四積目
食事を終えた優太は『つみき』の検証を始める。
「まず今のところ分かってるのは、つみきを出せる、床とかを消せる、床とか直せる、ってところか」
「つみきは消せるのかな? 今十一個のつみきがあるから消してみるか。……消せるな」
「つみきとそれ以外の共通点ってなんだろう? 能力はあくまでも『いつでもつみきができる』能力だからその範囲内のはずだ」
「そもそもつみきってなんだ? ある形のものを積んでいくってこと、でいいのかな。じゃあある形ってなんだ? 何でもいいのか?」
試しに、とあるブロックを出そうとする。
「一メートルぐらいのブロックよ、来い!」
2×3の高いほうが1メートルのブロックが優太のとなりに出現する。
「お、出るのか。なら……うん、消せるな」
「おっと……くらくらしてきた。もしかして魔力が切れたとか、かな……」
目を覚ましてから『つみき』を使いすぎたせいか、足元がおぼつかない。
「魔力を込めるってことは、魔力を消費してるってことだよな。筋肉も力を込めたらそのあとは力抜けるし」
「とりあえず、寝よ……」
―――
「んんー、よく寝た。魔力も回復してる感じがする」
「日も上ってるしお昼ぐらいかな? ほとんど動いてないし、宿屋ではお昼ご飯でないからこのまま検証するかなー」
優太は窓から外をのぞいて言った。
「と言っても何したらいいかわからないし、ベリーに何か聞いてみるか。魔力のこととかわかるかもしれないし」
誰に聞いてものだが、ベリーに聞こうとするのは優太が人見知りなところがあるからだろう。
「てなわけで何かわかんない?」
「あなた魔力も知らないの?」
優太は『つみき』のことは隠しつつ、ベリーに事情を話す
「魔力ってのは生物なら魔物から虫まで持ってるものよ。それで魔法とか使うの」
「魔物ってのは?」
「うーん、強い動物?みたいなかんじ」
ベリー自身、常識と思っていることなだけに改めて聞かれるとどう答えてよいか悩んでいる。
「床とか消したり直したりできるって言ってたわよね。水とかもできないの?」
「水、か……液体は考えてなかったな」
優太はつみきが固体だと先入観としてあったため、物質の状態に関心がなかったようだ。
「水よ、来い! うぉ、冷たっ!」
「おぉー、これが優太の力かー」
「何でこんなに冷たいんだよ……。氷ではないから0度以上なんだろうけど。いや、この世界って大気圧とかどうなってるんだろう。1.0×10^5より小さいなら水の温度が0度以下でも不思議じゃないか……」
「優太、タイキアツとかゴジョウとか何言ってるの?」
聞いたことのない単語にベリーは興味を示す。
「いや、気にしないでくれ。どうせ調べれるようなことじゃないしね。とりあえず標準状態の水が出たとでも思っとくか。詳しくは後で調べよう」
「ふぅーん? じゃあ、ご飯とかでない? 今日のチップそれでいいよ?」
「ふむ、やってみよう。パンよ、来い! 出たな」
「やった! でもこのパン白いわね?」
「普通だろ」
「そうなの? 少なくともこの街では黒いんだけど……。まぁいいわ、ありがたくいただくわ」
「もっとほしかったら言ってくれ」
「わかったわ、あむっ。――!! なにこれ柔らかい!」
「よかったな」
「よかったどころじゃないわよ! こ、こんなパン食べてもいいの? あとで請求しない?」
「し、しないよ」
普通のパンダと思っている優太はベリーの勢いに少し引いていた。
「んー、おいひい! こんなパンが食べれるなら結婚してもいいわ~」
「え、まじで!?」
地球では持てたことのなかった優太はベリーの発言に思わず飛びつく。
「こ、言葉のあやよ! それに私、根無し草だし……」
「じゃあお友達から……」
「それくらいなら……」
優太の少し頬を赤らめながらベリーは答える。
「じゃあ、宿屋どうする? 僕と同じとこにする?」
「何言ってるのよ? 私にそんなお金はないわ」
「ベリーこそ何言ってるんだ。友達を野宿させるわけにはいかないだろう? それくらい僕が払うよ!」
「あんた本気で言ってるの? ……まさか私の体が目的!?」
「そ、そんなわけないだろう!?」
優太はそんなことは考えていなかったのだが、指摘されて意識してしまう。
「なによ! 私に魅力がないっての!?」
「どうしろってんだよ!」
「……まぁ優太はそんなことしなそうだし、信じていい?」
「あぁ、信じてくれ。後で返してくれればいいから」
「やっぱり……」
「だから違うって!」
「ふふ」
ベリーはからかい交じりに笑うのであった。