ファンタジー世界物語-学生寮にて
学生寮に帰宅した。
「おお、アイリ、お役目ご苦労、何かエロイ悪戯でも奴にされなかったか?」
「されるはずがないでしょう」
見るからに怒った目、立腹なのだろう、やれやれ疲れそうな展開だ。
「どうして、一人で何もかもするんですか?
どうして、私に何も言ってくれないのですか?」
「別に説明しなくても、今回は事態が進む感じだったからだよ、拗ねんな」
「拗ねてません。
だけど、次からは全部説明して。
約束してください」
「はぁ、分かった、約束するよ」
”口約束”だけどな。
「それじゃ、今回に限り、許してあげます。
では、さっそく今日なにがあったのか、嘘偽らずに教えてください」
「その前に、腹が減った、何か料理でも作ってくれ」
「私に飯を作れと言うんですか?」
「そうだが、何時ものことだろ」
「なに馬鹿な、いえ貴方はバカだから、それでいいのでしょうが、付き合う私の身にもなってください」
「いいから、アイリ、料理できただろ、授業中見てたぞ」
「それでどうして、私が貴方の為に料理をする、しなくてはならないに繋がるの?
理路整然と説明できれば言う事を聞きます」
挑戦的な瞳、言い負かせると思っているのだろう。
「お前は、俺をこの世界に召喚しただろう?」
「、、、待っていてください、出来るだけ早く済む料理を作ってきます」
いやいやな目をしながら、トテトテと併設の調理スペースに向かう。
俺は得も言えない勝利の余韻に浸りつつ、その背後に近づき、肩を揉むようにする。
「なんですか?
だいたい、気づいてないかもしれませんが、コレはセクハラと言うモノです。
ちゃんと自覚はありますか?」
直前の悔しさも相俟って剣呑な瞳だ。
「何時も俺の世話してくれるアイリに、偶には俺も何かしたいと思ってな」
「へーこれが、貴方にとっての奉仕ですか、、、。
多分に疑わしい部分もありますが、まあいいです、悪くはありません。
しかし気をつけてください、それ以上のこと、変なことをしたら、、、命の保障はできませんから」
最大限の警戒心の瞳を向けられる、背中を向けてもそのオーラは一切引かずに、むしろ増大していた。
「アイリは苦労人だな、肩が凝ってるぞ」
凝ってる部分を行き成り少々異常に強く揉むと、ビックリしたのか、アイリは「あっん」と控えめながら良い声を出した。
自分のその声に恥ずかしかったのか、暫し肩を震わせるように押し黙る今。
「アイリは打てばどこまでも響く楽器みたいだな、凄く可愛いよ。
もっと可愛い声出してくれないか? いや、出させていいかな?」
耳元で声を出すと、震えは跳ねるに変わり、俺は思いっきり張り手で飛ばされた、尻餅をつく。
「いててぇっうげぇ!」
「貴方という人は! あなたという人は!!」
上から怒鳴りながら、鳩尾を正確に狙ったヤクザ蹴りの連打、尋常じゃない。
「はぁ、はぁ、はぁ、、、」
「気は、済んだか?」
俺は何事もないように立ち上がる。
「ち、近づかないでください! やはり貴方はケダモノです! 嫌いです!」
俺という存在に怯えたのか、身を抱き締めて睨みつけてくる。
いやはや本当に怖がってるように見える。
「別に、アイリを不快にさせるつもりはなかったんだ、ごめん」
「安い謝罪ですね、貴方はもう信用できる人間じゃありません!」
断じるように言われて、ちょっと焦ってきた。
「ごっごめんよアイリ、俺が調子に乗った、全面的に悪かった、謝るから許してくれ」
「いやです! もう貴方は性悪な人と、私の中で完全に断定されました!
そうやって下手に出れば、どうせ許してくれる、そう、思っているんでしょう?
だから、わたしを何度も何度も何度も何度もカラかって遊ぶ、そんな最悪な思考が出来上がったのです」
ごもっともです。
「それは、アイリが可愛いからで、、。
アイリだって! 俺のこと苛めて悦びそうだ!」
「なんですか! その勝手な推論は! 憶測で物事語らないでください!」
まじめ優等生、しかも美少女に、威風堂々と正論で攻められると、ちょっとキツイものがある。
「貴方とは、金輪際必要なこと意外では関わらないので、貴方もそれを承知しておいてくださいね」
見下げ果てた人間を見る目で言って、料理に戻っていく。
「アイリ、ごめんって」
「、、、、」
「アイリ「うざったいです、静かにしてください」」
「ゆるし「黙っててください」」
俺の発言を封殺するように、絶対の拒絶の意志とともに被せられる。
マジで機嫌を損ねた。
「アイリ、俺を苛めてもいいからさ、お相子って事にしない?」
アイリは料理の手を一旦止めて振り向くと、屹然と言った。
「変態ヘンタイ」
「はぁ」
「ヘンタイ、変態、へんたい、変態、編隊、変態」
ツカツカ歩み寄って、至近距離でキッと下から見下ろすように言ってくるので、俺は堪らずたたら踏みつつ後退する。
肩が壁にぶつかって、強烈なプレッシャーを浴びつつ、顔を付き合わせる距離で言われる。
「ド変態、、最低」
本気でそう思っているのが、ダイレクトに伝わった、俺はお遊びでやってたって言うのに。
「私は貴方を軽蔑します。
貴方は女性を見下して貶めて、それを悦楽として、糧にしなければ生きていけない、最悪な男です」
「、、、ごめん」
「ふん、どうせ口だけです」
「口だけじゃないよ」
「だったら、証明して見せてください」
「なにすればいいの?」
「女性を敬う。
なにも難しいことは言いません、そんな誰でも出来る、当たり前の事をすればいいのです」
子供に言い含めるように、だが何か違う、相手を暗示にかけるかのような妖艶な声音。
「貴方は、本当は、それをしたいと思っている、」
「はっ」
「うん?」
俺はその場を引く、ヤバかった、なんかヤバかった。
「どうしたのですか?」
「どうしたのじゃない、今、洗脳しようとしてただろ」
「なに言ってるんですか、バカですか?」
呆れたように、ジト目で見てくる。
「さっきの台詞をそのまま返すが、アイリ、お前だって男を、いや俺を見下して貶めて、良い気分に浸りたいと思ってるんだろ、そうだろが!??」
「なにを馬鹿なことを、下らないですよ、やめてください」
「クールぶって、内心じゃ俺を上手く手篭めにして従えて、気持ちよくなりたいって思ってるんだろ!」
その俺の台詞に、彼女はちょっとだけ、そのクールな表情を引きつらせた。
図星じゃないだろうが、彼女自身、自身の深層心理に”そういうの”を感じているのかもしれない。
「ばっバカです、ホント馬鹿です、付き合ってられません!」
「おい、逃げるな」
途端顔をらしくないくらい紅潮させて、可愛く撤退しようとしたアイリの手を掴む。
「離しなさい!この!」
もみくちゃには、ならない、俺が力技で手首を掴む形になる。
でもそれだと、必死に離れようと力を込める彼女の力で、この細い手首が壊れてしまいそうだったので、しかたなく開放する。
アイリは手首を摩りながら、傷つけられた少女のような瞳で見つめてくる。
「言葉もありませんね、女性に乱暴するなんて、、、」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! アイリさん! ソレ違う! 誤解!」
「なにが誤解ですか、この手首の痛さはなんですか?」
なんか微妙に瞳を湿らせて(わざとだ!)、切ない裏切られたような目をする。
俺は切ないが過ぎて、錯乱気味に言った。
「ごめん!! ホントごめんって! アイリ様!神様!女神様!なんでもするから許してぇ!!」
土下座も厭わない勢いで捲くし立てると、途端、アイリは表情を戻して、笑い出した。
「あっはは、はっはっはっは、」
「ちょ、アイリさん、何で笑ってるんすか、さっきまで怒ってたでしょ」
「あはっはっはっはっは」
俺に構わず好きなように笑い続けるアイリを見る視る観る。
なんだかあれだ、この笑顔守ってやりたい的な台詞、イメージが浮かんだ。
「はっは、、、可笑しい人です、どうしてこうも、、、わたしを、、」
さっきよりも涙目だ、それを指でさすりつつ、もう片手でお腹を擦っている姿。
「楽しかったのか?」
「バカですね、、、でも、、悪い人じゃないです。
だけど、私は、貴方の変態は嫌いです」
「、、、、」
「だから、もし、、変態じゃなければ、、好きに」
そこで爆発が起きた。
それは運命だったのかもしれない、そう一瞬の刹那、直感的に思った。




