表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/34

闇のゾディアックコア-インフェリアル同盟破断前


 


 銀河帝国西南方面艦隊・第五艦隊旗艦・アクアポリス。


 巨大な流線型のフォルムだ、全長は10キロメートは下らない。

 今は武装は内包され、突起として様々な船外機器が幾つかある程度。

 全体的に蒼で彩色され、装飾も意匠が凝らされている。

 銀河帝国の数多ある旗艦戦艦の中でも、特に見た目が良く整備された華々しい船体は今。

 暗い宇宙の中でも、煌々とその身を恒星のように自然発光するかのように、自らを照らし出していた。


「二連配置の縦列で、航路に等間隔で大規模機動要塞をおくのは、果たして経費にあった成果を出せているのか」


 旗艦艦長、クレイシ=シャス少将は一人呟く。

 艦外の微細な観測データを眺めつつ思索にふける。

 ある調査と特別な任務。

 さらに特別に、帝国に僅か三しか存在しない、皇帝直属独立機動兵器大隊を率いている。

 その大隊は尉官以上のみで構成された、破格の精鋭、超スーパーエースパイロットの軍団である。

 彼ら集団は、ある作戦の事前要件を満たすため。

 そしてその作戦行動における、要とも言える機動兵器部隊。

 その最後のコンバットマニューバー、戦闘証明を兼ねた実戦を想定したテスト演習の為に、彼とその部隊は今在る。


「第二艦隊は、予定通り、調査の為と銘打って、東南域の航路上に満遍なく、探査・中継衛星を設置したか。

 これで敵の不確定な動きに、我らも翻弄されることもなくなったな」


 遥か彼方で完了した、予定通りの結果に安堵に似た息を吐く。 

 通常の艦艇ならともかく、敵のステルス性と機動性に溢れた艦艇を補足するには、この処置は必須だった。

 万が一にも、こちらの作戦意図の尻尾でも掴ませるわけにはいかないのだ。

 だがこの戦略的に見て割りに合わない、厳重過ぎる不可思議な防諜行為。

 完璧なまでに内情を隠匿隠蔽する、鉄のカーテンを敷くようなやり方は、敵に多少の不審を与えるだろう。


「はいはーい、もしもーし、クレイ少将、やってるぅ~♪」


 陽気に弾んだ少女の声。

 艦橋下部から上部、ここにやってくる銀髪の美女、シンディーのそれである。


「何ですか? シンディー殿」


「べつに、何にもないよ、何にも無いって本当にいいことよねえ?

 計画が万事つつがなく進んでるってことなんだからねぇ~」


「それでは、わたしに何用ですかな?」


「特に用事は無いよ、この艦で一番話すに有意義な人ってのもあるけど、今回はそうじゃない。

 率直に言って、計画の佳境で、怖気づくか足踏み踏むか、一応確認しとくのも悪くないと思っただけよ」


「そうですか、では何なりとご確認ください」


 その後、何がしか幾つか質問されて、彼は思ったままを答えた。

 シンディーは何も感じていないかのように、透明な瞳で頻りに頷くだけだった。


「オーケイ、貴方はまったく己のこれからする事に疑問がないみたい。

 絶対の確信の領域で決意し覚悟し悟りきった、一切の不純物のない明確なヴィジョンを備えている。

 まあ、こんな作戦の主要を担う人物が、いまさらって感じよね。

 それじゃ、この艦が担う戦場での立ち振る舞いとかも、一応再確認程度に聞いときましょうか?」


「はい、旗艦としての情報処理能力を生かし、貴下の艦隊運用はもちろんのこと。

 最前線で積極的に戦線を啓開する事も含まれているかと。

 特に、この艦に積んでいる、総計一万弱の衛星型独立機動砲台。

 これらで最大戦果を出す為に、単艦跳躍で精密ジャンプを繰り返し、敵の中核に迫ります。

 並外れた機動と最新鋭旗艦能力によって、一瞬だけなら敵中核に存在できます。

 そしてその場で全機一斉射出。

 集中機動砲撃によって、敵の規格外れに強力な最新鋭艦、旗艦を中心に撃滅します。

 このように最大脅威目標を早々に片付けきる事によって、数の不利を緩和する心積もりです」


「オーケイオーケイ。

 でも衛星型独立機動砲台の数が、果たして事足りるか分からないけど。

 まあまあ敵の旗艦級戦艦の絶対数量が分からない以上、しょうがないわね。

 無駄に多く持ってくるのも作るのも、微妙な代物だし。

 まあ無くなったら、補給は幾らでもする、少なくともつもりだから、言って頂戴。

 銀河帝国標準輸送艦一艇当たりに、だいたい五〇〇個くらい、積め込めるみたいだし。

 でも改めて凄いわね。

 こんな巨大な衛星兵器を、ここまで詰め込める輸送艦が、これほどリーズナブルに作れるなんて。

 どれだけ投資したのか、開発の労が偲ばれるわ」


「いえ、それほどの労はなかったようですよ。

 基本設計等は、東方・西方両帝国からの流用を多分に含まれています」


「ああ、なるほどね。

 件の秘匿作戦で輸送艦を大量生産したから、これほど開発が進められてたってとこ?

 私の予測よりも、輸送艦の開発進歩状況が二世代ほど異様に進んでるから。

 あまりに早いからビックリしていたのよ」


 彼女はそこで一旦話を切り、電子パネルを一つ引っ張り出して、操作する。

 彼方で展開される機動兵器大隊の演習、その一つに傾注しているのだろう。

 シンディーは娘プリシアを溺愛、というより偏愛している。

 それは彼も知っている、奇遇な様々な巡り合わせで、本当に偶々知る機会があった。

(そういえば彼女の娘が、この艦に乗船してから、まだ一度も直接会ったことはなかったな)

 彼は一回くらいは会ってもいいかもしれないな、と思いながら、自分もリアルタイムで展開される演習データを見てみる。

 機動兵器大隊、その独立特殊作戦部隊の一つ、その部隊長を担っているのがプリシアその娘であった。

 その勇姿を、彼女と彼は演習終了まで、共に見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ