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捻くれ転生者の何が悪い、ここは気の向くままに!  作者: 冬忍 金銀花
第一章 暗黒時代の幕開け……
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第8部 城塞都市……ロボス王国


転入歴元年九月



*)きな臭い噂話


「なぁあんた、奴隷を育てているのは東の国ばかりなのか?」

「はい、アクセラ帝国が富国強兵政策を布いておりますので、例え父無し子(ててなしご)を攫いでもすれば直ぐに首が飛んでしまいます。身寄りの無い男の子らは国が保護してから一生飼い殺しの兵隊にするそうです。」

「へ~飼い殺しね~王様が角出しているのかな。」

「憎きケレトーン王国を我が物にしたいからなのでしょうが、ですが、そのケレトーン王国が自滅してしまったのですよ。不思議な事があるものだと商人の間ではもっぱらの噂にになっています。」

「まさか住民も消滅したとかはないのだろう?」

「はい、来年の春にはここロボス王国へ難民が多く押し寄せて来るでしょうな。」

「ほ~お前にとっては書き入れ時って事か?」

「そうですよ~子持ちの家庭をまた村に送り込んで娘を買い上げて……いや~ユダレが止まりませんな。」


「ゲスが、」


 なにやらニコニコした顔の女衒が俺に向かって右手を差し出している、それも亜空の袋を向けているから。


「なんだい……その手は。」

「はい、これからお話しします話題の情報料ですよ、ワインでいいのです。」

「あ~はいはい、話し相手も只ではないのか。あんたも退屈しないでいいだろに要求するのか?」


 ユダレの先がワインだったのか。


「待ってろ、」

「ケレトーン王国が消滅しましてですね、ケレトーン王国の国土を巡ってアクセラ帝国と北の帝国のアンデイル王国がどうも煙が立ちそうなんでね、はいはい、二本……頂きました。」


「今日の一日分はあるだろう、それで消滅したケレトーン王国は為すがままの流れ次第で、村や街が抵抗する事無く併合されているのだろうな。」

「はい、貴族らも王都の災厄で主が亡くなったようで、防衛の手も出すことが出来ないみたいですね。」

「だろうな、嫁と子供らでは領地も守れないか。」

「はい、それでこれから向かうロボス王国ですが一番安定した王国なのです。だからいい商売が出来るのですね。」

「だったらロボス王国も狙われているんじゃないのかい?」

「いえいえ、そこのお姫さまが優秀でらしてね、鉄壁の防御を造ってしまわれたみたいなんです。これはもっぱらの噂ですがね。」

「へ~一度会ってみたいもんだ。」

「やめられたがよろしいでしょう、尻子玉しりこだままで抜かれますから近寄らない方がよろしいかと。これがワインの代金です。この情報が一番高いので~す。」

「うひゃ~参ったな。精々気をつけて行動するよ。」


 馬がヒヒ~ンと鳴いて立ち止まる。馭者はすぐさま事情を察して商人に声を掛けてきた。


「ボス……お客さんを差し出して下さい。」

「おや、魔物でしょうか。……よろしくお願いします。」

「お、俺がか~?」

「はい、腰に立派な逸物いちもつが提がっていますでしょう?」

「対、女用で普段は使いモノにならないんだがな。ゴブリンの女でも居るのか?」


「ホ~ッホッホ~中々に落ち着いていらっしゃる、初日に用心棒の二人を屠りましたでしょうか、ですから頑張って下さい。」


「あ~あれね、俺の所為じゃないんだな~。リオ、手伝え。」

「え~……ヤダ。お兄ちゃん一人で大丈夫でしょうが、あたいは知っているんだからね。」

「この~……役立たずが囮にも使えぬのか、いいよ独りで。」

「うん、頑張って。」


 俺は冗談でゴブリンとは言ったが、本当にゴブリンの大人数がたむろしている現場に出くわした。緑の皮膚が気持ちわり~。


「おいブタども俺に付いてこい。旨いものを喰わしてやるぞ。」

「ギギー、ギャイ、ギー。」x?

「ほらほら……こっちよ。ウギャ~……ダジゲデ~!」


 俺はレイピアを使えば直ぐに亜空の袋へ押し込む事ができるが、あの商人らに剣の性能を目撃されたら後が怖いから見えない処まで場所を変えた。


 レイピアの事を知られて寝ている時に剣を奪われたら俺は生きてはいけない。


「ほらほら……こっちよ。ウギャ~……ダジゲデ~!」


 急いで、尚且つ弱々しくゴブリンの大人数の前を走って逃げる。俺の剣には? ナマズの五匹を刺しておいた。目の前のエサだな釣られて全部が俺を追ってくる。


「おっと、ここいらに亜空の袋への転送魔方陣を描いて……できあがり~。」

「ギギー、ギャイ、ギー。」x?

「オッヒョ~……良く掛るわ~もう最高よ!」

「ギギー、ギャイ、ギー、ウギャ~……ダジゲデ~!」


 最後に人の言葉を残してゴブリンの全部が亜空の袋へと落ちていった。俺のまねをするなよな。


「アハ~楽ちんだわ。帰りますか……道はどっち?」


 暫くして、


「お兄ちゃ~ん・・・おに、やっと見つけた。馬車とは真逆なんだからね。」

「え、ウソ!」

「方向音痴なんだよね?」

「知ってたのか?」

「うん、だって村からの道を全く無視していたんだよね?」

「アハ~……読まれていたのか。でも商人に会えたのでいいだろう?」

「そうだけどさ~……いいからこっちだよ。」


 商人たちと合流して、


「ゴブリンの女は居ましたか?」

「いや、見分けが付かなくてな、全部屠った。」

「さようでしたか、しかしですね、こんな処にゴブリンは出て来ないのですが、分りませんね~。」

「大方、大っきい魔物に追われて逃げて来たのが、『落ち』だろう?」

「ふむふむ、もしそれが本当だとしたら大変ですぞ、いや~大変です。」

「何がだよ。」

「はい、情報料を戴きます。」

「はいよ、ゴブリンの女が着ていた腰布!」

「す、捨ててください、そんな汚らわしいものは要りません。」

「女のいい匂いがするんだがな~。」


「お兄ちゃん……私の腰布を返して!」

「なんだ知っていたのか、残念。」



「お~ホッホ~……それは噂の神官さまですから!」

「何が噂だ、うるさいわい。」


 この商人は誰かからは知らないが俺の事情を聞いていたんだろうか、意味深な発言が続いた。俺は大いに怒りながらも晩飯の準備をさせられてしまった。


 全く俺はチョロい男だよ!


「神官さま、次はアーキラム教国の動きですが……、」

「まだあるんかい!」

「では次回にしますね。」

「あぁそうしてくれないか、疲れたよ。」


 村から出るときに聞いたアーキラム教国の名前が出てきて気にはなったが、疲れが溜まりすぎ。いくら歩かなくても良いとはいえ、馬車には座布団などのクッションは無くて、さらに馬車の台座そのものにもクッションが付いていない。尻が、尾てい骨の尻尾が痛くて敵わない。


「お兄ちゃん。」

「あぁ……ああ?」


 俺はリオから言われた。


「おじさんだったけど……今はお兄ちゃんに姿が変わっているんだよ?」

「え~冗談でも嬉しいよ、しかし~何でだ? もう寝てるし。」


 この神官の法衣に袖を通した時から若返りが始まっていたとは考えもしなかった。鏡もないことだし俺の顔が見る事が出来るのは他人だけだからな。


 俺がこの神官服を着るのが前提で亜空の袋に用意されてあったとしてもだ、あの時に取り出してこれを選んで着る確率は高いとも思えないが、何かの作用が働いていたのかもしれない。


「リオが俺をからかっているだけだろう、あれもまだ子共だし誰かの加護無しには生きていけないだろう。」


 俺の膝枕でスヤスヤと寝ているリオの顔を見てそう思った。だがこいつの面倒は見る予定もない、馬車で寝るには柔らかい枕は必須だが、こいつは図抜けて賢いのかもしれね~や。


 新しい二人の娘を託されたリオの両親はどことなく嬉しい顔をしていたのを思い出す。まるでリオの行く末を分かっているかのようだった。


「行く末は……毒婦に決まってる、嫁さんだったら離婚もの。もし王女になれば国は繁栄するだろうな。」

「お姉ちゃん……、」

「あ~こいつはどんな夢を見ているのかね、秘密をばらしてどうする。」


 俺は寝ているリオの頭と肩には触れたが、肩の下の方に手を回す事に気がつかなくて残念だった。疲れていたら頭も回らないのも至極残念無念だ。あ、腰もなでなでをしなくて矢張り残念無念。


 遠くで咆哮を聞きながら眠ってしまった。この時には既にロボス王国は魔物の侵攻の対象になっていたようだが、今はまだ魔物が集まる前段階だから直接に影響は出ていないだけか。



*)土塁の城壁?


「神官さま、あれが王都でございますよ。」

「ここはあんたの国か。」

「いいえ私はアーキラム王国の出身でして、今はこうやって国々を放浪していますから、何処の国にも所属はしておりません。」


 次に見えてきたのがとてつもなく高く積まれた土壁の外壁の在る都市だった。小高い山の上に鎮座する都市としては、その高く聳える土壁の築堤に労を多用した事だろうか。外壁の少し手前には左右二カ所に少し高い物見櫓が見えている。


 ま、俺としては物知りだから要らぬ心配を口に出していた。


「神官さま、そりゃ~違いますよ。なんで小高い丘の上まで必死になって土を運んだと考えるのですか。山を削って少し下に土を運んだ方が楽でしょうが。」

「あ、、、あん?」


 行商人の言いたい事とは土塁を築造していく時に、その山麓の足許をドンドンと土を削り山の麓へと流したという事だ。それから山の周りだけを残して中央だけを掘り進めて行けばあんな高い土塁が簡単に造れると解説してくれた。


 だが俺の解釈は少し違うな、土の外壁は金物があれば簡単に足場を作り壁を登る事が出来るが、一度水を掛けてしまえば滑って登る事は出来なくなってしまう。これが狙いだとも考えた。


 それにだ、土壁だと聞いたが本当に内部までもが土だとは分からない。芯に石垣が積まれていると思ったがいいだろう。


 それでも土壁の外側にに小さな足場を作られて攻められたら、その時は土の部分を壊してしまえばいい。この外壁を考案した奴には、おそらくはそれ位の仕掛けの考案は造作もなかった事だろうさ。


 その証拠に時々は上からロープを垂らしてゴンドラみたいな足場を拵えて、捏ねた土を塗り込んでいるとか。それで土壁の内部をバレないように工夫しているよな。


「どうです、これが城塞都市と言われる所以でございます。」

「アホくさ、農業国家の領主は何を恐れているんだ?」


 街門が登り坂の上というのも意味があるらしい。何でも他の国から侵攻を受ける際、上りと下りでは戦力にもちから関係が出るとか。外壁や街門を見上げながら坂道を、それも息切れをさせながら登ったら確かにそう思える。


 例えば山城の登り道が何故左巻きに造られたのか、その理由を考えて欲しい。それはだ、人間は基本が右利きに出来ているから右手に剣を持つ。それは登り道の外に出させる為である。


 心臓破りの坂、攻め上るだけで疲弊する兵士が続出だとなるし、街門から打って出る兵士からしたら疲れて動きが鈍い敵兵なんて赤子と同じか。


 だが落ちがあった。


「ですがね、山の掘削にはそれなりに苦労はあったようですよ。」

「ほほう……して、どのような苦労でしょうか?」

「雨水が溜まったとか……笑えない話ですよ。ですので幸いと言いますか、ため池を造って水の確保が楽になったんだとか。山裾まで下りなくて良くなったんでしょうかね~。」

「だが飲み水には使えないと思うが、どうなんだい?」

「はいそのようですし主に子供たちの仕事にされています、それに女も行くようですよ。」

「それも一日中とかかな。」

「はい、それはもう大変だとは思いますがね。」


 大きな街の水が女子供たちだけで賄えるとは優秀だと思う。またこのため池の水は生活用水や灌漑以外でも壁の補修や破壊にも使われるだろう。


 裏手に高く山が聳えているが、この山からの湧き水は城だけを賄っている程に少なくて、近隣の農地には城からの排水を回しているとか。


「ここに錦ナマズ……贈ってやろうか?」

「お兄ちゃん、それこそ要らぬお世話と言うのよ。」

「リオ、鋭いことを言うのだな、へいへい……何も致しませんよ。しかし何だ、俺は釣りが好きだからさ、やっぱ違法放流はするしかないな。」

「アホ!」


「着いたら起してくれや。」

「あたいも寝る。」


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