第十九話 新たな陰謀
リアナを助けるため、誘拐犯が潜む洞窟に来ていた。
真斗とリアは、リアナを助け出し洞窟の奥へ奥へ入って行くのだった。その後をシャルネイラとシャルルもついて行った。
しばらく、進むと洞窟の先から光が見えてきた。洞窟の出口が見えてきたのだった。
出口を抜けると前は、大きな川だった。
「リア、もう一度、力を貸してくれるかい。川を凍らせて、向こうの岸まで道を作って欲しいんだ」
「わかった。お兄ちゃん」と返事をして、目の閉じると霧が発生し、川が白くなっていき「カキン」と凍り出した。
向こう岸まで氷の道ができたのだった。
「リア、ありがとう。皆んな、向こう岸まで渡るよ」と真斗は声をかけた。
五人は、氷の道を走り向こう岸まで渡るのだった。
岸の先には、森があった。真斗は皆んなに声をかけた。
「皆んな、森の中でアルゴスが待っているはずだ。合流するよ」と言って皆んなと森の中に入って行ったのだった。
その頃、憲兵隊の本部にいるラティスとメルダス達は、アジトに入った憲兵隊員達が戻ってくるまで待っていた。
しばらく経っても、なかなか戻ってこなかったためメルダスは、おかしいと思っていた。
メルダスは、アジトに入るか迷っているとラティスは察知して声をかけた。
「メルダスさん、もう少し待ってみましょう」と言いながら時間稼ぎをしていた。
その間に真斗達はアルゴスと合流してきた。
「アルゴス、街の近くにある森まで飛んでくれるかい。それと、凍った川を火で溶かしておいてくれるかな」と真斗はアルゴスに言った。
「わかった。真斗」とアルゴスが返事をするとアルゴスは光出し、竜の姿になった。
「さぁ、皆んな背中に乗ってくれ」とアルゴスは地響きがなるような声で言った。
皆んなは、黒光の竜になったアルゴスを見て驚き動けなくなっていた。
「皆んな、大丈夫だよ。さぁ、アルゴスの背中に乗るんだ」と真斗は言った。
皆んなは、恐る恐るアルゴスの背中に乗り始めた。
「皆んな、捕まってくれ飛ぶぞ」とアルゴスは叫んで一気に空へ飛んだ。
アルゴスは、一度、旋回して川の上に止まり空中から火を吹いた。凍っていた川は一気に溶けた。
全部、溶けたことを確認すると一気に飛び去ったのだった。
アルゴスは、見つからないように森の上空スレスレに飛んでいた。
街の近くまで来るとアルゴスは森の中に降りてから真斗達を降ろした。
アルゴスは光出して人間の姿に戻ったのだった。
リアナ達が固まっていると真斗は笑いながら話した。
「実は、アルゴスは竜神様なんだ。だから、大丈夫だよ。それと、竜神様ということは内緒だよ」と真斗が言うと皆んな「うん、うん」と頷いていた。
真斗達は、エルナルド•マイヤーがいる屋敷に向かったのだった。
真斗達がエルナルド•マイヤーの屋敷に向かった頃、メルダスは痺れを切らしていた。
「ラティス様、これだけ戻ってこないのは、おかしい。アジトに入ってみましょう」
「そうだね。行ってみましょう」とラティスも返事をして、憲兵隊員と共に入って行った。
メルダスは、憲兵隊員を使って誘拐犯と真斗が捕まっているところをラティスに見せる手筈だった。
アジトの奥まで行くとメルダスとラティスは、憲兵隊員が倒れているのを発見した。
その先には、誘拐犯が縛られて気絶していたのだ。
「こっ、これは、どういうことだ」とメルダスは叫んだ。
「誘拐犯は、捕まっているけど、真斗達とリアナはいないですね」とラティスが話した。
「おい」とメルダスは憲兵隊の頬をひっぱたいた。
憲兵隊は起きなかった。
「ラティス様、これは、真斗男爵がリアナさんを連れ去ってしまったのではないか。黒幕は真斗男爵ではないのか」とメルダスは言い出した。
「まだ、わかりませんよ。奥に行ってみましょう」とラティスが話すとメルダスと共に奥に進んだ。
洞窟を抜けると大きい川だった。
「メルダスさん、向こう岸まで結構ありますよ。真斗達も泳いで渡るわけないと思いますが」
「そうですね」
「とにかく、王都に戻りましょう」とラティスが言うと皆んな戻って行った。
その頃、真斗達はエルナルド•マイヤーの屋敷に着いていた。
エルナルド•マイヤーは、リアナの姿を見かけると大声を出した。
「リアナー」
「おじいちゃん」とリアナは、エルナルドに抱きついた。
「リアナ、よく無事で」
「おじいちゃん、大丈夫だよ。真斗お兄ちゃんが助けてくれたの」
「本当か」
「うん」とリアナが返事をすると真斗とリアはリアナの後ろで立っていた。
「真斗男爵、本当にありがとう。なんてお礼を言ったらいいか」
「気にしないで下さい」
「君は、リアナの命を救ってくれた」
「当たり前のことをしただけです」
「ありがとう。男爵、本当に感謝を!」とエルナルドは頭を下げた。
「頭を上げて下さい」と真斗が声をかけるとエルナルドは頭を上げた。
「男爵、何かあれば、なんでも言ってくだされ。我がマイヤー家一族が男爵の後ろ盾になりましょう」とエルナルドは真斗の手を握りしめ、再度、頭を下げたのだった。
ラティス達が王都に戻ってくると真斗がリアナを助けたことが街並みで話題になっていた。
メルダスは、「なんで、こんなことになっていたんだ」と悔しがっていた。
メルダスは憲兵隊本部に戻るとダルク子爵が待っていた。
「メルダス、これは、どういうことだ」
「子爵、誠に申し訳ありません。小僧を落とし入れることができませんでした」
「小僧の周りには、人が集まっていく、なんて、世渡りが上手い奴なんだ。一役、英雄ではないか」
「誠に申し訳ありません」とメルダスは土下座をした。
「メルダス、次の一手は」
「はい、この前、リーディア姫と小僧は会っていました。必ず、また会うでしょう」
「それで」
「姫を襲い、小僧の仕業にするのです」
「なら、やってみろ。その時は私も出向く。今度は、失敗するなよ。もう、後がないと思え」
「はっはー」とメルダスは頭を下げた。
その頃、真斗はエルガー伯爵家に戻ってラティスと会っていた。
「真斗、上手くいったな」
「そうですね」
「真斗、こういうストーリーだったのか?」
「そうだよ、このストーリーが見えたんだ」
「未来の時間が見えるのは、凄いな」
「だけど、まだ、コントロールができないけど、今回は、ハッキリと未来の時間が見えたんだ」
「そうか、制御できるようになって、上手く世渡りしていってくれよ」と笑いながらラティスは、言った。
真斗も、一緒に笑ったのだった。
そして、数日が過ぎリーディアと約束の日となった。
その頃、リーディアは真斗とのデート準備をしていた。
また、爺やのアルベルトに頼んで城を抜け出す算段だった。
「ふふふ、楽しみ。真斗とデートだなんて、今日は、繁華街に行って、美術館にでも行こうかしら」と独り言をつぶやいていた。
リーディアは、アルベルトの手引きで、早速、城を抜け出した。
急いで、馬車に乗り真斗と待ち合わせしているとこまで行くのだった。
その後、リーディア姫が城を抜け出しだということがダルク子爵のもとに連絡が入った。部下に監視させていたのだった。
ダルク子爵とメルダスは、リーディア姫の後を追ったのだった。
真斗も、起きて屋敷を出る準備をしていると繭と流唯が真斗の部屋に入って来た。
「お兄さん、流唯から聞いたよ。綺麗な女の人とデートするって」
「えっ、デートじゃないよ。ただ、繁華街に行くだけだよ」
「それをデートっていうんじゃない」
「デートではないよ」
「じゃあ、私も行くからね」と繭は怒り気味に言った。
「まぁ、いいけど、なら、一緒に行こう」
「私も行くからね」と流唯も言った。
真斗は、なんで繭は怒っているんだと思いながら、三人はリーディアとの待ち合わせ場所まで向かった。
三人は昨日、襲われた場所までくると既にリーディアが待っていた。
繭は、彼女を見て、「なんて、綺麗な人なの」と思った。
リーディアは真斗を見かけると手を振った。
真斗がリーディアのところに行き声をかけた。
「リーディア、待った?」
「私も、今、来たところよ。おはよう、流唯ちゃん」
「おはようございます。リーディアさん」
「リーディア、あと、この子は、妹の繭です」
「もう一人、妹さんがいたのね。はじめまして、繭ちゃん」
「おはようございます」と繭はそっけなく言った。
「ふふふ、あらあら、繭ちゃん、お兄さんは取りませんよ」とリーディアが言うと繭は、赤くなった。
「さぁ、行きましょう。皆んな、馬車に乗って」とリーディアが言うと皆んなで馬車に乗った。
「アルベルト、馬車を出して」
「はい、リーディア様」とアルベルトは返事をし、「ハイヤー」と叫んで馬車を出した。
「真斗、繁華街に行こうと思うの。皆んなで露店を見たり、美味しいもの食べたり、お茶もしたりしようよ」
「いいね。繭、流唯、どうだ」と真斗が聞くと二人は「いいよ」と答えた。
「ねぇ、真斗、あと、美術館に行きたいの。真斗に見せたいものがあるのよ。どうかしら」
「えっ、美術館」
「そう、珍しいものがあるのよ。どうかしら」
「ごめん、リーディア、美術館は、ちょっと」
「いやなの」
「今日は、行きたくない気分なんだ」
「そう、残念。また、今度ね」
「そうだね」と真斗は答えた。
そのとき、真斗はなんとなく美術館に行かない方がいいと感じていたため、美術館に行くのをためらったのだった。
その時、リーディアは、なんで美術館に行きたくないんだろうと不思議に思っていると馬車は、繁華街の近くまで来ていた。
「リーディア様、何処へ行きますか」とアルベルトが聞くとリーディアは、「そこで、降ろして」と答えた。
「かしこまりました」とアルベルトは返事をして馬車を止めた。
四人が降りるとアルベルトは、「リーディア様、私は、ここで待機しておりますので、帰るときは、ここにお戻りください」と言った。
「わかったわ、アルベルト、ありがとう」
「はい」
「皆んな、こっちこっち」と露店がある方にリーディアは誘った。
リーディアは大はしゃぎだった。
最初は、アクセサリーの店に行くと「これ、可愛いい」と言いながらブローチらしき物を見ていた。
「繭ちゃん、流唯ちゃん、見て、可愛いわよ」とリーディアが言うと二人は、「ほんと、可愛いい」と言いながら一緒に見ていた。
真斗は、三人の様子を見ながら思った。
女の子は、こういうものが好きだよなと思って見ているとリーディアが真斗をジッと見ていた。
真斗は、買って欲しいのかなと思い、「リーディア、買うの」と言った。
「うん、真斗、欲しい」とリーディアは答えた。
真斗は、「繭、流唯は」と聞くと「買ってくれるの」と二人は答え喜んでいた。
「おじさん、これと、これと、これを」と言って可愛いいブローチを買って三人に渡した。
「嬉しい〜、お兄ちゃん、ありがとう」
「お兄さん、ありがとう」
「真斗、ありがとう」と三人はお礼を言った。
三人は大喜びだった。他の店にも行き色々と見たあと流唯が「お腹、すいた」と言い出した。
「流唯ちゃん、じゃあ、あそこに行こうよ。お肉を焼いているわ。美味しそうよ」
「うん」と流唯は返事をして、二人は走って肉を焼いているところに行った。
真斗と繭も二人のあとを付いて行った。
その時、「真斗様」と後ろから声をかけられた。
「真斗様、少し警戒をなさって下さい。真斗様達を見ている輩がいます」
「本当にシャルネイラさん、いつも、ありがとう、シャルルもいるの」
「はい、シャルルも近くにいます」
「わかりました。ありがとう」と真斗は答えると少し先のことを透視した。
自分達に矢を放って来て。シャルネイラ達が防いでくれることは
透視できた。
真斗は、シャルネイラに話して警戒してほしいと小声で話したのだった。
その頃、真斗達の近くにダルク子爵達もいた。
部下と共に真斗達の様子を見ていたが、繁華街の中で人が多く襲うことができないでいた。
「小僧め、なかなか、人の気がないところに行かないな。美術館とか室内での場所に入ればよいが」とつぶやき、チャンスを伺っていた。
「子爵、どうしましょうか?」
「んーん、そうだ。いいことを思いついた」
「何か思いついたのでしょうか?」
「メルダス、矢に死なない程度の毒を塗って、姫にかすらせるんだ」
「それで、どうするのですか?」
「姫の殺害容疑を小僧に負わせるんだ」
「なるほど、なら、憲兵も呼んでおきます」と二人は陰謀を企んでいた。
繭と流唯は、串焼きの肉を食べて満足していた。
噴水のある広場で、芸を見せている人達を見たりもしていた。
芸が終わると人がバラけた。
人だかりが減った頃にアサシンの毒矢が真斗目掛けて三方向から六本、飛んで来た。
「真斗様」とシャルネイラが叫んだ。
シャルネイラとシャルルは、真斗を取り囲み矢を弾いた。
矢は「カキーン」と音が鳴り地面に刺さった。
別の方向からも、一本の矢がリーディアの方に飛んで来た。
真斗は、「リーディア」と叫んだ。
シャルネイラとシャルルは、真斗を守ったため、間に合わなかった。
「キャー」とリーディアは叫んで倒された。
「リーディア」と真斗は叫んで、リーディアのところに駆け込んだ。
矢は、リーディアの腕をかすめただけだった。
矢は、そのまま、地面に刺さっていた。
真斗は、なんで、リーディアにも矢が飛んでくることを認識しなかったんだ。
自分に直接関わる相手なら認識できたはずだ。自分と妹達のことしか透視しなかったことに悔やんでいた。
一体、誰が僕達を狙って来たんだと思っているとリーディアは真斗に声をかけた。
「真斗、大丈夫よ、かすり傷程度だから」とリーディアは言って立とうとしたところ、また、倒れた。
真斗は、リーディアを抱き抱え抑えた。
「リーディア、リーディア」と真斗が声をかけるとリーディアは意識を失ってしまった。
そのとき、繭と流唯は、震えて動けないでいた。
「リーディア、リーディア」と真斗が声をかけても反応はなかった。
真斗達が騒いでいたため、人が集まってきた。シャルネイラとシャルルが繭と流唯のところに来ると女性が声をかけてきた。
「あの、どうかしましたか?」
「すいません。誰かに襲われたんです。矢が飛んできたんです。医者はいませんか?」と聞くと「憲兵」と叫ぶ声が聞こえた。
叫んだのは、ダルク子爵だった。
「この者を捕らえよ。リーディア姫を殺害しようとした輩だ。その毒矢が証拠だ」と叫んだ。
「リーディア姫だって」
「そうだ、アルセーヌ王国、第一王女のリーディア様だ」
「えっ、そんな。リーディアが王女様だなんて」
「黙れ、お前、さぁ憲兵、この者。捕らえよ」と子爵が叫ぶと憲兵は、真斗の顔を殴り、押さえ込んだ。
「ぐっ、ぼぼ僕は彼女を殺害しようとなんてしていない」と真斗は叫んだが、「黙れ」と憲兵は真斗を殴った。
「お兄さん」「お兄ちゃん」と繭と流唯が叫んだ。
「繭様、流唯様、少しお待ちください。今は、まずいです。憲兵に逆らってはいけません」とシャルネイラが二人の腕を掴みながら言った。
憲兵は、「さぁ、来い」と言って真斗を連れて行った。
真斗は、気を失い憲兵に抱えながら連れて行かれたのだった。