第ニ十ニ話 力の目覚め
真斗は、梨奈の力を借りたことで、時空の力と時の力を発動した。
二つの力が重なり別世界の時が、この世界の時に上書きされたのだった。
上書きされたことで、周りの全てが真っ白になって何も見えなくなっていた。
そして、しばらく時間が経過した頃だった。
真斗の意識が戻り、目を覚ますと僕は上空にいた。アルゴスが竜の姿で真斗とカルロスを乗せていたのだった。
「真斗、大丈夫か?」とカルロスに声をかけられた。
「あっ、カルロス、それにアルゴス、僕はどうして」
「君は、本来、メサイアが持っている力を使ったのだよ」
「メサイア、本来の力・・・」
「そうだ、時の力と時空の力が重なり発動したんだ。これから起きる悪い出来事を全て消し飛ばしたんだよ」
「え〜。ほんとに・・・、だから、僕は生きているんだ。僕が殺される出来事がなくなったの?」
「そうだよ。真斗が殺さなれない別世界の未来が、この世界に上書きコピーされたんだ」
「そんなことが・・・」
「これが、メサイアの本来持つ力なんだよ。メサイアは、こうして悪い未来は良い未来に上書きして、未来を導いて誘導していたんだよ」
「未来を誘導・・・」とつぶやいた。
「そうだよ。過去を変えれば未来が変わるわけではない。過去を変えても、未来は他の誘導で元に戻る作用があるからね」
「そうなんだ」
「だから、現在を最初に変えてから、過去、未来を現代に合わせて変えていくんだ」
「これが、メサイア本来の力なのか・・・」と思った。
この力は、やばいと思った。むやみに人の未来を見たり、誘導するのはやめようと思った。
「ねぇ、カルロス、メサイアは、この力で悪い未来を良い未来にかえて、悪い出来事を無かったことにしていたんだね」
「そういうことだ。だが真斗、時空の瞳が持つ力は、どうして使えたんだ」
「僕の幼馴染が力を貸してくれたんだ」
「どういうことだい」
「僕の幼馴染が時空の瞳を持っているんだ」
「なにっ、真斗の幼馴染が」
「うん、そうだよ。彼女が僕に送ってくれたんだ。時空の力を」
「そうか・・・、時空の力を」
「うん」
「だけど、よく、真斗がこの世界にいることがわかったね。瞳同士で共鳴でもしたのか?」
「いや、わからなかったんだと思う。だから、全ての異世界に対して、時空の力を送ったんだと思う」
「なるほど、そうか、彼女は、かなりの力を使ったのだろうな」
「だと、思います。ねぇ、カルロス」
「なんだ」
「彼女がいるところに行くことは出来ないかな」
「それは無理だと思う」
「何故?」
「全ての世界に次元の力を送ったということは、彼女は次元の間、世界を管理する時間樹がある場所にいるのだと思う」
「時間樹・・・」
「そう、全ての世界を実にまとう樹木だ」
「じゃあ、ここに僕がいるということを彼女に伝える方法はないかな」
「ん〜、一つだけ方法があるかもしれない」
「その方法は」
「この世界にメサイアの像があるはずなんだ」
「メサイアの像?」
「世界が創生されるとメサイアは、自分の像を一つ、その世界に置くんだ」
「自分の像を」
「あぁ、自分の像を置いて地上に降臨できるようにね」
「じゃあ、この世界にもメサイアの像があるということ」
「そうだ。メサイアの像からなら、彼女と交信ができるかもしれない」
「本当にかい、カルロス」
「あぁ、だが、メサイアの像は、この世界に幾つもあるんだ」
「えっ、なんで」
「この世界の人々がレプリカを作ったんだ」
「偽物を作ったのか?」
「そうだ、だから本物のメサイア像が何処にあるかわからない。探すしかない」
「そうか。それでは、探そう」
「そうだな、メサイアの像があれば、真斗がこの世界にいること伝えれることができる。その幼馴染も、この世界に降臨させることもできるはずさ」
「本当」
「あぁ」
「じゃあ、彼女と、また、会えるかもしれないのか?」
「あぁ、会えるとも」
「そうしたら、彼女の力を使って元の世界に戻れるかも」
「あぁ、戻れるかもな」
「カルロス、アルゴス、一緒にメサイアの像を探してくれないかな?」
「了解だ、真斗」とアルゴスが答えた。
カルロスも「オッケーだよ。真斗」と答えた。
「さぁ、真斗、降りるぞ」とアルゴスは言って降下した。地上に降りると真斗は、アルゴスの背中から飛び降りた。
アルゴスは風の渦巻きに包み込まれ、風が消えると人の姿に戻った。
真斗達は、ラティスの屋敷付近で降りたのだった。
ただ、カルロスは真斗をじっと見ていた。真斗が気づくと声をかけた。
「カルロス、どうしたんだ」
「いや、なんでもない」とカルロスは答えた。
カルロスは、真斗の動きを見て少し驚いていた。
あまりにも動きが機敏だったからだ。
「あぁ、そういうことか・・・」とカルロスはつぶやいた。
「何がだい」と真斗が言うと「いや」と答えた。
カルロスは周りを見て話した。
「まだ、時間が止まったままか」
「本当だ。時が止まったままだ」
「すざましいな。まだ、時が止まったままだなんて」
「カルロス達は、なんで動けるの」
「俺たちは、一応、神だからな。この世界の人々ではないからだよ」とカルロスが話すと繭と流唯が屋敷から出てきた。
「お兄さん」「お兄ちゃん」と二人が走ってきた。
「お兄さん、大丈夫だったの。連れて行かれて凄く心配したんだよ」
「あぁ、大丈夫だよ」と真斗は答えた。
だが、心配するから細かいことは、二人に話さないことにしようと思った。
「それと、周りが、また、止まっているのよ」
「まだ、止まったままなのか。実は僕が時間を止めたんだよ」
「え〜〜〜〜、そうなの」
「あぁ、色々とあったからね」
「色々って」
「まぁ、色々さ」
「でも、良かった」と繭は涙目になった。
繭の隣で、声も出せずにいた流唯も涙目になっていた。
「繭、流唯、心配かけたね」と真斗は二人を抱き寄せた。
「うん、うん」と二人は頷いていた。
真斗は、二人から離れると目を閉じて声を出した。
「時よ。止まった時間を稼働するんだ」と念じた。
真斗が念じると池を跳ねて宙に止まっていた魚が「チャポン」と池の中に落ちた。
空に飛んでいた鳥の群れも動き出したのだった。
止まっていた時間が、また動き出したのだ。
繭と流唯は、目をまんまるにして、周りを見て驚いていた。
「真斗、時間のコントロールができるようになったのか」とカルロスが言った。
「なんとなくね、少しずつだけどね。だけど、繭と流唯は何故、時が止まっても動けるのだろう」
「繭も、流唯も、元々、この世界の人間ではないからね」
「そういうことか」
「さぁ、屋敷に入ろう」とカルロスが言うと皆んな屋敷の方に向かって歩いて行った。
三歩、歩くと真斗達の後ろから「真斗ぉ〜〜」と声が聞こえてきた。
真斗が後ろを振り向くとリーディアが走ってきたのだった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」と息切れをしながら真斗の前まで来るとリーディアは怒りながら文句を言った。
「真斗、なんで、デートをすっぽかしたのよ」
「えっ」
「だから、デートの約束していたじゃない」
「あぁ〜。そうか」と声出した。
なるほど、リーディアとのデートは、僕がすっぽかしたことになっているのかと思った。
「あぁ〜、じゃないわよ。もう」
「ごめん」
「だけど、不思議なのよね。私、真斗とデートした夢をみたの」
「夢っ」
「そう、すごく、リアルな夢だったのよ」
「そうなんだ、夢の中で、デートしたからいいじゃん」
「なにそれ・・・、もう、埋め合わせしてもらうからね」
「はい、はい、わかりました」と真斗が答えると屋敷からラティスとソルティアが出てきた。
リーディアがソルティアを見ると真斗の後ろに隠れ、後ろ向きになった。
二人が真斗のところまでくるとラティスが話した。
「真斗、大丈夫だったのか。繭ちゃんから憲兵に連れて行かれたと聞いたんだ」
「うん、大丈夫だよ」と真斗が答えるとソルティアが「あれっ」と声を出して真斗の後ろを見た。
「どうしたんだ、ソルティア」とラティスが言うとソルティアは叫んだ。
「ひめ〜〜」
「え〜〜」とラティスも叫んだ。
「なんで、ここにいるのですかぁ」とソルティアが言うとリーディアは小声で話した。
「バレましたか」
「バレましたかでは、ないですよ。リーディア」
「ソルティア姉様、そんなに大声出さないでよ」
「何故、こんなところにいるんです。また、城を抜け出したのですか?」
「まぁ」
「まぁじゃあないです。もう、仕方がないわね」とソルティアが言うとラティスが話した。
「姫、何故、私の屋敷に」
「この真斗が、私とのデートをすっぽかしたからよ」
「え〜、真斗、姫とお知り合いだったのですか?」
「一応ね。知り合ったのは、僕がこの国に来る前にね」
「そうですか、でも、姫とデートって」
「リーディアと約束していたんだ。だけど、色々あってね」
「そうか、憲兵に連れて行かられたからか。大丈夫だったのか?」
「大丈夫」
「えっ、真斗、そうだったの。だから、デートに来れなかったの?」
「まぁね」と真斗は返事をした。
この時、本当のことは話さない方がいいなと真斗は思った。
「ねぇ、真斗、なんで、憲兵に連れて行かれたの」とリーディアが聞いた。
「わからないんだ」と真斗は話した。
「そう」
「ねぇ、リーディア、せっかくだから一緒に食事をしましょう」
「はい、ソルティア姉様」とリーディアが返事をすると木陰からうめき声が聴こえた。
「ぎ〜」と三十体ぐらいの魔族が当然、現れた。
「なんで、こんなところに魔族が」とラティスが叫んだ。
「真斗」とカルロスが呼んで剣を真斗に投げた。
「えっ、なんで、カルロス」
「大丈夫だ、真斗、もう、お前は剣を使えるよ」
「えっっ」と真斗が返事をすると魔族が真斗に襲ってきた。
「危ない」とリーディアと繭達が叫んだ。
魔族は、手の爪で真斗を引き裂こうとしたが真斗は、すかさず避けて剣を横に振り魔族を真っ二つにした。
もう二体の魔族が真斗に襲いかかったが真斗の鮮やかな剣さばきで魔族は倒れた。
この時、真斗は、なんだ、この感触はと思っていた。あまりにも手応えがあったからだ。
他の魔族も、繭、流唯に襲ってきたがアルゴスが二人を守りながら魔族を倒していた。
ソルティアも、魔法を唱え炎を出現させて魔族に投げ撃った。
魔族は、燃え上がり全滅したのだった。
「どうして、こんなところに魔族が」とラティスが言うとソルティアが話した。
「魔族を召喚した形跡を感じます。それで誰かが私達を襲わせたのでしょう」
「とりあえず、早く、屋敷に戻りましょう」とラティスは皆んなに言った。
「さぁ、リーディアも」
「はい、ソルティア姉様」と皆んなは屋敷に向かった。
ただ、ラティスは、何かおかしいと感じていたのだった。
真斗が、あんなに剣の使い手だったのかと思って真斗をみていた。
それと真斗が憲兵に連れて行かれて、何も起こらず無事に帰ってきた。
何故なんだと違和感を感じていた。
そして、真斗自身も驚いていた。なんで、剣も持ったことないのに剣が手足のように使えるんだろう。
それに魔族を斬ってしまった。魔族とはいえ殺してしまったと少しショックだった。
他の人達は、どさくさにまぎれていたため、真斗の剣さばきに気づかないでいた。
ただ、真斗の様子を見ていたカルロスが真斗に声をかけてきた。
二人は立ち止まり話をした。
「真斗、気になったことでもあるのか?」
「うん、魔族の攻撃が遅く感じたんだ。それと、剣なんか使った事がないのに剣の振り方、攻撃が出来るというか体が覚えているというか何かおかしいんだ」
「真斗、それも、時の上書き効果だよ」
「どういうこと」
「お前は、他世界の時を上書きしたろう」
「うん」
「剣技のスキルを自分に上書きしたんだ」
「カルロス、よく、わからないよ」
「他世界にも真斗自身がいて、自分の未来を上書きしたはずだよな」
「うん」
「恐らく、他世界の真斗は、剣技スキルが凄くて、自分に剣技スキルを上書きしたんだよ」
「え〜〜、そんな事が」
「そうだと思う。お前は、もう自分を守れるレベルだよ。俺が見た限り、お前の剣技は達人レベルだと思う。そのうち、剣聖とも云われるかもな」
「うそっ、マジっか」
「あぁ、そうだ」
「じゃあ、この世界にも、僕がいるのかな」
「真斗自身が、ここにいるとは限らないと思うよ。一つの世界に真斗自身が二人いることはないと思う」
「じゃあ、別世界に魔法が使える真斗がいれば、僕に上書きコピーして魔法も使えるようになるかもしれないよね」
「そういうことも出来るかもな。ただ、そう上手くいかないよ」
「どういうこと」
「今回は、たまたま当たっただけだ。剣技スキルが高い真斗に当たったんだ」
「えっ、ハズレもあるの」
「あぁ、そうだ」
「なんか、ガチャみたいだな」
「なんだ、ガチャって」
「いや、なんでもないよ。だけど、結局、次元の力がないとダメかぁ」
「そうだな」
「はぁ〜」と真斗はため息をついて思った。
とりあえず、元の世界に戻るためにも、メサイアの像を探さなければいけないと思った。
真斗とカルロスも、屋敷に戻ると食堂に昼食の用意ができていた。
皆んな席について待っていた。真斗とカルロスも席についた。
真斗の前には、リーディア、横にはソルティアが座っていた。
ラティスが「皆んな、揃ったね。さぁ食事しよう」と皆んなに声をかけた。
真斗は、ソルティアを見て話した。
「ソルティア」
「なんでしょう」
「リーディアは、ソルティアのことをお姉様と呼んでいたけど、どういうこと」
「あぁ、昔、私は、リーディアのお側付きだったのよ。リーディアが小さい頃から一緒にいたのよ」
「そうなのよ、真斗、お姉様は、いつも私の側にいてくれて面倒を見てくれていたの。だから、姉妹同然に育ったのよ」
「そうね。リーディアは妹みたいだもの」
「そういうことか、二人は幼馴染という感じか」
「そうよ、でもリーディア、真斗とデートって、どういうこと?」
「まぁ、お姉様、気にせずに」
「まさか、リーディア、真斗が好きなの」とソルティアが言うと皆んなが「え〜〜〜」と大声を出した。
真斗も驚いた顔をしていた。真斗の隣にいた繭は、少しムッといていた。
リーディアは、「内緒よ」と一言だけ言ったのだった。
皆んな、楽しく食事をしたのだった。




