夫よ……実は私、剣も得意なの」



 変身魔法を使うわけではないし、正体がバレることはない。だからここで力を隠すなんてことはしない。ただ本気は出さないだけ。

 私が本気を出してしまえば、ランドルフは木っ端微塵になってしまう。


 私とランドルフは訓練場の中央で向かい合う。代表者以外は、訓練場の端にある見学席にいる。そこには結界の魔道具が設置されているので、たとえ私が本気を出したとしても安全だ。

 横目で見学席を見てみると、マティアスがニヤニヤしてこちらを見ている。どうやら私が負けるものだと思っているようだ。よほど私のことが嫌いらしい。

 ただそうだとしても、さっきまで言い争いしていた張本人なんだから、応援してくれてもいいんじゃない?



(あれだけ剣より魔法が強いって騒いでたのに……)



 見下し男に陰湿メガネ、それに騎士道精神皆無野郎。今のところまともな攻略対象は誰一人としていない。

 現実ってこんなもの?

 思わず溜め息が零れそうになった。


 教師からの説明によると、試合では剣でも魔法でもなんでもありだが、大ケガに繋がるような危険行為は禁止だそうだ。危険だと判断されるとそこで試合が終わり、危険行為をした方が負けになるとのこと。勝つには相手を場外に出すか、降参させるかのどちらかだ。



「魔法なんかより剣が最強だって証明してやる!」


「そう?じゃあ私も剣だけで攻撃しようかしら」


「は?」


「もしも魔法科の私が剣で勝っちゃったら、その時はごめんなさいね?」


「なっ……!騎士を侮辱するなんて後悔したって知らないからな!」



 別に剣を使うって言っただけで騎士を侮辱したわけではないよ?……って言っても脳筋には伝わらないだろうから、ここはしっかり身をもって体験してもらわないとね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ