※これは死神です
貴方は『死神』という存在を信じますか?
魔女や幽霊、妖怪、精霊などの類が好きな人はもちろん信じるだろう。
だがそういったことは抜きで私は信じたい。
何故って私の生涯愛したのは紛れも無く死神だったのだから。
15の春、僕は高校に入学して楽しい学校生活を送るはずだった。
入学式の前日に両親が死んだ。外出先で運転していた車とトラックが激突、お医者さんは懸命に蘇生手術をしてくれたけどそれは叶わないことであった。
知らせを聞いて僕は急いで駆けつけたけど・・・もう遅かった。来た頃には心臓は止まっていた。
「何妙法蓮華今日・・・チーン」
そんなことがあって、入学式の次の日というか今日は両親の葬儀があった。
もうじいさんとばあさんは逝ってしまっているから、僕に家族なんていない。
そんな僕を支えてくれているのが伯父で喪主の蔵人さんだ。多分僕はこの人の家に引き取られるのだろう、それが妥当だ。
そんなことを考えているうちに葬儀は終わって、僕は伯父さんに呼び出された。きっと僕の後見人とかの話だろう。
「よく来たね」
タバコを吸っている蔵人伯父さん。1回だけ会ったことがあったけど、とてもいい人だった。
「今回は気の毒だったね、同情するよ。さっそくキミのことなんだが・・・」
「伯父さんに引き取ってもらえるのならば両親も本望です」
「・・・・・そ、そうかい。そういってもらえると嬉しいよ」
何故か伯父さんは言葉を詰まらす。
「他に何かあるんですか?」
「一応形的には引き取ると言うことになるんだが、その・・・1人暮らしをしてみないか」
「1人暮らしですか」
僕はびっくりした。だって、いきなり1人で暮らせなんてムリすぎやしないか。
でも、ちょっとはやってみたいという好奇心もあった。
「お金のことは心配しなくてもいい、私が責任を持って管理する。それに本当に1人というわけじゃないんだ」
「へっ?」
僕はさらに驚いた。1人じゃないってどういうことなんだ?だってさっき『1人で暮らさない?』って言ったばかりじゃないか、頭の中が混乱してくる。
「おいで、タナトス」
そういうと奥から10歳前後ぐらいの幼い女の子が現れた。
「紹介しよう、彼女は死神のタナトスだ。今日からキミはこのタナトスと一緒に暮らすんだ」
「し、死神ですか」
「ああ、彼女を立派な死神にしてくれ。これは君にしか出来ないことになんだ」
僕は今日この日から死神を押し付けられた