第六話 竜神アルゴスの過去
真斗達は、アンテウルス山脈の奥深くまできた。目の前には、大きい黒光りの大きいドラゴンがいた。
真斗はドラゴンを見ながら、この大きいドラゴンこそがアルゴスだと思った。
そのドラゴンをジッと見つめているとアルゴスは、真斗達に気がついた。
アルゴスは、何故、人間がと思い怒鳴るような大声で怒鳴った。
「何故、ここに人間がいるのだ」と叫ぶと強い風が発生して、真斗達は飛ばされそうになった。
真斗は、近くの岩に捕まり、繭と流唯は真斗に捕まって飛ばされるのをこらえた。
風が止むと真斗は、アルゴスの前に立ち答えた。
「あなたが、アルゴスさんですか」
「いかにも、わしがアルゴスだ」
「僕達は、あなたに会いに来ました」
「わしに会いに来ただと、お前は、何故、わしの名前を知っている」
「僕はメサイアの声を聞いて、ここに来たんです」と真斗が話すとアルゴスは、「なんだとぉ」と驚きながら真斗をよく見た。
「メサイア様だと、何故、お前はメサイア様を知っているのだ。んっ、この感じはなんだ。何故、お前にメサイア様を感じるのだ」
「メサイアは、僕の中にいるんだと思う」と真斗が答えるとアルゴスは、真斗をジーと見て話し出した。
「お前は何者だ。ただの人間ではないような気がする」
「僕は、ただの人間です」
「そのはずはない。お前の名前は」
「僕は、真斗といいます」
「んー、そうか、真斗、お前は、この世界の人間にはないな」
「はい、この世界に飛ばされてきたのです」
「もしや、なるほど、メサイア様の持つ時空の力か」
「時空の力ってどういうことですかアルゴスさん、それと、メサイア様とは、一体、何者なのですか」と真斗が聞いた。
「お前は、メサイア様を知らないのか」
「はい、だけど、メサイアの声は聞こえます」
「なに、メサイア様の声が聞こえるだと」とアルゴスは答え、一度、目を閉じてから再度、目を開けた。
「メサイア様は、女神様だ」
「えー、女神様だって」と真斗が叫び、繭、流唯も驚いた。
「そうだ。時を管理し、異なる時間、異次元の世界を管理する時の番人と言われている女神様だ」
「女神様なんて、本当に実在したんだ」
「実在する。君達が、この世界に飛ばされて来たこと事態が証拠だろう」
「あっ、そういえば、そうだ」
「世界は無数に存在する。このわしも、この世界のドラゴンではないからな」
「アルゴスさんも、異なる世界から来たのですか」
「そうだ」
「なぜ、アルゴスさんは、この世界に」
「少し、わしの昔話をしよう」とアルゴスは自分のいた世界のことを話し出した。
元々アルゴスは、天界に住む竜人だった。神の命令により、人間と竜人族が住む世界に行き監視していたのだった。
その世界では、アルゴスは竜神と崇められ、その世界の王でもあった。
いつの日か、その世界の人間達は竜人族を差別化し虐待し始めた。
この人間達は、アルゴスの側近や、領地を持つ竜人族を騙し内乱も起こさせ、滅ぼそうとしたのだった。
人間達は、アルゴスの妻、子供も、竜人族も、皆んな殺されたということを話したのだった。
真斗と繭、流唯は、なんて酷いことをしたんだと思いながら、アルゴスの話しをしんみりと悲しみながら、黙って聞いていた。
「そして、わしは、怒り狂い、全ての人間を殺してしまった。わしが、その世界の全てを破壊してしまったのだ」と話した。
「何という不幸な出来事なんだ。とても悲しい」と真斗が声を出し悲しんだ。
「一緒に悲しんでくれるのか。お前は優しいな」と話し、アルゴスはメサイアと出会った時のことを話してくれた。
アルゴスは、全てを滅ぼした。残ったのは、自分と四人の竜人族のみとなった。
その四人とは、アルゴスの横にいる竜達だった。
アルゴスは、このまま朽ち果てようと考えたところ長い金髪の美しい女性が現れたのだ。
「私は、メサイア。アルゴスよ、まだ、朽ち果てるには早いのです」
「あなたは、メッ、メサイア様」
「あなたには、まだ、やるべきことがあります」
「私にやるべきこと?、もう何もない」とアルゴスが答えるとメサイアは、杖を上に掲げた。
杖は、光輝き周り全てが光で見えなくなった。
光が消えるとアルゴスと四人の竜人族は、雲の上にいた。
「メサイア様、ここは何処ですか」
「ここは、時空の入り口です」
「何があったのですか」
「あなたが、この世界に来た時間から今の時間を削除したのです」
「えっ、どういうことですか」
「不幸な出来事は、全て消えました。これから、この世界は、時代の流れにそって時が進むでしょう」
「全てが消えたということは、不幸も消えたのですね」
「そうです」
「そうか、良かった」
「アルゴスよ」
「はい」
「あなたは、これからどうしたいですか」
「安息の地で、静かに過ごしたい」
「そうですか、わかりました。それで、あなた達は、どうしたいですか」と四人の竜人にも話しかけた。
「はい、私達も、アルゴス様と共に過ごしたいです」
「そうですか、わかりました」とメサイアは言って杖を掲げると光に包まれた。
光が消えるとアルゴス達は、この世界に連れてこられたのだった。
「さぁ、アルゴスよ。時が来るまで静かに暮らすといい」とメサイアは言って消えたのだった。
そして、アルゴス達は静かに暮らし、現在に至るということを真斗に話した。
「少年、真斗よ。わしは、全てをなくしたが、メサイア様に救われたのだ」
「そういうことがあったのですか」
「そうだ、同じ種族がいるこの世界で、静かに暮らすことができたのもメサイア様のおかげだ。わしは感謝している」とアルゴスは目を閉じた。
「アルゴスさん、メサイアは、あなたを慈しみ、救いたいと思ったのだと思います。そして、将来、あなたに成してほしいことがあったのだと思います」
「成してほしいことだと」
「はい、僕にメサイアは、あなたに会えと言った。何かあるのだと思います」
「んーん、そうかもしれないな。君の中にメサイア様を感じるが、どういうことなのだ」
「僕の中にメサイアが宿っているのだと思う」
「メサイア様が君にか」
「はい」
「なるほど、だから、君にメサイア様を感じるのか。だが、片方のメサイア様しか感じないな」
「片方というのは」
「メサイアの瞳だよ」
「メサイアの瞳って」と真斗が聞くとアルゴスは、メサイアのことも話しだした。
わしがメサイア様に救われたあとの時代、天界で神同士の戦争があったのだ。
神々は殺し合い、天界も消滅の危機が訪れそうになった。
その時、メサイアは、全ての力を使って戦争が起きる時間から消滅の危機になるまでの時を削減し、戦争をなかったことにした。
だが、メサイアは力を使い過ぎてしまい、肉体は滅び二つの結晶化した瞳になったと言い伝えられている。
このことをアルゴスは真斗達に淡々と話した。
この話を聞いて真斗は、赤い石のことを思い出し大声を上げた。
「アルゴスさん、結晶化した瞳って、赤い石みたいなものではないですか」
「そうだ、赤い石みたいなものと云われているが、それが、どうかしたのか」
「はい、その赤い石は僕の中にあるのです」
「なんと、君の中にメサイアの瞳が」
「はい、メサイアが僕に話しかけてきました。僕と同化したと」
「それは、誠か」
「はい」
「だか、君の中に片方の瞳だけしか感じない。おそらく、時の瞳の方だろう」
「時の瞳、もう一つというのは」
「もう一つは、時空の瞳だよ。二つの瞳は一つだった。だから、必ず、共鳴するはずだ。いずれは、君の前に現れるはずだ」
「いずれは、僕の前に現れるって、教えてほしい、アルゴスさん、僕は、これから、どうすればいい」と真斗が聞いた。
アルゴスは、少し黙ってから呪文のようなものを唱えだした。
アルゴスが光り輝き眩しくなり、真斗達は手で顔を抑えた。
光が消えるとアルゴスが人間の姿に変わっていた。赤い竜、黒い竜、白い竜、青い竜も人間の姿に変わっていたのだった。
ただ、背中には竜の羽が生えていた。
真斗達は、手を下ろして見るとアルゴス達が竜人の姿になっていたので、驚いて声も出なかった。
アルゴスは、真斗に近づき話しかけてきた。
「君の名前は、真斗と言ったな」
「はい」
「メサイア様は、私と会えと言ったのだろう」
「はい、アルゴスさん」
「君は、メサイア様の片割れだ。だから、時の瞳を宿す君は、時を操ることができるようになるはずだ」
「そうか、だから、先のことがなんとなくわかったり、時間が止まった現象があったりしたのか」
「それは、メサイア様の力だろう。いずれは、制御できるようになるはずだ」
「僕に時を操る力があるのか」
「そうだ。だが、まだ制御できていないようだな。だから、私に会えと言っていたのだろう」
「アルゴスさん、どういうことですか」
「メサイア様は、君を守って欲しいと言っているのだろう。君は、時を操れても、肉体的には、ただの弱い人間だからな」
「アルゴスさんに守ってもらうために会えということだったんですか」
「そうかもしれない。わしは、メサイア様に恩義がある。だから、メサイア様の願い、私が君達を守ろうではないか」
「本当ですか、アルゴスさん」
「本当だ、真斗」とアルゴスは答え、真斗に手を差し出した。
真斗は、喜んでアルゴスと握手した。
「アルゴスさん、少し教えてくれませんか」
「何かね」とアルゴスが返事をすると真斗は、自分が貴族に殺されそうになったことを話した。
相手の剣が何回も鞘に戻ったこと、妹達のことを話した。
「そうか、この二人にもメサイア様を少し感じる。恐らく、メサイア様の加護を受けたと思うが・・・」とアルゴスは考えた。
「メサイアの加護ですか」
「時の瞳に触れたとかないか」とアルゴスが聞くと真斗は、考えた。
「ねぇ、お兄さん」と繭が声をかけた。
「繭、どうしたの」
「ほら、あの時、お兄さんの胸が光った時」
「あぁ、そうだ、赤い光は繭と流唯を包み込んだよね」
「うん」
「そうか、あの時か」
「それかもしれないな。剣が戻ったのは、剣を抜いた時間が削減されたからだ。これも、メサイア様の力だよ」
「えー、私達にも不思議な力が宿ったの」
「そうかもしれないな。力は弱いが何れ使えるようになるかもな」
「凄い、頑張って使えるようになろうよ。流唯」
「うん、お姉ちゃん」
「アルゴスさん」
「アルゴスでいい」
「じゃあ、アルゴス、僕達は、ただ、守ってもらうだけで良いのでしょうか」
「大丈夫だ。真斗は、いずれメサイア様の力を使えるようになるだろう。だから、逆に私が助けられることもあるかもしれない。妹さん達も同じだよ」
「わかりました。そのときは、お互い助け合いたいです」
「そうだな」とアルゴスは答えて二人は、笑顔になった。
繭と流唯は、ホッとしてお互いを見て「良かったぁ」と声を出したのだった。
アルゴスの後から、竜人族の四人が近づいてきた。
赤い姿をした竜人族、黒い姿の竜人族、青い姿の竜人族、白い姿の竜人族が来た。
「真斗、紹介しよう。この赤い竜はメルキアだ。火竜の竜人族だ」
「真斗、よろしく」
「はい」
「この黒い竜は、アルバンだ。闇に潜む竜人族だ」とアルゴスが言うとアルバンは頭を下げた。
真斗も頭を下げた。
「この青い竜は、ブルーディアだ。水竜族だ」
「真斗、以後、お見知り置きを」
「はい」
「そして、最後の白い竜は、セルスだ。氷竜族だ」
「真斗、よろしく」
「はい」
「この四人も、力になってくれるはずだ」とアルゴスは言った。
真斗は、この四人とも握手をした。
真斗、繭、流唯は、アルゴスが自分達を守ると言ってくれたことに感謝していた。
真斗は、これからどうすればいいかと思っていたところ、アルゴスが真斗に言った。
「真斗、まずは、ここを出ようではないか」
「えっ、ここを」
「そうだ」
「ここを出て、何処に行くのですか」
「カルロスがいるところだよ」
「カルロスって誰ですか」
「カルロスも、神の一人だ。君を守るんだったら適任者だよ」
「えっ、僕を守る適任者だって」
「そうだよ。この世界に武の神と云われる男がいる。それが武神カルロスだ。メサイア様の元恋人だった男だよ」
「えー。本当ですか、メサイアの恋人だった神様」
「そうだ、真斗、カルロスのところに行くぞ」とアルゴスは、真斗達に声をかけたのだった。




