第ニ十九話 伯爵昇進、隣国墜つ
内乱を起したゾルテックは捕まり、内乱は失敗に終わった。
真斗達は内乱を鎮圧し、拘束されていた国王、アルベルト公爵、リーディア姫を助け出したことで、王宮内で英雄扱いされていたのだった。
その頃、隣国の援軍に出ていたラティスは夜明けとともに帝国軍に対して攻撃を仕掛けようとしていた。
ラティスは、サーベス伯爵に呼んだ。
「サーベス伯爵、帝国軍がいる左側の山に運んだ水、岩、丸太を落として崖崩れを起こしてほしい」と指示を出したのだった。
「ラティス様、畏まりました」と返事をして、五千の兵を連れていった。
サーベス軍は、迂回し、右方面に向かった。
現地に着くとサーベスは、兵に指示を出した。運んだ物を一気に落として、崖崩れを起したのだった。
崖崩れが発生した先には帝国軍がいた。大きな音が聞こえたことで、帝国軍は崖崩れが発生したことに気がついた。
「ミネルヴァ伯爵、左の山から崖崩れです」
「何だと、とにかく、回避するんだ」とミネルヴァ伯爵は指示を出した。
左側の山から崖崩れが発生したことで、帝国軍の真ん中に土砂が一気に流れ込んだ。
帝国軍は、土砂の下敷きになり大勢の兵が巻き込まれてしまった。
巻き込まれなかった者は、前と後ろに前進した。軍は分断されてしまったのだった。
片方の帝国軍は、隣国ナルセリア軍の前に近づいたことで、ナルセリア軍の攻撃にさらされてしまった。
もう片方の帝国軍も王国側に近づいてしまい、高山に潜んでいた弓隊の餌食になってしまったのだった。
ナルセリア軍側には、ミネルヴァ伯爵と腹心のネイルがいた。
「伯爵、我が軍は分断されてナルセリア軍と王国軍に攻撃されています。多大な損害を受けています。ひとまず、撤退をしてはどうでしょうか?」
「仕方がない、一旦、右側に引いて中央軍と合流するぞ」
「はい、伯爵」とネイルが全軍を指揮し、右側から脱出したのだった。
ナルセリア軍は、引いていく帝国軍の後ろを突き少しでも兵を減らす作戦を行い攻撃を仕掛けた。
しかし、王国側にいた帝国軍が撤退すると、ラティスは眺めていただけだったのだ。
脱出した帝国軍が進む先には、流れの速い大きな川が見えてきた。
少し先に橋が見えたので、帝国軍は、川を迂回して橋がある方向に向かった。
橋の前まで来るとミネルヴァ伯爵が橋を渡るよう指示を出した。
ミネルヴァ伯爵、ネイルが渡り、帝国軍が橋を渡っていると突然、橋が崩れだしたのだった。
ラティスは、帝国軍が橋を渡ることを想定してサーベス伯爵に指示を出していたのだ。
帝国軍が渡った頃を見計って橋が崩れるように仕組んでいたのだった。
大勢の帝国軍は、川に落ち流されてしまった。
ミネルヴァ伯爵とネイルは、呆然として見ているしかなかったのだ。
「なんということだ」とミネルヴァ伯爵は呟いた。
帝国軍は、九割もの兵を失ってしまったのだった。
ミネルヴァ伯爵は「くそ、とにかく撤退だ」と叫んで、残った兵を纏めて撤退したのだった。
サーベス伯爵は、帝国軍が見えなくなった頃を見計らってラティスのもとに戻った。
サーベス伯爵がラティスのもとに戻ると状況を報告した。
「ラティス様、敵軍は大半の兵を失い撤退しました」
「そうですか、わかりました。それでは、私達も撤退しますよ」
「はい、ラティス様」と答え二人は戻って行った。
ラティスほ戻ってからアンデルト侯爵に報告し、全軍撤退すると侯爵は指示を出して撤退したのだった。
その頃、真斗達と国王、アルベルト公爵、リーディアは謁見会場にいた。王宮にいた貴族達も謁見会場にいた。
「皆のもの、我が国は平穏を取り戻した。全て、真斗子爵、ソルティア殿のおかげだ」と国王が叫ぶと「おぉ〜」と歓声の声が響いた。
「真斗子爵、ソルティア、二人とも、ありがとう。感謝しても、しきれない」
「いえ、陛下、当然のことをしたまでです」
「そうです。陛下」と二人は話した。
「アルベルト」
「はい、陛下」
「私は、二人に対して、どう報えればいい」
「それでは、ソルティア殿は、次期エルマイヤー伯爵家を継ぎます。エルマイヤー家の領地の近くがゾルテックの領地です。ゾルテックの領地の半分をエルマイヤー家に差出すというのはどうでしょうか?」
「ほう、それはいい、どうだ、ソルティア殿、領地を受け取ってくれないか?」
「わかりました。陛下の思うがままに」とソルティアは答えた。
「アルベルト」
「はい、陛下」
「真斗子爵には、今までのこともあり、一気に伯爵にすることはできないか?」
「陛下、それは難しいことです。伯爵以上については伯爵家として、代々引き継がれる家柄がないと」
「そうか、何とかならないか?」
「どうしたものか」と二人が話しているとリーディアが言った。
「お父様」
「何だね、リーディア」
「私と真斗が結婚してしまえば良いのではなくて」とリーディアが言うと皆んな、「え〜」と声を出した。
「ちょっと、リーディア、何言ってんの」
「真斗は、黙ってて、お父様、相手が貴族であれば結婚出来るわよね」
「あぁ、貴族なら」
「真斗は、子爵です。だから結婚出来るはずです」
「ん〜、そうだな、でも、リーディア」
「はい」
「お前は結婚相手が真斗子爵でもいいのか?」
「はい、お父様、私は真斗子爵を愛していますから」
「そうかぁ、なら、話が早い、真斗子爵との結婚を許す」と大声で言うと「おぉ〜」と歓声の声が聞こえた。
「ありがとう。お父様」
「ちょっと」と真斗が言うと国王は、お構い無く話を進めた。
「皆の者、真斗子爵は我が娘と結婚し、王家の婿養子となるのだ」
「おぉ〜」と歓声の声が聞こえた。
「真斗殿は王家一族となる。よって、伯爵の爵位を与える。良いな、皆の者」と叫ぶと「はっは〜」と歓声の声が聞こえた。
「あの。ちょっと」と真斗が声を出しても無視された。
「おめでとう。リーディア」
「はい、お父様、とても嬉しい」
「はっはっはっ、頼むぞ、真斗伯爵」と国王は、真斗の肩を叩いた。
「あの〜」と真斗が答えると国王は言った。
「今日の謁見は、これで終わりとする。良いな」
「はっは〜」と歓声の声が聞こえた。
「アルベルト」
「はい、兄上」
「今後の話をしたい、来てくれ」
「はい」と国王とアルベルトは謁見会場から去ってしまった。
「あっ、あぁ〜」と真斗が声を出すとソルティアは「クス、クス、クス」と笑っていた。
「ソルティア、なに笑っているのよ」
「国王は話を聞かないから」
「だけど、リーディアと結婚だなんて」と真斗が言うとリーディアが反論した。
「あら、真斗、私と結婚するの嫌なの?」
「いや、あの」
「何が不満なの?」と責められた。
「リーディアは、可愛いし綺麗だと思う。だけど、・・・」
「もう、真斗は私と結婚するのよ。決まり、決定事項よ、はい、おしまい」とリーディアは言って真斗の腕を組んだ。
「え〜」
「いいから、さぁ、行きましょう」と言って三人は謁見会場から出て行った。
その頃、ラティスは帝国軍を打ち破り王国に戻る途中だった。
先行していた兵から王都の情報を得て、ラティスはアンデルト侯爵に報告していた。
「侯爵、王都で起きていた内乱が鎮圧されたそうです」
「なに、本当か?」
「はい、首謀者のゾルテック伯爵は拘束されたそうです」
「ゾルテックが、そうか、わかった。下がった良い」と侯爵は答え、ラティスは下がった。
アンデルト侯爵は、ガックリきていた。あのゾルテックが失敗するなんて、何というかことかと思っていた。
侯爵は、仕方がなく、今後のことを考えていたのだった。
ラティスは、さすが真斗だ。これで、アンデルト侯爵の勢力は弱まるはずだ。しばらくは、おとなしくするだろうと思っていたのだった。
数日が過ぎ、ラティスは王国に戻り謁見会場で国王に報告することになっていた。
会場には、真斗、ソルティア達もいた。
アンデルト侯爵とラティスは、国王の前に出て片足をひざまづいた。
「国王、帝国軍を打ち破ってまいりました。ナルセリア国王から感謝の書状を持って参りました」とアンデルト侯爵は国王に渡した。
「ご苦労、侯爵、褒美をとらせたいが内乱を起したゾルテック伯爵は、其方の頼子だ。責任もある」
「はっ」
「ただ、帝国軍を打ち破った功績に免じて責任は問わないとする」
「はっ」と侯爵は答えた。
「ラティスよ」
「はい。陛下」
「其方の戦略、見事である。褒美として、ゾルテック伯爵が持っていた領地の半分をエルガー伯爵の譲渡する」
「はい」とラティスは答えると周りから、「ほ〜」と声が聞こえた。
「他の者にも、後で褒美をとらす。して、ソルティア殿、真斗伯爵、前へ」
「はい」とソルティアはラティスの隣りに行き、しゃがんだ。
真斗は、ソルティアの隣りにひざまづいた。
「ソルティア殿には、ゾルテック伯爵領地の半分をエルマイヤー家の領地とすると言った」
「はい。領地を頂くことになっています」
「それで、良いな」
「はい」
「ただ、真斗伯爵には爵位を与えたが領地も与えたい」
「いえ、もう、私は十分です」と真斗が言うと国王は考えてから話した。
「あっ、そうだ、其方の領地の隣りに未開拓の領地があったのぉ。アルベルト」
「はい」
「未開拓の領地を真斗伯爵の領地とするが、どうだろう」
「良い、考えでございます」
「よし、未開拓地を真斗伯爵の領地とする」と国王が言うとアンデルト侯爵が反論した。
「陛下、アルバニアと未開拓領地を合わせると真斗伯爵は、伯爵以上の膨大な領地を持つことになります。膨大な領地を伯爵に譲渡するには大き過ぎます」
「真斗伯爵は、英雄だ。英雄に相応しい。それに真斗伯爵は、リーディアと結婚し、我が息子となるのだ。反論は許さん」と国王が言うと侯爵は黙ってしまった。
「リーディアよ。真斗伯爵との結婚、良いな」
「はい
「あのぉ、だから」と真斗が言うと「陛下〜」と声が聞こえた。
謁見会場のドアが空き、憲兵隊のナダルが会場に入ってきた。
「陛下、大変でございます」
「何事だ。ナダル」と国王が叫んだ。
「隣国ナルセリアが帝国軍の攻撃によって落ちました」
「なんだと。それは、本当か」
「はい」とナダルが返事をすると会場が不穏な雰囲気になった。
周りから貴族達の声が聞こえてきた。
「おい、やばいぞ」「今度は、我が国に襲ってくるぞ」とざわめきだした。
「帝国軍は、撤退したんじゃ」とアルベルト公爵が言った。
「帝国軍は、一旦撤退しましたが軍を立て直し、圧倒的な軍勢で襲ったのです」
「それで、王家は、どうなったのだ」
「国王、王妃は、処刑されだそうです」
「おぉ〜、なんということだ」とアルベルト公爵は泣き叫んだ。
隣国ナルセリアの王妃は、アルベルト公爵の妻の妹だったのだ。
「姫は、どうなったのだ」
「セリア姫は、行方不明だそうです」
「そうか、ナダル、姫の行方を探ってくれまいか」
「畏まりました。公爵」と返事をして謁見会場から退出した。
「陛下、今、聞いた通りです。次は、我が国に侵攻するかもしれませぬ」
「わかった。皆のもの、帝国の侵攻にそなえよ」と国王が叫ぶと「はっは〜」と会場にいる貴族が返事をした。
謁見は、終了して真斗達も退場したのだった。
ラティス、ソルティア、真斗は、エルガー伯爵家に戻っていた。
ラティスは、真斗に声をかけた。
「真斗」
「はい」
「隣国が帝国に侵略されたということは、いずれ我が国も帝国からの侵略に備えなければならない」
「ということは、戦争になるの?」
「あぁ、そうだね」
「そうよ。軍備を整える必要がでてくるわね」とソルティアも言った。
「ラティス、ソルティア、戦争をしない方法はないの?」
「無理だな。帝国は世界征服をもくろんでいるんだ」
「そうなんだ。なんという国なんだ」と真斗はつぶやき、自分が帝国に滞在していた頃、酷い目にあったことを思い出していた。
「真斗、君の力は重要だ」
「えっ、僕の力」
「そうだよ」
「なんで」
「君には、武神カルロス、竜神アルゴス達が側にいるからね。あと、君、自身の力もある。君は無敵だよ」
「僕より、カルロスやアルゴス達がいれば大丈夫だと思うけど」
「ふふふ、とにかく、真斗も気持ちだけでも備えていてほしい」
「ハァ、とにかくわかった。とりあえず、僕はアルバニアに戻って未開拓地を開拓したいと思う。同時に帝国から守れるように備えるよ」
「宜しく頼みます」と二人は言った。
真斗は、翌日、アルバニアに戻ることにした。
ラティス、ソルティアは、自分の領地の警備、帝国の侵攻に備えることにしたのだった。




