第ニ十一話 梨奈の思い
時間樹の異世界に滞在する梨奈は、ひたすら真斗がいる世界を探していた。
「また、真斗くんがいない」「また、いない」と言いながら真斗がいる世界を探していたのだった。
真斗くんが危ないの、早く探さないといけないと焦っていたところ、メサイアの声が聞こえた。
「梨奈、時間がありません。このままでは、真斗を探し出すのに間に合わないでしょう」
「メサイア様、それでは、どうすれば」
「一つだけ方法があります」
「ほっ、本当でしょうか、どんな方法でしょうか?」
「はい、梨奈、あなたの持つ時空の力を全て解放し、時間樹にある全ての世界に対して、時間樹の幹から時空の力を送るのです」
「私の力を全ての世界に送るって」
「そうです。この中に必ず真斗がいる世界があるはずです。だから、梨奈の力が真斗がいる世界に必ず送られるはずです」
「本当ですか?」
「はい」
「時空の力が送れたら、どうなるのですか?」
「梨奈の力である時空の力を真斗が受け取れれば、私の本来の力が一度だけ使えるはずです」
「メサイア様の本来の力って、どういう力なのでしょうか?」
「真斗がいる世界で、未来を変えることができるのです」
「未来を変えるって、そんなことが出来るのですか?」
「はい、出来ます。真斗がいる世界の未来を他の異世界にある未来に書き換えるのです」
「未来を書き換えるって、どういうことですか?」
「今、真斗がいる世界は、真斗が殺される未来が待っています。別の世界では、真斗が殺されない未来があると思います。その未来を真斗の世界に上書きするのです」
「そっ、そんなことができるのでしょうか?」
「出来るのです。時空の力と時の力によって、良い未来に導いていく。良い未来に誘導していくのが私、本来の役目なのです」
「それでは、私の力が真斗くんに伝われれば、真斗くんは殺されないのですね?」
「そうです。ただ、問題があります」
「どんな、問題ですか?」
「全ての世界に梨奈の力を送るのですから、あなたは力尽き、しばらく眠りについてしまうことでしょう」
「しばらく眠りにつくというのは、どれくらいなのでしょうか」
「少しの間です。眠っていることで少しずつ力が戻り、目を覚ますでしょう」
「わかりました。メサイア様、私、やってみます」と梨奈は言って、両足をひざまづいた。
両手を合わせ目を閉じた。
「メサイア様、まずは、どうすれば良いのでしょうか?」
「梨奈、あなたの思い、真斗への思いを込めるのです」
「わかりました。真斗くん、私は、あなたが大好きです。あなたを絶対、死なせはしない。だから、必ず、私の思いを受け取って下さい」
「・・・、真斗くん」と何回も心に思うと梨奈の額辺りから、白く光る球体が現れた。
「梨奈、今です。今度は、あなたの時空の力を時間樹にぶつけるイメージをするのです」
「わかりました」と梨奈は、光球体に真斗への思いを込めて、球体を時間樹にぶつけるイメージをした。
そして、梨奈は祈った。
「力の源よ、メサイアの力よ。私に力を」と更に願った。
「真斗くん、私の思いを・・・」と小声で願うと白く光る球体の上に赤く光る球体が現れた。
赤い球体は、白い球体と重なると球体がピンク色に変化し球体に輝きが大きくなっていった。
「私の思いを全ての世界に」と梨奈は叫ぶと梨奈の体も、ピンク色した光に包まれた。
球体と梨奈の光が更に光出し、球体は時間樹に向かって移動していった。
球体が時間樹を包み込み更に輝いたのだった。
時間樹は、しばらく輝いてきたが光が消えると梨奈は、倒れ込み眠りについた。
「梨奈、頑張りましたね。しばらくは、お休みなさい」とメサイアは言った。
ここ、真斗がいる世界では、ラティスが奮闘していた。真斗の居場所がなかなか見つからなかったからだ。
エルガー伯爵家に仕える部下の殆どが真斗の捜索に動員していたが見つかっていなかった。
ラティスが書斎で、報告を待っていると「ラティス様」とシャロウが現れた。
「シャロウ、真斗は見つかったか?」
「はい、真斗様の居場所が見つかりました」
「本当か」
「はい」
「何処ですか?」
「王都から少し離れた離島に連れて行かれてたようです。真斗様が連れて行かれるところを見た者がいました。恐らく、離島の地下牢にいるものと思います」
「そうか、わかった」とラティスが返事をすると書斎を出て、アルゴスがいる部屋に向かった。
ラティスが廊下を走っているとソルティアとすれ違った。
「ラティス、どうしたの?」とソルティアが声をかけた。
「真斗が見つかったのです」
「ほんと」
「あぁ」とラティスは言って急いでアルゴスがいる部屋に向かった。その後をソルティアも追いかけた。
ラティスがアルゴスの部屋前に来るとソルティアも後ろにいた。
ラティスが部屋のドアを開けて声をかけた。
「アルゴス、いますか?」
「なんだ、ラティス、どうした」
「アルゴス、頼みがあります」
「頼み・・・」
「はい、真斗が見つかりました。だから、あなたの力を貸してください」
「見つかったのか、それで、何をすればいいのだ」
「真斗は、ここから少し離れた離島にいます。あなたの仲間であるドラゴンを使って襲わせて欲しいのです。できますか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「私達が表立って出ることはできません。だから力を貸してください」
「真斗を助けるためなら、なんでもやる」
「ありがとう。アルゴス、それと、シャロウは、いますか?」
「はい、ここに」
「あなたの部下を使って、どさくさにまぎれて真斗を救ってください」
「はい、わかりした」
「それと、偽装をお願いします」
「かしこまりました」とシャロウは言って消えた。
「真斗、どうか、ご無事で」とラティスは祈っていた。
その頃、真斗は拷問を受けて気絶して鎖に繋がれていた。
憲兵隊員は話していた。
「これ以上、やったら死ぬかもな」
「あぁ、そうだな、メルダス様は殺すなと言っていたからな」
「とりあえず、鎖を外して転がしておこう」と憲兵隊員達は、鎖を外して地面に転がした。
憲兵隊員達が地下牢から出てくると他の憲兵隊員が来た。
「おい、メルダス様が、こいつを地下牢から出せとのおおせだ」
「そうか、わかった」と憲兵隊員は真斗を担ぎ地下牢から出した。
憲兵隊員達は、真斗を外に連れ出し、放り投げた。
真斗は、そのまま倒れ込み、うつ伏せ状態になった。憲兵隊員は、両手首は後ろに縛り、動けないようにしているとメルダスが近づいてきた。
「ふふふ、なんだ、瀕死の状態じゃないか、殺していないだろうな」
「はい、かろうじて生きています」
「そうか、おい、水をぶっかけろ」とメルダスが言うと憲兵隊員は、バケツに水を入れて持ってきた。
「おい、ぶっかけろ」とメルダスが言うと憲兵隊員は、バケツの水を真斗の頭辺りにぶっかけた。
「まだ、起きないか、もう一度だ」とメルダスが言うと「うっうっうっ」と真斗が声を出した。
「おい、起きろ」と憲兵隊員が叫んだ
「うっうっうっ」と声をあげ、真斗は目を覚ました。
「真斗男爵、どうかね。目が覚めたかね」とメルダスが言うと真斗は、少し頭を上げた。
「真斗男爵、気分はどうかな?」
「・・・」
「答える気力も無いかな、男爵、あなたがリーディア姫の殺害したと言えばいいだけです。そうしたら、殺しはしない。国外追放だけですませてあげますよ」
「・・・、僕は、リーディアを殺そうとしていない」
「頑固ですね。憲兵、もう、やってしまいなさい。後で、死んでしまったと報告すればいい」とメルダスが言うと憲兵は剣を抜いて真斗の前に立った。
その頃、アルゴスはカルロスを乗せて離島の上空に差し掛かっていた。
シャロウ、シャルネイラ、シャルルも離島に上陸して近くまで来ていたのだった。
そして、アルゴス達が真斗の姿を捉えたところだった。
「真斗」「真斗様」と叫んでいた。もう、間に合わないと皆んなが思ったところだった。
憲兵隊員が剣を上に掲げたところ、真斗は思った。
僕は、まだ、死ねない。こんなことで死んでたまるかと真斗は、思った。
「メサイア、僕に力を、僕に力を・・・」と何度も真斗が念じると真斗が光輝いた。真斗が光に包まれると憲兵の腕が急に止まった。
時間が止まったと真斗はつぶやいた。
真斗が周りを見ると何もかも止まっていた。あぁ、時間を止めることが出来たのかぁ。
だけど、時間を止めても駄目だ。もう、体が動かない。腕も足も、骨が折れているかもしれない。ここまでなのかと思っているとかすかな声が聞こえてきた。
「真斗くん、私の声を聞いて」
「えっ、この声・・・」
「真斗くん、私の声を聞いて」
「まただ、こっ、この声は、かっ樫井さん」
「私の思い、そして、私の力を受け止めて下さい」
「樫井さんの思い、力、どういうことなんだ。樫井さん、何処にいるんだ」と真斗は叫んだ。
「樫井さん・・・、樫井さん」と叫んでいると真斗の上辺りにピンク色した光の粒が集まってきた。
「こっ、この光の粒は、なんだ」と真斗が思うと光の粒は、真斗の身体に少しずつ入っていった。
「真斗くん、今だから言います。私は、あなたが大好きです。これが、私の思いです。私が、あなたを死なせはしない」
「樫井さんが、僕のこと」と声を出すとメサイアの声が聞こえた。
「真斗、この光は梨奈が持つ時空の力です。この力を使って開放するのです」
「時空の力・・・」
「そうです」
「何故、樫井さんが時空の力なんか」
「真斗、時間がありません、梨奈の思いを受け取りなさい」
「樫井さんの思い・・・」と真斗が思うと光は、真斗の中にどんどん入っていき光に包み込まれていったのだった。
「暖かい、なんて、暖かいんだろう。樫井さんの思いが伝わる」
「あぁ、そうか・・・」
「だから、今まで樫井さんは、僕を気にかけてくれたのか」と真斗は、梨奈の思いを知った。
「真斗、梨奈の思い、そして、時空の力を使うのです。使い方は、わかるはずです」
「メサイア、わかったよ。この力、時空の源を開放するよ。僕が死んでしまう未来なんて、あってはならないからね」と真斗が思うと光は、更に輝き出した。
「樫井さん、ありがとう。こんな、僕を好きになってくれて、樫井さんに会えるまで絶対に死にはしない」と真斗は思い念じた。
「時の源よ。時空の源よ、僕に力を〜」と真斗は叫んだ。
真斗の体内にピンク色の粒が輝き、白い光に変わって更に輝き出した。
光が真斗を包み込み、空に広がっていくと真斗の真上辺りから「ビシッ」と音が鳴り、空に亀裂が現れた。
「バキバキ」と地響きがなる音がなって空が割れていった。
割れた中から大きい球体が現れ、外に出てきた。
「そうか、この球体が別世界の未来か」と真斗は思った。少しずつ、球体が外に出てきた。球体が全て外に出ると真斗は叫んだ。
「時空の力よ、時の力よ、我が力となりて、この世界をかえよ。過去、現在、未来の時を上書きせよ」と叫ぶと「ガッコン」と大きい音が鳴った。
真斗が周りを見るとメルダス、憲兵隊員達が消えていくのが見えた。拷問を受けて怪我をしたところも怪我自体が無くなることも感じたのだった。
球体は、更に光出し、全てが真っ白になって何も見えなくなったのだった。
「樫井さん、ありがとう。君の思い受け取ったよ、僕も樫井さんが好きだよ・・・、あぁ〜、疲れた」と一言だけ言って気を失ったのだった。
そう、この世界で起きるはずだった真斗の未来、真斗が殺されること自体が無くなったのだった。




