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イデア・ストライク-ある日の遊興譚、大冒険が始まるまで

 

 はうえぇ~。


 夜更かしのし過ぎで、眼が回っている。


 時計を確認すると、朝の四時じゃないか、外に出よう。


 朝の清涼な空気を胸一杯に吸って、なんかテンション上がった。

 うりゃぁーーー!!って感じで、全力疾走。


 だいたい十キロを、十五分くらいで駆け抜けた気がする、体感的な話だ。

 私の家のある比較的郊外の辺りから、高層建築の立ち並ぶ方角に走っていたので、もう周りは都会だ、大大都会だ。


 百メートルオーバー以上の、超高層ビルが乱立する、高度集積オフィス地帯。

 そんな場所だが、朝である事も手伝ってか、あまり人のいない道を、ランニング程度で駆け抜ける。


「おはよう!! おはよう!!!!♪♪」


 ニコニコ笑って、長い銀髪を翻して、すれ違う人皆にプライスレスな挨拶をする。

 当然、道行く人も笑顔で、偶に無視されるが、だいたい80%で友好的な返しがある。

 いやぁー、なんというか、心の豊かな人が一杯いるんだこの町は、ホント嬉しくなるね!


 そんな事をやっている内に、一つの家の前に到着。

 こんな大都会に、敷地を持っている時点で、相当なVIPである、といつも思う。


 インターホンを連打、独り暮らしの彼に、遠慮なんていらないだろう。


「おお、アイリじゃないか、どうしたんだ?」


「あそぼぉー!あそぼぉー!」


「おお、ちょっと待ってな、準備がある。

 まあ、上がって待っててくれ」


「あいよぉー、おじゃましまぁーす」


 勝って知ったる我が家のように、内部に侵入。

 広いリビングに入り、毎度お馴染みのやり口で、自分用のミルクコーヒーを作り上げる。

 適当にテレビをつけて、ソファーで寝そべる。

 はわぁー、早く準備すまないかなぁー、ずるずると飲み物を下しながら思っていると。


「先のフェアレイン戦線の闘いによって、わが国は、ついに敵国、ブレン帝国に国境を抜かれましたが、、。

 この先の情勢について、マクシュミランさんは、どうお考えになり、先を予想されますか?」


「そうですね、不確定な要素が多く、安易な発言は控えたいのですが、しかとお聞きください。

 既に国民の皆さんも、うすうす察しは付いていると思いますが、敵国ブレンとは、国力差も大きく。

 恐らくは、十年持たせるのも、難しいのではないでしょうか、、」


「ではやはり、早々に私達は、西側の盟主三国、国際連合を主体とした枠組に、救援を求めるべきなのでしょうか?」


「いや、そうとも、早計には言えません。

 なぜなら、彼らとて、国益に反する事を、わざわざ嬉々として、実行してくれる、そのように夢を見ることはできません。

 だから、我々の全力を、戦争に傾け、とりあえずの誠意を見せ、どうにもならなくなった時に、彼らはやっと重い腰を上げてくれるでしょう。

 救援は十分に見込めます、ですが、それは我々の出来る事を、とりあえずの全てを、出し尽くした後の話しになるでしょう」


「なに見てるんだい?」


 テレビから流れる情報に夢中になっていると、画面の端に、私の視野におけるだ、ハドウが現れた。


「憂鬱なニュース」


「確かに、面白くはない内容だね」


 話の通りだ、面白くない。

 私達の国、ルスカ王国は、ブレンとか言う、たわけた国に脅かされている。

 まあ、所詮は中小国の小競り合い、どうにもならなくなったら、西側の大国に泣きつけばいいので、あんま切迫感はないのだけど。

 それでもまあ、多少は気にならなくもないわけで。


「ねえ、私たちで、蹴散らさない?」


「面白い話だね、それで、どうやって?」


「今から軍に仕官して、私達の天才的采配によって、艦隊戦でどうにかするの、良い案だと思わない?」


「確かに、アイリの能力的に、多少は上手い具合にいく可能性も否定できないけど。

 それでも、仕官して、上層部に行くまでに、最低でも十年くらいは掛かるんじゃないかな?」


「それじゃ、スーパーエースパイロットになるって案は?」


「うーん、それだと、良くて局地的に大活躍するだけで、大局は変えられないんじゃないかな?」


「もういい、私は私でエリート街道を突っ走るだけだもん。

 国が敗れて、その山河で別の場所に流れて、上に行けばいいだけ」


 分かりきっていたけど、これはどうにもならない事に分類されるのだろう、自暴自棄に諦めよう。


「それで、何処に行きたいんだい?」


「どこでもいい、未開の場所で、冒険したい」


「いい案だね、手配しよう」


 準備の整ったハドウと、外に出る。


 もう九時くらいかな? 日差しがちょっと暑苦しく感じる頃合になっていた。


 ハドウの家のガレッジに移動して、赤のスポーツカーに飛び乗る。


「それじゃぁー出発しんこう!」


「あいよぉー」


 私の掛け声に、適当に返してくれるハドウ、まったく、この人やる気あるのかしらねん、心配になってきたんだけど。


 とりあえず宇宙に出る事に決めて、惑星内シャトル発着場に向かう。

 その道中、私は腕輪型端末で、十人弱いる親友達に、今日の予定を知らせておいた、ラインにて。

 まあまあ、暇なら突撃してくれるだろう、彼彼女達ならばきっと、壮大にやらかして、やってくれる感じで面白楽しくね。


「それで? どこに行こうか?」


「此処! この最近開拓の始まった、プレアレス銀河の、この惑星!」


 私はシャトル発着場からの、第うんじゅう番号便内にて、広大な客席、その船内に全域に響き渡るくらい大きな声で言った。


「ここね!ここ! 面白い動植物が、一杯あるみたいなの」


「へえ、どこで情報収集したのか知らないけど、良い感じの穴場を見つけたじゃないか」


 感心したようにハドウが言う。

 そうだ穴場、ここは冒険家にとって間違いなく穴場。

 惑星テラフォーミング、移住可能化がとりあえず済んで、更に期間限定の開拓者募集という名の無法地帯なのだ此処が。


「ここなら、精一杯暴れられる」


「あんまり無茶しちゃ駄目だぞ」


「大丈夫大丈夫、一応の分は弁えているから」


「そうかな? 先日、暴れすぎて雪崩で死に掛けた事、俺は忘れてないよ、これからもずっとね」


「ぐぅ、いいじゃん、雪崩なんかでどうにかなる、そんな私たちじゃないんだからさ、けち」


「けちって、そういう問題じゃないんだがね、まあ、楽しければ基本的には、全部許すから、好きにすると良いさ」


「うんうん、そうだよね! やっぱり話が分かる大人って素敵だわ!」


 そんな風にお喋りしながら、船内で飲めや食えや歌えやで、日頃の憂さを晴らす。

 注意されるかされないかのギリギリを突っ走り、ハドウに冷や汗流させるのも面白ポイントである。

 私はいつもいつも、一杯にストレスを抱えているんだから、こういう場所でハッチャケないといけない。

 まあ、別に抱えなくてもいい奴も全部、私が横から掻っ攫う感じで、独りいつも悶々イライラしてるだけって説もあるって、なんか常時冷静沈着な親友に、言われたりもするんだけどさ。


「よーし、宇宙海賊に襲われる確立の高い船はどこかなぁ~!」


「ちょ、あまり不謹慎な事を、大声で言わんでくれ」


 惑星内シャトルで大気圏を抜けて、更に少し惑星から離れた場所にある、宇宙空間内の宇宙港にやっと到着、三十分くらい掛かったかな?

 やはり夏休みの時期だからか、わらわらとニコニコしてる学生や家族ずれが多いなぁーと、硬質な雰囲気の空港内で思う。


「うわあーアイスだぁ! 食べてくる!」


 空港内ではお馴染みの屋台。

 およぉ!それにあれは、最近消防厨房に流行と聞く、妖怪のマスコットキャラクターがいるではないか!

 私は感激して、ソイツに突撃した、無論ダメージを与えるつもりで抱きつく。


「おいおい、年甲斐もなく、なにやって、すみませんねぇー、こいつ見た目に反して、精神が極端に幼くて」


「ふっへっへぇ!! おらら、美少女が構ってるぞ! うれしがれぇー!」


 そんな感じで、困惑気味のマスコットと盛大に戯れる。

 周りの子供が、なんか傍目から生暖かい眼を注ぐ中だが知らん、私は私がやりたいようにやるんだ。

 お父さんも言っていた、周りの迷惑以上に、厳格な客観の視点で見るのが大事だけど、私が楽しむ総量の方が高いなら、基本的に何してもいいってねぇ!♪

 およ? セットで存在する、アイス屋のお姉さんまでもが話しかけてきた、ハドウの方に。


「可愛い娘さんですね、お子さんですか? それとも、もしかして恋人さんだったり?」


「はっはっ、どっちでしょうね。

 それにしても、見ての通り、すみません、商売上がったりでしょう?」


「大丈夫ですよ、マスコットの方は防御力も高いですしね、ふっふ」


「あっはっはぁ、、、うだぁ!!!」


「なにしてんだぁ!浮気は許さないぞぉ!」


 なんとなく腹立ったので、足を踏んづける、てか、オーバーなリアクションだね、冗談だから本当に軽く踏んだだけなのに、変に罪悪感を覚えちゃったよ。


「はっは、冗談きついぞアイリ」


「冗談だからね、てへぺろ。

 うっへっへぇ♪ お姉さん! アイス買います! お勧めの味とかありますかぁ!?」


「そうですね、トロピカルメロンサイダー味とか、如何ですか?」


「やだぁー! チョコがいい! チョコでお勧めはないのぉ~??」


 そして最終的に、三段に段々になった、大きなカップのアイスを購入した。


「そんな特大のアイスを買って、大丈夫か?」


「大丈夫大丈夫ぅ! 私の胃袋は鋼鉄製な上に、縮退炉並みのブラックホール空間だかねぇ! わっはっはぁ!

 それにしてもハドウ! 普通のスコーンアイスなんて、男が廃るよ!」


「はっは、いいのさ、この程度で廃るような、男じゃないのだよ、俺は」


 時間を掛けるのもあれだから、ガツガツ食べてぺロリ、五分程度で食べ終えたぞ。

 何かの新記録に成りえるんじゃないのかな? よく知らないけど。


「よっーーっし!! 宇宙のかたなにさあ行くぞ! よし行くぞぉ!!」


「今からそんなフルスロットルじゃ、身が持たないんじゃないのかな?」


 飛び乗った宇宙戦艦の中で、あっちなみに流石に戦艦じゃない、普通の銀河間巡航艦である、で隣席のハドウに突っ込みを受ける。


「駄目駄目、まだまだこんなモンじゃないよぉ!

 わたしはねぇ! 動けば動くほど! 暴れれば暴れるほど元気になるのぉ!

 むしろねぇ! もっともっと燃えてないと! フラストレイションで爆発! 宇宙崩壊的なビックバンを起こしちゃうんだよぉ!」


 歌い上げるように、流麗に、どこまでもしなやかに滑らかに、オペラ歌手のような演説調で言ってあげる。


「そうみたいだな、アイリはその方が、逆に活き活きとしているように、俺からも見えるな」


「でしょでしょ! 私は常識を逸脱する為に、もしかして生まれたんじゃないかと、最近常々思っているのだよ」


 一転雰囲気を変えて、冷静冷徹な植物学者のように、真理を見通すような、捉え所のない眼差しを装い、厳かに成ってみる。


「さて、その話は一端置いておいて、「駄目駄目!」」


 なんとなく、ハドウに主導権が渡りそうなったので、阻止。


「駄目だよ!ハドウ!」


「うん、なにがかな?」


「駄目なんだよぉ! ハドウもハッちゃけて! 盛り上がっていこおぉ!」


「うーむ、俺はあんまり、乗り気じゃないんだが」


「うぇーん! やだよぉ!! もっとハドウとっ!

 ハートフルに!マックスで!盛り上がって銀河に太陽を生み出せるくらい! いろいろとぶっ飛ばしたいのにぃ!!!」


 癇癪起こした子供のように、座席を揺らしてみる。


「まったく、しょうがないな。

 それじゃ、周りに迷惑にならないくらいに、付き合ってあげよう」


「べろべろばばばあぁー!

 やだよぉー♪ 迷惑かけまくちゃうお化けだよぉーン♪ うひゃひゃひゃひゃぁ!!!」


 座席をドスンドスンして暴れてみる、一応言っておくけど、後ろに乗客はいない、私達が最後尾だ。

 えっへーん、ちゃんと弁えて事前に選んでいるのだ、私に抜かりはない。


 その後、短い船旅を、ひすたらに、祭りかのように暴れ放題に騒ぎ放題で好き勝手にした。

 もちろん、途中で乗務員さんに注意された。

 私は涙目になった、注意されてシュンとした。

 でも、それも良い思い出になるので、オールオーケーだもんねぇ! 悔しくなんか! ないんだからねぇ!


 まあ、その後も静寂に遊んで、周りの乗り易い乗客の幾人かが、それに混ざったりもした。


「うりゃあぁ!!!!!!っっ!!! やったぁ!うおっしゃぁ!!上がり!!わたし最強伝説更新!!」


「アイリは、本当にトランプ系の遊びが鬼強いなぁ!」   


 ハドウと二人で、小さなテーブルで大富豪。

 そろそろ目的地に着くので、遊びを最小単位に縮小して、やっとこの騒ぎよう、全盛期はどの程度か、推測して察して楽しんで欲しい。


「わぁー、熱いねぇー!」


「そうだねぇ、さっきまでの空間が、まるで天国に思えてくるよ」


「それじゃ、此処は地獄だねぇ!! 生き残る為に! 全力で戦おぉ!!

 戦場に戦士が居るのではなぃ! 戦士の居る場所が! まさしく戦場なのだぁー!! 

 すなわちぃ! わたしの居る今ここはぁ! どこよりも熱い戦場なのだ! さあ! ならば戦争だぁ! どこからでも掛かって来いぃ!」


 プレアレス銀河、彗星系、第四惑星”エボン”。

 最近人の住める環境になった其処、その現在開拓の中心地である、此処、空港から降りた場所、駅のロータリーや商業店舗があり、目の前には緑溢れて、山々が周囲を巡る、そんな田舎っぽい場所で叫ぶ。

 あまりに声量が大きかったのか、比較的近くにある大きな山々から、わたしの声っぽい山彦が帰ってきた。

 うわぁー!! 新鮮な気持ちよさに胸がトキめいたぁ!

 調子の乗ってあーあーわーわー、あーだこーだ、カッコいい台詞や必殺技を、一通り歌い上げるように絶叫する。


「わっはっはぁ! 楽しかったねぇ! そりゃ帰ろうぉ!!」


「うそ、これからが本番だろう?」


「そのとおり! 嘘であーるぅ! さて! 本番を始めようかぁ!」


 此処は、宇宙空間への流通の中心で、商業地帯でもあり、てーだから、お土産も一杯売っているのだぁ。


「てーおい、いきなりお土産の物色かい?」


「そーそー、みんなに買ってあげるの、帰りだと、なんか忘れそうで怖いからさ」


「怖いって、どういうことだい?」


「怖いよ、遠出したのに、お土産を買って帰らないと、反逆を起こす人達が居るの、困ったものだよねぇ! うっへっへぇ!」


「にしては、なんだか嬉しそうだねぇ?」


「うん! 嬉しい! 

 その程度で反抗してくれる人達って、とってもアグレシッブだよねぇ! 懲らしめ甲斐が! 戦い甲斐があるよぉ!」


「それじゃ、買って帰らなければ、いいんじゃないかなぁ?」


「駄目駄目それは! ご法度ご法度ぉ!

 そういうのは、最善を尽くして、それでもうっかりじゃないと、相手も許しちゃうだろうし、こっちも本気になれないのぉ」


「うーん、なんだか独自の理論過ぎて、良く分からないなぁー」


「うっへっへ、まあまあ、友達グループの内輪だけのアレコレ、そういうネタは得てしてそういうものだよぉ~♪」


 とりあえず二十個ほど、食べ物を中心に、友達のそれぞれの趣味や嗜好も考慮して、お土産を買い叩く。


「ねぇーねぇー、沢山買ったからまけてぇぇえ!!」


「ちょそれはやめておけ、商店街じゃないんだから」


「申し訳ありません、値下げの方は、当店では行っておりません」


「あう、ごめんなさい、調子に乗ってしまって、、、ぐす、うえ、すんすん、ひっく」


「おいおい、泣くなよ。

 えと、これでお会計お願いします、カードは使えますか?」


 ハドウが会計を済ませている間に、店の外、人気のない場所で、止め処なく溢れる涙を拭いながら、適当にジュースを自販で買う。


 私はテンションとかの振れ幅が、自分でも大きすぎて天元突破してると思って自覚してる。

 ある程度制御できる自負はあるけど、こういう気を抜いても大丈夫な時は、常時心のスイッチをオフにしている。

 だからか、感情の制御機能はオフなのに、感受性だけが異常に研ぎ澄まされて、こんな風に簡単に涙腺崩壊する事もしばしばなのだ。

 でも、これで良いと思う、泣くのは楽しい、子供みたいに、簡単にぴーぴーできるのは、なんだか可愛くないだろうか? 私は愛らしいと思うのだよ。


「泣き止んだか?」


 手荷物を沢山持ったハドウが、自販と併設のコインロッカーにバコバコお土産を入れながら問うてくる。


「うにゃ、えく、うん、だいりょうぶだにょ」


「まだ、すこし時間が掛かるみたいだな」


「うえ、ハドウ、優しくして、慰めて、傷ついてる、甘えさせて。

 どうしようもないメンヘラ的な美少女が、涙を滴らせて、助けを求めているんだよ?」


「さて、それくらい回復すれば、もう行動開始できるな」


「そうだねぇ! ラブパートよりも! 私達の場合は戦闘パートの方が!盛り上がるし! 専門分野だもんねぇ!だもんね!」


「そうだそうだ、塩らしくしてるなんて、アイリのキャラには合わないと俺は思うぞ」


「それはちょっと聞き捨てならないけど! このさい無視無視!

 さて! これから未開拓の場所を冒険しよおぉ!れっつらゴレーム隊の出撃だぁ!!」


「よし、最大限楽しもうじゃないか、俺も童心に返ったつもりで、付き合ってやるぞぉ!」


 おーおー、ハドウも割かし子供っぽい顔で微笑んでいるぞ、その表情に胸がドキッと来たのは内緒だ。

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