表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/72

14

 

 初めての休日はあっという間に終わり、また学園生活が始まった。



「ダリア様に一日会えないだけですごく寂しかったです!」



 始まって早々こんなかわいらしいことを言ってくるなんて、さすがヒロイン。グッと心を掴まれたわ。



「そう言って貰えて嬉しいわ。ご家族はお元気だったかしら?」


「はい!みんな元気でした」


「それはよかったわ」


「ただ……」


「ただ?」


「その……子どもみたいで恥ずかしいのですが、家に帰ってみたら思っていたより家が恋しかったみたいで……この先やっていけるのか少し不安になっちゃいました」



 分かる。私も同じだった。でも家が、家族が恋しくなるのは悪いことなんかじゃないし、ましてや恥ずかしいことなんかじゃない。



「恥ずかしくなんかないわ。それだけベルが家族想いだってことでしょ?」


「ダリア様……」


「不安なのは私だって同じよ。でもベルが一緒だから頑張れるわ」


「わ、私もダリア様と一緒なら頑張れます!」


「ふふっ、そう?それじゃあ一緒に頑張りましょうね」


「はいっ!」


「さぁ着いたわね」



 私たちが辿り着いたのは、学園内にある訓練場。教室からは少し離れているが、会話しながら歩くのにはちょうどいい距離だった。


 さて、今日の授業は魔法科と騎士科の合同で行われる。なぜこの二つのクラスがわざわざ一緒に授業をするのかというと、それは魔法士は近距離戦闘に弱く、騎士は遠距離戦闘に弱いからだ。

 近距離戦闘に弱い魔法士が、突然背後から襲われたら?

 遠距離戦闘に弱い騎士が、間合いの外にいる敵を倒すには?


 普段はそれぞれの長所を生かした戦闘スタイルをすればいい。しかし実践ではそういかない場面も多々出てくるだろう。いざという時に取れる手段はたくさんあった方がいい。

 そのための合同授業なのである。


 ただ問題が……



「魔法しか使えない軟弱な奴らと一緒だなんて、とんだ迷惑だ」


「はっ!それはこっちのセリフだ!頭まで筋肉の奴らと一緒だなんてやってられないよ」



 それは魔法士と騎士は仲が悪いということ。

 お互いの長所を学ぶための授業なのに、始まる前からこれだ。


 なぜ仲が悪いのか。理由はシンプルで、魔法士は魔法が、騎士は剣が最強だと思っているから。その卵である魔法科の生徒と騎士科の生徒も仲が悪い。

 もちろん全員がそうではないが、歴代どの学年も仲が悪かったとか。


 ……うん、くだらない。

 互いにプライドがあるからなんだろうけど、それでもくだらない。

 魔法と剣。どちらも使えるほうが良いに決まっている。それこそ最強というのではないかと、目の前の光景を見ながら思った。



「このメガネが!」


「この脳筋が!」



 ああ、なんてレベルが低いんだろう。しかもそれをしているのが攻略対象たちだなんて……


 訓練場のど真ん中で言い争いをしているのは、赤い髪の男と緑の髪の男。緑の髪はもちろんマティアスだ。そして赤い髪の男は――



 ――ランドルフ・レッド


 赤い髪に赤い瞳を持つ脳筋キャラだ。

 上級貴族であるレッド家の子息で、父親は王宮騎士団の団長。強さがすべてだと思っていて、弱いやつは嫌い。

 そんな極端な考えの持ち主であるが、アナベルと出会い変わっていく。

 最初はアナベルも弱いやつだと思い嫌っていたが、ある時魔物に襲われて危ない所をアナベルに助けられる。震えながらも自分を懸命に守るアナベルの姿に、力の強さよりも大切なものに気づく。そしてそんなアナベルに心惹かれていき……



(うーん、たしかランドルフルートはこんな感じだったかな?)



 一応全ルートは攻略しているけど、感情移入できなかったせいかどのルートもあまり覚えてない。大体こんな感じだったかな~?くらいだ。


 結局そのあとも、教師が来るまでとても上級貴族とは思えない言い争いは続いたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ