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捻くれ転生者の何が悪い、ここは気の向くままに!  作者: 冬忍 金銀花
第一章 暗黒時代の幕開け……

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第21部 魔物の前兆


転入歴二年十月 


*)裏に潜むスジャータ


 俺が人参を買いに行けば農民の顔つきが変化してきた。偏に麦わら束子の売れゆきがいいからだと思っていたが、事実は違って、あのスジャータは俺が買う人参に付いて価格をつり上げるように唆していたらしい。


 俺とタマだ、そんな事とはつゆ知らず高値買いをさせられる。それに少なからず鳥の生存率も悪くてすみませんと農民らは謝ってくるから、多少の歩留まりが悪いのは普通だろうと思う俺は馬鹿だからいいよと言う。


「四割は死んだ事にしても分かりませんわ、私は銀貨一枚と銅貨二枚で買いますからね。」

「ありがとうございます。」

「特にあの美味しい七面鳥は金貨を二枚出しますわ。」

「よ、喜んで~~~~!!!」

「ホロホロ鳥には銀貨四枚ですわ。」

「いえ……結構です。」


 この会話でお分かりになるだろうか、俺には罠に掛かる鳥を選ぶ事が出来ない、況してやどの様な鳥が幾つ罠に掛かったのかさえ分からない仕掛けなのだから。


 俺に確認出来る手段はない、いやスジャータのような事さえも理解出来ていなかった。道理で農民たちは俺に喜んで協力してくれていた訳だ。



 大型の魔物を一つ狩る間に多数のワープの陣を張っておいて、エサと狩る動物は同じになるように呪文も改変しておく。鳥に関しては百発百中なのでいいが、事、人参のエサでは十%位だろうか、主に鹿や熊が先に見つけて食べればもうお終いだな。今度からは鹿を捕まえる魔方陣も併設しておいた。


 さすがに大きな熊は檻に入れただけで農民らは怖がって手も足も出ないはず。俺だって嫌だからね。


 ウサギや鳥の飼育は農家にとっても邪魔にはならない。逆に良い稼ぎにさせて頂きますから、と、手揉みをされながら言ってきやがって、このう~。


「これだとエサ代の方がウサギよりも高くなってしまうにゃ~。」


 損得勘定でウザい老人が言う独り言に返事をしてくれるタマ。これは有り難い? 教示を頂いた。だがこれを鵜呑みにする事は出来ないものの。


「今度から屑の人参にしたら?」

「あ?」

「ニャン?」


 あ~なるほどね~俺は農家から高い人参を買わされていたらしいと考えたが、その裏に潜むスジャータには考えが及ばない馬鹿だから。




 次にタマが提案してきたのが?


「水に落とせばいいニャンか。」

「水に落として殺すのも有りか、」

「楽ですよ、ご主人様ニャン!」

「だがな、溺死した動物……特に人間なんか見るのも悍ましいのだぞ。知らないとはいえ、溺死は肉の品質が落ちるから却下だ。」

「え~とても楽なのにな、いたぶって殺される犬よりもいいニャン!」

「あ、あ~……、」


 俺は言葉に詰まって変える話題を考える。だってそうだろ、直ぐに話題を変える事が出来るのならば言葉に詰まる道理がない。


「それにな、人を一人雇う事にも繋がるんだぜ、分かるか?」


 これは必要性はないと思われるが苦し紛れの方便だな。


「わかんな~い、どうしてなの?」

「落ちた動物を水から直ぐに引き上げる人員が必要だろう。タマ……お前はするか?」

「イヤ~……だ!」


「ま、そうだな。それにな動物は死んだら身体が硬くなって幸先が悪い。」


 タマとそんな事を話していたらふっと閃いた。


「罠にも大型の動物が入れない檻を作って仕掛けておくか、ま~熊には通用しないだろうがこれも農家に作らせてみようっと。」

「そうだねパパ。これ美味しいよ。」

「そうだろう農家が丹精込めて作った人参だ、甘くて美味いな。」

「……パパ?」

「あ、ご主人様だ。」


 人参がお昼の弁当だとは情けないのはいいとして、先の方から半分を食べて残りは罠に置くエサにした。人参を丸々一本とか贅沢過ぎるから使えない、どちらかと言ったら人間にも贅沢過ぎるだろう。タマが人参を食べる事さえ疑問にも思えないほどのノータリンなのだ。


「明日は麦畑に出る小さな動物がいないか確認しに行くぞ。」

「ふぁ~い、ネズミか雀しかいないよ。」


 退屈して眠そうなタマと、俺の方は歩きながら囓る人参が歯茎を痛めてくれる。歳を取ると身体は弱くなるが、異世界に飛んで身体は若返っても元の身体の性能は引き継いでいるようで、足腰も弱いままだ。それでも日頃野山を歩くから十歳は若返ったように感じる。




*)リオと女中の関係は?


 俺の心配をよそに銭湯の番台には女中のクロエに任せてしまったリオ、番台に座らないし風呂場の掃除もしていないらしい。リオは朝からアップルパイを焼いて昼から売れば直ぐに完売だと聞いたがな?


 リオはアップルパイでクロエらの三人を買収していたとはね、アップルパイは城で食べる事が出来るのは王族と貴族・高官だけだから無理もないか。


 俺は気がついた、客入りはあまり変らないのに今の方が売り上げがいいのは何故だ?


「お兄ちゃん。クロエが頑張っているから女のお客が増えた証拠だよ。」

「それならばいいが、でも女の方が多いとはな?」

「うん!」


 大きな声で軽快に答えるリオだった。俺が馬鹿だからとリオは安心しているね、俺は知っているんだぞ番台の床に小さな穴を空けて、そこを通る銅貨が多数あるという事をね。クロエはリオと同じ事は出来ないから売り上げが増えたものだよ。


 リオとしてはアップルパイを焼いて稼ぐから銭湯の代金をくすねる必要が無いだけだ。


 クロエのバックには大勢の女中がいるから銭湯へ行くようにと営業を掛けさせていたとは。その見返りがアップルパイだったから、それでようやく納税が少ないのが理解出来た。何故かって? リオとクロエとの裏取引が出来たのだよね。


 銭湯を掃除してくれる女中も来るようになったが、それも城勤めのお休みの女中がだよ?


 アップルパイは第23章に出てくるので前後するから申し訳ない。



*)アンデッド


 ある日。それは突然に現れた、農家の男は顔面蒼白になって俺の帰りを待っていたな。それも角ウサギの罠にそれが掛っていたから驚いた事だろう。


 俺の罠に不思議な生き物が引っかかった、見るからに気持ちが悪い恰好でだよ。しかも腹の肉は破れ掛けており尚且つただれてもげそうな……? 頭の毛は多めに抜けてバーコードーと言ってはご老人に失礼とは思うが、抜けていない毛は血の混じった水みたいなもので身体に張り付いていた。俺はまだだから関係がないからな。


 バーコードも差別用語だと何故に男は声高に叫べないのかね~情けない、今の世で叫ぶのは強くなった女ばかりなのか?


 これが動いて俺に向かってくるなんて想像しただけで身の毛がよだつ。それを殺してから眼の前にしてしゃがみ込み、死体検分しているのが猫耳のタマだ。こいつ、怖くはないだろうか甚だ疑問である。


「タマ、死んでいるんだよな?」

「あたいは死んでいないニャン! でもご主人さま、これは死んでも動くアンデッドのようですワン。」

「犬の嗅覚がそう言っているのか、お前はつくづく便利な生き物だな。」

「ご主人様、遠くに屠るニャン!」

「あぁ、だな。」


「神官さま……大丈夫ですかね、これからも罠に掛かるのは嫌でございますよ。」

「一応は魔除けの呪文を考えて貼り付けるよ。」

「お願いしますだ。」




 魔物狩りを終えて農家から帰って来てからの事なのだが、異様な臭いがするからと言って勢いよく家に駆け込むタマには驚かされた。


「家にもいるよ?」


 だって俺の家の檻にも居やがったよ、俺は大声で叫んでいた……バーコード反対~~~と。


 このアンデッドは俺の魔方陣を通過するときに偶々絶命したらしいが、アンデッドが絶命しているとは笑わせてくれるぜ。いや、また別な意味で笑えない事も事実だった。


「ぅわ~~~なんでだ~!」


 そうこうしている内にシルフィが帰ってきた。


「あ、ご主人様が帰っているね、魔物小屋かな。」


 俺の声を聞きつけて、


「ご主人様、今日はどうされたのですか?」

「えぇ~と、誰だったか。」

「嫌ですよ折角名前をつけて貰ったのに、もうお忘れとは酷いですよ。シルフィですよ。」

「あ、風の精霊だったな、思い出した。なんだ今日は売り切れだったのか?」


「はい商売繁盛……ですよ。……わ! 臭い。」

「あ~そうなんだ、俺の罠にアンデッドが掛かってな、それがこれなんだ。何か妙案は無いかな。」

「有りませんよ、それよりも早く山に捨ててきて下さい。保存肉がアンデッドになって腐ります。」

「そうなのか?」

「動きはしませんが腐るだけで、仕事で損が出ても?」

「あ、はいはい直ぐに捨てて来ます、うんちと一緒に山の肥やしにしたるわ。」


 俺んちのトイレは優秀だ、有臭じゃないんだよね。魔方陣でうんちとシッコを遙か彼方の谷間に飛ばしているからだ。誰も分け入らない渓谷に俺たちのモノが落ちて転がっているだろう、ま~良くてブタが食べてくれているはず。


 この異世界ではブタは採捕禁止らしいとは知らなかった。当初その意味が分からなかったんだが聞いて唖然としたよ、俺の元の世界とは意味が大きく違うからな。んで逆にネズミは喜んで食べられるとか。人のうんちを食らって大きくなるブタと、大麦を食べて大きくなったネズミはどちらが美味しいのか、ここはアフリカでは無いがネズミが好まれている。


 中近東辺りは古くから豚が食べられており骨が発掘されても、それが養豚の歴史とはならないが紀元前6000年位からは食べられている。その豚さんの習性を利用したトイレも現存しているんだぞ、聞いたら鼻からブーだったかな?……豚さんのウンチはどうなるの?


 うんちを食べさせる動物には鯉もいるね、人のうんちを与えていると成長が格段に早いとか。成長は時間の経過だから早いと言う。今もそうだとは思いたくない……鯉の餌が***だとは。


 これでアンデッドの件は終わって忘れてしまう。この日の風呂は念のために閉店した後に楽しんだ。気分的にも身体が臭うような気がするからだ。


 俺は身体の臭い消しにとあるものを薄めて使ってみたら正解だった。ワインを干して作った酢だな、臭いはきついが殺菌作用で身体はとても綺麗になったよ。



 アンデッドを始末した日はだ、身体を綺麗にしたくてね。


 五時に銭湯を一度閉めた後は一番汚れる床を束子掛けさせているから、それで俺の背中も同時にブラシ掛けをして頂いた。俺の尻は魅力が無いのかエリスは頻りに嫌がっていたよ。


 翌日にエリスは仕事をズルしていたが、俺は通常勤務扱いにしてあのスジャータさんには報告しておいた。他の二人にはしっかりと口止めはビールで行う。現金な奴らだ喜んでお代わりを要求するあたり、流石はスジャータつきのメイドだと関心したもよ。



 この街の遙か西方にケレトーン王国という国が在るが、ここの街に付いてはいい噂がない。だったら逆かよ悪い噂が多いのかよ。


 ケレトーン王都の近くにはブラックマジックの研究をしているアッシュ魔法学園都市が在って、幾つもの魔法学校も在るらしいと。どれもこれも人から聞いた又聞きなんだね。


 黒魔術と言うと悪魔召喚? ないない絶対にないよね。


 その中には人を生き返らせる事が出来る黒魔法が存在するとか、いや無いよねゾンビとか俺は嫌だよ。旅人も良く行方不明になるのは別段不思議にも考えないが、それをどうやって証明しているのかは分からない。街に入る人よりも出る方が遙かに少ないのがその噂の根源かな。


「夏にゾンビは似合わない」だって肉が腐るから。


ただ俺はまだ気づいてなくて異世界に落ちた時に黒い光が見えていたのが、このアッシュ魔法学園都市の国だったとは。この国は数万にも及ぶような魔物を沢山残して消滅した。今では俺を騙してくれたあの女衒以上の情報が錯綜し出して、ようやくロボス王国にも噂が入ってきたのかな。


 商人らの情報網はそんなに大したものではなくて噂に尾ひれが付く程度らしいよ。だから商売敵は死んでもいいからという理屈で、噂を信じない商人は寧ろ死んで欲しいとね。


 何故に怖い噂を知っていながら拡散させないのか、可怪しいだろう? きっと客が毛嫌いするから話せないだけかな、いやいや大事な商機に要らぬ噂話は御法度だね。



 このロボス王国に年に一度の活気が満ちてきた、街をあげての「お勝手祭り」も行われる。昨年はワイバーンの報酬で飲んだくれて俺は出歩く事をしなかったからあまり気にしていなかった。


 俺がワイバーンの討伐をしてからは一度もワイバーンが飛来してこなくなり、それで多くの行商人が葡萄の買い付けに来ている。


 それも近年にはない……大豊作だと評判が立っていたからに他ならない。


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