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世渡り上手の異世界征服ライフ  作者: 寺田ゆきひろ
第ニ章 出世の道
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第十八話 新しい出会いと世渡りの始まり

 真斗に魔物を差し向けたダルク子爵は、書斎でワインを片手に笑っていた。

「ふふふ、今頃、あの小僧は魔物に襲われて死んでいるはずだ」と思いながら連絡を待っていた。

 しばらくするとダルク子爵のところに側近のメルダスが訪れた。


 メルダスは、書斎のドアを叩いた。

「子爵、今、大丈夫でしょうか」

「おー、メルダスか、連絡を待っていたぞ」

「はい、遅くなりました。誠に申し訳ございません。魔物を差し向けましたが失敗しました」

「なんだと、どういうことだ」

「十体の魔物は、あっという間に倒されたそうです」

「なに〜、小僧には、強力な護衛でも付いているのか?」

「はい、そのようです」

「更に魔物を差し向けよ」

「ダルク様、これ以上、王都に魔物を入れるのは難しいかと」

「なら、小僧を落とし入れる方法でも考えろ」

「はい、わかりました」とメルダスは去って行った。


 翌日の朝、真斗はラティスとソルティアと一緒にアーナルド伯爵家の屋敷に来ていた。

「エルダ」とソルティアが声をかけてた。

「ソルティア、無事で良かった」と二人はハグをした。


「ソルティア、ラティス、本当にありがとう。あなた達のおかげです」

「違うのよ。私達ではないわ。あなたを助けたのは、ここにいる真斗が救ったのよ」

「えっ、この方が」

「エルダ、紹介しよう」とラティスが言った。


「こちらは、真斗男爵、私達の親友だよ」

「そうなの、真斗様、ありがとう。あなたには感謝します。何か私にできる事があったらなんでも言ってね」

「はい、エルダ様」と真斗は答えた。


「エルダ、お父様のこと聞いたわ。なんて言っていいか」

「悲しいことだけど仕方がないわ。私達は生きています。これから未来のことを考えていきたいわ」

「そうね。これからは協力して頑張りましょう」

「そうね。宜しくね。ソルティア」


「エルダ」

「はい、なんでしょう、ラティス」

「真斗のことだけど、彼のことを少し話そう」

「真斗様のこと」

「そう、彼は未来ある人物なんだ、色々な意味で私よりも才能がある」

「ラティスよりも」

「そうだとも、詳しい話はできないが真斗とも仲良くしていってほしい」

「わかったわ、でも、色々な意味で才能があるというのは、なに」

「ん〜、なんていうべきか」

「ラティス、真斗は、色々な意味で、かなりの世渡り上手よ」

「はっはっはっ、そうだな」

「そうなの」とエルダは真斗をしみじみと見た。


「エルダ様、そろそろ、お時間です」と執事が声をかけてきた。

「わかりました。馬車の用意をお願いします」と言うと執事は、馬車の用意に向かった。


「エルダ、お出掛けなの」とソルティアが聞いた。

「アルベルト公爵の屋敷に行くのよ。復帰の挨拶よ」

「私達も一緒に行って、いいかしら」

「いいわよ、一緒に行きましょう」とエルダは話し、出かける準備をした。


 その頃、ダルク子爵は憲兵隊の本部にいた。

 ダルク子爵は、憲兵隊の副隊長だが隊長であるソルティアの弟が病に倒れ休職していたことからダルク子爵が隊長代行をやっている。

 憲兵隊は、ダルク子爵が牛耳っていたのだった。


 ダルク子爵が隊長室にいると憲兵隊員が入ってきた。

「ダルク子爵、誘拐一味がエルナルド•マイヤー様の孫娘を誘拐しようとしていることがわかりました」

「そうか、そのまま、誘拐させろ」

「えっ、なぜです」

「アジトを突き止め、一網打尽にするんだ」

「なるほど、だけど、孫娘は大丈夫ですかね」

「身代金が欲しいんだ。手荒な真似はしないだろう」

「わかりました」と憲兵隊員は返事をして隊長室を出た。


 エルナルド•マイヤーは、王国随一の商社を一代で築き上げた男だ。

 財界ではエルナルドの右に出る者はいないほど力を持つ人物であった。

 ダルク子爵は、真斗男爵を誘拐一味のアジトに誘い込めないかと考えていたのだった。


 その頃、アルベルト公爵の屋敷に来ていた真斗達は、アルベルト公爵と会っていた。

「皆んな、よく来てくれた。エルダ、君には申し訳ないことをした。元の状態に戻すのは難しいと思う。出来る限りの支援はさせて頂く」

「ありがとう、ございます。公爵」

「真斗男爵、君のおかげだ」と公爵は頭を下げた。

「いいえ、僕は大したことはしていません」

「ふふふ、男爵は謙虚だな。皆んな、一致団結して頑張ろう」と公爵が言うと真斗、ラティス、ソルティア、エルダは、「はい」と返事をした。


「皆んな、これからエルナルド•マイヤーと会うことになっているのたが、会っていくか?」

「エルナルド•マイヤー様、はい、お願いします」とラティスは言った。


 公爵は、執事にエルナルド•マイヤーを通すように言った。

 しばらくするとエルナルド•マイヤーが入ってきた。


「エルナルド、久しいの」

「はい、公爵、しばらくぶりですな」

「ラティス、ソルティアは会ったことあるだろう」

「はい、何度かエルナルド様には会ったことがあります。エルナルド様、お久しぶりです」

「久しいの、ラティス殿、それにソルティア殿、それと、そちらの女性は」

「エルダ・アーナルドといいます。以後、お見知り置きを」

「おお〜、復帰したアーナルド伯爵家の」

「はい、そうです」

「父上には、お悔やみ申し上げます」

「とんでもございません」

「以前、父上には、大変、お世話になりました」

「そうでしたか」

「何かあったら、何でも言ってくだされ」

「はい、ありがとうございます」


「んっ、ラティス殿、そちらの若い子は」

「はい、こちらは、真斗男爵です」

「お〜、彼が、噂は聞きました」

「そうですか、彼は、私の親友なのです」

「ほ〜、ラティス殿の友人か、ん〜、何か魅力的なところを感じるな」とエルナルドは真斗をしみじみと見た。


「エルナルド様、宜しくお願いします」と一言だけ真斗は言った。

 エルナルドも「宜しく」と一言だけ言った。


「エルナルド殿、それでは行きますか」とアルベルト公爵が言った。

 エルナルドも「そうじゃな、それでは失礼する」と言って、公爵と一緒に出て行った。

 真斗達も、アルベルト公爵の屋敷を出て馬車に乗り込もうとすると真斗は、木の上を眺めている女の子を見かけた。


「ラティス、先に帰っていて」と真斗はラティス声をかけて、女の子の方に向かった。

 ラティスは、「わかった」と返事をして先に戻った。


 女の子は、金髪のセミロングでツインテールの髪型をした女の子だった。

 女の子の隣には、執事らしき老人もいた。


「お嬢様、諦めた方がいいです。別の帽子を買いましょう」

「イヤよ。爺や。あの帽子が気に入っているの」と二人は話していた。


 真斗は近づいて、話しかけた。

「どうしたの」

「帽子が風で飛ばされて、木の上に引っかかってしまったの」

「あの帽子」

「そう」

「じゃあ、ちょっと待っていて」と真斗は言って、石を五個拾った。

 真斗は、帽子、目掛けて石を投げたが、外れてしまった。

 もう一度、投げたが外れてしまった。

「おかしいな、今度こそ」と言って、もう一度、石を投げた。

「カサッ」と音が鳴り、石が帽子に当たった。

 帽子は、下に落ちてきた。

 真斗は帽子を拾って、女の子に渡した。

「はい、帽子」

「お兄ちゃん、ありがとう。嬉しい」と女の子は凄く喜んだ。

 老人も、「ありがとうございます」とお礼を言った。


「私、リアナ、お兄ちゃんは」

「僕は、真斗」と答えると老人はびっくりして言った。

「あなたが真斗男爵様ですか?」

「はい」

「これは、光栄です」

「ねぇ、爺や、この、お兄ちゃん有名なの?」

「はい、うわさの人物です。庶民が貴族になって、しかも、準男爵を飛び越えて男爵様になった人です。こんなに若い人だったなんて」

「へ〜、お兄ちゃん、そんなに有名な人なんだ」

「そうですよ。お嬢様」


「僕は、そんなに凄くなんかないよ。ただ、運が良かっただけだよ」

「そんなことありませんよ。何もない人に男爵の爵位なんか授かりません」

「ねぇ、お兄ちゃん、私の恋人になってよ」

「え〜、リアナ、君、何歳だよ」

「私、もう、十歳だもん」

「もっと、大きくなったらね」と真斗は言って、リアナの頭を撫でた。

「もう、子供扱いしてぇ」

「じゃあね。僕は帰るから」と真斗は去ろうとした。


 真斗が少し離れてからリアナは大声で言った。

「ねぇ〜、お兄〜ちゃん、何処に住んでいるのぉ」

「エルガー伯爵家に滞在しているよぉ」

「ほんと〜」

「ほんと〜だ、今度、遊びに来るといい」

「絶対に行くよ〜」

「あぁ、待っているよ〜」と真斗が答えるとリアナの視界から真斗が見えなくなった。


「お嬢様、真斗男爵は、あのラティス様のご友人だそうですよ。だから、エルガー伯爵家に滞在しているのだと思います」

「ほんと、ラティス様にも会えるかな」

「会えるかも、しれませんね」

「ラティス様にも会ってみたいな」とリアナは遊びに行くのを楽しみにしていた。

 だが、この後、リアナは姿を消したのである。


 真斗は、ブラブラしながら歩いてエルガー伯爵家の屋敷に戻った。

 屋敷の前に馬が三頭ほど繋がっていた。

 真斗が屋敷の中に入るとメルダスと憲兵隊員が三人待っていた。


 屋敷の入り口では、皆んないた。ラティスは、憲兵隊員と話をしていた。

「真斗、やっと帰ってきたか」

「なんか、あったの」

「エルナルド•マイヤーさんの孫娘さんが誘拐されたんだ」

「えっ、お孫さん」

「そうだ、さっき、会っていただろう」

「さっきって」

「リアナちゃんに会っていただろう」

「あ〜、あの子が」

「そうだよ」

「あのあと、どうした」

「あの時、帽子を取ってあげて、別れたよ」

「そうか、ということですが」とラティスはメルダスに言った。


「男爵、マイヤーさんの孫娘さんを助けるため、協力して頂けませんか」

「はい、わかりました」

「ありがたい。それでは」とメルダスと憲兵隊員達は、去って行った。

 メルダスは、真斗を現場に連れて行き誘拐犯の糸を引いている真犯人にするつもりだった。


 翌日、憲兵隊員が真斗達ところに来て、犯人のアジトを見つけたと報告が来た。

 憲兵隊員から真斗男爵に現場に来て欲しいと依頼があった。

 ラティスは、真斗に話をした。

「真斗、私も一緒に行こう」

「はい、お願いします。それと、リアを連れて行きたいと思う」

「どうしてだい」

「感じたんだ。この誘拐事件には裏があると」

「なるほど、なら、ソルティアも一緒に」

「いえ、ソルティアさんだと相手が警戒してしまう」

「真斗、何か、やろうとしているな。わかった。任せるよ」とラティスは言ったあとリアを呼んだ。


「ラティス様、なーに」

「誘拐犯を捕まえるため、一緒に来てくれないか、リアの力が必要らしいんだ」とラティスが話した。

「うん。いいよ」

「じゃあ、真斗、リア、玄関で待っていてくれるかい」とラティスが言うと二人は「オーケー」と返事をした。


 ラティスは、アルゴスにも話をしてアジトの裏山に待機するよう話した。

 シャロウにも話して、真斗に護衛をもう一人付けるよう指示していた。


 ラティスは、真斗、リアと合流してアジトに向かった。

 そして、真斗達は憲兵隊員達と合流して、誘拐犯のアジト付近にいた。

 アジトは、街から離れた山の中にある洞窟だった。

 アジトから少し離れた森の中に憲兵隊の本部が設置されて、そこにはメルダスと憲兵隊員が待機していた。


「お〜、やっと来ましたか、真斗男爵」と話しをするとメルダスは、真斗がラティスが一緒にいるのを見て警戒した。

「はい、協力させて頂きます」と真斗も返事をした。

 メルダスは、「ちょっと、失礼します」と言って真斗達と離れた。

 メルダスは、憲兵隊に指示をして真斗とラティスを引き離すよう指示していた。

 その憲兵隊員の一人がラティス達に声をかけた。

「エルガー伯爵は、こちらで待機していて下さい」

「わかりました」

「真斗男爵は、洞窟の入り口まで来て頂きますか、リアナ様を助けたあと落ち着かせて欲しいので一緒に来て頂くと助かります」

「わかりました。なら、リア、君も一緒に」

「うん、わかった」とリアが言うと憲兵隊は。まぁ、小娘が一緒でも大丈夫かと思っていた。


 真斗達と憲兵隊は、アジトの洞窟に入り、入り口付近で、憲兵隊は真斗に言った。

「男爵、ここで待機していて下さい。他の者が突入してリアナ様を助け出します」と憲兵隊員は言って、先の方に向かった。


 真斗は、憲兵隊員が見えなくなった頃に小声で話した。

「リア、僕達も進もう。前方にいる誘拐犯、憲兵隊員の全員。足を凍らせ動けないようにして欲しい」

「えっ、いいの」

「あぁ、見えたんだ。皆んなグルなんだ」

「え〜、ほんと」

「奴らは、リアナの誘拐を僕になすりつけるつもりなんだ」

「ほんとに、わかった。お兄ちゃん」とリアは返事をした。


「シャルネイラ、いますか?」と真斗が声をかけるとシャルネイラとシャルルがしゃがんだ状態で現れた。

「はい、真斗様」

「あれ、こっちの人は」

「私は、シャルル、シャルネイラ姉さんの妹です。一緒に真斗様をお護りするよう指示されました」

「そうか、ありがとう。二人とも、動けなくなった誘拐犯と憲兵隊員達を気絶させる程度に倒して欲しい」

「わかりました」と二人は言って消えた。


 真斗達が前を進むと誘拐犯と憲兵隊員達が一緒にいるのが見えた。真斗達は、少し離れたところで眺めていた。

 近くに縛られてたリアナも、しゃがんだ状態で一緒にいた。白い布で目と口が塞がれていたのだった。


「リア、いいな、奴らの足元を凍らせてくれるかい」

「うん」とリアは返事をしてから目をつぶった。

 周りから霧が発生し、霧は誘拐犯と憲兵隊員達の足元に(から)みついた。

「カキン」と音が鳴り、誘拐犯と憲兵隊員の足が、急に凍ってしまった。


「なんだぁ」と誘拐犯と憲兵隊員が叫ぶとシャルネイラとシャルルが(さや)に入ったままの剣で誘拐犯と憲兵隊員を殴り倒していった。

 二人が全員を気絶させると真斗は、リアナのところに行った。


「リアナ、もう大丈夫だ」と言って白い布と縛られていたロープを解いた。

「あっ、お兄ちゃん」とリアナは叫び、真斗に抱きついた。


「シャルネイラ、シャルル、誘拐犯は縛って憲兵隊員は、その辺で寝かしておいてくれ」

「わかりました」と二人は返事をして真斗の指示通りに動いた。


 誘拐犯と憲兵隊を縛り終わると真斗達は、洞窟の奥に入って行ったのだった。

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