第1部 異世界転入……俺の冒険
俺が高校で転入するとしたら……先生は教壇で俺の名前を呼ぶも、きっと教室の後ろのドアから入るだろう。それくらい捻くれているのだと思う。テストでは「そんなの分るか!」と書いて怒られる。
「おい聞いたかよ~、すっげ~冒険者が現れたそうだぜ!」
「まてまて違うだろ。俺は剣士だと聞いたんだが?」
「フッハッハッハ~……何を隠そう冒険者とは神官さまだってよ!」
「アホか~、」x2
巷で有名な噂話が、ある日突然にもの凄い冒険者が現れたと噂が立った。
「ならばこの話はどうだ。」
「あ、あ~ドラゴンを喰ったとか、」
「あ!……。」
「当りか!」
「おっといけね~。何でもよ、ドラゴンを十匹も倒したんだと。」
「へ~俺はでかい魔物を二十匹を屠ったと聞いたぜ。」
「なんなんなん、スケルトンをあの細い剣で百匹を骨にしたと聞いたんだが、」
「ホンとかな~。」x3
どだい、最初から骨のスケルトンをあの細い剣で百匹を骨にしたと言うのは、語弊もあろうが本当なんだぜ?
このような真しなやかに街や村に元気を届ける噂が広まっていた。魔物らが減れば荷馬車は活気づき往来が増えて商売が繁盛する。村では冬に備える物資が買えるので歓迎されているし、山や畑で野良仕事も安心して出来ると評判がいい。
「俺は神にでも祭り上げられたのか?」
「神官さま、」
「おう、どうした。」
「すみません、屋根の雨漏りを~……。」
「いいぜ、直ぐに直してやら~。」
「ありがたや、ありがたや~。」
この世界に伝説が生まれた瞬間から俺の人生が始まった。
転入歴元年七月
*)異世界転入と……俺の冒険が始まる
俺には分からない事だらけで人生の再スタートを切る羽目になっていた。ここはマリアナ大陸のロボス王国という国に落ちてしまった、らしいが?
このマリアナ海溝よりも深い……異世界の中に俺は突如として落された。噂こそならなかった俺の地味なスタートから語ろうではないか、嫌だろうが聞いてくれ。いや噂には上っていると?
ある日、とある小さな街が無くなった、村よりも少しは大きい街が。ここには避暑地に向いた美しい湖が在るらしいから街の人口も多くて保養に訪れる観光客も多い。
ここに俺が迷いこんだせいで街が目の前から無くなってしまったんだと、そう思っていた。初めて見るこの世界、街の外のあちらこちらで大きな悲鳴と罵倒する言葉が耳に届いてきた。逃げる方向は街の方ではなくて街道へと走って行くようだ。この人たちは崩れゆく白い壁のようなモノを見て時期に引き返して来る事になる。
偶々なのだろうか、俺の意識が戻った場所が街壁の外だったから、山の木々が消えるのが見えていた。
初めて見る世界が混乱しているのでたじろぐも、街の中心部へ進むにつれて中には暢気に構えた住人もいるような、意外にも往来は差ほど混乱はしていないと思われた。
どちらかといえば自分の脳みその方があたふたとしていた。歩く度に足の裏が痛いから顔が歪んでいたせいか、通行人からは奇異な目つきで睨まれる。いやいや服装が違うからだと少しして気がついた。
優しそうな顔をした人へ適当に尋ねてみると、驚いた顔して逃げていくばかりだ。
「くそ~……誰も俺を相手にしてくれないのか。」
又に力入れて「エイヤッ……と!」一軒家を訪ねてみたら出て来たのが年配で女の人だった。しかし気力だけが空回りして度胸はち~っともありはしない。
「あの~……。」
「はい……何か……旅人さんですか?(汚い形だね~)」
「いえ、いきなり此処に来たんですが何も判らなくて。」
「では何処から来たのかは言えますよね。」
「勿論! 自宅からですよ、寝ていたらこの姿でして……判ります?」
「見ない服の身なりがおかしいわね。異国の咎人でしょうか直ぐに街の憲兵に連れていきますね。ちゃんと身柄を確保してくれますから心配は要りません。」
「とんでもない私は作家志望の老いた人間です、罪人ではありません。」
街の女は俺を奇異な目つきで上から下まで見ていた。人はもっぱら下から見上げるものだが、何故かこの女は上から見てきた。そうだろうそうだろう、「見ない服の身なりがおかしいわね」とか意味が分からない、いや分かるけれどね!
「……。」
「何も持っていませんよ。」
「あんた……靴が必要だね。」
「はい?……あ、そうでした、足が痛いので出来ればお願いします。」
「死んだ亭主の靴さ~ね。なに、気にする必要はないさ。」
少しの間家の奥に引き返した女の人が一足の靴を摘まんで持って来てくれたが、鼻も摘まんできたのはどうしてだ~?
「これ履きな、大丈夫だろうさ。」
「あ、ありがとうございます。」
「これで憲兵の処まで歩けるわよ。」
「いや、それは~、はい一人で行けます!」
この女の人は靴に最強の水虫菌が生息しているような扱い方で俺に差し出す。
この街に俺が迷いこんだせいで街が目の前から無くなってしまったと、そう思っていた。初めて見るこの世界、街のあちらこちらで大きな悲鳴と罵倒する言葉がようやく聞こえてきた。
「おい、どうした……なんだこのジジイはよ。」
「迷い人らしいわね、見ない服装だもの。」
駆けつけた男からも奇異な目つきで睨まれた。男の用件は別であって俺とは関係のない事、それから数人の男たちも集まってきた。
「あれを見てみろ、何だか分らなくてな。白い何かがな。」
「あの白い壁は襲ってくるのかしら。」
「どうした、なにがだよ、」
「ほらあの山の向こうから下りてくる嵐のようなモヤモヤとしたものがよ。それに木々が横揺れしているじゃないかい。」
「どれどれ……レレレ、ホントだ! 砂嵐が来ているのか。」
「バカ言え、ここは湖と四方の森に囲まれているんだ、砂嵐はこね~よ。」
「じゃぁ、あれをどう説明するのかしら。」
「山颪のノッペラさんが下りてくるだけだろう。その証拠におろし金で地面を削って……いなさる!」
「ほれ言わんこっちゃない。妖怪なんかこの世に、」
「……居たんだ~。」x5
所詮、のほほんとして生きてきたであろう老人たち、遠くから聞こえてくる悲鳴は聞こえていないらしい。ま~なんと暢気な!……年金集落か!
「おい、どうした。」
「ほら、あれよあれ。見えているでしょう?」
山向こうの砂嵐のように見えるものが山頂を通り過ぎると、天高く舞い上がる物がハッキリと見えてきた。土色に混じって緑色が多数見えているのは、それって森の木々が舞い上がっていると予想がつく。
「うっわ~……なんだ、何が起こっている!」
「わ、私だって判らないわよ、何処に逃げればいいのよ。」
「だったら反対の方向に逃げれば……もう無理か。後ろも右も左もあの白い壁は襲ってくるようだ。」
「きゃ~……。」
近くでも悲鳴が起きてきた。悲鳴が悲鳴を呼んでいるのだろう、俺の耳にはなぜか良く聞き取れている。その内に轟音も聞こえ出してきて、そうなると右往左往する多数の住人たちが哀れに思えてきたな。
「フン! 何処かへ飛ばされろ。俺と同じだ、様無いな。イテ!」
急いでいた男が俺にぶつかってきて、
「あんたは……確か? ぶつかってすまない。ほら、」
蹌踉ける俺を掴んで立たせてくれたが何かを手渡してくる。
「ありがと、いやこんな老人にぶつからないでくれないか。転んで死んでもおかしくはないんだからな。」
「あんたも早く逃げなよ。死にたくはないだろう。これとこれをやるよ。」
「それはそうだが、どうせが夢だから俺には関係ないさ。」
「それは良かった俺のヘマで~……いや無事を祈っている。あ、あ~剣と袋は別々に………………、」
「要らね~よ……おい、置いていくのか!」
何だか歯切れの悪い言いようだった街の男が言うヘマってなんだろうか。ここでは何も思うところが無かったし、要は気がつかなかっただけだ。
この男がうっかりとして街ごとを亜空の袋に入れる言葉を発してしまったという事実を。
若くて身なりがいい男みたいだが、何かを気にしているようで後ろを見ながら走っていた。直ぐに数人の兵隊さんが俺の目の前を駆けてゆく。現状の惨事は一大事ではないのかな。
街の範囲としては見える場所だけだろうか、丁度この街は盆地であるから見える範囲は四方の山までである。大きくは無い街だから人口はどれ位なのかは不明だ。
ならば住人が生活出来る範囲も狭くて構わない、無理して山を越える生活圏を作る必要もないのだから。この街に産業があるのか気になる処だ。
歳のせいか取り立てて感動もしなくなった俺だが、これから死ぬのかと考えたら少しは自分というものが思い出されてきた。だってパソコンに向かってキーボード入力をしていた時に寝落ちしたように思ったから。
「本当にここは俺が書いている物語の中なのか?」
俺の書くラノベ作品は見向きもされない評価の点数も入らない駄作ばかりで、とある「小説家になろう!」の作者が次々と大手の出版社から声がかかり、それで作家になっていく。そればかりか一握りの者がアニメ作品にまでのし上がって行くのが腹立たしい。墜ちる作家が多いのは気にもならないのは性格か、いや堕ちるにしても先に登る必要があるわな。
「俺は底辺だから落ちる事はない。」
見向きもされない優秀な作品もあるというのに、今の世は何でも異世界モノがモノを言うらしい。少し売れ出したら女の人に手を出して堕ちた男もいるらしいし、莫迦な奴らだよね芸能界も然りだ。
いや待てよ?
堕ちるというのは間違いだ、底辺にいる「小説家になろう!」は最初は見向きもされない底の生き物だから最後まで……だな?
天から蜘蛛の糸が下りてきて、それを掴んで引き上げられるなんて俺には無縁なもの!
途中で蜘蛛の糸が切られた……なんていう人が居たらもう立ち上がれないかもしれない人たち、それは俺に関係がない……様~見ろだわ!
「同類、相哀れむ……。」
だから俺は自分の書くラノベで、あんな成功した者たちを下卑た表現で貶す作品を書き始めた。人のミスを罵って自分の憂さを晴らす、そういった惨めな作品を書き上げようとしていたところだった。
そんなときに寝落ちして目覚めたら此処に立っていたんだ。
……これは天罰だ!
「これって、まさかの異世界転入か~?」
あれこれと思い考えていてようやく脳みそが覚めたらしい。
これでは住民たちが街の中心部に集まる以外は為す術もなかった。じわじわと四方から迫る謎の白い壁、自ずとそうなるのか中心部に集まる群衆心理ってやつ。
高台に在る見張り小屋もとうに飛ばされていて、あの様子を見ればただの嵐では無いとここの全員が思い知ったことだろう。空に舞い上がるのは見えているが落ちる処は見えない、全てが天に向かって消えて行く。
跪いて必死になって神に祈る者もいるが無駄だろうに、……さっさと飛ばされて死んじまえとそう思って見ている。俺の頬にそよ風が当るのが感じとれてきた。
「もうすぐここも阿鼻叫喚、地獄の閻魔さまが神に代って現れるのだ、様~見ろ! これと同じようにあの作家たちも死ねばいい。地獄の猛火に焼かれて死んでしまえ~っ!」
ある日、とある小さな街が無くなった、俺の目の前で無くなってしまったが俺はどうしてか無事だった。綺麗な森と美しい街並み、それに光輝いていた湖が目の前で砂漠のような景色に変わっていて、思い出せないが手に剣と袋を握っている。
荒れ狂う嵐の中で佇んでいたが、自分だけは何ともなかったというこの不思議。確かに台風の風速五十メートルで……馬車も飛んでいくが、俺にはそよ風みたいな感じしかなったという不思議。
「うわ~何だったんだどうして俺だけが生き残って、それにこの剣はいったいどうして持っている。」
薄暗い日中、きっと先ほどの山嵐が巻き上げた砂塵のせいで薄暗いようだ。あんなに晴れ渡っていた空が、暑い日差しが当っていたというのに少し寒いくらいだろうか。
四方を見渡しても何も無い。井戸すら見当たらない、最初から在ったのかさえも判らないが。
「地面が無くなってこの空中に舞う砂塵だ、じきに雨が降ったりして!」
「ザザッ・・・、」
予想した訳ではないのに豪雨となって水が空から落ちてきた。それはほんの三秒だった。みるみる内に水溜まりが~と思ったら今度は元の日差しが戻ってきた。見上げた空には一片の雲もなかったんだから。
「あの湖の水が落ちて来ただけだろう。俺の飯も降ってくればいいのに、そうだよナマズでも降ってくれば食えるかな。」
「イテ!……これで俺に旅へ出ろということらしい。俺をこんな世界に送り込んだ野郎を罵ってやる。イテ、イテテ……なんだこの色とりどりのナマズは~……。」
恨むと言ったつもりが自分が書いていた物語の台詞の、罵るという言葉が口をついて出る。誰を恨むでもない、きっとこれは俺が俺自身をここに送り込んだ事だと思っている。そうとでも考えなければやってられないよ。
「それとも俺をこの世界に召喚した奴がいるのか? もしそうだとしたら何れはご対面になるだろうか。」
俺は神様とやらを信じないからこの現象も絶対に神の仕業であるものか。だが日本人の大多数は仏教の信者らしい。口では無神論と言いながら神社や仏閣にお参りするわ、鳥居には畏怖の念を抱くわ、それだけで信者だと言える。
赤やら白、黒のナマズ。この世界は現世だった錦鯉がナマズに変化しただけの? 不可思の世界、この三色なんかは食っても美味くはなさそう。
「でもよ~こんな沢山の錦ナマズは貰った袋に入りきれないな~。思い出したぜこの剣と頭陀袋は街の人から貰ったんだったっけ。」
ようやく剣と頭陀袋の事を思い出した。俺は綺麗な鞘に目を奪われそうになって剣を抜いてみると、見事な細剣で光り輝いており何でも切れそうな気がしてきた。キチ買いに葉物……なんだこの誤字変換は! 検索してみたら間違い無く「気違いに刃物」が出て来た。
これでは気違いに刃物だよ、俺は出刃包丁を研ぐと近くの草を切る習性がある。
「ま、仕方ないか。食料は必要だし……それに腹も減ってきた。この剣でナマズをおろして料理するか。」
「何でも切れそうな気がする剣でナマズを切るとは俺ながら情けない。しかしこの魚、生で食うには生臭い! 火があれば焼いて食えるのにな。」
大きな石が在ったのでその上でナマズを捌いてみた。三枚におろして皮を剥ぐ。そうなのです、ナマズの皮は包丁ででも捌けないのです。
「このナマズの皮は、こ~やって手の指で挟んで引き剥がすのだよな。塩の代わりに砂や泥で滑り止めの代用として皮を剥ぐ! あ~塩でもあればいいのにな。あ、そうだよこの袋に塩が入っていないかな、膨れているがやけに軽いぜ。」
この袋は大きくはなく、長さはせいぜいが五十センチくらいで底が無い。俺が右手を袋に差し込むも? 手は入る腕も入る。とうとう肩までが入ってしまいそこでこの袋を手探るのをやめた。
この袋はなんだい、何でも収納出来る異世界特有の、
「亜空の袋! か?」
俺は気色万遍になって喜んだ。……喜色満面だったか。
「収納魔法が使えるなんて、最高~!」
アニメに出てくる異次元ポケット、簡単に出し入れが出来てしまう。事実はどうだか判らないが試す必要はありそうだ。
「後でいいか……先に塩が出てくれば良いだけだ。魔力、ソルティソルト!」
最凶の食えない塩が出て来た。指で触れただけでも指先に痛みを感じる程の代物でこれを食ったらイチコロだろう。ソルティと塩の前に付けたからいけないのか、今度は普通に、
「塩よ出ろ!」
「ドバーツ……。」
「アハハ……ナマズの皮にてんこ盛りの塩の山、これはもう食えないな~。でも、ただ塩と叫んだのが悪いのか、ならば……食卓塩!」
ポロ~ンと空中から赤いキャップの馴染みのある物が現れてきた。
「ま、これでもいいか。粗塩が良かったんだが、」
「ドパー……ッ。」
頭に粗塩が降ってきた。やる気も失せるようなハプニングに怒る事もできずに思い悩むしかない。塩が手に入ったので無事にナマズの皮を剥げた。時期に頭皮がヒリヒリとしてくるのは愛嬌だと笑って済まされない、どうかして頭を洗えないだろうか。
「水……ドパーッと頼む。」
「ドパーッ……。」
「使えね~ユックリと降ってこいよ。」
「シャワー……、」
「お、これでいいんだよ。」
無事に洗髪も出来て喜んでいたら現実に引き戻される。
へ~だったらこの袋にのもたき火が入っていたりして~、炎よいで……、いやいやここでそう叫んで袋が燃えたらどうするよ。だったら火ではなくて、
「ここの石、真っ赤な熱い石になれ!」
「ジュワ~……。」
ナマズを並べておいた石が熱くなり、香ばしい匂いを伴ってナマズを焼き上げてくれた。
「オォ~……これは素晴らしいイイ焼き加減だ。食えない程の塩が無ければだが、」
「そういえば塩に包んで焼く、焼き魚料理があったな。あのヤマメを塩で真っ白にした、」
化粧塩……焼き魚で普通は食べない、尾やヒレに分厚く塩を付けて焼くあれだ。オーブンで焼けば全体を塩でまぶす事も出来てしまう。塩の購入代金が勿体ないだろうに。
俺は昔、ホテルいや旅館に宿泊した際に出された料理を思い出した。固くなった塩を潰して払いのけて食べる焼き魚で、魚の全体を化粧塩で包んで焼き上げた料理。今でもこんな調理方法は残っているのかな。
んでナマズは思った程に塩気は付いていない。
「これはいけそうだ!……こりゃ~最高だろう。」
食い意地を張って塩を払いのけて齧り付くべ、このナマズがとてもナマグサイ。ナマズクサイ……、カタカナにすればよく似ている、そんなこんなで焼き魚料理をマスター出来た。
暑い日だったので野宿も大丈夫かと考えていたら寒いのなんの、夜は殊更冷える土地柄なのか、それとも気候が砂漠気候になってしまったのか。
これからの食料調達と言えば、
「砂漠トカゲ、これしかいないとしたら今のナマズは大事にしないといけないか。今更原始時代に戻れるものか~……。」
だが現実は惨いもので生きていく上では食い物は必要なのだから。持っている便利アイテムの亜空の袋に「スパゲッティを出せ!」 と言ったところでミミズが出てくるとは本当に便利である。川が在って釣りをしたい時は重宝するだろう。
アメリカのとある地方はミミズをサラダに加えて食べるそうだ、ウヨウヨとしてウニョウニョと動くミミズを口に入れる。蝉だって食べるお国柄だからいいのか、でも俺は嫌だよ。
バッタ……外国にもの申す事は出来ない、俺だって子供の時は大きな虫を焼いて食していたから。日本ではコオロギの粉末コロッケが高校だったかな、給食としてだされるとか、俺には理解が及ばないよ。女子は知って判って喰えるのか! いや絶対に喰らっていないよね、ね、ね、ね?
翌朝、俺は確かに凍えながら寝ていたと思うが起きたら毛布があって、更には布団までもが俺は身体に被せてあった。……藁なのが笑えない、これが今の寝具だろうから、エサの藁と間違えられて馬に食われないように注意すべき案件かも。
「これで夜は温かくして寝られる。それにしても俺は夢見て寝具を呼び出したのか……悩む~。」
昨日の砂嵐で人々が天に舞い上がって行ったが、何処に消えたのかはもう頭には残っていない。それよりもこれから先の生活が大変なのだと気に病む。亜空の袋に呑み込まれたとか、俺は全く信じていないだけだからね。
「テレビ漫画のような事は出来ないだろうな~、肝心な事は全てがスルーされているから。あれに現実感や生活感を表現しようとしたならば、きっと駄作で世界からあり得ないくらいに無視されるだろう。だがこの現実は如何ともしがたい。誰か……が~居るはずも無し。」
異世界で生きるサバイバルのアニメはあったかもしれないが俺は知らない。だが四十年も過ぎた現在でも漫画はあるような、サトル……少し知っていたかも!
取り敢えずは着る服が欲しい、罪人と呼ばれた衣装は寝間着なんだから。薄い生地で荒野を歩いて転げるだけで破れてしまうし、縦縞が罪人が着る服だとしたら早く着替えを用意すべきだろう。
「俺がこの街に落ちて来たから災害が起きた……って、まさしく異世界転入……のテンプレじゃんか!」
この先はどなることやら、トホホ方~!
「ホー……ホホ、ホー。」
どうしてフクロウが鳴いている。
遙か彼方に一筋の黒い光が落ちるのが見えた。いや黒い光は存在しないから天を覆う黒い雲が強い雨を伴って嵐のように降って来たのか。俺の時が白で他にも黄色とか黄金色とかあるのかな、あの黒い何かは消えずに見えているのが気になる。
ラノベの書いている貴方、黒い光が~……って書く貴方! これはありえまへんで~。