第二十七話 内乱
王都には、憲兵隊も、軍隊も殆ど不在の状態であった。
しかも、王宮内の警備は、憲兵隊が五百程度しか残っていなかった。
ゾルテックは、今が絶好の機会と思い部下に命令した。
ゾルテック率いる精鋭部隊の五千が一気に王宮を襲ったのだった。
精鋭部隊に襲われて、憲兵隊は一気に倒されていった。手も足もでずに憲兵隊は全滅してしまった。
ゾルテックは制圧したことを確認すると「まずは、国王だ」と叫び、真っ先に国王がいる部屋に向かった。
国王が寝ている寝室に着くと「ドアを壊開けろ」と兵に言った。
「バタン」と国王がいる部屋のドアが開いた。
「なんだ」と国王は大声を出した。
「国王、静かに」
「お前は、ゾルテック伯爵、何用だ」
「国王、おとなしく従ってもらおうか」
「何だと、何をする気だ」
「ふふふ、あなたには、引退してもらいましょう」とゾルテックが言った。
国王は、悔しながら噛み締めていた。
その頃、ゾルテックの弟ゾルダは、アルベルト公爵を捕まえていた。そして、縛ってゾルテックの方へ連れて行くよう部下に指示していた。
ゾルダは、真っ先にリーディア姫の部屋に向かった。
リーディア姫の部屋に着くとゾルダは、部下に命令して部屋のドアを破壊した。
「ドカン」と音が鳴るとリーディアは驚いた。
リーディアは、外が騒がしいと思い急いで着替えて部屋を出ようとしていたところのだった。
「何事です」と叫ぶとゾルダが部屋に入ってきた。
「ふふふ、リーディア姫、一緒に来て頂こう」
「あなたは、ゾルダ」
「そうです。さぁ、姫、お越しを」とゾルタが言うと仕方がなく言うことを聞いた。
ゾルダのあとをついて行くと数人の兵がリーディアを囲むように歩いていた。
国王の部屋まで連れて行かれるとゾルテックが待っていた。
アルベルト公爵は、リーディアを見かけると「姫っ」と叫んだ。
「公爵っ」とリーディアも叫んだ。
「兄上、アルベルト公爵とリーディア姫を連れて参りました」とゾルダが話しすと公爵は怒鳴った。
「ゾルテック伯爵、何をする気だ」
「ふふふ、この国は、我々、アンデルト侯爵が変わって国王になるのだよ」
「なんだと・・・」
「せめての情けだ。アルベルト公爵、あなたは殺しはしない。生涯、牢獄で過ごさせて差し上げよう」とゾルテックが言うとゾルダは、アルベルト公爵を殴った。
公爵は、「ぐっ」と声を上げて倒れ込んだ。
リーディアは、「公爵っ」と叫んだ。
「ふふふ、それと、リーディア姫」とゾルテックが姫を見て言うとリーディアは、睨みつけた。
「そんなに睨みつけたら可愛い顔が台無しだよ」
「こんなことして、必ず報いを受けるわ」
「その言葉をそのまま変えそう」
「一体、何をする気なの?」
「ふふふ、リーディア姫、あなたは、アンデルト侯爵と結婚して頂き、王妃にして差し上げよう」
「えっ、何ですって、私は、いやです」
「逆らうことは、できませんよ。侯爵の人形となって頂き、侯爵の子を産んでもらう。血族的にも、アンデルト様が国王一族として、この国を治めていくのです」
「ううう」とリーディアは唸っていた。
「さぁ、ゾルダ、国王と二人を連れて行きなさい」
「はい、兄上」とゾルダは国王と姫、公爵を連れて行ったのだった。
リーディアは、「真斗、真斗、助けて、アンデルトなんかの妻になりたくないわ」と心の中で悲しんでいた。
その頃、真斗達はアルバニアを出発していたのだった。
真斗と一緒に同行しているのは、ソルティア、カルロス、シャルネイラ、リア、赤龍のメルキア、青龍のブルーディアが真斗と共に王都に向かっていた。
リアは、まだ子供だがソルティアの魔法指導を受けて上達していたため、かなりの戦力となると思い真斗は一緒に同行させたのだった。
アルバニアには、アルゴス、黒龍のアルバン、白龍のセルスを残し、アルバニアの護衛に就かせた。
シャルルは、繭、流唯の護衛に就かせ、エリーゼは領主代行に就かせたのだった。
真斗も、ラティスと同じく嫌な予感をしながら急いで王都に向かっていたのだった。
隣国の援軍に向かっているラティス達は、隣国の国境まで来ていた。
ラティスの策略で帝国軍の後方に軍を待機させて補給路を塞いでいたのだった。
帝国軍は、前方にナルセリア軍七万、後方に我が軍と挟み撃ちにされていたため、攻められずにいた。
睨み合いとなり、膠着状態だった。
ラティスは、帝国軍を兵糧攻めにするつもりだったのだ。
その時、ラティスのもとにシャロウが現れた。
「ラティス様」
「シャロウ、どうしました」
「王都から連絡がありました。ゾルテック伯爵が反乱を起こしたと」
「なんだって、どういうことです。王都の護衛はどうしたのだ」
「憲兵隊は、ゾルテック伯爵がナダル様を脅迫したようです。今、なんらかの方法で無力化されています」
「国王軍は、どうしました」
「王都の郊外に駐屯しています」
「何故、郊外に」
「ゾルテックの計略です。国王軍の半数は、ゾルテック側に付きました。残りの半数は、どっちつかずの状態のようです」
「ゾルテックは、アンデルト侯爵の精鋭部隊の五千を預かっているはず。それでは、勝てる見込みもない」とラティスは考え込んでいた。
「あっ、そうか、そういうことか」
「ラティス様、どしました」
「これは、帝国を利用した計略だよ。隣国の援軍を差し向け、王都を手薄にしたんだ」
「なるほど」
「アンデルト侯爵、いや、これは、ゾルテックの独断だ。侯爵をみる限り、知らないのかもしれない。私が策略を講じないように援軍に同行させ王都から離すためだったんだ」
「なるほど」
「シャロウ」
「はい」
「恐らく、真斗達は王都に向かっているはずだ。君は、真斗と合流してくれ」
「わかりました。私の部下を数名、ラティス様の護衛に残します」とシャロウは答えラティスのもとを離れたのだった。
ラティスはアンデルト侯爵と面会することにした。
「侯爵、ゾルテック伯爵が王都で内乱を起こしたそうです」
「何だと、本当か」
「はい」とラティスは答えた。
ラティスは、共謀したことを疑いながら報告したのだった。
「侯爵、ゾルテックは国王、公爵、姫を拉致したそうです。どうしましょう」
「仕方がない。王都に戻るぞ、準備をしてくれ」
「侯爵、今、全軍を引かせるとナルセリアが落とされます」
「それでは、どうすればいい」
「全軍を引くのではなく、一部の軍を撤退させます」
「それで、どうするのだ」
「私に考えがあります。お任せを」とラティスは話し、退出した。
ラティスが出て行くと侯爵は、ゾルテックよ、よくやってくれた。
ラティスめ、全軍を撤退させないなんて、何故、一部の軍だけ撤退させる。ナルセリアを落とさせないためか。
恐らく、ゾルテックは帝国と密約を交わしているはずだ。
だが今更、何か講じようとしても遅いと思っていた。
ラティスは、侯爵の策略というよりゾルテックの策略だろう。侯爵は、単にゾルテックの言うことを聞いただけだろうと思っていた。
ラティスは、ディック将軍を呼び会っていた。
「ディック将軍、一万の弓兵を右側の林に移動させてくれますか?」
「ラティス殿、弓兵を高台から威嚇するのですか?」
「それもあります。それと移動した兵に丸太を作らせて下さい」
「丸太をですか?」
「はい、兵一人一人に自分の大きさぐらいの丸太を用意させて下さい」
「ラティス殿、何か企んでいますな。わかりました」とディック将軍は答え退出した。
早速、ディック将軍は部下の兵に命令して林に移動させ丸太を作らせた。
将軍は、急がせて丸太を作らよう部下に命令した。急がせたおかげで、半日で一万の丸太が用意できたのだった。
早速、将軍はラティスに面会して作成できたことを報告した。
「ラティス殿、丸太を一万ほど用意できました。その後はどうするのですか?」と将軍が聞くとラティスは、人払いをさせてから話した。
「ディック将軍、実は王都で内乱が発生しました」とラティスは小声で話した。
「なんと、それは誠ですか?」と将軍も小声で聞いた。
「はい、将軍」
「でっ、どうするのですか?」
「もう、一万の兵を林に移動させて下さい。そして、今、林にいる兵一万が着ている鎧を丸太に着せてほしいのです」
「そんなことをして、どうするのですか?」
「鎧を脱いだ兵一万と副将デラックスを共に王都へ帰還させて下さい」
「なるほど、丸太を兵と見せかけて偽装させるのですな。それで、一万の兵を撤退させたことを敵に悟らせないようにするのですな」
「そうです。敵は林に弓兵として二万の兵が待機している思うでしょう」
「なるほど、撤退した一万の兵を王都に戻し、内乱を鎮圧させるのですな」
「はい。デラックスに伝えて下さい。そして、王都に戻ったら真斗子爵の指示に従って下さいと」
「わかりました。ラティス殿」と将軍は答え、副将デラックスに内乱のことを話して指示した。
ラティスは考えていた。
ゾルテックが、この時期に内乱を起こすことは帝国と密約を交わしているのではないかとも疑った。
ナルセリアが落とされると次は我が国になるはずと思いながら本軍に戻った。
ラティスは、侯爵に右側の高台から弓隊で敵に睨みをきかせつつ本軍で退路を塞ぎますとだけ話した。
「ラティスよ、一部の軍は撤退させたのか?」
「一部の軍を今、撤退させるとナルセリアが落とされます。もう少し、このままで待機します。私に考えがあるのです」とだけ話した。
必ず真斗達は、内乱を治める行動をしているはずだ。真斗の援護をしなければと思っていた。
侯爵は、まぁ、ここに軍を留めていても、ゾルテックが事を進めるだろうと思っていた。
帝国軍十万を率いているのは、ミネルヴァ伯爵だった。そう、真斗が帝国にいた頃に真斗を殺そうとした貴族だった。
伯爵は、王国軍が撤退するのを待っていた。
ゾルテックと密約を交わしていたのだった。
王国は内乱を起こして援軍を撤退させ、我が軍はナルセリアを落とす約束だった。
そのかわり帝国は、王国には進軍しないという密約だったのだ。
その頃、真斗達は王都に着いていた。
メルキアとブルーディアが真斗達を背中に乗せて飛んできたため王都に早く着いた。
王都の手前で降り立った真斗達が王都の入り口まで来ると門番がいなかった。
真斗達は、何かおかしいと感じていたところ「真斗様」と木陰から声がした。
真斗が振り向くと若そうな男の人が近付いていた。
「真斗子爵ですね?」
「はい、あなたは」
「私は、ライカー・シーグレスといいます」
「はぁ」
「はぁ、じゃないわよ真斗。シーグレス伯爵家の嫡男よ」とソルティアが言った。
「そうですかぁ。失礼しました」
「いいえ、私は、エルダ・アーナルドの従兄弟でもあります。私の母とエルダの母は姉妹なのです」
「そうですか、エルダさんの。それで、何か僕に」
「はい、エルダから頼まれていたのです。何かあった時は、陰ながら真斗子爵を支援してほしいと言われていました」
「本当ですか、ありがとうございます」
「いえ、エルダを助けて頂いた恩人でもあります。真斗子爵を助けるのは、当たり前です」
「ありがとう」
「子爵、あなたを見かけたので声をかけました。さぁ、こちらに来て下さい。王宮に通じる隠し通路までご案内します」
「そんな通路があるの?」
「はい」
「なんで、そんな通路を知っているのですか?」
「シーグレス伯爵家は代々、王家を陰から助ける家なのです。だから、何かあった時、私達が王家を逃すため、隠し通路を使うとことになっているのです」
「そんなことが」
「はい、さぁ、こちらへ」とライカーは真斗達を案内した。
真斗達は、ライカーの後をついて行ったのだった。




