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異形の末裔達は利害の一致で恋をするか  作者: さえ
吸血鬼の末裔女子と淫魔の末裔男子の場合
1/16

①吸血鬼の末裔女子は吸いたくない

R15作品です

ご理解の上、どうぞよろしくお願い致します


 頭がクラクラする。寝返りを打とうにも力も入らないし、少しでも動けばさらに世界が回るから動きたくもない。こんなコンディション最悪の日に限って外は晴天で窓から差し込む日差しは迫っているのに逃げる事も叶わない。血も濃かった先祖達とは違い日に当たったからと言って消滅したりはしないけど、純人間種の日焼けに比べればダメージは大きいから出来れば避けたかった。


 朝の目覚めは悪くなかった。学校にも問題なく行けたし、授業を受けて何とか家まで帰りつけたがもう限界だった。家にはまだ誰も帰って来ていない。誰かが来てくれるまでもうじっとしておくしかなく、私は自分の部屋にまっすぐ向かうとベッドに倒れ込んだ。


「喉渇いた、、、」


 いつになく渇く。水分は学校にいる時からちゃんと摂っていたから足りていないわけではない。でもこういう時はやたらと喉が渇いて仕方がないのだ。学校に着いた時点でいつもは感じない程の喉の渇きを感じたからもしやと思ったが、水分を取れば落ち着いたから油断した。最後の授業中はほとんど集中も出来なくなっていて、こうして帰り着けたのは奇跡かもしれない。


「やっぱり倒れてた」


 目線だけ窓に向ければ窓枠にしゃがむ同級生の夜神更哉の姿が目に入る。


「げっ!」

「げって何だよ、待ってたくせに」


 私は更哉の姿に思わず顔を顰めるが、相手は不服そうだ。


「誰も頼んでないし。鍵も掛けてたし、しかもここ二階だってのにあんたはいつもいつもどーやって」

「今日は新月だからな。女の寝室の窓は俺には開かれてんだって教えてやったろ?」


 更哉は「よっと」という掛け声と共に部屋に踏み込んでくると、私のベッドを背もたれにするようにして床に座り込む。


「お前、また今日が新月だって忘れてたんだろ」


 頭だけ振り向いて目線を向けてくる。日本人特有の黒い瞳は見慣れているのに何でか更哉のそれは普通じゃない感じがする。


「そんな事ないし」

「じゃあこの有り様は何だよ」

「疲れたから寝てるだけだし」


 強がる私に呆れるようにため息を吐くと、更哉は制服のシャツを捲り逞しい腕を曝け出して私の方に差し出した。ご丁寧に軽く傷をつけて血を滲ませてきてるのが憎たらしい。その香りとその色に抗うのは難しいのに、しかもこの状態の時には特に。毎回そうして現れるから拒む事が出来ない。私の喉は素直に上下して音を鳴らす。


「我慢すんなよ。新月の日の極度の貧血も血ぃ啜りゃあすぐ治るんだろ?」

「もうすぐ、お兄ちゃんかママが、帰って、、くる、から、、あんたのは、要らない」


 そう、もう少しの辛抱だ。家族が帰って来れば何とかなる。家族なら見返りも求めずに助けてくれるんだから。


「そう強がるなよ。俺も新月の発作を抑えておきてぇんだから、こういう時はお互い様だろ」

「他に行けば?」

「そんな事したら泣くくせに」

「はぁ?」


 嗅覚が敏感になってる今は奴の血の香りが芳しく何も考えられなくなる。正直今のやり取りも何を言って、何を言われてるのか理解出来てる気がしない。私が泣くとか言った気がするがこうして待っててやらないと悪夢にうなされて泣くのはどっちだ。ごちゃごちゃする頭ではもう、晒される奴の腕と視線からただ目が外せない。


「いいから、ほら。少し舐めるだけだ。それでも体調はいくらか回復するだろ」

「少し、だけ?」

「そう。少し舐めるだけで正気に戻れる」

「アレも少し、でいい?」

「当たり前だ。凛が舐めた分だけで俺も我慢するから、な?」


 この状態で、血の魅力の前じゃなかったらこいつのこんな言葉に乗せられる事はないのに。だから少しだけ摂取してさっさと追い出してやろう。それがいい。


 私は重たい体を何とか動かして奴の腕の傷口に唇を寄せる。ほんの少し舐めるだけ。それで家族が帰るまで少し楽に過ごせる筈だから。


「ん、美味し、、」


 少し舐めるだけと思ってもなかなか口を離す事ができない。傷口に舌を這わせるだけでは物足りず、流血を促すように少し強く肌に吸い付くと筋肉が一瞬収縮する気配がする。逃げる様子はないから私は更に強く吸い上げる。


「もう少し欲しいだろ?構わないんだぞ」

「ん、はあ。でも、、」

「牙もしっかり尖らせて、さっきから何度も掠めてるじゃん。ほんの少しそのまま突き立てれば良い。そうすればもっと簡単に飲めるだろ?」


 犬歯が既に鋭さを増しているのは気がついている。何度もその強い筋肉に差し込んでしまおうかと思っては踏みとどまっているのに、更哉の言葉での誘惑はやたらと頭に響いて抗えない。


「っ!」


 一瞬痛みに顔を顰めるがすぐに更哉は妖艶に微笑んだ。


「たまんねぇな」


 私はその顔から視線を逸らせずにひたすらに流れ出る血を啜っては飲み込み、滴れば舐め上げた。しばらく続けると徐々に体温を取り戻し頭がスッキリとしていく。次第に後悔とイライラが襲いかかってくる。


「それくらいにしておいた方がいいんじゃない?」


 涼しい顔で聞いてくるのが非常に腹立たしい。私はこの後の見返りを先伸ばそうと齧り付いた腕から離れ難かった。しかしこれ以上はこいつの健康に支障が出てしまうし、アレの時間が長引くのも問題だ。仕方なく突き刺した牙をしまうとそこに口付ける。するとたちまち傷は塞がる。私は勿体無いから最後に溢れた血を綺麗に啜るとようやく腕を解放した。


 次の瞬間私の体は宙に浮く。今度は私が腕を引き寄せられてベッドから更哉の膝の上に移動させられた。


「じゃあ、今度は俺の番な」


お読み頂きありがとうございました!


次回は【淫魔の末裔男子は吸われたい】です。ヒーロー視点をお楽しみ下さい!

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