第ニ十四話 真斗の世渡り子爵
ダルク子爵の陰謀が失敗し、ゾルテック伯爵による隠蔽工作が行われようとしている頃、ラティスとソルティアは、エルガー伯爵家に戻っていた。
二人が戻ると庭先で「ガキン、ガキン」と大きな音が鳴り響いていた。
二人が庭先に行くとカルロスと真斗が模擬戦をやっていた。
カルロスが真斗に剣術を教えていたのだった。
しばらく、ラティスとソルティアは見学していたが驚いていた。
真斗の剣捌きが見えないぐらい早かった。音だけが聞こえる状態だったからだ。
真斗とカルロスがラティス剣捌きつくと模擬戦をやめて、ラティス達のところに近づいた。
「ラティス、お帰り」
「あぁ、おい、真斗、どういうことだい」
「何が」
「今の剣術だよ」
「カルロスに剣術を教わっていたんだ」
「教わっていたのは、わかるが凄く上達しているではないか」
「そうかなぁ、剣術のコツというのがわかってきたんだ。自分の身は自分で守れるようにね」
「なるほど、そうか、は〜、君には驚かされるよ。剣術の才能まであるのか」
「本当、真斗、凄いわ」とソルティアも言った。
ラティスは、真斗を見て底がしれないなと思った。
「真斗、話しがあるんだ。明後日、一緒に王宮まで行ってほしいのです」
「何でですか?」
「国王が真斗に用があるらしいんだ」
「そうなの。まぁ、いいよ」
「じゃあ、屋敷に入ろう」とラティス達は話し、皆んな屋敷に入った。
そして、明後日を迎えた。
真斗、ラティス、ソルティアは、馬車で王宮に向かっていた。
三人が王宮に着くとリーディアが入り口で待っていた。真斗達が馬車を降りるとリーディアが近づいて来た。
「真斗、よく来てくれたわ。さぁ、早く、行きましょう」とリーディアは真斗の手を取って引っ張って行った。
ラティス、ソルティアも、「やれやれ」と言いながら真斗のあとをついて行った。
謁見会場の前で、リーディアは「私は別の入り口から入るから真斗は、ここから入って」と言って真斗と別れた。
真斗が謁見会場に入ると大勢の貴族が集まっていたため、真斗は吃驚していた。
「何で、こんなに大勢の人が」
「今にわかるよ」とラティスが言った。
三人が入ると国王が壇上に出たきた。隣りには、王妃とリーディアが立っていた。
真斗は、やっぱり、リーディアは姫様なんだなと思って見ていた。
リーディアは真斗を見て、ウィンクした。
「皆の者、よく、集まってくれた。今日は、重大な話がある」と国王が話すとザワザワしだした。
「衛兵、ダルク子爵をここに」とアルベルト公爵が大声で言ったが衛兵は、なかなか子爵を連れて来なかった。
更に周りがザワザワし出したあと、衛兵が「陛下、大変でございます」と叫んだ。
「どうしたのだ」と公爵が言うと衛兵は言った。
「ダルク子爵、メルダス男爵が亡くなりました」
「なんだとぉ、何故だ」と公爵は叫んだ。
「何者かに暗殺されました」と衛兵は答えた。
「具体的に申せ」
「投獄していたですが、急にメルダス男爵が狂ったのです。メルダス男爵が魔物を召喚し、魔物がメルダス本人とダルク子爵を襲い殺害されたのです」
「何ということだ」と公爵は愕然した。ラティスは、してやられたと思った。
「陛下、罰するべき首謀者が亡くなってしまいました。どうしましょう。主案だった案件が無くなってしまいました」
「公爵、誠に残念だ。皆者、主案だったダルク子爵、メルダス男爵のリーディア姫暗殺における審議は首謀者が亡くなったことで終わりとする」と国王が話すとアンデルト侯爵とゾルテック伯爵は、お互いの顔を見てニヤリとした。
「次にリーディア姫の暗殺を防ぎ、姫を守った真斗男爵の審議に移る。真斗男爵、前へ」と公爵が大声で言うと真斗は、キョロキョロしながら前に出た。
真斗は、何故だと思いながら片足をひざまづき頭を下げた。
「真斗男爵、君の功績は多大だ。褒美を取らすが何か要求はないか?」
「えっ、褒美?、何もございません。私は、姫だろうと民だろうと危なければ助けます。当たり前のことをしただけです」
「そうか、相変わらずだな。真斗男爵、のぉ、公爵、たしか、男爵には、領地がなかったのぉ」
「はい陛下、与えられる領地がありませんでした。いまだ、エルガー伯爵家に居候している身でございます」
「そうか、ダルク子爵、メルダス男爵が失脚した今、二人の領地が空席となったのぉ」
「はい、陛下」
「なら、二人の領地は真斗男爵に与えようぞ。いや、本日から、真斗男爵を改め、子爵の爵位を与える」と国王が大声で言った。
周りからは、「お〜」と声が響いた。
「真斗子爵、よいな」
「えっ、あっ。はい、陛下」と真斗は返事をした。
その時、アンデルト侯爵とゾルテック伯爵は、クソと思いながら渋い顔をしていた。
ラティス、ソルティア、リーディアも、笑顔で喜んでいた。
真斗は、正式に子爵となり領地も手に入れたのだった。
そして、謁見は解散となり、真斗達はエルガー伯爵家に戻るとラティスは、明日、お祝いの席を行うことにした。
翌日、ラティスは皆んなを集め、グラスに飲み物を注いでから話した。
「皆んな、この度、真斗は男爵から子爵になりました」と話すと使用人達が拍手した。
「真斗様、おめでとうございます」
「真斗、おめでとう」と皆んなから祝福された。
「それと、真斗子爵に領地も与えられました」
「お〜」
「それでは、カンパーイ」とラティスが言うと皆んなは、グラスを高々く上にあげてから飲んだ。
真斗のところに流唯とリアが近くに来た。
「お兄ちゃん、偉くなったの」と流唯が言うと繭が「そうみたいね」と話した。
「お兄ちゃん、おめでとう」と二人は真斗に抱きついた。
皆んなで立食パーティー形式で食事をとり、飲み物を飲んでいると執事アルトがラティスに声をかけてきた。
「旦那様、エルナルド•マイヤー様がお越しになりました」
「マイヤー様が」
「はい」
「それでは、ここに通して下さい」
「畏まりました」とアルトが言って、エルナルド•マイヤーを連れてきた。
エルナルドの他に女性が一人とリアナも一緒にいた。
「お兄ちゃん」と叫びリアナは真斗のところに駆け込んで来て抱きついた。
「リアナ、元気だったかい」
「うん」とリアナは返事をした。
「あらあら、真斗は小さい女の子に好かれるわね。将来のお嫁さん候補が一杯ね」とソルティアが言った。
真斗は「はっはっはっ」と笑うと「バカっ」って繭がつぶやいた。
「さぁ、リアナ」と女性が言うとリアナは真斗から離れた。
「真斗子爵、この度は、おめでとうございます」と女性が言った。
「いえ、あの、どなたですか?」と真斗が言うとソルティアが話した。
「久しぶりね。エリーゼ」
「えぇ、久しぶり」
「ソルティア、知っている人」と真斗が聞いた。
「えぇ、私の友人ですよ」
「そうなんだ」
「真斗子爵、今日、訪れたのは娘を紹介したくてね」とエルナルドが話した。
「えっ、マイヤーさんの娘さんですか?」
「そうだよ。私の娘であり、リアナの叔母なんだ」
「そうですかぁ。エリーゼさん、宜しくお願いします」
「はい」とエリーゼは真斗と握した。
「それで、エリーゼ、今日は、どうしたの?」
「それは、私が答えよう」とエルナルドが話した。
「真斗子爵、エリーゼを使ってやってくれないか」
「えっ、使うって」
「エリーゼは、我が娘ながら財政面では特化している。新しい領地には必ず財政面では必要だ。君の役に立つと思う」
「・・・」と真斗は考えた。
新しい領地かぁ・・・と思い、現在の領地が荒れていることが真斗には見えた。立て直さないといけないなと思い返事をした。
「エリーゼさん、宜しくお願いします」と真斗は握手を求めた。
「はい、子爵」
「真斗でいいよ」
「はい、真斗様」
「真斗子爵、出遅れてしまった娘だが娶ってくれてもいいのだぞ」とエルナルドが言った。
「えっ」
「お父様、なんていうことを」とエリーゼは顔を赤らめた。
「はっはっはっ」とエルナルドは大笑いしたのだった。
「ねぇ、ラティス」
「なんですか、エリーゼ」
「あなたの知恵も貸してね」
「了解」とラティスは返事をしたあと、真斗は、ソルティアに話しかけた。
「ソルティア、お願いがあるんだ」
「何かしら、真斗」
「頂いた領地は、荒れていると思う。領地を正常に戻すには、人材を集める必要があると思う」
「えぇ、そうね」
「リアに魔法を指導してくれないか」
「リアに」
「魔法士も必要になってくると思う。リアには、才能があるような気がするんだ」
「そうね。リアは、私から見ても才能があるわね。その歳で、これだけの魔力があるもの」
「お願いできるかな」
「わかりました」
「シャルネイラ、シャルル、いるんだろう」と真斗が呼ぶとスーと二人は姿を見せた。
「君達も、力を貸してほしい」
「はい、真斗様」
「カルロス、アルゴス、二人にも来てもらうよ」
「あぁ、わかった」と二人も返事をした。
「あれ、君達は、あの時の」と真斗は、アルゴスの後ろにいる四人の竜人族に声をかけた。
「はい、アルゴス様と一緒についてきた、メルキア、アルバン、セルスです。そして、こちらは、ブルーディアといいます。以後、お見知りおきを」とメルキアが言った。
「この四人は、竜人族の中でも飛び抜けた強さを持った竜人だ。必ず真斗の力になるはずだ」とアルゴスが話した。
「皆んな、ありがとう」と真斗は頭を下げた。
この様子を見て、繭は複雑な思いをしていた。
私は、お兄さんに何もしてあげれていない。お荷物だわと悲観的に思っていた。
真斗は、チラッと繭を少し見たあと皆んなと話しをしていた。
準備期間を考え一週間後、頂いた領地である元ダルク子爵領アルスと元メルダス領メルバニアに向かうことになったのだった。
夜になると真斗は、繭と流唯の部屋に向かった。
「コンコン」と真斗はドアを叩いた。
「はい」と繭の声が聞こえた。
「僕だ。入っていいかい」
「うん、いいよ」と繭の声が聞こえたあと真斗は、ドアを開けて中に入った。
部屋に入ると、繭はベッドの上に座っていた。流唯は既に寝ていた。
「繭、元気がないようだから来たんだ。何か心配事でもあるの?」
「・・・」と何も答えず首を横に振った。
真斗は、繭の隣りに座って話した。
「何かあるんだろう。言ってほしい」
「お兄さん、私、お兄さんのために何もしてあげれていない。何もできない。皆んな、お兄さんのために何かしているし、私はお荷物だよ」と繭は涙を流していた。
「繭・・・」
「お兄さんは、私達のために頑張ってくれている。私は、お兄さんの役にもたたない」
「そんなことないよ。繭と流唯がいるから僕は頑張れるんだ。二人がいなかったら、とっくに、のたれ死んでいるよ。繭と流唯は僕の心の支えなんだ」
「ほんと」
「あぁ、役に立たないなんかないよ。だから、これからも、僕の心の支えになってほしい」と真斗は繭を抱き締めた。
「うん」と繭は返事をした。
繭は、この時、思った。あぁ、私は、お兄さんが好きなんだ。恋してしまったんだ。だけど、絶対に言えないと思っていたのだった。
それから、一週間が経過し真斗達は最初に新領地メルバニアに馬車で向かった。
メルバニアは、伯爵に復帰したエルダ・アーナルド伯爵領の隣りにあるため、メルバニアへ行く前にエルダの屋敷に寄る事にした。
真斗達一行はエルダと会うため、ソルティアも同行していたのだった。
アーナルド領に入ると入り口で、エルダが待っていた。
真斗とソルティアがエルダを見かけると二人は、馬車を降りた。
「真斗子爵、ご無沙汰しています」
「エルダさん」
「ソルティアも、一緒なのね」
「えぇ、あなたに会えると思って一緒にきたのよ」とソルティアが答えるとエリーゼも馬車から降りてきた。
「エルダ」
「エリーゼ」
「久しぶりね」と二人はハグした。
「久しぶりに三人揃ったわね」とソルティアが言った。
「エリーゼ、何故、ここに」
「私、真斗様に仕えることになったのよ」
「え〜、そうなの・・・」
「そうよ。姪のリアナを助けてくれた恩人だし、真斗様が気に入ったのよ」
「そう、真斗様なら間違いないわ。私を救ってくれた恩人ですもの」
「そうでしたね。お互い、真斗様に助けられていますね」
「そうね。だけど、エリーゼ、気をつけてね」
「何がなの」
「メルバニアに行くのでしょう」
「えぇ、そうよ」
「かなり、荒れていると聞いています」
「荒れているって、どういうこと」
「元領主メルダスが領民を弾圧していたから、治安が悪化しているのよ。ずっと、領民は苦しんでいたわ」
「そうなの、酷いわね」
「真斗様、メルバニアは荒れてみたいよ」
「そうみたいですね・・・」と真斗は返事をして、少し考えていた。
「真斗様、どうしたのです」
「エリーゼさん、僕の領地となったアルスとメルバニアは、統一しようと思っているんです」
「統一ですか」
「はい」
「ふふふ、真斗様、領地を一つにするという話は、ラティス様も考えたみたいですよ」
「本当ですか」
「はい。名称はどうするのですか?」
「ん・・・、アルバニアはどうですか?」
「いいですね。それでは、その方針でいきましょう。手配はお任せください」
「はい、お願いします」
「ふふふ、見ものね」とエルダとソルティアは話していたのだった。




