「Determination」
遂に五話目になってしまった。
結構、この小説書くのも楽しくなってきた。
最近、ほぼゲームしかしてないからいろいろアイデアが無尽蔵に浮かんでくる。
旅の途中で疲れを癒すため吸血鬼ヨハンに泊めてもらった三人は、彼の住んでいる館で寝てしまうが彼が吸血鬼である故に油断させて人間を襲うんじゃないかと半信半疑だったセロンは、寝ずに魔法結界を貼って見張っていた。しかし、彼は、一向に襲ってこず朝の4時くらいでようやくセロンも眠りについた。
窓から朝の日差しにてらされて杉山と楠部は、眩しさのあまり起きたが先に起きていたセロンにもう昼であると伝えられる。
そして杉山は、セロンに言った。
「セロン俺達、襲われてないってことは、やっぱりあの人信用できるんじゃないか?」
「確かにね…」
「私も夜中の四時まで見張っていたのですがその気配は、全くありませんでした。」
それを聞いた杉山と楠部は、ビックリして言った。
「四時!?」
「あ〜なんか俺らの為にすまん…俺らは、呑気に寝てたし…」
「大丈夫ですよ…徹夜は、慣れてます。それにあなた達には、冒険について来てくれるだけで借りがあるのですから。」
「そうだ冒険にヨハンさんも誘うのは、良さそうだよな。これで人間は、襲わないと分かったし。」
「そうですね行きましょうか。」
三人は、ヨハンを探し一階に降りた。
そして3人は、一つの棺桶に気がついた。
三人は、恐る恐る近づいて見ると急に棺桶が
ガタガタと動き出した。
それを見た杉山は、驚いて言った。
「おいおい…朝からこれかよ…」
「開くぞ…」
三人は、興味津々で見ていると
棺桶がそっと開き中から出てきたのは、
まさかのヨハンだった。
「あぁ君たちかおはよう。すまない…朝は、弱くてな…」
「えぇ〜!ヨハンさん棺桶で寝てんの?」
「あぁ…これか…ベットだと寝心地が悪くてな…吸血鬼になってから棺桶で寝ている。極力日光に当たりたくないからな…」
そしてヨハンは、三人を昨日の食卓に座らせ
着替えを済まして出てきた。
そしてヨハンは、聞いた。
「君達は、もう出発するのか?良かったらこの墓地には、詳しい案内しようか?」
「えぇ〜…それがヨハンさんには、ずっとこの旅について来て欲しいのです。部屋まで借りて図々しいとは、思いますが…」
「なるほど。私も人間だった頃は、冒険家だったが…君達は、何を目的に旅をしているんだ?」
「それは、私の姉と私の姉を幻惑魔法で洗脳した黒魔術ファーレンを殺すことです。」
ヨハンは、少し考えて言った。
「ファーレン…?聞き覚えがあるな…確か奴は、黒魔術の中でも最も凶悪で昔、自分の脅威となる賢者を皆殺しにしたとか…」
「やはり…知っているんですね…」
「まぁ奴は、この世界でかなり有名だからな…都市伝説みたいなものだが…」
セロンは、悲しそうな顔で言った。
「その賢者とは、私の両親です。両親は、殺され私の姉妹である姉は、ファーレンに洗脳されてしまいました。」
「なんと!君が賢者の生き残りか!両親を小さい頃に失うのは、辛かったろう…」
ヨハンは、少し考えて言った。
「君達の目的は、分かった。私も協力出来るなら喜んでしよう。」
「え?一緒にファーレンを倒してくれるんですか?」
「あぁ。そんな話を聞かされて断るなんて自分が許せないからな。そしてこれ以上奴の好き勝手にされたらこの世界を崩壊しかねん。」
「マジか…ヨハンさん優し過ぎでしょ。」
杉山がそう言った瞬間にヨハンが杉山に聞いた。
「なら、君は、この少女をどうして助けたいと思った?人を助ける為に命を懸けるのは、容易い事じゃない。」
「セロンを救いたい。ただそれだけです。異世界人の自分らにしか出来ない事だからです。理由が簡単すぎますかね?」
「異世界人?なら君達は…この世界のことを全く知らないのか?」
「そうです…セロンとあったのも最近です。」
「スギヤマ君とナンブ君に頼んだのは、彼らならやってくれると信じたからです。それに2人とも何か賢者として特別な縁を感じたのです。」
「なるほどな…今は、それでいいんじゃないか?だが最後にこれだけは、聞いておきたいことがある。君達は、まだ子供だが…別に馬鹿にしてるわけじゃない。だが…君達に人を殺せる覚悟があるだろうか…私達は、ファーレンを殺すことになる。奴が極悪非道でも人間だ。」
その言葉で場の空気に緊張感が高まった。
そして杉山は、答えようとしたが楠部が先に答えた。
「それがセロンを救えるなら殺します。自分の目的の為だけにセロンの両親を殺した奴を殺しても何の罪悪感もありませんよ。」
「ナンブ君…」
「そもそもファーレンを殺すことセロンの姉さんを助ける事が今回、来た目的でもありますし…」
「そうか、ならいい。余計なことを聞いたな。」
ヨハンは、食べ物を三人に出して自分は、旅の用意をすると言い
部屋を出ていった。
それから三人は、ヨハンが出ていくのを見て話し合った。
「なぁ上手くいったな。良かった…」
「はい。私は、感謝しなければなりません。ここまで来れたのもあなた達のおかげです…ありがとう。」
「おいおい…それ、ラスボス手前で言うセリフじゃん…まだ早いわ…」
「しかし…」
「いいよ…気にすんなよ。俺達もセロンと旅するの結構楽しいぜ?もちろん命の危険もあるって分かってるけどこんなに刺激的な生活、俺の元の世界じゃ全然無いわ…」
「同じく」
セロンは、涙ぐんで感謝した。
「本当にありがとう…」
三人が話し終えた時にヨハンが丁度、良く戻ってきた。
三人は、ヨハンの格好を見て驚いた。さっきまで普通の服だったが一気に変わり鎖帷子とフード付きの襟長のマントを着ていて
どことなく吸血鬼らしさを出していた。
「あまり、ジロジロ見られると恥ずかしいな…私もこの格好は、当分の間していない。」
「というか一つ聞きたいんですが…日光とか大丈夫なんですか?」
「あ、それ俺も思った!」
ヨハンは、少し考えて言った。
「もちろん大丈夫じゃないが直射日光さえ素肌で当たらなければ大丈夫だ。だから朝や昼行動する時は、このフードを被る…」
そう言うとヨハンは、フードを被った。
そのフードは、少し厚めで顔は、ほとんど見えなくなり日光にも晒されない程だった。
「それで、もし太陽光を浴びてしまったらどうなるんですか?」
「最初は、目眩と吐き気…1時間ほど浴び続けると灰になって死ぬ。だがこの日光を通さないフードさえあれば大丈夫だろう…私、特注に作ったものだ…」
「吸血鬼って長生きできると思ったら案外、不便なんですね…」
「そうだな…世の中そんなにうまく出来てないと行くことだ…」
「なんかヨハンさんがその言葉言ったら重いですね。」
セロンは、旅の行き先について確認をとった。
「まず、異界墓地を抜けて星魔の谷を経由して魔術師教会に行きます。」
「ここの墓地は、私が詳しいから出口まで案内しよう。星魔の谷にも行ったことがある。」
「おお!さすがヨハンさん心強い。」
四人は、玄関に立ちヨハンの家を後にした。
そしてまた異界墓地に戻ると、ヨハンが出口まで案内してくれた。そしてそのまま星魔の谷に入った。
そこには、大きな山と山を引き裂いて真ん中に青色の川が流れていた。時々、太陽光に反射してキラキラと輝いている。
山の断面に結晶のような白い石がバラバラに散りばめられて
眩い輝きを放っていた。
そして遠くの山の頂上に教会らしきものが見える。
その光景に思わず三人は、言葉を漏らした。
「綺麗…」 「すげー」「おぉ」
そしてヨハンが星魔の谷について言った。
「星魔の谷は、外見こそ綺麗だがこの谷から落ちて何人死んだか分からないくらい死者が出ている。」
南部は、辺りを見回した。確かに高いしこの高さから落ちたら死ぬ事が分かるがその分良く道が整備されていて手すりや階段など親切に作ってあった。
「ヨハンさん、ここから落ちるなんて小さい子供しかいなくないですか?危険な崖の上の道には、手すりもついてるし足を滑らせないように階段だってありますよ。」
「いや、落とされるのだ。レーンニックスという魔物を知ってるか?」
「なんです?それ」
「レーンニックスは、翼が生えた小型の魔物で好物は、肉だ。知能が高くて人間を落として殺した後にその死体の肉を食べる。小柄だが怪力で大人を軽々と持ち上げる。しかも奴は、だいたい6匹ぐらいの群れで襲ってくる。」
「ええ!?そいつがここら辺飛んでんですか?」
「そうだ。十分注意してくれ。そしてもし出会ったら四人中央に集まれ。もし捕まれたら崖から落とされる前にナンブ君がその弓で射抜くかセロン君が魔法で撃ち落とすかとにかく掴まれたら、大声で助けを呼んでくれ。」
「分かりました。」
「それと、奴には、レーンバーンと呼ばれるリーダーがいる。そいつは、体がレーンニックスよりも3倍ほど大きくて人を突き落とさない代わりに炎で攻撃してくる。」
「それ、もうドラゴンみたいじゃん…怖すぎ…」
「いいか、ここには、合計四人いる。本当に危ない時にいつでも仲間を頼っていい。もちろん私も君達を信じてる。」
「分かりました。やっぱりヨハンさんは、頼りになるなぁ」
「どこぞの世間知らずの賢者さんと違ってな…」
そう言うとセロンは、意地を張り言った。
「も、もちろんレーンアックスの事は、知ってましたよ!」
「…レーンニックスなんだが…」
周りの空気が急に重くなった。
「すいません!知りませんでした!」
「それでいい」
四人は、笑って言った。
「まぁセロンは、しょうがない。ファーレンにいつ狙われるかもだからあまり遠くには、出れないんだろ?」
「そうなんですよ。私は、大丈夫と言っても執事のトーマスが結構なお節介で…」
四人は、話しながら緩く曲がった崖の上の道を歩いた。
小鳥の声や虫の鳴き声が谷から聞こえて心地よい風が当たる。
ヨハンは、異世界人だと言う杉山と南部にあっちの世界について聞いた。
「そう言えば君達、異世界は、どんな場所なんだ?」
「んー説明しにくいなぁ…」
杉山が詰まっていると今度は、セロンにとって異世界の地球について少しセロンが質問してきた。
「そう言えば、私も地球について興味あります。私が行ったのは、一瞬だったので…思い出したら…あの人を乗せた自動で動く家?は、何なのでしょう?」
「あ〜車か…そうだな。あの動く家は、車って言ってこっちの世界は、馬?だけど俺達の世界は、あれに乗って長距離を移動するんだよね。そして俺達が乗ってた自転車って言うのもそう。」
「あなた達が乗っていた自転車というものは、凄く巧妙な機械仕掛けの様な感じで動いてましたね。もしかしたら車というのも巧妙な機械仕掛けで動いているのですか?」
「大体は、そんな感じ。魔法が使えないから、便利さを追求するには、機械に全部任せなければならなかったんだよ。」
「機械と言ったらペルトでは、天文時計などしかないのですがそもそも所有してる人もほとんどいません。そっちの世界では、魔法がない代わりにかなり発展しているのでしょう」
「そうそう。あ〜俺の今の頭じゃこの説明が限界だわ…」
「まぁよく頑張った方…じゃね?」
「君達の世界は、魔物はいるのか?」
「全くいないけどその分人間同士の争いは、今も絶えない。」
「魔物は、いないが平和というわけでもなさそうだな。人間同士の争いは、どの世界でも同じか。」
「まぁ基本的な生活と経済的な流れ?は、この世界と同じみたい。」
「なるほどな。地球人というのは、私達、ペルトの人間と全てが違うと思っていたがほとんど一緒とはな。そう言えば、何故、君達は、こっちの言葉が話せて聞けるんだ?地球の言葉は、違うはずだろ?」
「それは、私が幻惑魔法を教えたからです。異世界人には、相手からの幻惑魔法が全く効かないので効果を発揮するには、自分から覚えるしかありません。」
「なるほど…そして幻術が効かないとなるとファーレンを倒しやすくなるな…」
四人は、地球とペルト二つの異なる世界について共通点や文化の違いを話し合った。
そして崖の上の道に沿って進むと吊り橋が見えてきた。
縄で括りつけられた丸太が足場になっていてかなり長い吊り橋だった。下は、谷底が見えて落ちたら命は、ないと誰でも分かるぐらいの高さだった。耳を澄ますと近くにある滝の音や野生動物の鳴き声が聞こえてくる。吊り橋の横に看板が立ててあった。
「この先、魔物の出没に注意」
とかすれた文字で書かれていた。
それを見たヨハンが言った。
「この吊り橋は、かなり危険みたいだな。注意してくれ。多分この看板に書かれている魔物というのは、レーンニックスの可能性が高い。」
「そう言えば、ヨハンさんってなんか武器持ってます?例えば、剣とか弓とか…」
「私は、吸血鬼だから武器などいらない。魔法だけで十分だ。
私が先頭を歩こう。いつ来るか分からないから警戒しておくべきだろう」
「では、行きましょうか。」
杉山と南部は、武器を抜き戦闘態勢をとった。
→続く。