帰り道には気をつけて。
皆様も帰り道にはお気をつけください。
バリッ!!ボリボリ…くちゃくちゃ……。
何の音だろうか。
俺は普段通りの会社帰りにこんな音を突然耳にした。
それは暑い夏の日の深夜2時。
久しぶりに仕事終わりに友人と飲み…そして気分転換、酔い醒ましにと思い俺は一人、ふらふらと家を目指していたのだ。
つまり…帰り道。
◇
◇
◇
俺の名は『三上智也』どこにでもいるごく普通のサラリーマンなのだ。
彼女いない歴三十年のもっぱら好きな事はアニメを見る事。
そして実は俺が見るアニメにはホラーが多い。
世の中のありとあらゆる不可思議な話が大好物だったのだ。
そう…この日まではね。
◇
◇
◇
「はぁ〜ちょっと飲みすぎたかな?」
同僚と分かれた俺は一人ふらふら歩く。
千鳥足というものがこの世には存在するけどまさにその状態。
かなりの酔いに俺はとうとう家まであと少しの場所にあるこの公園のベンチに座り込んでしまったのだ。
「ふぅ~家まであと少しだしここで少し涼しい風に当たっていくか。」
俺はそう呟くとサラサラとどこからとも無く気持ちいい風が俺の頬を撫でていく。
「ほんとに気持ちいいな。」
風に吹かれ俺はあまりの心地良さにベンチに寝転んでしまう。
「よっ!はぁ〜ほんとにここは特等席だな!風が気持ちいいや。」
俺はあまりの気持ちよさに次第に目も虚ろに、そしてそのまま眠りについてしまったのだ。
暗い公園内…とても静かで静寂と化した。聞こえるのは虫の声と風がそよそよと吹き草木を揺らす音だけだ。
(静かだな。)
俺がこの心地良さにふけっているとどこからとも無く何かを咀嚼している音が聞こえてくる。
くちゃくちゃ。
(ん?何かを食ってる音?犬でもいるのか?)
んちゅ、、、くっちゃくっちゃ。
(人がせっかく気持ちよく寝てんのに邪魔すんなよな。)
そう思った俺だったけど頭は酔いでボーッとし一度閉じた目は中々開いてくれない。
それでも止まない咀嚼音。
バリバリ…くちゃっ!ぺっ!
「うわっ!?」
咀嚼音の次に聞こえたのは何かを吐き出した音。
その音と同時に俺の顔には生暖かい…そう…唾でも顔に吐き出されたかの様な嫌悪感。
そして風で吐き出された物の匂いが俺の鼻を刺激する。
「なんだ!くさっ!!生臭い!!」
俺は意を決しムクっと思いきり起き上がる!!
そして俺の目の前にはおぞましい何かが存在したのだ!!!
「う!うわぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」
俺は驚きの声を上げる!!
身体中がガタガタと震えだし声まで中々出なくなってしまった俺。
明らかに犬!とは異なるその姿。
人間でもなく犬でもない。
その姿は妖怪?とでも言うべきか。
俺はこんな時に限りこの目の前の存在が何であるか?
の情報すらも頭には浮かんでこず只々恐れの気持ちしか今は感じる事が出来なかったのだ。
そんな中。
そいつは俺の手を握ってきた。
その力はとてつもなく強力なもので俺の右手はがっしりとその何かに捕まってしまう。
「はわわわ…………。」
気の利いた言葉を言った訳では無い。
この状況では人間はまともに声は出ないらしい。
俺はやつを、見ていると次の瞬間。
俺の右腕に強烈な痛みを感じ口から声が漏れてしまう。
ガブリッ!!!!!
「うがぁぁぁーーーーーーっ!!??」
そう…その者が俺の右腕に噛みついた強烈な痛みで大声で叫んでしまう。
そいつはそのまま俺の腕を引きちぎろうと噛み付いた腕を引っ張り続ける!!
その痛みは声にもならない程だった。
そして俺が悶えているとふとその者は思いきり更に噛み付く力を強める!!
その瞬間!!!
ブチィィィーーーーーッ!!!
「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!!!」
俺の右腕はそいつによって噛みつかれそのまま引きちぎられてしまったんだ。
俺の右腕はその何かに食われている。
今度はあの咀嚼音は俺の腕を食ってる音に切り替わっている。
「はぁはぁ…う……腕がぁぁっ!!!痛い!痛いっ!!!」
俺は思わず左手で右腕を押さえようとするも明らかにあった右腕はもうそこには無く俺は身体を起こそうにもそうはいかなかったのだ。
そして何より引きちぎられた俺の肩は激痛なのだ。
「ああ…このままじゃ…ヤバい…痛い…痛い。」
必死に逃げようとするも右腕のない俺は上手く立てそうもなかったのだ。
すると再び奴は俺に覆い被さるように身体を上から抑えにかかる。
そして奴は先程から俺の左足を眺めている。
逃げようにも逃げれない俺の左足に奴は牙をむく!!!
ガブリッ!!!
今度は奴はその凶暴な牙で俺の左足の太ももに噛み付く!!!
「うぎゃぁぁぁぁああああーーーーっ!!」
こうして俺は何度この断末魔の叫びを上げ続けるのだろう。
そう思うととても恐ろしかったのだ。
やがて…俺は………。