シャルロットRの蛮行&恋人
「はぁースッキリした」
わたしの趣味は殺人だ。
いや、闘争、と言った方が正しく精確かなぁ?
獲物についた血痕を高速で振り払うだけで拭い、亜空間ポケットに収納する。
そしてまた、何食わぬ顔で裏街路を我が物顔で闊歩する。
「はぁーはぁーはぁー」
溜息を連続で吐きつつ、それに合わせてリズムカルに舞う踊るように歩く。
全体的に白と金のドレスコートが、フリルをヒラヒラさせつつ優雅に閃いている。
まったくこのような薄汚いスラムに似合わない、そのギャップ感に酔いしれていると。
「本当だ、皇女様だぜ」
「ああ、まさか噂が本当だったとはな」
スラムに似合わない奴ら、整った容姿を持つ二人組みが立ちふさがった。
私は私を性的に見て、たまらず襲ってくるような愚者を鑑賞する為に、ここにいるのだ。
そういう必死さは好きだ、暗闇に希望を見出したような、あの一生懸命さには震えずにはいられない。
同時に、体中を這うような視線の圧力も、嫌悪という何時までも拭い去れない戦慄を与えてくれる。
わたしの身体を犯し滅茶苦茶にして、殺すか子種でも吐き出さして完全に支配したい、そのような熱望を求めている。
「貴方達、死にたくなければ消えなさい、むやみに殺生はしない主義なの、今はね」
空間から獲物を取り出して、水平に突きつけながら宣言する。
「なんだ、黄金の魔女って言われて、増長してるのか? 嬢ちゃん?」
一人が舐めた口で挑発し、もう一人が触発されたのか、ノンタイムで剣を取り出しこちらに駆け出す。
「はっはぁ! ちがいねぇ! こりゃ俺達がお灸を据えてやらないとなぁ!!」
わたしは剣を突きつけたまま、ただ水平に動いた。
「うぎゃぁあ!!!!!!!!」
喉を一撃で貫いて、それでも死ねないのは分かりきっている。
陸に打ち上げられた魚よろしく、激痛やら死の恐怖で絶望しながらのたうつ男を、ゲシゲシと蹴り飛ばす。
「あんたみたいなゴミがぁ!!! わたしを愚弄するかぁ!! この! この! このぉ!!!!!」
安直な台詞とともに、ストレス発散できるくらいの、口汚いスラングを連発する。
蹴りすぎて男が掛け値なしに死んだ時には、トリップしていた脳内が冷めて平常に戻った。
もう一人の男は逃げていた、酷くどうでもいい、こっちの方が美形だったのでチョイスしただけだ。
安い虐めにも飽きたので、またスラム街を練り歩く作業に戻る。
最近はキモい輩も粗方減った、名が売れすぎたのかもしれないっと嘆息を零すが。
「ぐへへっへぇ! なんだぁこの超絶美少女はぁ! おらがエッチなこと教えてやるお!」
ああ、まだいたんだ、と思いながら、条件反射で怯えた不利をする。
下腹部にテント張りながらにじり寄ってくる男に、涙目を向けて、壁に後退するわたし。
「おおおぉおおお!!! こんなカワイイ子を犯せるなんてぇ! 一生モノの僥倖ぉおお!!!」
相当興奮しているのか、吐く息が荒すぎる、同じ人間とは思えないし、想いたくないわね。
そろそろいいかと、手をわきわきアレを揉むイメトレでもしてるソレを両方一気に切り落とす。
間髪いれずに両足も膝元でなぎ払うように両断。
あとはポカンと達磨になった変質者が一匹。
次に絶叫。
「ねえねえ? いまどんな気分? こんな美少女に殺されて、貴方も幸せでしょう?」
痛みと恐怖で、先ほどとは別の意味で酷い表情を晒している。
ツカツカ歩み寄って、汚い顔を蹴り飛ばす、なんどもなんどもなんどもなんどもなんども。
肉に靴先が食い込む感触が堪らない。
先ほどまでわたしを犯せると喜んでいた奴が、形成逆転されて地べた這いつくばるの堪らん。
「はぁ、、はぁ、、、」
久々に凄く興奮した。
割と耐久力あったのか、本気で蹴り上げるまで死んでくれなかったのが良かった。
変態はほとんどの場合、何か偏執的に研ぎ澄まされた激情を持っているから、生命力が高いのだ。
「ふぅっ、、、、」
息を男の死体の前で整えて、邪魔な身体を蹴飛ばして路地の隅に追いやる。
さて、もっと殺し甲斐のある存在はいないか、期待しながら歩くのを再開した。
恋人
約束の時間の幾分前に、彼はそこに居た。
洒落た町の洒落た喫茶店、その野外カフェテラス。
誰よりも愛しい、この世界にただ一人だけわたしが頭を垂れるべき対象存在だ。
わたしは彼を愛している、酷く律儀なほどに。
彼以外に無限の憎悪を向けて、相対的に彼のポジションを引き上げている。
「ごきげんよう、お待たせしたかしら?」
「いや、全然待ってないよ」
彼は笑顔を向けてくれる。
どんなときでも、わたしを受け入れてくれるその表情。
ああ、お気に入りだ。
彼だけがわたしの決して満たされない何かを、無上に満たしてくれる絶対だと悟り確信する。
「そういえばね、さっき歯牙にもかける必要の無いゴミを、殺して回ってたのよ?」
彼の隣に、狭く腰掛け、上目遣いに見つめながら、客観的には悲惨過ぎる現実を提示する。
彼はすべてを受け入れたような目をして頷き。
「ああ、たのしかった?」
「うん、まあほどほどよ、所詮は暇つぶしだもの」
横を通りかかったウェイターを捕まえて、二人分のコーヒーを注文した。
「なにか楽しいことない?」
答えは分かっていた。
「いまが楽しいよ?」
そうだろうそうだろう、わたしは鷹揚に頷きながら彼を撫でる。
「貴方は何時も、わたしを満たしてくれる。
そして、わたしも常に貴方を満たしてあげられる。
これ以上の幸福って、他にあると思う?」
「うん、ないだろうね、この広い宇宙のどこにも」
私達は二人だけでも完成している。
世界など、所詮は私達の世界を拡張させる付属品に過ぎない。
「この世には、同義で同価値であるモノが多すぎる。
それなのに、どうして貴方は、貴方だけは唯一無二に匹敵する。
掛け値なしに神のような存在価値を有するの?」
「それは僕も君に尋ねたいね。
どうしてそんなに、ただ只管に運命的に存在しているんだい?」
わたしはさあっと軽く答えて、さらに彼に身を寄せて幸福感に包まれる。
ふたりこのように寄り添っているだけで、無上に幸せだ。
わたしがそうなんだから、当然彼もそうだろう、そうだろう。
彼の幸せは全て抵抗なく100%わたしのモノで、その逆も然りだ。
「ねえねえ」
「なに?」
「なんでもないわ」
来たコーヒーを啜る、苦い。
「はぁぁ、、、、」
幸せすぎて、眠くなってしまいそう、実際は冴え渡っているのだけど。
「溜息をすると、幸せが逃げるよ?」
「逃げる幸せなんて、一片もないから平気」
「いまが幸せじゃないの?」
「この幸せが無くなるなんて、ありえないから」
言葉と共にジッと見つめると、彼は恥ずかしくなったのか。
面白くて一途な感じに、ずっと熱視線で彼を焼く。
「わたしに認識されて、嬉しい?」
「よく分からないけど、その目やめて、恥ずかしいから」
「なんだとぉー、このぉー」
ぽかぽか猫がじゃれ付くように抱きつく。
わたしの胸部が彼の腕にむぎゅっと押し当てられて、彼の心拍が跳ね上がるのが嬉しい。
彼を喜ばせられるわたしで嬉しい。
彼に無上に喜ばせられているわたしは、そうでないといけないと思うから。
もっともっと、彼にはときめいて欲しい、わたしに今よりももっともっと夢中になって欲しいと思う。
「ねえ、わたしの好きなところ言って?」
「ええ」
「おねがいぃ、だめぇ?」
だだ甘えた声を捻くり出すと、彼は観念したように思考を開始した。
「全部、、かな」
ああ駄目だ、わたしは馬鹿になっている自覚がある、精神を完璧に患っている。
彼に好かれている、誰よりも愛されている、それが分かるだけで、こんなにも胸が溢れるほど一杯になる。
どうしてこんなにも好きなのか、分からなくなってしまいそうなほど、ただただ夢中だった。
わたしは当然わたしがあるべき彼の胸の中に飛び込んで、その唇にキスをした、深く深く溶け合うほどに。




