表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/34

オスカー‐幸運に寄り添われし者、暁軍での幻想夢話


 

   

 幸運の名を持つ彼が、最後に選んだのは、ただただ茨の道を行き、無限に生き続ける事だった。


 王道も正道も全てを無くし、邪道に異端に堕ちるしかなかったのだ。

 混沌とした世界で、彼は何を成すのか、彼自身が既に、混沌としているというのに。

 当初の世界の為に生きる、その曲がらぬ精神で、彼は全ての混沌を切り開き、希望という名の何かを見出し、そして得られるのか?




「ふわぁー、退屈ね」


 目の前の金髪、それだけだと珍しくない。

 だが更に金目というオプションにより、目の前の人物は誰よりも特徴的となる。


 家とかでは、足先まで巻き毛にして垂らしているが。

 外に出るときは結って、頭の上を起点にツインテールという形にしている。


「あぁー退屈だね」


 俺は欠伸しながら、言う。

 彼女も座る指揮座に肘ついて、眠そうな目をしている。

 だが俺は知る、誰よりも明瞭に精確に、この突き進む宇宙艦隊を制御・統合している事を。


「ちょっと、何か面白い芸やってよ、例えばあいつら殺し尽くすとか」


 目の前に存在するは、神の軍勢。

 亜空間特異領域、宇宙絶対座標上で、最古の亀裂の発生源、そこからのみ現れる事が可能な、高位事象体。

 まあ俺はより精確に、この存在の詳細を知る。

 俗に始祖なる神々、その連合体から派遣された、という設定を鵜呑みにせず、

 この世を形作った真なる神、観測者たちが、無理矢理その事実を捏造し、この世界に無理やり顕現させた存在の群像だな。


「まあいいけど、銀の時計のネジを回して」


 俺は「あいよ」と、時間を巻き戻した。

 彼女は銀の女王だ、銀の種族とは特殊で、逆行世界軸上だけで、己の存在の根底をこの世に顕現できる。

 つまり、彼女は存在しえない虚構存在、

 だが、そもそも存在の根源が、この世にないなら、生み出せばいいのだ。

 そのカラクリが、時間という認識、幻想法理に結びつき、実際に物理学的な事象に現れるのは、

 まあ複雑怪奇な方程式を、俺なら幾つも綴る気にもならない膨大な量に至るだろうね。

 さてそんなわけで、彼女は銀の種族、その至高位の力を行使する。

 世界に対して一切の負荷なく、目の前の存在達を消す事ができる、奇跡、そのような理論に基づく。


「はい終了、私たちの仕事は終わったのかな?」


「たちじゃない、貴方の仕事だ」


「はい、いいえ、私には君が必要だよ、そう、どんなときでもね」


 妖艶な流し眼が何を意味するか、俺は知らないふりを装う。

 正直な話、この銀の女王の気まぐれ的な好意で、俺が彼女の傍に絶対位置するのは、こちらの陣営にはマイナス寄りなのだ。、


「とりまあ、面倒ごとがなくなってよかった、私一人じゃ死ぬところだったよ」


「はい、、まあ」


 もちろん、そんな訳はない。

 彼女の方が、俺の一億倍は強い。

 あの程度の敵は、右腕一本使わず、指ニ本程度で吹き飛ばせるであろう、それくらいの規格外れ。


 この世のシステムの裏、観測者達すら、既にどうにも手出しできない、そのような存在なのだから。


「それでは自分は、結果報告の為に少々席をはずします」


「はい、貴方に幸福を」


 手を振りながら、彼女は見送ろうと思ったのだろう?

 だが俺の立ち去る襟首を、強引に掴む手があった。


「なにか?」


「だーめ、君は私の傍に居るべきなんだよ、通信くらい、そこら辺の人にやらせれば良い」


 旗艦指揮座の、下、良く分からない位置を指差しながらも、ダイレクトリンクで思考伝達したのだろう、一人がビクッと腰を上げるのが見える。


「自分にも雑務があるのです」


「うーん、可笑しいなおかしいな、

 君のプライベートも含めて、つまりは人身供物になってくれたと、私は力を貸す見返りとした覚えが」


「どんな解釈ですか、貴方はどこまでも自由なようだ」


 俺はちょっと不快な目をした、彼女との接触で今日初めて、だから効果があったのかもしれない。


「あわわ、冗談だよ、許してオスカー」


「もちろん、貴方の行動を咎めたてなど恐れ多いいのです」


 俺の慇懃無礼な態度が気に入らないのか、彼女はぶんむくれて、頬を膨らませた。

 まあ俺は、そんなブス暮れた態度を、素直に可愛いと思えるほど精神が若くない自覚があるので、無難にスルーする訳だが。


「ねえ、オスカー」


「なにか?」


 わざわざ指揮座を立って、なにをするかと思えば、


「私とキスすれば、幸せになれるよ」


 その突きだした唇にキスをすれば、奇跡的な力を得られるなら、なし崩し的にもしよう、

 だが俺は、彼女の能力をそれなりに周知し、そんな効力はないと分かりきっていた、ので


「幸運は無尽蔵なんだろ? だったら周りの人間に振り分けてくれ」


「無理無理」


 彼女は手を振り、命一杯の拒否を表した。

 

「なぜ? 秩序を司り、この世を管理するべきは自らの種族と豪語しながら」


 前々から気に成って、よっぽど言ってやりたかった問いだった。


「そういう事したら、私は際限ないよ、だから絶対に他人の為に生きないのだよ。

 君以外には、生きない事に決めてるんだ」


 迷惑な話だ、俺はただそれだけ思って指揮艦橋を去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ