探索記録1【夜明けの夜】 《改》
金属の匂いが漂う鉄の街
道も壁も、辺りを埋め尽くす勢いで増築されていく建物も…殆どが金属で出来ている。
そしてその鉄の都市は影の日…星空が輝く時、崩壊したこの世界でその居場所を変える。
山や草原、砂漠、海上…生物の住むところを、その鉄の都市…移動要塞都市スライブは移動する……残された人類を乗せて……
……
「もうすぐで灰が降るのに……N粒子通信ももう不安定だ…流石にもう諦めるしかないかな…」
スライブの超大容量貯水タンク前の交差点。
そこには通信機を軽く叩いている悩ましげな顔をしている穏やかそうな黒髪の少年が一人寂しげに立っていた。
「やっぱり…僕が直接向かわなきゃかな〜…仕方ないか」
そう言うと少年は、少し不満そうな表情を浮かべながらスライブで最も高くデカい建物、黒鉄の塔…要塞管理塔を見つめ、深くため息をつく。
そして少年は何処か不安げな足取りでその要塞管理塔へと進む。
灰が振り始めた…
鉄の臭いは薄れ、灰のほんのり甘い匂いが払拭する。
灰はやはり落ち着く…寂しさが紛れるのだ…
しかし…今は不愉快な存在へとなっている。
灰による通信妨害のせいでどこにも繋がらない…
少年が要塞管理塔へ向かう理由…それは単純であった。
ある通信があった…誰からかも分からない通信…
『要塞管理塔に向かえ…迎えは交差点に送る……アク……ツー………ツー………』
そう送られた。
途中で途切れた…なんだ?と思ったが…気にするほどではない、少年はそう考えていた。
「……誰も迎えに来ないじゃないかっ!!何分も待ったのに…」
通信機を握り潰す勢いで力をいれる。
顔は引きつり、眉をひそめる。
『―――――――――』
後ろから何か音がした…いや、声だ
「?」
さっきの怒りは何処へ行ったのか…
少年の顔は穏やかになっていた。
声が…怒りをとってくれた、そんな気がした。
後ろを振り向くも…あるのは無人の乗り捨てられた車、金属出来た住宅街…コンクリートの地面…追加するなら空から降る灰…
いつもの景色…何も変わってない。
少年はつまらなそうな顔を浮かべ、再び前を向き、要塞管理塔へ向かうのだった…
……
要塞管理塔地下にて…ある兵器の実験が行われていた。
暗い監視室の前にはガラス板を挟んだ先、一際明るく、白く広い部屋がある、広さは三十メートル四方といったところか…監視室は所狭しと観測機と調節器等の機材が設置されており、数十名がそれぞれの機械を操作している。
「GL-00【ゼノ・ルナ】…現在SA粒子数値安定…FM駆動システム暴走の危険性無し…スメラギさん…この反応は?」
研究員の一人が観測機を、横にいたスメラギという女性に見せる。
スメラギと呼ばれた黒い軍服を身に纏う赤色の長髪の女性は、見せつけられた観測機を遠慮なく覗き込む。
「この反応…何かしら?……ナニカに反応してる…?反応がどんどん強くなってく…!ゼノ・ルナはどうなってるの…!」
スメラギは厚いガラス板の先を焦燥感のある表情を浮かべながら睨む…先には広い白色の部屋の中央…
黒色の素体に白色の装甲…それに覆いかぶさるように黒色のパーツがある、細身な体型。
そして…胸部にはほんのり青く輝く動力炉とされる巨大な水晶のような物が埋め込まれている。
高さ役十七メートルの黒鉄の巨人と形容するのがしっくりくる容姿だ。
スメラギはその黒鉄の巨人…ゼノ・ルナの胸部にある水晶を睨みつける。
「あの胸の水晶…元々黒かったわよね?」
眉をひそめ、不本意ながらも威圧するよう、スメラギは研究員に問う。
「えぇ、発見時から何の反応もありませんでしたし…光った…という報告も聞いてませんよ?」
研究員の答えにスメラギは軽く歯を食いしばり、悔しそうな顔で言った…
「そう…、……」
…と……
……
同刻…少年は要塞管理塔の門の前まで移動していた。
レンガ造りの塀
しかし門はガッチリ鉄の扉…おまけにロックつき…
建築レベルが塀と門でこんなにも違うのだ。
塔本体はぱっと見約五十メートル程の巨大な建物…この建物は移動要塞都市スライブの動力炉の管理を主に行っており、他にも色々やっているという噂のある…そんな場所だ…
「なんか用か?」
「ん?……!」
管理塔を見上げていると、突然横から黒ずくめの男が話しかけて来た。
少年がその声のする方向を向くと、なんと少年の眼前に男の顔があったのだ。
少年は警戒と驚愕が混ざり、構えながら男と距離をとる。
『ちょいきなり近すぎ…!なんなんだこの人……全身黒色のコートやらサングラスやらマフラーやら…明らかに不審者じゃないか…』
「あの…?いきなりびっくりするんですけど…?」
「あぁそれはすまん」
黒ずくめの男は謝罪すると合わせていた目線を上げ、しっかりと立ち上がった。
腕の埃を払うような仕草をしながら、サングラスを軽く整える。
『謝罪出来るんだな…てか身長大きいニメートル位ないか?この人…、』
少年は目を見開きながら男を見上げた。
「で?何の用でここにいる…」
見上げて来る少年に冷たい視線を向け、黒ずくめの男は淡々と詰めるように話始めた。
「………『まずい……通信が来たから来ました!って今考えたらヤバイ奴じゃんか……どうする?どうすれば?嘘?嘘をつけばいい?え…えっと…………』
男がため息をつくと門を見つめながら言葉を紡ぐ。
「……話せないか…まぁ門の前にいるだけなら良いが…入れば不法侵入になるからな…そこんとこ気おつけとけ……そういや名前は?」
『名前?なんでいま?まぁいいやただの名前だし』
「アルン・シュウジ……」
「アルン・シュウジ……夜明けか…覚えとく…なんだかまた会いそうだ…じゃあな」
男はそう言いながら管理塔の門を越えてゆく。
『名前聞いといて自分は言わねぇのかよ!……まぁいいや…通信では向かえとしか言われてないし…このまま待ってたらいいのかな?灰が降ってるせいでログも確認できないし…』
少年…アルンは疲れたのか脱力したままで塀にもたれ、そのまま崩れ落ち、座り込む。
そして、ふと空を見上げる…晴天でも夜空でもない…灰で覆われた曇りきった空…面白い要素も綺麗な要素も無い空…雲から絶え間なく降り続ける灰…それを見ていると…自然と心が落ち着く…アルンはそう考えていた。
さみしげな雰囲気を纏ったアルンは、嘆くように言葉を落とす。
「母さん、父さん…どこ行ったんだろ…… … … 」
……
「はぁ……起動実験また失敗……やっぱ搭乗者がいるのかしら?」
「そこら辺のガキとっ捕まえて、乗せりゃいいんじゃないか?」
愚痴をこぼすスメラギに、黒ずくめの男が無茶を言う。
管理塔十階、研究所の一室。
アルンと先ほど会ったばかりの男と、スメラギが2人だけで会話している。
「そこら辺のガキって…あなたも見たでしょ…ゼノ・ルナに搭乗して起動した瞬間に拒絶反応で爆散した子…しかも原因不明…!…こんな事あったら…もう霊的なものがあるとしか…」
霊的なファンタジーを信じたくないスメラギは、霊的なものがありそうだと分かると、不貞腐れた子供のように壁にもたれかかる。
「そもそも粒子科学も粒子システムも非現実的と言えばそうだろ」
「けど粒子は実際存在するでしょ?」
確かに…と痛い所を突かれた男は一瞬目をそらす。
「……まぁそうだが…あれだろ?粒子って崩壊後に発見されたんだろ?」
「崩壊って…いつの崩壊よ?この要塞…何回も改修してるじゃない?」
「その崩壊じゃねぇ…文明崩壊…五十年くらい前の…」
「たしか…記録とか、文献とか、残ってないんだっけ?」
その言葉を聞き…男は少し黙る。
間を作ったのだ。
自分の中で整理したかったのだろう。
「そうだな…崩壊前の方が…明らかに文明レベルは上のはずなのに…崩壊後に粒子が発見された…」
「そんなの見る観点が変わったとか…いろいろあるじゃない?……けど…確かにまともに集落も無いのに…生き残ってる人だってもう殆どが殺されてるんじゃ……、…まぁ暗い話はなしにして!話ちょっと変わるけどあなたはゼノ・ルナが起動出来ない理由って何か思いつく?」
疑問を口にするスメラギに男は軽蔑的な視線を送る。
「話変わるというより戻っただけだろ……バカか…で?何かって?…今回の実験は俺そもそも参加出来てないしな……スメラギがいった搭乗者じゃないか?あと……安定しない数値ってあったか?あったらそれが原因だろ?」
「安定しない?……やっぱりFM粒子系かしら?」
首を傾げるスメラギに、男は聞き返す。
「FM粒子?」
「まだ開発されたばかりの…まだ兵器にも使われてない粒子システムよ…遺跡で見つかったはずのゼノ・ルナはそのFM粒子を極化して物質化させてたの…その物質で素体を組んでるみたいで…」
「つまり動かすにはそのFM粒子システムをコントロールする必要があると?」
問いかける男に…スメラギが少し笑顔になり、愚痴り始める。
「そうなのよ!……けどオーバーテクノロジーって言うの?昔のもののはずなのに…コントロールできないのよ!?……………あぁイライラする〜〜〜!!てか…タバコ変えたのね、こっちに来る臭いがまったく違う…なんか不快」
嫌味っぽくジト目で男を睨むスメラギに男は呆れたような顔をする。
「気づくもんか?普通?まぁ正解だ…タバコ吸ってねぇのにすげえな…ちなみにドッグスからアルファに変えた…流石に気づかねぇか?」
「種類はわかんないわよ…なんで変えたの?私前の方がマシなんだけど…」
「なんか飽きたんだよドッグスに…」
「へぇ~」
そんな会話をしていると、部屋のロックが掛かっていた鉄扉が開き、誰か入ってくる。
銀髪のショートヘアが特徴的な青目の少女だ…
彼女はスメラギと男に会釈すると、部屋にあるロッカーから紺色のパイロットスーツを取り出し、横の扉に入る。
「彼女は?」
男の質問にスメラギは手を腰に添え、胸を張り自信満々で答える。
「パイロットよ!」
「ゼノ・ルナのか?」
予想外の反応にスメラギはしどろもどろするも、すぐに言葉を紡ぐ。
「違うけど……最近、徘徊してるガーディアンの鹵獲方法が確立されたでしょ?その方法を使って早速鹵獲したのよ!そのガーディアンを搭乗できるよう改造したのよ…そのガーディアンのパイロットよ!」
「違うのか…で?ガーディアンってのはなんだ?」
根本的な質問をする男に、スメラギは酷く呆れた様子を見せる。
「〜〜〜〜あんた本当にゼノ・ルナ以外興味ないのね〜!いいわ説明したげる…ガーディアンは文明崩壊時に発生した…本来人々を守る機械兵だったけど…何かしらの要因で暴走…人を襲う怪物になった…けど嬉しい事に、あいつらも機械だから、灰が降れば強制停止出来る…それでようやく鹵獲出来る…まぁ半分味方の半分敵みたいな?」
「9割敵の1割味方だろ…そんなの…で…ゼノ・ルナはそのガーディアンの一種なのか?」
「〜〜わかんない」
そうこうしていると、鹵獲したガーディアンのパイロットと言われていた銀髪の少女が紺色のパイロットスーツに着替え、スメラギ達の会話に入ろうとする。
「あの…スメラギさん…この男の人って……」
少女はスメラギの背に身を寄せ、怯えた声で尋ねた。その様子に、スメラギは思わず笑みをこぼす。
「この人はゼノ・ルナ専属の研究員のソラガネさんよ、あなたもいつかお世話になるかもしれないから、覚えておいた方が良いわよ〜」
「俺の紹介しといて…で?そいつは?パイロットってのは聞いたが…」
「彼女?彼女はソラネよ。運動神経抜群の女の子よ!」
その言葉に黒ずくめの男…ソラガネは懐疑的な顔をわざとらしく見せる。
「運動神経抜群?ぱっと見細いし…背は低いし…とてもじゃないが…お世辞にも運動神経がいいとは言えなさそうだな」
「体力も筋力もないけど…運動神経はあるからね!ソラネちゃんは!」
スメラギは謎に自信のある顔で親指を立てる。
「運動神経だけ…つか運動神経とかパイロットに関係あんのか?」
「関係大ありよ!関節の動きに加えて捻りとかそんな動きをさせるには神経接続が今のところ一番簡単にガーディアンを操作できる方法なのよ?体力がなくても運動神経があればいいじゃない?」
「神経接続か…嫌な思い出しかねぇな…」
「どしたの?」
「いや…何でもない…さっさと作業に入れ…俺はゼノ・ルナの様子でも観てくっから…じゃあな!」
ソラガネはため息をつくと、肩をすくめながら部屋を出る。
……
部屋を出たソラガネは先ほどまでスメラギのいたゼノ・ルナの収容室兼監視室へと赴いていた。
監視室のデバイスに手を掛け、優しい視線を隔離されたゼノ・ルナに向ける。
「……ゼノ・ルナ…おまえの飼い主、見つかったぜ…良かったな…海に帰れるぞ…」
ソラガネはそう…まるで我が子をみるように呟いた…誰もいない暗がりの監視室で……
……
『何も起きない……』
アルンは頭の中でそう呟いていた。
あれから数時間たった…しかし何も起きない…辺りは暗く、もうすぐで日が沈み影の日になる…そんな時間帯だ…
「おまえ…まだここにいたのか…」
横から男が呆れたように話しかけて来た…さっきの黒ずくめの男だ…犯罪臭の漂う…
「はい…やる事無いので……なんですか?」
「………許可を得てみよう…おまえ…ちょっとついて来い……」
「はい?」
黒ずくめの男は、無言で門番に書類のようなものを見せると、アルンを手招きした。どうやら、入る許可を取ってくれたらしい。
「ついて来い…もうすぐで実験をするんだ…」
「実験?」
「最近鹵獲したガーディアンの起動実験さ…あっおまえは今俺の子供って事で通してる…そこんとこ気おつけろよ?」
「はい?」
はい?と言っても男は何も返さない…管理塔内の鉄製の廊下を、男はアルンを置いていく勢いで歩いていく。
自分を置いて進む黒ずくめの男が廊下の突き当たりで立ち止まる。
アルンをいる方向に振り向くと、ニヤけた顔で言葉を落とす。
「面白いのが見れるぞ」
アルンが困惑していると、男は目の前の扉を開ける。
その先は外の広間があった…あれだ…運動場って感じの。
コンクリートの地面に、金属の柵で囲われているスペースの中に犬のような形状をした五メートル位の機械が…
おすわりしてた。
犬みたいに…
けど尻尾は振っていない。
その犬のような機械には、所々青色のラインがあり、ほのかに輝いている。
「あれなんですか?」
アルンが犬型の機械を指さしながら聞くと、男のニヤけた顔は消えており…無表情のまま答える。
「最近鹵獲したガーディアンだ…」
『答えてくれるんだ…この人…』
さっきからまともに何も答えないにも関わらず答えた。
なんとなく犬型の機械を眺めていると…左から足音が聞こえ始めた。
「ソラガネ!見に来てくれたの?あんたがゼノ・ルナ以外に興味示すなんてね〜。ん?」
話しかけて来た赤髪の女は男…ソラガネと言ったか…ソラガネの近くにいるアルンに気づいたようだ。
「その子…だれ?」
男は慌てた様子を見せながらも冷静に答えた。
「従兄の子供だ……」
急に適当な喋り方から整った口調で話しだしたソラガネを、アルンは凝視する。
言っていたことと違ったからだ…
ソラガネは自分の子供として通している…
そういったにも関わらず!
彼は従兄の子供だと抜かしたのだ。
『?は?従兄の子供………あれ?おかしいな………てか汗ダラダラじゃねぇか!冷静な顔してすんごい滝汗じゃんか……コイツ…なんでこんな嘘…いやそもそもが嘘だが……』
「そう?ならいいの……うふッ、……」
『今殺意感じた…巻き添えくらいかけた………怖っこの女の人……いやお姉さんと呼ぼう…怖い…このお姉さん………』
「コイツがみたいって言うから仕方なく入れたんだ…な?」
ソラガネは赤髪のお姉さんから目をそらしながらアルンに同意を求める。
『コイツ(ソラガネ)僕に同意求めてきた………仕方ない…』
「はい………」
アルンも目を逸らしながら答えた……
呆れたようにため息をつく赤髪のお姉さんを遮るようにソラガネが早口で話始める。
「まぁこんな事どうでもいいだろ?で…スメラギ…ソラネは何処だ?早めに実験見ておきたいんだが…」
「まぁ………もう出来るはずよ…影の日になってるし…準備するわよ〜はい準備!準備!」
赤髪のお姉さん…スメラギさんはそう呼びかけしながら作業に戻った。
ふと空をみると…綺麗な星空が、アルンの青い瞳に映る。
灰が降っていない…影の日だ…
……
そして数十分後…犬型のガーディアンの周りから人がいなくなり…皆離れて見ている…もちろんアルンも…そして犬型ガーディアンには、銀髪の紺色のパイロットスーツを着た小柄な少女が乗り込んだ。
「GU-01【プラチナ】…S粒子安定…М粒子微量ながらも確認…FN粒子注入します…………注入完了…OKです!起動準備よしですソラネさん!」
その声が聞こえたのか…銀髪の少女の乗った犬型ガーディアン【プラチナ】は動き出す。
赤い瞳を輝かせて………
「実験失敗!!……急いでプラチナからFN粒子を抜いて!アンチ粒子システム起動急いで!」
赤髪のお姉さんが焦りながらも的確に指示をだす…
皆がバタバタする中…アルンはただ立ち尽くしていた、状況が整理できないのだ…横にいたソラガネも立っていた…なぜかは分からないが…何かを待っていたのかもしれない。
「グフッ!!!」
突然の激痛、アルンはなぜ痛みが発生したか分からぬまま、管理塔の壁に叩きつけられる。
壁は壊れ、アルンの体は気づいた頃には管理塔の中にあった。
『何が起きた?………息が出来ない……あの男は?プラチナは?何が起きてこうなった?まさか…攻撃された……?なんで…なぜ?どうして?』
「すまない!反応が遅れた…急いで地下に避難するぞ!」
ソラガネは外から走ってアルンまで近づき、拾い上げると、駆け足で地下へと向かうのだった…
同刻広間では…プラチナが暴走していた。被害者はさっきの数秒で十人は行っていた…アルン含め………
……
管理塔地下5階…そこには極秘のものがあった…ゼノ・ルナ…文明崩壊前の遺跡で発見された人型の機械だ…軍はこのゼノ・ルナを外敵の全滅に当てるために研究していた…避難所は地下2階にあるにも関わらず…ソラガネはその極秘の存在がある5階にアルンを連れていた。
そして監視室を通り、ゼノ・ルナがある白色の空間に移動する。
「アルン…これに乗って逃げるんだ!」
男が息を荒げながらそう言うと、ゼノ・ルナの腹部にあるコックピットの入り口を無理やりこじ開け、血だらけのアルンを押し込む。
「安心しろっ…大丈夫だ…」
冷静さを取り繕っているソラガネはそう言い残し、監視室へと向かった。
ソラガネは監視室のデバイスを使い、ゼノ・ルナのカタパルトを外し、起動準備を始める。
そして……
「逆神経接続完了…………海に行け…ゼノ・ルナ起動……」
男が起動ボタンを押すと、ゼノ・ルナの胸の水晶が水色に輝き、瞳が黒色の装甲で隠された頭部から水色の光が漏れ出す。
コックピットではアルンは意識が薄れていく中…何者かがアルンの精神に干渉するのを感じる…意識が奪われ、完全に身動きが取れなくなる。
『なんだ…意識が遠のく……入ってくるな…くる…な……』
装甲が擦れ合い、ギシギシと音を立て、悶えるように軋みながらゼノ・ルナは"起動"する………
……
同刻広間にて…スメラギのデバイスに、ゼノ・ルナ起動の通知が送られる。
「ゼノ・ルナ起動!?誰が起動させたの?……!」
戸惑うスメラギとの近くではプラチナと武装団と言われるガーディアン達を全滅する訓練を受けた連中が戦闘している。
しかし、普段とは違う動きをするガーディアンに振り回されているのが現状…半無重力装置を使い立体的に動く武装団達をプラチナはいとも簡単に対応している。
そして……管理塔の地下から物を破壊しながらゼノ・ルナが姿を現す…
バーニアから出る熱風を受けながらスメラギは驚きを隠せなかった。
「本当に起動してる…!」
ゼノ・ルナ起動に感銘を受けているスメラギと対照的に、ゼノ・ルナは沈黙している。
…が…プラチナを見つめている……自分より小さい犬を見下している…その事に腹を立てたのか…プラチナは鼓膜が破れそうなほどの音で威嚇する。
…しかしゼノ・ルナは怯まない…
…反応しない…
…自分が警戒している者が何ませず見下してくる…
これほど怖いことは無い………そしてゼノ・ルナが動き出す。
グジュグジュと生物音のような音を鳴らしながらゼノ・ルナは左手をプラチナに突き刺す…
ギリギリで回避したプラチナは…なんとか右前足だけの欠損で済んだ……しかし…今度は避けられない…
左手をプラチナに向ける…腕の黒色装甲が手の甲とつながり、手の平にある水晶がオレンジ色に輝く…瞬間…
手の平から高熱の粒子砲が放たれる。
一般人には想像できない熱が…プラチナを襲う。
プラチナの装甲は一瞬にして溶け、内部がじっくり時間と溶かされる。
そして…
ついにコックピットが丸裸になる。
中には意識のない銀髪の少女が見えた。
その時、粒子砲を停止し、コックピットを両手でつかみ、自分の目の前まで持ち上げる。
ゼノ・ルナはそのままコックピットを握り潰そうと力を込める…その時もグジュグジュと音がする。
少女を焼き殺すのは躊躇したのが…それとも握り潰すことで痛みを与えようとしているのか…それは誰も理解できない。
その時…ゼノ・ルナのコックピットに眠っていたアルンが目を覚ます…そして逆神経接続から神経接続へと操作プログラムが切り替わる。
それにより、握り潰そうとした手が途中で止まる。
ゼノ・ルナのからアルンへの逆神経接続からアルンからゼノ・ルナへの神経接続に切り替わった事により、アルンの無意識がゼノ・ルナの行動を止めたのだ。
「何が……起きた……」
静かなコックピットで…アルンは顔を手で覆い隠しながら…まるで自分を責めるように呟くのだった…………
わからない設定があるなら教えてください…解説しますので…
こんな感じですね最後までありがとうございます!
1話は駆け足気味でゼノ・ルナ起動まで進めたので、世界観説明が少ないですが…2話や3話などのあとで説明されるので…とりあえず…主人公が何も知らず…世界が勝手に進んで巻き込まれるのが1話です。
では、ぜひ続けて読んでみてください。