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エッセイ3

真夜中の公園で聞いた声

作者: 七宝

 12月に入ってすぐの日記。

 事情を説明するととても面倒くさくなるので100%省くが、その日私は真夜中の公園にいた。少しだけ具体的に言うと、藁人形くらいの時間に公園内のトイレに向かっていた。


 当たり前なのだが、この時期の屋外は死ぬほど寒い。指先と鼻先と耳が紅しょうがみたいな色になっていた。


 おちっこを済ませて手を洗っていると、微かに男の人らしき声が聞こえた。絞り出すように「あっ⋯⋯あっ⋯⋯」と声を発していた。


 怖くなった私はすぐに蛇口を閉めて「ポマードポマードォオ!」と叫びながら駆け足でその場を離れた。


 走っている途中、いろいろ考えた。


 この時私はいろいろあって、すべてを失った状態だった。もしかしたら私のような人が多目的トイレで首でも吊ってるんじゃなかろうか。そのうめき声だったとしたら⋯⋯


 助けに行こうと思った。

 私も過去に何度かそういう気を起こしたことがあったので、彼の気持ちも少しは分かるつもりだった。

 でも、それは衝動的な行動かもしれないし、生きてさえいれば奇跡が起きて状況が好転することもあるかもしれない。実際、私は奇跡に2度救われている。


 公園に戻ると、多目的トイレからおじさんが出てくるのが見えた。多少距離があったのと、明かりがトイレの周りにしかなかったのとで、向こうは私がここにいることに気付いていない様子だった。


 おじさんは公園の柵のすぐ隣に停めていた車に乗り込んで、エンジンをかけた。


 この瞬間、全身の力が抜けた。

 多分だけど、「大丈夫だったんだな」と思った。


 正直、泣きそうだった。こんな時間に公園のトイレに車で来るなんて、やっぱり普通じゃないもん。思い直してくれてよかった。


 そう思った時だった。


 多目的トイレからもう1人、別のおじさんが出てきた。


 え?


 ほとんど目を離さずに見ていたが、誰も入っていないはずだし、そもそもおじさんが出てから1分も経っていない。


 ということは、あのおじさんと、このおじさんが一緒に入っていた⋯⋯?


 こんな真夜中に⋯⋯?


 ( 'ω')ほえ〜

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― 新着の感想 ―
いいなぁ! 自分は絶対に遭遇したくないけど『ヤラナイカ』に遭遇した訳ですね。 そういえば、昔地元にあった山頂観光ケーブルの駐車場の『ハッテン』は最近パンフで確認すると『多目的』に変わっていましたね。 …
ア"ーッ!!
こんにちは。 結果がなんであれ、 七宝様の「命を救わねば!」という気持ちは尊いです。 真実がなんであれ、 命は失われなかったのだ、と喜びましょう。 なんであれ……ね。
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