帝国コロニーアウレカ観測譚
私が生まれたのは宇宙だった。
その名も、コロニーアウレカ第二号と呼ばれる場所である、此処である。
広大な内部空間により、衣食住的には、特に不自由が無い。
だが、人間はそれだけでは健全に健康に生きることはできないだろう。
だから、自然やら人工的な太陽光など、様々な工夫が一応は成されている。
これらは、完全とは程遠いが気休めにはなっていると思う。
そしてこの場は、コロニーの心臓部。
最も外部からの防御力の高い、複合装甲のシェルターで構成された、特権階級の特別住区。
そういう思考を、私はしていた。
燦々と人工的な太陽光が降り注ぐ、緑地庭園の樹木の影。
私は見ていた、テラスで話す、帝国の中枢トップ三人、私の最重要絶対警護対象を見ながら、徒然としていたのだ。
「はあ、連合のゴミ共が、最近調子ずいてんなぁ。
特にあの、黒の妖精とか言われてる奴、早いとこ、誰か始末しないのかよ。
流石に、アレを野放しにしてると、やばいじゃねぇーかよ」
なんとはなしの、雑談の体で語る、緊要の最重要案件。
「にゃは、そうだね、あんたが何とかしてよ、レイル、私めんどくさいし、他にやりたいこともあるし」
「めんどう押しつけんじゃねぇぞ、シャル。
てか、こういう荒事はリディ、てめぇーの領分じゃねーのか?」
「あら、わたくしは最善を尽くしてますわ。
むしろ脆弱な主力の機動兵器部隊、その補強の為に、私設部隊の戦力を割いてますわ」
「ダボがよ。
絶対防衛線、主力の敷く前線を突き抜ける勢いで、現在進行形で向かってきてんだろ、敵が、ここによ。
この現実を変えれなきゃ、何しても意味ねーんだ」
黒の妖精、たった単機で、戦術は愚か、こちらの全体戦略を変容させられてしまっている現状。
昨今の宇宙での機動兵器戦は物量で勝っても、あんまり有利にならない仕様なので、そういう事象が起きている。
「で、具体的にどうするか、さっさと決めろ」
「あたし達で、直接退治するのは、どうなのかな?」
「馬鹿が、万が一、ありえねぇーが、負けたらやばいだろ、誰が帝国を仕切ってると思ってんだ。
だいたい、まだまだ捨て駒が山ほどいる現状で、打って出る必要がねぇー。
それに此処を抜けられても、多少痛いが、まだ後があるしな」
「ふっふ、わたくし、そういう風に余裕をかまし過ぎて、後が無くなって追い詰められて、破滅した人たちを沢山知ってますの。
貴方も、その典型例としてカウトンできそうですわね」
「うるせえ、実際的な理由だって、ちゃんとあんだよ。
ここより後方の、帝国首都近郊の方が地の利があるだろうから、味方も黒の妖精をフクロにし易いだろ。
最高で、単機孤立に追い込めば、簡単に討ち取れるだろうよぉ」
「それじゃ、やっぱりこのまま様子見ってこと?
あんたらしくないね、いいのかな? こんなに好き放題されて、黙って見てて。
自ら直接殺しにいけばいいじゃん、にゃっはっはぁ、すんごくスッキリすると思うんだけどなぁー」
「俺様が行くときは、てめぇーらもだからな、一応そこんとこ、しっかりしておけよな。
各個撃破が一番やべえぇってのは、言うまでもない事実だ」
そう言って、この話を一端切ったようだ。
今の話には、違和感を覚えた。
武力の統制を人間に委ねない為に、帝国の利益確保を第一とする、わたしが、私たちが居るという点を意図的に省いている。
どうやら私という存在達は、彼女達のプライドに触るようだ、前から気づいてた。
彼女達は帝国の覇者だが、帝国の覇者で居続けなければ、容赦なく葬られる宿命を持っているからか?
「そういえば、ハスラーは始末できたのかよ?」
金髪の暗部頭領に問う。
「まだですわ」
「見通しは?」
「まあ、時間があれば、どうとでも」
「にゃはっはっ、ヤル気なしかよ、無能は死ねば?」
「はあ、俺様は期待してるぜ。
それでだ、シャルのほぉ。
此処で敵の主力を抑えられなかった場合の、議会主導による帝国全領域の戦時体制の移行は、もう円滑にできるようになってんだろうな?」
「もちろんだね。
むしろ最高の場合の為、つまり此処で敵の主力をはじき返す為の、その策を実行中だよん。
その予算だって、わたしが通したの、ちゃんと覚えてる?」
「重畳だな、褒めてやんよ」
超最新の試作防衛兵器、巨大コロニー級複合障壁統合システム、その試算スペックを眺めつつ言う。
「とりあえずだ。
俺様達の陣営に絶対対立する敵を、完全にこの宇宙から消滅させる、塵の一つも残さずな。
その為にも、まだまだ気張れよ。
そうでなきゃ、いっこうに本当の人生がはじまらねーんだからな」
まずは絶対の宿敵の排除。
それからの事は、実際のところ、それから一から考えるつもりなのだけれども。
帝国という武力、国守りの頭脳は、そう判断するだろうから。




