ニセ次回予告
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姫さまの意識が帰ってきた。
「誤って、最上級の解毒剤を前もって仕込んでいたっす」
「誤って……前もって仕込む……?」
「素晴らしいですっ! まるで何度もやり直してるみたいっ!」
「はっはっはー。ところで、あの噂聞いたっすか?」
僕が訝しんでいる間にも、姫さまは感動して、話は進む。
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『直径一キロメートルの毬藻が突如現れた』
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そんな阿呆な噂を耳にするまでもなく、西側に目をやると、そこには緑の壁があった。
は?
僕ら五人が唖然としている中、姫さまだけは、
「ほへー、これがマリモですかー」
と暢気なことを言っている。
「いや、違うから。波で崩れるって言ったじゃん。どんな大きさだよ、これ、神話の洪水でもものともしないよ」
箱舟いらずだよ。
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「俺様の前に道はなく、俺様の後ろに塵が残る。つまりは後塵を拝せ」
「意味不明なこと言っとらんと、あれ、どうもオレには生物だとは思えないんだが」
「いきなり出てくんなよ、お前」
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「いずれにしたところで、そのまま放置するとここも危ないようですよ」
カルツが話を中断させ、本筋に戻す。
「質量がどうなってるか知らないっすけど、まあそのまま光合成し続けたら酸素が増えて、ものの弾みで爆発するかもっすからね」
「それ以前に酸素濃度で死んじゃうよ」
キャロとシロが合いの手を入れるが、カルツは、
「いえ、酸素ではなく淡青色の気体が渦巻いてるようです」
と言った。
「何で?」
聞き役に回る筈だったのに、思わず突っ込んでしまった。
いや、酸素が多過ぎてもオゾンにはならんやろ。
どういう物理法則で動いてるんだこの世界……
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「姫さま?」「姫君?」「ヒメ?」「姫様?」「………」
いま何て言ったこの姫さまは?
「そもそも、どうしてそんな算段が必要なんですか? もっと簡単に解決できますよ」
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