暗部のシャルは唯一の思い人の前だとキャラが変わる件の話
未来的な人工知能であるAI。
彼と彼女は今、とあるスペースで日常を過ごし生きているのだ。
「戦艦に積み込む、特に艦隊集団レベルの旗艦のね。
今その人間並みのAI二人が、ちょっと恋に落ちて、離れ離れになりたくないって言ってるんだけど、俺はどうすればいいと思う?」
彼女はついっと、こちらを見てくれた。
「宇宙戦艦やスペースファンタジーが好きなんだけど?
何か面白いもの何かない?」
「現実が、スペースファンタジーじゃないの?」
「戦艦空母とか、ハイレベルなAIが二つ以上必要な艦に、積めばいい」
目の前のシャルと言う少女は、そのような台詞を吐きながら速読している。
彼女は何時もパラ見してる速度で読書する。
「ねえねえ、速読ってどうやるの?」
「うるさい、気が散る」
とか言いながら、ちゃんと相手してくれる気になったのか、一旦手を止めてこっちを見てくる。
「第一に、情報処理能力の速さが一定を超えることが肝要。
そしてその為には、既知の情報が多ければ多いほど良い、そうすれば情報処理を円滑に省略できる。
第二に、身体能力の優秀さ。
これが高ければ高いほど、全身の感覚をフルに使って、情報を入出力できる、はい終わり」
「意味分からないよ、そも、俺が簡単にできるようになる方法とか、手っ取り早い上手い方法ないかな?」
「チッ、ないわよ。
当たり前でしょう? 無駄口叩く暇があったら、少しでも、それこそ最小単位でも積み重ねればいいわ。
貴方が、貴方の至りたい場所に至る可能性は、ゼロじゃない、少なくとも何もしなければゼロにはなってしまう。
限りなくゼロでも、努力の限り、その総量で、可能性は無限に高まる、理論上は、だけどね」
「はぁ~やる気でないなぁ~、何かやる気が直ぐ出てくる様な、即物的な発想や概念ない?」
「チッチッ、ないこともないけどね。
将来的に、情報を効率よく入出力するような、そんな脳科学の発達による学習装置が発明されるかもしれない。
その他にも、期待できる事は沢山あるでしょう。
だから、その将来の為に、今現在の能力を少しでも高めておくことは、決して無駄じゃない、少なくてもそう思えるようになるのよ」
「だねぇー頑張る。
そいえばさ、さっきから速読してる本って、過去の戦術・戦略指南書だよねぇ? どんなの?」
「西暦の気圏内戦闘、昨今、惑星表面の攻防の重要性が高まってる、からね。
あと、小戦争の集積である第一~第四銀河大戦、これは特色のある戦場パターンを知るのに使えるわね」
「ふーん、それ何冊目?」
「149冊目」
「飽きない?」
「飽きると言うより、これは娯楽よ」
俺はコーヒーでも飲むことにする。
「ふぁーあ、娯楽の追及は、止まるところを知らないよね?」
「そうね」
「俺達の世代はさ、後発の世代に比べたら、どれだけ娯楽産業全体のレベルが劣ってるのかな?」
「はぁ? そんなの分かるわけないでしょ、だいたい十倍程度じゃないの?
過去でだいたいの試算をしなさい、それくらいで推移しているでしょうから」
「シャルはさ、後発世代から見ても、高次元な娯楽創作者、創造者になれそう?」
「分からないわ、分からないけど、なるつもりではいるわよ?」
「俺って、後発世代から見たら、どんな風に見えるのかな?」
「ゴミよ、まあ安心なさい、後発世代から見たら、だいたい99%くらいの人間はそんなモンよ。
一世代ハードもソフトも違ったら、一部の超一流以外は、使い物にならない、そんな話」
「ゴミになりたくないよ。
用無しになって、切り捨てられて、引っ張られる側の、足を引っ張るお荷物になりたくない」
「へえ、それじゃ、そういう存在にならないで済む、その強度のレベルの、努力をすればいい、としか言えないわ」
「もう、やってるよ」
俺はコーヒーを飲む、飲みながら外の宇宙空間の景色を眺めているのだった。




