連合サイドにおける最終決戦その1の断片風景
「さてさて、そんなわけで、どんなわけだ??
今こうして銀河暦3900年、偶然だけど区切りがいいね、関係ないね。
我が連合軍は、かの帝国軍に完膚なきまでにシテヤラレテ、もう後が無い状況だよ。
このシャルトラインを抜かれたら、もう御終い、閉店ガラガラってねぇ」
ふたりで話してる、のに、まるで軍会議であるかのように話す軍師。
多少錯乱、というより自暴自棄に全てを投げ出したくなっているのだろう。
自分と彼女の関係性は深く、それなりには察して余りあるのだ。
「軍師、僕と君が直接話すんだ。
まさか何も、ただの最後の戦いへ赴く前の、何かしらの友誼を深めたい、とかじゃないんだろう?」
「そりゃね、最高司令官に暇をもらって、そんな私用に使ったりしない、とでも思ってるのかい? まだまだだね」
「はぁ、やはり、もう終わりなのかい?」
「ああ、最新の高度未来予測演算で、最終結果が出たよ、勝率0%ってね。
私たちは絶対に勝てない、どんな戦場の推移を想定しても、ね」
「そうか、酷く残念だ、今までの努力も全て無駄だったわけだ」
「ああ、もちろん、迎撃はするよ、最後に派手な花火をあげよう。
無為な抵抗だけど、無駄では無いだろう」
「そうだね、後世、この最後の戦いがゲームとか創作の盛り上がりどころに、成ったりするのだろうからね」
「残念だけど、後世なんて無いよ、私達の陣営の歴史は完全に抹消されるのだろうからね」
「そうだ。
この戦いは、初めからそういう戦いだったし、僕もその上での覚悟と決意を持って今までやってきた。
ああでも、多分後世には残るよ、この戦いに限らず、今までの何もかもが。
受け継がれるのさ、、、その為のアレは、もうちゃんと用意してある」
「まあね、でも明け透けに言ってしまえば、悪あがき。
みたいなものと思えてしまうのは、果たして悲観的かな?」
数分間後。
このような形で、一応の最高司令官と軍師の邂逅を終えて。
二人して溜息を付きつつも、それぞれの出来る事、そも出来ることがあるのか、する為に別れた。
最後の戦いにおける最後の戦いの、作戦を一応練り、確認を終えた後のことだ。
『今こうして、私たちがこの宇宙にある事、その奇跡を、私は最後まで諦めることは出来ません、したくありません!』
『ああそうとも! 私と君、ふたりはもちろんのこと。
この場における全ての連合軍人、誰一人として、諦めてはいないだろう!
この、どうしようもなく絶望的な状況を前にして。
少なくとも私は、今までにないほどの希望を、果てしないほどの切実なる希望を感じる事ができる!」
『私も!今だから言うけど!
連合の魔女なんて!巷では囁かれているようだけど!
今は市井の、健気に!僅かなる希望を切に望む、一人の女よ!
この希望に対する熱望、みんなも感じてるでしょ!?
そう! 悲観する必要はない!
ありきたりな話だけど! 絶望の底だからこそ、希望は燦然と輝く太陽にように、目も眩むほどに真に感じる事ができる!
『さあ、最後になるかもしれない、いや、なると、心の底から覚悟し決意しろ!
これは今は無き、連合最強であった、、私、グリティア=エヴァンテリン第四艦隊司令長官、直々なる絶対命令だ!』
『そおぉ!どこまでも士気を上げなさい! 私はまだ戦いたいし、戦える!
最後の最後まで諦めないし! 少しでも敵を倒したいの!
ぶっちゃけるわ! 今更、私たち優秀なる連合軍人、貴方達のようなハイインテリジェンスを騙し通せないしねぇ!
うん、ここを押し返しても! 希望なんてみえないって、みんな知ってるでしょうがぁ!だけれども!』
『ふっ、だからこそ、とも、いえる、やも知れない。
死なば諸共、背水の陣すら超越して、、
貴方たち! ただただ只管に熱狂しなさい!
熱狂して狂って、、もしこれが最後なら、刹那に舞い散る儚い花火のように! 有終の美を飾るがいい!』
『私は嫌だぁ!
どうにかして、インチキでもイカサマでも裏技でも何でも駆使して、とにかく此処は押し返すのぉ!』
『もう曲に入ろうか?』
『ええ! 永遠のリンゲージ!』
極大のステージ上で話している、現在帝国軍残存三個、その内二人の機動兵器大隊長の姿だ。
自分的には互いに情報を持ち合って、最後の作戦会議でも開きたかったのだが。
まあ、これはこれで良いのだろうと思う。
置かれている状況の、とりあえずの把握は済んでいる。
敵に対する対策を、早急に取らねばならない、そんな事態はとっくに過ぎ、後は次善を尽くすのみなのだから。
彼女達に呼び出されて、多少の予測はしていたが、事態は”掛け値なしの”最悪だと伝わっていた。
「勝率ゼロパーセント、これをどう受け止めればいいのでしょうか?」
黒髪の少女が、ステージ上を見つめながら、独り言のように呟く。
「絶望、そのように受け止めてもらって、構わないよ」
「絶望、、、そうですね、それ以外の何物でもないです。
極めて即ち、これ絶望と言わずして、何をそう形容するのか分からないほどに」
「そうだな」
「一応聞いておきますが、これを私達に突きつけて、何が望みですか?」
「事実を伝えて、問題のない人材だったから、としか言えないよ」
「確かに、事実を知れば、その事実を戦闘に反映できないこともありませんが、、」
「最後だし、言っておこうかな」
何か吹っ切れたような心地だった。
「この戦争全体を通して、最大の戦犯は誰だか分かるかい?」
「言うまでもありません、あの人です」
「自分的には、復讐してくれると、酷く胸が梳く、喜ばしい、ただそういう事だよ」
彼女の瞳を見つめながらそう言って、それから気づいた。
「君は、こんなにも愛らしかったか?」
「なんですか?」
「いやただね、今まで気づかなかった、可笑しいほど、君が魅力的に見えてね」
「ふふ、それは吊橋効果というモノです」
「それでもいいよ、キスでもしないかい?」
「ああぁ、残念ですね、貴方ともあろう人が、ここまで捨て身で何でもしだすなんて、、」
「失望させた?」
「はい、大いに失望しています、この状況も含めて全て、にです。
こんな、何のシガラミも何もかもないような、、、私は初めてですよ?」
「ドキドキするね、こんな会話を、まさか君とするなんて」
「するなら、早くしましょう、いつ敵が来るか分かりません」
「終わった心地、っが、変に君を求めさせる事になるなんて」
「うっ、酷く、酷い運命です」
「泣いてるのか?」
「そりゃ、、、泣きますよ、泣きたくなりますよ。
貴方を、、、全てを守れなかったのですから、、」
二人して溜息を付きつつも、最後の戦いにおける最後の戦いの少し前。
端末音声が聞こえた。
『敵性勢力と思われる艦隊群が、我が方の索敵範囲内、南緯40万光年に確認』
「これって、まるで。
不治の病に犯されて、残り少ない余命を告げるみたいじゃないですか?」
「いくか。
初めから待ってやくれなかった、けど、もう差し迫って待ってくれない、時間も敵も」
敵が来た、とビックリするやら、悲壮に思うやら。
次にはモニターの端に、こちらの戦力の何十倍もの物量を示す敵艦隊のマーカー群である。
連合軍に仕官してから今まで、まだ三年と短い経験の中だが、これほどの戦力差、苦境はない。
「はあ、終わったな、人生が終わったなぁ~」
「ちょっと馬鹿ぁ! 下らないこと言ってんじゃない!」
バシィン!っと背中を叩かれる、振り向くと毎度お馴染み僚機の女性であった。
「にしてもだよね、機動兵器大隊長の行ったオンステージは凄かったなぁ~?」
「ええ凄かった、だから燃えるように上がった士気は、まだ継続してる?」
「もちろんだ、というのは当然。
心地は継続している、まだ先ほど程度の話なのだからな」
出撃におき、機動性に優れたスーツを備える。
目の前にへそが見えた、彼女の姿が映ったのだ。
「どうしたの?」
「いや、、うん、なんでもない」
こんなトキに、何を考えているんだと、自分を叱咤し頭を振るふる。
「こんな時だし、正直なところを言ってぇ」
「ああ、変な気持ちが芽生えた、それだけ終わり」
「始めてね、今まで散々に言ってくれてた癖に。
貴方が性的な目で私を見ていると公言したのは、歴史的快挙なの、それがまさかこんな時だなんてね」
「だな、おめでたいぜ。
っと、【NiGHT‐R】が姿を見せた、とよ。
はぁ、こんな最後の最後まで、エースの中のエースを投入する必要は無いだろうにな」
「いいじゃない、宿敵を道ずれにできるかもしれない、ただの物量で潰されるより、楽しくない?」
「俺は戦争を楽しいと思ったことはない、少なくとも、”つもり”なんだ」
「っ!!」
ピリリリッと、別にそんな普遍的な通信音自体へ驚いたのでは、ないのだろう。
「さて、単純に考えて、【NiGHT‐R】の出現によって、俺達は不利を得ると同時にチャンスを得たともいえるな」
「ちょっとぉっ、、貴方、キスぅ、、したわねぇ! この!」
「いいじゃないか。
それで? 大隊長様たち的には、どのような作戦プランなのか、拝聴しておこうぜ」
「そうね、もしアイツを、この戦場で落とせれば、かなり敵の士気を下げれるかもしれない」
「そっ、そういう話、だけじゃないよな、アイツは他にも、落とせば旨味のある敵だ」
「できれば、私たちが、いや無理ね流石に」
「ああ、あの大堕天使は、隊長たちに任せるとする」
俺達は最後だろう戦場に向う、そして戦う、惑星を背後に抱えながらも、、、。
「でも、あいつは連合の最大の、、、英雄でもあったんだしね、私たちの手で引導を渡したいのよ」
自分でも気づかぬうち、異常なほど警戒心が高まっていたのだろう。
敵の新型武装、その多角的に迫る曲芸的な光線を奇跡的に回避できた。
いまだに、交戦距離5600光年。
超長距離射程武器でも、その十分の一も無い、というに、、。
そこに来て、いきなりの通信、それも膨大な量だ、後方に控える艦隊群から。
「全弾回避成功、流石だね」
「やっぱり、極限状態だと、悲しいほど冴えるな、これがもっと前に発揮できれば、、」
「詮無きことだよ。
敵の次の一斉射、多分もう来るよ、エネルギーが収束してるから、跳躍は無い、次の方は、もう来るよ、そう、いま」
旗下の艦隊を際限ない集中力で動かす。
昨日には辿り着けなかった境地に今いる、そんな事はいざ知らず、出来る限り集中を現在進行形で研ぎ澄まし続ける。
ひどく神経が鋭敏なっていた、何も無い場所にも、何かが見えてくるほどに。
「ああ、危なかったリティ。
すぐさま全艦に後退を、惑星防衛ラインまで下がれば、跳躍砲撃は防げる」
「了解。
ところで、後方の惑星防衛に被害あり、ああもちろんランダム爆撃だったゆえの、偶発的事故のようなレベルのモノだった」
「当然だな、防御フィールドがある限り、指定座標に爆撃することは不可能なのだから」
不安は隠しきれない、だから分かりきっている自陣の優位を口にするのだ。
「私達の庭に飛び込んだ、その愚を思い知らせてやろうか」
ただし、こちらの一見”鉄壁の防御”は、完璧などではありえない。
そんな都合の良い代物ではないのだ、いや客観的に見て、酷く都合のよいモノなのだが、、、。
この場合は敵の数が多すぎる、その質すら良いのだから、都合の良い最強の盾でも防ぎきり、凌ぎきれるかどうか、、。
「私達は強い、そして地の利もある、それも事実だ」
「どうしたのかな? 艦長?」
今回の戦場、戦略戦術含めて、要は幾つもある。
奇跡を奇跡的に積み重ねる、そういう不可能を可能にすることを求められている、それを再確認する。
「このパターンの戦場、場合は、誰も実質的な英雄足り得ないだろう」
「ですね、みんなで頑張って、苦労を痛みを共にして、なんとかするって感じですもんね」
「とにかく全てをもって、敵味方双方の戦列を保つ。
一切突破する必要は無い、突破されないのは最低条件。
戦列を均等にし、同時に敵に出来る限りの損害を与え、均等に損害制御に尽力する。
こちらは格別な惑星防衛フィールドを被っている。
敵は被っていないため、こちらの攻撃は驚くほど通り、敵のは驚くほど達しない。
もちろん事故は起きるが、それは相手も同じ、私達にとって幸運な事故である事を望もう」
「とはいえ、それも一事のことでしょう。
直ぐに敵の機動兵器部隊が、防御フィールドなんて無かったかのように、さっとうしますよ?」
「短い間だが、フィールドを抜ける前に隙が生まれる」
「効果は余り期待できませんが、しないよりはマシですよね。
まあ、そうではあったんですが、直に顔を付き合わせると、、予想外の事態です」
「完全に私に合わせろ。
関わった人間全てに災禍を撒き散らす、私はそういう人間だったのだ」
「ちょっと昔はね、でも、旗艦はどうするの?」
「副長とAIに任せるさ、奴を”あの機体”で好き勝手させるよりマシだ」
「は~ぁ、機動兵器戦って、本来わたしの領分じゃないつもりだったのに」
「好き嫌いをするな。
同じ境遇ばかりで生きれば、必然飽きという明確なる敵に出くわすぞ」
「わたしはそういう敵と戦い続けたいんだぁ」
さて、未明の領域にどう誘い込み、孤立させるか、、だが。
恐らく徒労になり、実際そうだろうが、やらない訳には絶対にいかない。
最善など絶無にないような空間でも、次善なら案外多くあるものだ。
最善は、私が奴と真正面からヤり合って、、絶対に勝てないだろう、だから攻めの方向性は必然他に移る。
次善の攻め手を熟慮、次善の中で最善を煮詰める暇は無い。
そういう場合は、限られた制限時間の中で、直感と経験を頑なに信じて、妄信の領域で選定、突き進めるのがよい。
「可能性としては、これが真に最善の次善か、そう信じる」
「どう料理してやろうか、、」
「余裕だな、相手に料理されに行くような、これはそういう戦いなのだぞ?」
何時も私とは対極に位置する相方だ、今思えば、これは完璧なる意図的なのだろうか?と、そう思った。
どちらだろうと現状では、この相方の在り様は極めて心地よい。
最大限突き抜けて緊張し力む為には、その分、弛緩し気が抜けるような存在が、私には居た方がより良いのだ。




