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エピローグ
男の首には、太い、輪っか状になった縄がかけられていた。
男は今まさに、死刑を執行されようとしていた。
しかし、その姿は異様であった。
まず、男の目には、目隠しがされていなかった。死刑を執行されるときには、必ず目隠しをされるものだというのに、していなかった。
彼は、自ら望んで、目隠しを外してもらっていた。
死ぬときは目を開けていたいから、と。
男は、絶望も、取り乱すことも、抵抗することもなかった。
ただただ、満足そうに、薄く、微笑んでいた。
男は、自分の役割を、なすべきことを、終えたのだと。そう、思っていた。
ああ、やっと、死ねるんだと、安堵すらしていた。
そして、3人の死刑執行人が、ボタンを同時に押して、床が抜けた。
男は、秋山 信之は。
自分の人生を悲観して、満足して、死んだ。
平成23年11月17日午後1時18分の出来事だった。