第八話 氷の魔女との出会い
アルゴスは真斗達を乗せて、武神カルロスが生息しているという村に向かっていた。
真斗は、風が気持ちがいいなと思いながら、昨日、会ったリーディアのことを思い出していた。
リーディアは、やっぱり何処かの貴族お嬢様なんだろうなぁ。爺やが探していると言っていたから。
でも、凄く綺麗な子だった。梨奈ちゃんは可愛い系だけどリーディアは美人さんという感じだった。
彼女の裸を見てしまったけど、申し訳なかったなと思っていた。
しばらく、飛んでいると村らしきところが見えてきたため、アルゴスが真斗に声をかけた。
「真斗、カルロスがいる村が見えてきたぞ。確か、この村にいるはずだ」
「そうなんだ、ここにカルロスさんがいるんだ」
「そうだ、とにかく、村に降りるぞ」とアルゴスは答え、ゆっくりと降下していった。
地上の近くまで降下するとアルゴスは村の手前辺りで降りて真斗達を下ろした。
アルゴスの後方からは、一緒に飛んできたメルキア、アルバン、ブルーディアも降りてきた。
アルゴス、メルキア達は、光輝き竜人の姿に戻った。
「真斗、この村の外れたところに武神カルロスがいるはずだ」
「ここに、カルロスさんがいるのですか」
「あぁ、さぁ、とにかく行こう」とアルゴスは言って真斗達は、村に入って行った。
真斗達が村に入ると村人が集まっているところが見えた。人が集まっているところまで行くと広場みたいなところにきた。
村人達は、走りまわって騒いでいた。
「皆んな、急げ」「皆んなを集めろ」
「魔女狩りだ」「魔女を殺せ」と叫んでいた。
真斗は、魔女を殺せだって只事ではないなと思うと村人達に話しかけた。
「あのぉ、皆さん、どうしたんですか」
「魔女が出たんだ。しかも、魔女の周りは全て凍らせてしまうんだ」
「全てを凍らせてしまう魔女ですか」
「そうだ、近くにいた動物は全て凍ってしまったよ。周辺の木なんかも全てだよ。とにかく、恐ろしい魔性の少女だよ」
「魔性の少女ですか、その子は、白髪の少女ですか」
「そうだよ、なんで知っている」
「あっ、いえ、なんとなく」
「お前達、この村の人ではないな、まぁ、いい、とにかく恐ろしい魔女だ。だから、退治するために皆んなが集まっているんだ」
「その少女は、何処にいるのですか」
「この少し先の屋敷にいるんだが、近づくものは凍らせてしまうから近づけないんだ。お前も気をつけた方がいいぞ」
「そうですか、わかりました。それでは」と真斗は言って村人達と別れた。
真斗は、少女がいるという屋敷に行ってみようと思った。
「皆んな、少女がいる屋敷に行こうと思うんだ」
「何をするの、お兄さん」と繭が聞いた。
「魔女と言われる少女のところに行こうと思っているんだ」
「危険だよ。お兄さん」
「そうだよ、お兄ちゃん」と流唯も言った。
「予知夢というのかな。その少女が夢の中に出て来たんだ。とても、悲しんでいた。泣いていたんだ」
「また、お兄さんの不思議な力のおかげなの」
「そうかもしれない。だから、少女を助けてあげたい」と真斗が言うとアルゴスは答えた。
「真斗、とにかく行ってみよう。もしものときは、わしが守るから大丈夫だ」
「ありがとう。アルゴス」
「真斗様、私達も守りますよ」とメルキア達も話した。
「ありがとう、メルキア」と真斗は答え、少女がいる屋敷に向かって歩いて行った。
屋敷の近くまでくると周りは、全て凍っていた。
木とか、木に止まっていた鳥、近くにいた虫達なども全て凍っていた。
真斗は、すざましいなと思って周辺を見て屋敷の方に向かった。
少女がいる屋敷の前まだ来ると、壁、屋敷自体も凍っていたのだった。
凄い、本当に全部、凍っている。これも、少女の力なのかなと辺りを見渡した。
「真斗、少し離れてくれるか」とアルゴスは剣を抜いた。
「アルゴス、何するの」
「まぁ、任せろ」とアルゴスが言うと目を瞑った。
アルゴスは、小声で何か言い出すと剣に炎が発生した。炎を屋敷の上空目掛けて投げ打った。
炎は、屋敷の上空で止まり、太陽のように円の形で燃え出した。
屋敷の上空から熱による温度で凍っていた屋敷も溶け始め、木や壁も溶け始めたのだった。
真斗は、驚いて叫んでしまった。
「おお、凄いや、アルゴス、さすがはだよ」
「そうか、もう少し待っていてくれ」とアルゴスは言った。真斗達は段々と凍った屋敷が解けるのを待っていた。殆どが解けるとアルゴスが言った。
「もうこれで、屋敷に入れるだろう」
「そうだね。大丈夫そうだ」と真斗は答え屋敷に向かって歩いた。
真斗が入り口まで来るとドアの取手がまだ凍っていたがアルゴスが取手を握ると溶け出した。
アルゴスはドアを開けて、真斗達は中に入った。
屋敷の入り口当たりで真斗は上を見上げて「この上か」とつぶやき階段を登った。
繭は、また、不思議な力でわかるのかなと思いながら真斗について行った。
真斗達が屋敷の奥に行くと部屋があった。部屋のドアは凍ったままだった。
アルゴスは、部屋の入り口まで行き部屋のドアに両手をあてた。
「ハッハァー」と声を出すとアルゴスの体から炎を出し凍ったドアが溶け出した。
アルゴスが炎を消すと部屋の入り口が「カチカチ」とまた凍ってきたので、メルキアが「私がやりましょう」と声をかけ、アルゴスと同じことを行った。
解けた部屋のドアが開けることができるようになり、真斗はドアを開けて部屋の中に入った。
真斗達が部屋の周りを見ると全て凍ったままだった。部屋の奥にはベットがあり、ベットの上には白髪の少女が一人座っていた。
少女は、繭より下で流唯より少し上ぐらいの年齢だろうか、ベットの上で泣いていたのだった。
真斗が少女に近づくと「ギシッ、ギシッ」と音がなり、少女の周りを更に凍らす音が響いた。
アルゴスは、真っ赤になり自分の体を高温にすることで凍っていた周辺を溶かしていった。
「ねぇ、お兄さん、危ないよ」
「大丈夫だ、繭」と答え、真斗は、少女に声をかけた。
「ねぇ、君、なんで泣いているの」
「・・・」と少女は何も答えなかった。
「ねぇ、君、どうしたのかな」
「・・・」と少女は何も答えてくれない。
「大丈夫だよ。僕達は、君の力になりたいんだ。だから、安心してほしいんだ」
「・・・」と少女は答えなかったが、真斗を見た。
「大丈夫だよ。安心して、君の名前を教えてくれないかな」と真斗が優しい顔をして和やかに話すと少女は返事をした。
「私、リア、あなたは、誰、また、私を殺しに来たの」
「いや、僕は真斗、リアを殺しに来たのではないよ」
「じゃあ、何しに来たの」
「君と仲良くなりたくて来たんだ」
「私と仲良く、ウソ、私を殺しに来たんでしょ」
「違うよ。リア」と真斗が言うとリアが受けた村人からの暴力と村人に両親が殺されたことが真斗の脳裏に浮かんだのだった。
あぁ、なんていうことだと真人は思いながら話した。
「リア、君が村人から受けたことが見えたよ」
「えっ、見えたって」
「お母さん、お父さん、そして、弟さんが殺されて、君も石を投げられていたことが見えたんだ。僕も、とても悲しくなったよ」
「なんで、わかるの」
「僕には、わかるんだ。ここは、悲しい事が多すぎる。リア、僕達と一緒に村を出ないか」
「村を出るって、私は一人になりたいの、帰って」
「いや、帰らない。リア、君をほっておけないんだ。君を助けたいんだ」と真斗は言ってリアを抱きしめた。
「お兄さん、危ないよ」と繭は叫んだ。
「多分、大丈夫だ」とアルゴスは繭の肩に手を置いて言った。
「・・・」と繭は手を合わせて黙って見守ることにした。
リアは真斗に抱き寄せられて驚いていた。
「何故、私に触れたのにお兄さんが凍らないの」
「そんなことは、どうでもいい。僕と一緒に行こう」と真斗は強く抱きしめた途端、真斗の体が赤く光出した。
リアは驚きながら声を出した。
「えっ、これなんの光」
「シー、ジッとしていて」と真人は答えた。
「お兄さん、なんか、暖かいよ」とリアから涙がこぼれ落ちた。
「うっうっうっ」とリアは更に泣き出した。
真斗は、リアをしばらく抱きしめると凍らす音が消えた。アルゴスも熱を出さなくても凍らなくなったのだった。
真斗は、リアと離れ、もう一度、リアに聞いた。
「リア、もう、大丈夫だよ」
「えっ、大丈夫って」
「リアは、悲しみのあまり、力が暴走していたんだよ。少し、安心したことで暴走が止まったんだ」
「・・・、力の暴走」とリアはつぶやいた。
「ん、まさか」と真斗は声を出した。
「どうしたの」とリアが聞くと真斗は黙っていた。
真斗は、これからのことが見えた。
凍った屋敷が溶けて、村人が押し寄せてリアを殺そうとしたことが見えたのだった。
早く、ここを離れなければと真斗は思った。
「リア、一緒に行こう。ここは悲しすぎる。村人が来るからすぐ離れよう」
「えっ、どうして」
「とにかく、出よう」
「うん」とリアは返事をしてベッドから降りた。
リアは寝巻きのままだったので、真斗は繭と流唯に言った。
「繭、流唯、彼女の着替えを手伝ってくれるかな」
「わかった」と二人は返事をして着替えを手伝った。
リアの着替えが終わると真斗はアルゴスに声をかけた。
「アルゴス、この村の外れまで連れて行ってくれないか、すぐ、村人が押し寄せてくる」
「わかった。皆んな、外に出てほしい」と言って、アルゴスは窓から飛び降りた。
アルゴスは、擬態した姿から竜に変化した。
リアは、驚いた顔をしていたが真斗は話した。
「大丈夫だよ。さぁ、行こう。村人達が来る前に」と話した。
真斗達は、階段を降りてすぐに外に出た。
繭、流唯もアルゴスに乗って、真斗もアルゴスに乗った。
真斗は、笑顔でリアに手を差し出した。
「さぁ、おいでよ」と真斗はリアに声をかけた。
リアも「うん」と返事をしてニッコリとして、真斗と一緒にアルゴスに乗った。
アルゴスは「さぁ、行くぞ。しっかりと捕まれ」と言い一気に空へ舞い上がった。メルキア達も竜の姿に戻り、一緒に空へ飛んだ。
屋敷の上空に行くと村の様子が見えた。村人達が屋敷に向かって走ってきているのが見えたのだった。
真斗達は村の上空を越え村の外れたところに向かった。真斗達が飛んで行ったあと村人達が屋敷に押し寄せてきたのが真人には脳裏に浮かんだ。
「魔女を探せ」「魔女を探すんだ」と叫び少女を探していたようだった。
村人達は、少女がいないため諦めて帰って行った様子が見えたのだった。
そのあと、真斗達は、少しの間、飛んで村の外れまで来ていた。
村の外れに一つの掘建て小屋が見えていた。
「さぁ、着いたぞ」
「ここに武神カルロスがいるの」
「そうだ。さぁ、降りるぞ」とアルゴスは答え、小屋の前で降りると真斗達を降ろし竜人の姿に戻った。
真斗達は、ここに武神カルロスがいると云われている場所なのかと思ったが、小屋の周辺は荒れていて、しばらく誰も住んでいる感じではなかった。
とても、武の神と言われるカルロスがいるような雰囲気ではなかった。
「アルゴス、本当にカルロスさんは、ここにいるんですか」
「あぁ、いるはずだ。カルロスは引きこもっていたからな」
「アルゴスは、カルロスさんといつ会ったの」
「覚えていない。最後に会ったのは、十年以上も前だと思う。その時は、一緒に酒を飲んだ」
「そんな、前なの」
「そうだなぁ、さぁ、入るぞ」とアルゴスは小屋のドアの前に行き、ドアを叩いた。
「トントン」とアルゴスはドアを叩いた。小屋の中からは何も応答がなかった。
「おーい、カルロス」とアルゴスが声をかけても返事はなかった。
「ねぇ、アルゴス、誰もいないのかなぁ」
「そうだな、カルロスは、ここを離れないと思うのだが」と言いアルゴスはドアに手をかけた。
ガチャと音が鳴り、ドアに鍵がかかっていないことがわかった。
「鍵がかかっていない。カルロス、入るぞ」と言って小屋の中に入った。
小屋の中には、カルロスはいなかった。
真斗達も、小屋に入り周りを見るとテーブルがあるだけで殺風景な部屋だった。
何もなく、しばらく誰も住んでいない感じだった。
「フー」とアルゴスは、溜め息をついた。
カルロスよ。いったい、何処に行ったんだと思っていたのだった。




