第十二話 王都アルセディア
ラティスは、真斗と共に歩むことを決めたため、この小屋を引きはらうことにした。
この小屋には、一人使用人が仕えていた。ラティスは使用人を呼んだ。
「何でしようか、ラティス様」
「ここを、引き払うことにした」
「それでは、ここには、お戻りにならないということですね」
「そうだよ」
「わかりました。荷物はどういたしましょう」
「書物は、実家に、あとは、任せる」
「畏まりました」
「後は、宜しく」とラティスは使用人に指示をして小屋を出た。
そして、皆んな一緒にカルロスの小屋に戻ってきたのだった。
真斗達が話していると小屋の中で待っていた繭と流唯が真斗達が帰ってきたと気がついた。
真斗の声が聞こえたため、小屋から出てきたのだった。
「お兄ちゃん」「お兄さん」と流唯と繭が笑顔で出迎えた。
「繭、流唯、ラティスさんが力を貸してくれることになったんだ」
「本当に良かったね。お兄さん」「良かったね。お兄ちゃん」と繭と流唯が言うとラティスが二人に話しかけた。
「君達が真斗の妹さん達かい」
「はい」「えぇ」
「二人とも、可愛い娘さん達だ。これからは、私も君達の仲間だ。仲良くしてくれるかい」
「はい」と二人は、元気よく答えた。
アルゴスも、真斗達の声が聞こえたため外に出てきた。
アルゴスの後ろからは、メルキア達も一緒だった。
「真斗、やっと戻って来たな。本当に良かったな」
「はい」と真斗が答えるとラティスがアルゴスに話しかけた。
「私は、ラティスといいます。話は、カルロスから聞きました。真斗のために是非、竜神アルゴスの力を貸してほしいのです」と握手を求めた。
「ふふふ、真斗のためなら、なんなりと」とアルゴスは答え、ラティスと握手した。
「そちらにいるのは、四竜の方々ですね」とラティスは同じように握手を求めた。
「はい、私は、メルキアです」と言いラティスと握手した。
「宜しく」
「あぁ、後ろにいる、この二人はアルバンとブルーディアです」とメルキアが話しすとラティスと握手した。
「あれ、もう一人の方は」
「セルスは、アンテウルス山脈でドラゴン達が暴走しないように待機している」
「なるほど、今後とも、お願いします」とラティスは挨拶をした。
この時、ラティスは確信した。
何と言う総勢たる面々だ。真斗の周りには神々や人材が集まると思う。
ふっ・・・、そうだな・・・、この真斗こそが我が主にふさわしい方だと思っていたのだった。
ラティスが思いにふけっていると真斗は、声をかけた。
「どうしたの、ラティス、ボーとしていて」
「いや・・・、なんでもないよ」
「これから、僕は、どうすればいい」
「真斗、まずは、アルセーヌ王国の王都アルセディアに行こうと思っています」
「王都アルセディアですか、そこには、何しに行くのですか」
「まずは・・・、私の実家に来てもらいます」
「ラティスの実家?、王都にあるの」
「そうです。実は私も一応、貴族なのですよ」
「えー・・・、ラティスも、貴族だったんですか」
「はっはっはっ、一応ね。私は、ラティス・エルガー伯爵家の嫡男なんです」
「えー、伯爵って、ラティスは、高い地位の貴族だったんだ」
「そうですね」
「だけど、貴族が嫌いなのに自分も貴族だったなんて」
「ふふふ、まぁね。こらからは私の家も、あなたの力になりますよ」
「ありがとう。ラティス」
「それじゃ、支度をして向かいましょう」とラティスは話し、王都に行く準備をした。
ラティスの準備が整うと皆んなは、小屋の外に出た。
真斗は、ラティスを見て声をかけた。
「ラティス、王都まで、どれくらいかかるのですか」
「馬車で行けば、三日ぐらいはかかるかな」
「そうか、あっそうだ。アルゴス」
「何かな。真斗」
「王都アルセディアまで、お願いできるかな」
「了解だ、真斗」と返事をした後、アルゴスは光輝き竜の姿に戻った。
ラティスは、「おー・・・」と声を出して驚いた。
「皆んな、行きましょう」と真斗が言うとメルキア達も竜の姿になった。
真斗、ラティス、カルロスは、アルゴスに乗り繭達はメルキアに乗った。
「さぁ、出発だ」とアルゴスは声をかけて一気に空に飛んだ。
空高く飛ぶと後ろには、アンテウルス山脈も目えた。
アルゴスは、前の方向に向かって飛び立った。
前の方は、赤く染まった夕日が見えて綺麗だった。
「暗くなる前に王都の近くまで行くぞ」とアルゴスは叫んでスピードを上げた。
山を越え、谷、草原など越えていくと遠くに白い建物が見えてきた。
陽も落ちて、暗くなるとアルゴス一旦、地上に降りた。
降りたところは、王都の近くにある池の側だった。真斗達は、一旦、ここで野宿をすることにした。
池で魚を取り、食事をしてから皆んなで眠った。
翌日の朝になり、真斗達は再度、アルゴスに乗り飛び立った。
しばらく飛んでいると大きい街が見えてきた。大きい壁が街を囲み、白い建物も多い町並みだった。
「真斗、あれが王都アルセディアですよ」とラティスが話した。
「あれが、王都アルセディアなんだ。イタリアにある町並みみたいだ」
「イタリアって、なんですか」
「あっ、僕の世界にある国です」
「そうですか、アルゴス、王都アルセディアの手前辺りで皆んなを下ろしてほしい」
「了解した」とアルゴスは返事をして、ゆっくりと降下した。王都アルセディアの手前辺りで地上に降りた。
ここで、皆んなを降ろした後、アルゴスは竜人の姿に戻った。
その後からメルキア達も降りたのだった。
「真斗、ここからは、歩いて王都の入り口まで行きます」とラティスは話し、皆んなで王都の入り口まで歩いた。
王都の入り口には、大きな門があり兵士が二人、立っていた。
門は閉まっており、門の上には兵士が二人、下を覗ていた。
ラティスは門の前に立っていら兵士に声をかけた。
「私は、ラティス・エルガー、王都に入りたいのですが」と話すと兵士は、ラティスの服装を見て気づいた。
ラティスの右胸辺りにエルガー伯爵家の紋章が縫ってあったからだ。兵士は紋章に気づいて話した。
「・・・これは、これは、ラティス様、王都にご帰還ですか」
「そうだよ。入れてもらえるかな」
「はい。わかりました。そちらの人達は」
「我がエルガー家の者達だよ」
「かしこまりました。おーい、門を開けろー」と兵士は、門の上にいる兵士に大声で叫んだ。
上にいた兵士が合図を送ると「ゴッ、ゴッ、ゴッ」と大きな音が鳴り王都の門が開いた。
「ラティス様、どうぞ、お入り下さい」
「ありがとう」と答えて、皆んな、王都に入った。
兵士達は、アルゴス、メルキア達を見て不思議に思って、しみじみと見ていた。
メルキアは赤い翼、アルバンは黒い翼、ブルーディアは青い翼を背中に生えていたからだ。
王都に入るとラティスは、直ぐ側にある送迎馬車の小屋に立ち寄った。
小屋にいる人と交渉し、ラティスの屋敷まで三台の馬車を頼んだ。
真斗は、ラティス、カルロスと一緒に乗り、繭、流唯、リア、アルゴスは、もう一台、メルキア達は、他の一台の馬車に乗りこんだ。
馬車は、出発しラティスの屋敷に向かった。
馬車の窓から街並みを見ていると王都には、色々な人種の人がいたので真斗は驚いていた。
「・・・」と真斗が黙っているとラティスは話した。
「真斗、どうしたんだい」
「いや、色々な人達がいるなと思って」
「そうだな。この国は人種関係なく色々な人が住んでいるんだ。獣人族やエルフなどね」
「そうか、だから、アルゴスやメルキアが竜人の姿でも違和感がなかったのか」
「そうだよ。この王都では、人の姿を気にする人はいないんだ。だからアルゴス達は竜人とは見られていないんじゃないかな」
「えっ、どうして」
「この国には、竜人はいないんだ。だから、羽があるから、鳥人と見られていると思う」
「なるほど、そうかぁ・・・」と真斗はいいながらしみじみと見ていた。
「真斗」
「はい」
「私の実家に行ったら父に遭って頂けますか」
「ラティスのお父さんに」
「そうです。エルガー家の現当主である父に遭って協力をお願いするのです」
「わかりました。あと、少し聞いてもいいですか」
「はい。なんなりと」
「そもそも、ラティスは、なんで実家を出て山に籠っていたのですか」
「理由ですか」
「はい」
「我がエルガー伯爵家は、王家に仕える家柄なんです。だけど、今の王家は衰退し、貴族同士の権力争いが激しくなってきたのです」
「そんなことが」
「はい、我が伯爵家も巻き込まれるのが見えていました。次期当主である私は、権力争いに巻き込まれたくなかったので逃げたのですよ」
「全くもって、酷いですね」
「全くです。アルセーヌ王国は、問題の多い国です。公爵家と侯爵家が権力争いをしています。今の王家を廃そうとしているのです。真斗も、覚悟してください」
「覚悟ですか、なんで」
「真斗も貴族になって頂きます。衰退している王家を助けて頂きたいのです」
「僕がですか、王家を助けて、どうするのですか」
「権力争いに勝って、アルセーヌ王国を纏めてほしいのですよ」
「僕にそんなこと出来るの」
「できますよ。私達がいます。それと、もう一人、仲間にしたい人がいます」
「もう一人ですか」
「はい、魔術のソルティア、彼女を必ず仲間にしなければならない人です」
「魔術を使う人なのですか」
「そうです。魔術に関しては、彼女の右に出る者などいないでしょう。王国随一の魔術師です」
「そんな、凄い人、仲間になってくれるでしょうか」
「彼女なら大丈夫です」
「女性なのですか」
「はい、それに、私を含め、カルロスやアルゴスも仲間になったではないですか」
「それは、僕の力量ではないから」
「ふふふ、真斗なら大丈夫ですよ。彼女は真斗を気に入ります。さぁ、もうすぐ私の実家に着きますよ。我が屋敷に」とラティスは話した。
真斗がラティスの実家かと思っていると由緒ある感じの門が見えてきた。
門を過ぎてから真斗は、屋敷が見えないなと思っていると森林に入り、森林を抜けると真斗は驚いた。やっと屋敷が見えてきだからだ。
屋敷は、あまりにも大きい屋敷だったのだ。
馬車が屋敷の前に止まるとエルガー伯爵家の使用人が三名、屋敷から出てきた。
使用人達は、馬車のドアを開けて頭を下げた。
「これは、ラティス様、お帰りなさいませ」と使用人が言うとラティスは、「ただいま」と答えて、ラティス、真斗達は馬車から降りた。
使用人の案内で、皆んな屋敷に入り大広間に案内された。ラティスは、使用人に声をかけた。
「アルトを呼んできてくれないか」
「畏まりました」と使用人の一人が言って部屋を出て行った。
「ラティス、アルトさんって」
「我がエルガー家の執事です。父の代から使えてくれています」とラティスが答えると「ガチャ」と音が鳴り、部屋に一人の歳をとった紳士らしき男性が入ってきた。
「これは、ラティス様、お帰りなさいませ。よく、お戻りで嬉しく存じます」
「アルト、変わりないかい」
「はい」
「父は、変わりないかい」
「はい、最近。寝たきりではありますが、お元気でございます」
「そうか、父には会えますか」
「今は、おやめになった方がよろしいかと存じます」
「何かあったのか」
「いえ、お疲れになったのか、今、お休みです」
「そうか。父が起きたら声をかけてくれ」
「畏まりました」とアルトは言って部屋を出た。
「ラティス、お父さんは具合が悪いの」
「そうだな。あまり、体調は良くないんだ。もう、伯爵としての職務は無理だろう」
「そうですか、少しでも良くなるといいね」
「真斗は、優しいな」と会話した後、真斗達は寛いだ。
少し時間が過ぎただろうかアルトが部屋に戻ってきた。
「ラティス様、旦那様がお起きになりました」
「そうか。会えるかな」
「はい、皆様とお会いになるそうです」
「わかった」
「今、執務室のベッドで横になっていますから、執務室に案内します」
「お願いする」とラティスは答えて真斗達に声をかけた。
「真斗とカルロス、アルゴスは一緒に来てほしい。父に会う」
「わかった」と三人は返事をしてラティスと一緒に執務室へ向かったのだった。