賑やかな戦場の様子
という事で転移。
俺は腰の帯剣を抜き、召喚コードを思念入力した。
そして現れるは、第四世代機動魔兵器。
この世界には若干数しか確認されていない、ブリリアントにメタファーな代物、もちろんワンオフで特注。
俺専用なので、魔法陣描画能力は集団用に特化せず、個人の成し得る陣形をアシストする形だ。
「きさま、また引っ掻き回しに来たな」
目の前に金髪の鬼隊長。
「ああ、ヘイゼ、適当に助けに来てやったぞ」
「はぁっ、きさまの助けなどいらぬ。
私達は基本的にお前達を信用していない、本当に大変な時は助けてくれない事もな。
だいたいもう、助けなどいらない。
我が国家の大規模魔法が発動したのだよ、もうお前達などお払い箱なのだよ、シッシッ」
おいおい、勝手にお前達の手柄にしたのかよ、あれ。
「何をしておるのだぁ? お前達二人は?」
またももう一人、長い赤髪の少女剣士。
「おお久しぶり、アケノ」
「はい久しぶりです、貴方がいるという事は、もう事態を楽観視しても良いのでしょうか?」
「おおぉ、任せとけぇ!」
「ふんっ、小賢しい、貴様など私は認めない、絶対にな」
そう言って向こうの方に行ってしまおうとする。
「なんだ? 俺に勝てないのがそんなに悔しいか?」
「くっ!!きさまぁ!ならばいい、ここで勝負してみるかぁ???!」
「おいおい、やめたまえよぉ、二人とも、これから戦いがあるかもしれないんだぞ!」
ちなみにここ、第二都市の前線砦の一つだ。
敵にまず、矢面の第一をつとめる場所。
「まあ、いいや、偶にはこの三人で、敵と戦うのも面白いな」
「きさま何をする気だ?」
嫌な予感がして振り返ったのだろうヘイゼ。
次の瞬間には、全員を今まさに迫る敵の一味の、進路上のすこし前に転移させていた。
「おし、それじゃ、適当に閉鎖空間に潜って、来る敵を倒し続ける、エンドレス持久戦するか」
「おい、何を勝手に話を進めてる」
「ちょ、これってどういう? あれ? ここって、見覚えが」
それもそのはず、ここは有名な遺跡だ。
ノーサンプトン平原地帯の、大空洞遺跡なのだからな、目の前にはメモリアルのようなもの。
そこで、何か目の前にフライウィンドウが現れた。
”あなたの能力が制限されました、能力詳細については下記をご覧ください”
へえ、観測者も粋な事をしてくれる。
「それはなんなのだぁ? なにかの事象顕現装置の類か?」
「いや違うな、これは観測者からの介入、権限を使って俺を制限したんだろう。
控え目に言っても、俺の能力はずば抜けている。
リデイが直接いない所だと、割と多少の事はできるみたいだな」
これは世界の裏側にいる存在が、”ゲームを成り立たせるために、必要な処置”と判断した場合に発動する、ようなもの。
この場合は今だ、俺に丁度いいハンデを与える事で、ゲームを絶妙な難易度にする、そのような事。
俺にとってしてみれば、全力を出す機会が与えられたに等しい、ただの修羅場だからだ、単純に因数分解して言えばな。
「おお、こりゃ、今回は相当ハンデを課せられたな、それだけ容易って事かもしれんが。
喜べよ、お前ら二人と同程度に能力が落ちたぞ。
全力を持ってしても、ホント容易ではない状況だぞ、三人で力を合わせてがんばろうな」
「ふざけるな。
待て、、、そうかぁ!!」
目の前の金髪が、何かに閃いたのか、俺にレイピアを突き出してくる。
俺は、とっさ、反射の勢いで、腰の銀の長刀を引き抜いて、それを弾く。
「そうだよ、倒すなら、今しかないよな」
「待て待て二人とも、敵の直通で、なにをやっているんだぁ!」
そんな言葉聞く耳持たず、ヘイゼは連続攻撃をしかけてくる。
太刀筋が上がったな、前あったときから、地道な努力を欠かさなかったのだろう、ホント尊敬するね。
キンキンと、連続で攻撃をいなしながら、遺跡の中に入り込んでいく。
流石に空けた場所、敵に襲われると、面白くないくらい簡単に駆逐されてしまうんでね。
こういう閉鎖された遺跡内なら、一度に相手する敵の数も制限でき、更に遠距離からの攻撃もあまり心配要らなくなる。
だいたい、大多数はたった三人の敵、相当に素通りするだろうがな。
「はぁあああああああぁ!!!!!!!!!」
力の乗った突き込み、紙一重で横に避ける。
そして上段から、叩き切るつもりで振り下ろす、簡単に回避される。
「おいヘイゼ、お前成長したな、お前の個性と同時に、その能力も魅力に値するぞ」
そんな軽口には一切答えない、ただただ、俺を打倒する事のみに一直線、スピードを上げて突撃してくる。
目の前に迫る、レイピアの先端を流すように弾き、積極的に相手の体を捕らえるように剣を振る。
華麗なる身のこなしで、全てを余裕で避けているように見える、が、その実は割りと必死なのだろう。
すこし距離を置き、ヘイゼが集中するように、息を呑む。
「攻撃魔法、属性付与、追尾、同時展開」
剣に内包される、顕現装置、エネルギーを供給する収集ドライブとしても機能するって事は知っていた。
それによって魔法的力学によって、いくつも展開される、聖なる光球、その数30ほど。
それが彼女を中心にいくつも、周りを守るように周回運動を続けている。
なるほど、精霊や剣の遠隔操作、更に自立での直接命令に特化した数だな。
「防衛魔法、アイギス、全自動モード」
剣に命令する、流石にあれは、ちょっと今の状態では捌ききれないので。
彼女とのコンビネーションが可能にする、あの様々に連携し、複雑に組み合わさった一つの芸術的攻撃に対しては。
彼女が迫る。
瞬きする直前まで、いなかった領域に潜り込み、レイピアを突き出しながら、更に光球による攻撃。
あの光球は、内部に存在する精霊による、遠距離攻撃も可能だ。
いくつもの射線上から、からみとられるようにレーザー光線のような力線。
俺に当たる直前で、全て弾かれるわけだけどな。
企みが失敗に終わり、彼女は近接戦闘を継続、そのまま横薙ぎに一閃しつつ、距離を取る。
「おい、本当に敵が来るぞぉお前達、わかっているのかぁ?」
「ああ、もう時間一杯だ、ここからはエンドレスで戦い続けられるな」
そう、入り口から大量の敵が、こちらにずっと前から気づいていたのだろう、迫ってきている事も。
「く、しょうがない、お前との戦いは、一端、とりあえずは預けよう、だが背中には常に気をつけるのだな」
恨みがましい言葉、そこまで思われているとは嬉しいな。
「とりあえず二人とも、自力でがんばって下さい。
、、、、オン、煉獄の世界から、来たれ神の剣、、、」
彼女の剣に、何かが降り立ったようだ、降臨術の、剣に降ろすヴァージョンか。
燃え盛る炎を宿し、赤く光り輝きだす、美しい緋色の剣を完成させた。
「では、わたしからぁ!」
剣を敵に向かって薙ぎ払い、火炎が大量に降り飛び散り、それも敵にとって大きなダメージとなる。
敵はただの召還された下級悪魔達、雑兵だが数が多すぎるのがやっかいだな。
ヘイゼも飛び、敵を一体一体、そして独立機動兵装のように動き回る光球で大量に射抜いていく。
俺もアイギスを展開しているメリットを活かし、彼女達の中央で攻撃を担保する、中距離からの攻撃は全て俺に降り注ぐ。
それでも迫ってくる敵を、何体も同時にいなしながら、すれ違いざまに切り伏せ続ける。
背中に存在感、ヘイゼだ。
何を思ったか、振り向きざまに切りかかってきた、大上段からのこの攻撃を、刀を盾にして防ぐほかない。
「おい、本当に攻撃する奴があるか」
「しるか、私はお前を倒すことの方が、優先順位が高いのでな」
そう言い合いしながらも、背後からの敵、それを振り向き叩き落す俺達両者。
「蘇えれ、不死の生物達よ、、、、」
俺が召還魔法を使う、これはランダムに近い形だが、それなりの生物を呼び出す幻想世界への召集命令。
蛇がでるか鬼が出るかだ、出て来たのは巨大な白い二対の蛇型の怪物。
大量の白色の炎を吐き出しながら、俺の周りを巨大な長細い体躯で、守るように囲む。
「おお、これは久しぶりに良い奴がきたな」
ホワイトスネーク、略してホワイと命名した、俺と親交のある幻想種だ。
俺はそいつの背中に乗りながら、迫りくる敵を羽虫を落とす感じで蹴散らしていく。
その間も、周囲ニ方向では、金色の閃光と、赤黒の焔が飛び交っている。
遺跡の入り口から、誰かが呼びかけてくるような声。
「おおーぃ!みんなぁー!」
長い黒髪の麗人、ありえないほどの美少女が、魔法を周囲に放ちながら、走って俺に近づいてくる。
俺に飛びつき、捕まえるように抱きしめてきた。
「久しぶり!!メリク!!ずっと探してたんだよぉ!!」
明るい声、理知的だが、どこまでも少女っぽい清楚さと華奢さ、儚さも失わない、いつ見ても魅力的過ぎる少女のような美女だ。
この子は俺を慕っているらしいなぜか、そして好いてもいるらしい、これもなぜか分からないのだが。
「おいおい、クロノ、どうやってココに来たんだ?」
「ああ、それはシコクさんの戦艦で、ここまで乗り込んできたの。
さあ、外で一時的に周囲の敵を抑えているから、こんな所からはさっさと離脱しよ?」
「それは駄目だな、俺は好き好んで、こういう事をしているんだからな。
修羅場や戦場を潜りぬける事、命を賭けて、そして生還する事、それのみでしか人間は真に成長も飛躍も出来ないんだからな」
魔法を周囲に拡散させ、花びらを舞い散らせながら、幻想的な美しい攻撃を周囲360度に展開する、今は少女っぽい顔をしているクロノに言う。
「そんなぁ、、それじゃ、私もここで一緒に戦う!それはいいよねぇ!」
まあ、別にいいのか、こいつも強くなりたいと、昔語っていたし、本人が望むならそれを止めるほうはない。
「ああいいが、援護はできないぞ、自分でしっかりと全て万事滞りなく行うんだぞ」
「うん!!」
そして俺の傍で、俺のみを援護するように展開する一人の少女。
漆黒の焔が舞い、どこまでも美しい魔法体系を披露する、同時に花びらが幾千も飛び散り続ける。
美しいな、と、美女を見て思う、こいつは格別の綺麗さをいつも誇っているな。
その時、俺の周りの、遠巻きで見守っていた奴らが、見えない糸で切断された。
この攻撃は。
「どこにいるんだぁ!シズカぁ!!姿を見せろよぉ!!」
この暗殺者ちっくなやり方、そしてクロノの傍に従える奴なんて一人しかいない、そうシズカだ。
そして何もないところから、ヌッと現れるように姿を現す、どう見ても美女以外の何物でもない。
そういうプロポーションも身長も、何もかも場違いの、モデル体型でしかも万全のメイド衣装で現れるそいつ。
「ふっふ、いつ見ても、面白い服装なんだな、こういう場くらいは、服装を変えたらどうなんだ?」
「余計な気遣いです、これが私の戦闘服でもありますので」
背中から、二対の長刀を引っ張り出し、目の前に掲げる。
養成所時代からの知り合いだが、こいつは昔から合いも変わらず、俺と似た事をしたがる傾向にあるな。
「メリク、剣を一本のスタイルに変えたのですか?」
「ああ、あんまりもう、俺には変わりがないように思えてきたからな」
昔は二刀流のスタイルだったが、世界を回って、様々な”手段”を身につけた俺は、もうそれを堅持せずに済むようになった。
だが、昔からのやり方って言うのは、技術の蓄積が段違いだ、だから一対一の時には最善なんだがね。
「そうですか、まあいいでしょう、私にとってはこれが最善なだけですから」
そうやって、二本の刀を操りながら、銀の糸を同時に操る。
閉鎖空間では敵なし、そう感じられるほどの大立ち周りを繰り広げ、敵を全く近寄らせない。
向かってくる敵、銀の糸を避けた敵には直接攻撃。
遠巻きで距離を取る敵には、容赦のない銀の糸のレーザーの網の目のような無慈悲な計画的で意図的なチート攻撃。
こいつは、ちょっとこの状態で敵に回したくはないって思わせられるくらい、純然に強いな。
更に、アクロバティックな、回転するような攻撃も凄い、それを剣を両手に持ちながらだ、ありえないほどに苛烈で優美。
トリッキーで、その上力強さもある、回転する災厄のように、彼女の後には沢山の無残な屍が築き上げられる。
そして、凄く綺麗な見目。
釣り目で、どこか白バラのような、優雅で、且つ淑やかな印象をも与える、最高の美女が全体的に更に絵を引き立たせ次元を上げていた。
というよりハーレムだな、俺の周り。
蛇と伴に、沢山の無限沸きの敵を駆逐しながら、思う。
艶やかな金の流線と、赤の焔、黒い花に漆黒の戦乙女、あと一人くらいいれば本に出来てしまいそうじゃないか。
そのような形で、当初よりも大分楽に、敵の割いた戦力を全て完膚なきまでに消滅させた。
「それで、メリク、これから貴方はどうする?」
ここは先程の場所ではない、他の四人娘も皆無。
一度話に出た、後から来た二人を到着させた、そして遺跡の外側からずっと援護のように空から攻撃し続けていた戦艦内部。
この目の前の、圧倒的威圧感をともなう美女、完全に成熟し熟練したような女傑のような人物が、その艦長だ。
「シコク、お前こそ、これから何をするつもりだ?」
「言ってなかったっけ? この事態をとりあえずは沈静化させる」
「違うよ、その先だよ、何をするのか、聞いておきたい」
「別に貴方に言うほどの事でもないけど、先は不明瞭、だけど方針は決まってる、戦争拡大よ」
「だろうな、まあ勝手にやってくれって感じだがな」
そうなのだ、この目の前の美女は戦闘狂だ。
だから、極端に不誠実でなければ、荒事に世界が傾くように仕向けるのが、人生の生き甲斐のような奴。
「これから、貴方もこの船に乗って、前線に向かう?」
「いや、もういい、俺は戦わないでも、なんとかなりそうだしな。
それに、観測者の介入で、たいして戦力にならないだろうしな、他の奴らと遊んでるよ」
「怠惰ね、まあやる時にやってくれれば、それで構わないし、好きにしたらいいわ」
そうして、艦長席に戻り、また何か支持を出し始める、艦橋のプラットフォームでの話しだ。




