第九話 武神カルロスの思い
真斗達とアルゴスは、カルロスが住む掘建て小屋に来ていたがカルロス本人はいなかった。
「真斗、わしは、周辺を探してみるから待っていてくれ」
「わかりました」と真斗が返事をするとアルゴスは、竜人のまま外に出て飛び立った。
流唯とリアは、ここに来るまでに仲良くなっていた。
二人がおしゃべりをはじめると繭は、窓から部屋の外を眺めていた。
何気なく見ていると何か光るところが見えた。
あれ、何かあるのかなと繭は思って、真斗に声をかけた。
「お兄さん、窓の外を見てよ」
「えっ、何が」と返事をしたあと真斗も窓の外を見ると光るものが見えた。
「なんだろうあれは、何か光っているね。ちょっと、見て来るよ」と言って真斗は小屋の外に出た。
繭も、「私も一緒に行くよ」と言って一緒についてきた。
真斗達が光るところまで行くと人が、かかんで入れるぐらいの洞窟があった。
光は洞窟の中から光っていた。
「繭、この中から光っているよね」
「そうね。この中っぽいね」
「入ってみようよ」と真斗が言うと繭も頷いた。
真斗と繭は、洞窟の中に入って行き、光るところまで行くと銀色のペンダントが光っていたのだった。
銀色のペンダントは、小さいテーブルの上に置いてあった。
テーブルの周りには、花や飾り物が色々と飾ってあった。
まるで、何かを祀っているようだった。
真斗がペンダントを手に取ると「ピカッ」と更に輝き出し、周りが光に包み込まれたのだった。
二人は、あまりにも眩しくて目を瞑った。
その頃、遠く離れていた森林の奥にある湖にカルロスがいた。
カルロスは、銀髪の髪をしてガッツリした肉体だ。まるで天使のように背中に白い翼が生えている。
カルロスは、体がなまるのを防ぐため鍛錬していた。
「ハッァー」と剣を振ると湖が一瞬、割れて滝のようになった。
何回か繰り返して鍛錬していると「なんだ」と何か感じた。
「これは、まさか、ペンダントの側にメサイアがいるのか」とつぶやいた。
カルロスは、急に輝き出したペンダントの光を感じとっていた。
ペンダントは、メサイアを感じて光ったのだった。
カルロスは、白い翼を大きく広げ森林から飛び立った。
そのとき、アルゴスも、光りを感じとって「何があったんだ」と思いながら、Uターンして小屋に戻ることにした。
真斗と繭は、目を閉じていたがメサイアの心が映像化したように脳裏に浮かんだ。
カルロスとメサイアの思い出が流れるように映ったのだった。
二人は、生涯共に過ごすことを誓った様子も映し出されていた。
真斗と繭は、黙って二人の思い出を見ていたのだった。
その頃、アルゴスが小屋に戻ろうとして飛んでいると斜め上にカルロスが飛んでいるのが見えてきた。
「あっ、あれは、カルロス」
「おーい、カルロスー」とアルゴスが大声で叫んだ。
「ん、なんだ」とつぶやいき、カルロスは下を向いて空中で止まった。
アルゴスは、上昇してカルロスのところに追いつくとカルロスが声をかけた。
「アルゴス、何故、お前がここにいるんだ」
「カルロス、お前を探していたんだ。何処に行くんだ」
「小屋に戻るんだ。小屋の近くでメサイアを感じたんだ」
「そうか、真斗だな。カルロス、お前に会わせたい子がいる」
「私に会わせたい子だと、誰だ」
「会ってみれば、わかるよ。さぁ、行こう」とアルゴスは言って二人は、小屋に向かった。
真斗と繭は、光に包まれていた。しばらくして、光の輝きが消えかかると二人は閉じた目を開けた。
「一体、なんだったんだろう」
「本当、お兄さん」
「繭、大丈夫か」
「うん」
「繭、このペンダントは、メサイアの物だ」
「メサイアさんの」
「あぁ、わかるんだ。このペンダントには、メサイアの思いが一杯、詰まっている」
「そうなの。きっと、大切にしていたのかもしれないね」
「そうだな。あっ、アルゴスが戻って来るぞ」
「わかるの」
「あぁ、しかも、もう一人いるな。誰だろう。とにかく、小屋に戻ろう」
「うん」と繭は返事した後、真斗はペンダントを握った。
二人は後ろ向きのままバックして洞窟を出て、そのまま一緒に小屋に戻った。
小屋の中では、流唯とリアは、「キャッキャ」と言いながら、おしゃべりしていた。
真斗と繭が楽しそうに二人が話している様子を見ていると「ドン」と外から音が鳴った。
真斗は、アルゴスが地上に降りたのだろうと思った。
「真斗、帰ったぞ」とアルゴスが小屋の中に入ってきた。
アルゴスの後ろからもう一人、入ってきた。
そのもう一人というのが武神カルロスであった。白い翼がある天使のような姿で入ってきた。
いずれ、真斗が国を治めるとき、この二人が真斗の守護神となる二人であった。
いずれ、この二人が武勇の双璧と伝えられることになる。
真斗は、カルロスと目が合うと声を出した。
「あの、僕、真斗といいます。カルロスさんですね」
「そうだ、・・・、あぁ、何ということだ・・・、この感じ、メサイアだ。でも、なんでだ」
「カルロスさん、メサイアは僕の中にいるのです」
「なに、まさか、何故だ」
「わかりません。だけど、本当です」
「そうか、この感じ、まさにメサイアだ。そうか。うっうっうっ」とカルロスは、椅子に座り込んで涙を流し始めた。
真斗は、ペンダントをカルロスに差し出して言った。
「これは、メサイアさんとの思い出が一杯詰まったペンダントですね」
「あぁ、そうだ。メサイアの形見でもある」
「カルロスさん、メサイアさんも、カルロスさんとの思い出は、一杯あったと思います。メサイアさんの心が言っています」
「本当かね」
「はい。メサイアさんは、あなたと出会えたことに感謝していました。幸せだったという気持ちを感じます」
「そうか、ありがとう」
「いいえ」
「だが、君の中からは片割れしか感じないな」
「はい、僕の中には、時の瞳があります」
「もう片方は」
「わかりません」
「そうか。少年よ。ありがとう。だが、君は、この世界の人間ではないな」
「はい」
「何故、この世界にいる」
「わからないのです。だけど、元の世界に戻れなくて、困っています。こんな世界にいたくないんですけど」
「君達は、何が遭った」とカルロスが聞くと真斗は今までのことを話した。
「そうか、酷い目に遭ったのだな」
「カルロスさん、僕達は、元の世界に戻りたいんです。どうすれば」
「もう片方の瞳があれば、元の世界に戻れると思うのだが」
「もう片方の瞳って、そんな力があるのですか」
「あぁ、時空の瞳と言われるメサイアの瞳だ。時空を越え、世界間の転移も、できると思う」
「それじゃ、時空の瞳を探せばいいのですね」
「そうだな、だが、この世界にはないと思う。メサイアを感じないからな」
「えっ、じゃあ、元の世界に戻れないのかぁ、結局、この世界にいるしかないじゃないのか」と真斗は、ガッカリした。
「大丈夫だ。もう片方は必ず君のところに現れる」
「本当ですか」
「あぁ、必ずだ」
「そうだといいんですが、僕は妹達を守りたいんです。誰にも邪魔されない平穏な生活をしたいんです」
「平穏な生活か、今の君達には厳しいだろうな。この世界は酷いところだよ。酷い目に遭って、わかっただろう」
「はい、貴族なんて糞食らえだ」
「人間は、愚かだよ。この世界の人間も、また醜い」
「カルロスさん、どうすれば、いいんだろう」
「私は、この世界の人間とは関わらないようにしてきた。だから、この世界のことはわからない。だが一人だけ、いい男がいる。彼なら、何か教えてくれるかもしれないな」
「いい男って」
「あぁ、ラティスという男だ。この世界の人間だが、唯一、私の飲み友達だよ。少し若いんだが彼なら教えてくれると思うのだが、少し・・・」
「えっ、何か、問題でも」
「彼は、変わり者でね。君と会ってくれるかどうかだな」
「カルロスさん、その人と会わせてくれませんか」
「うーん・・・、わかった。じゃあ、今直ぐ、ラティスのところに行ってみよう。近くに住んでいるんでな」とカルロスは言って、小屋の外に出た。
真斗は、カルロスと一緒に行き、アルゴス、流唯、リアは小屋に残った。
繭は、真斗と一緒に行くのを迷ったが結局、真斗についていった。
三人は、しばらく、森の中を歩いた。真斗とカルロスは話しながら歩いて行くと小屋が見えてきた。
カルロスは、小屋の玄関まで行き「ラティス、いるか」と大声で叫んだ。
しばらくして、ラティスが出て来た。
「やぁ、カルロスじゃないか」
「やぁ、ラティス」
「どうしたんだ。また、飲みたいのかい」
「いや、今日は、会わせたい子がいるんだ」
「珍しいな、カルロスが人を連れて来るなんて、だけど、会わんよ。帰った。帰った」とラティスは、真斗を見るなり有無も言わず、真斗達を追い返した。
「ほら、こんな感じだ。一旦、帰ろう」
「本当ですね。何故、会ってくれないのだろう」
「私には、ラティスが考えていることは、わからんよ。彼も私と同じで、関わりたくないのだろう」とカルロスは話し、三人はカルロスの小屋に戻った。
真斗達は、カルロスの小屋に泊まることにした。皆んなで小屋の片付けをした。
なんとか、泊まることができる状態になってから、真斗は、明日、もう一度、ラティスのところに行こうと思っていた。
翌日の朝、真斗とカルロスはラティスの家に向かった。
ラティスが滞在している小屋に着くとカルロスが叫んだ。
「おーい、ラティス」と叫んでも返事がなかった。
「おかしいな、いないのかな」
「カルロスさん、家の中にいますよ。居留守をしています」
「真斗には、見えるのか」
「はい、また、出直します」と真斗は言った。
真斗は、三国志でも三顧の礼で孔明を仲間になったんだ。もう一度、来ようと思いながら、一旦、真斗達は帰った。
昼になり、真斗とカルロスは再度、ラティスの家に来て、声をかけたが返事はなかった。
「真斗、どうする」
「なんか、ムカついてきたよ。カルロスさん、会ってくれるまで通うよ」
「はっはっはっ、そうか。なかなか根気があるな真斗は」とカルロスと話しながら、二人はカルロスの小屋に戻ったのだった。
その頃、現代世界では真斗が消えてから、三日が経っていた。
ここは、学校の教室で、朝のホームルームが始まる時間だった。
「今日も、神くんは休みかぁ、誰か知らないか」と先生が聞くと「誰も知らない」と生徒達は返事をした。
「先生、私、神くんと家が近いから、帰りに見てきましょうか」と樫井梨奈が言った。
「それは、助かる。電話しても誰も出ないんだ。樫井、頼めるか」
「はい」と梨奈は返事をした。
クラスメイトの男子から小言が聞こえた。
「何で、樫井さんがあいつの家に行くのかなぁ」と話していた。
梨奈は、男子の小言も気にせず真斗のことを心配していた。早く学校が終わって真斗の家に行きたかった。
学校の授業が終わり、梨奈は帰り支度を急いで用意していると一人のクラスメイトである塚田が梨奈のところに来た。
塚田は、イケメンで女の子にモテる。だけど、いつも、真斗に絡んでるクラスメイトの一人だ。
そんな、塚田くんが何故、私のところに来たのと梨奈は、思っていた。
「ねぇ、樫井さんって、なんで、あんなやつのことを気にかけているんだ」
「そんなの、あなたには関係ないじゃない」
「樫井さん、あいつのこと好きなのか」
「そんなこと、あなたに言う必要はないわ」
「そうもいかないよ」
「なんでよ」
「俺、樫井さんが好きだからさ、俺と付き合ってよ」と塚田が答えると周りからは、クラスメイトの声が聞こえてきた。
「おー、塚田、ついに告ったよ。ヒュー、ヒュー」
「仕方がないよ。樫井さん、凄く可愛いからな」
「塚田くんが樫井さんに告るなんて、ショック」と他の女子生徒が喋っていた。
梨奈は、周りを気にせず、はっきり言った。
「私、あなたと付き合う気ないわ。あなたのこと嫌いよ」と梨奈が答えると「なんだって」と塚田が言った。
周りからは、「塚田くんを振るなんて」「樫井さん、可愛いからって天狗になっているんじゃないの」と聞こえてきた。
「樫井、少し可愛いからって、いい気になるなよ」
「私、塚田くんには興味すらないから」と梨奈は言った。
「なんだと」
「梨奈、こんな奴、ほっといて早く行きなよ」と仲のいい友達が助け舟を出してくれた。
「ありがとう。さやか。私、帰るね」と言って直ぐカバンを持って、教室を出て行って行った。
周りのクラスメイトは、教室を出て行く梨奈を睨みつけていたが、さやかは手を振っていた。
梨奈も、さやかに手を振って出て行った。
梨奈は思った。
ほんと、今のクラス、嫌よ。
真斗くんに嫌がらせをする男子も多いし、嫌な生徒が多いなと思いながら走って行った。
あぁ、真斗くんに会いたい。
彼に会うとなんかホッとすると思いながら真斗の家に向かったのだった。




