二積目
「ん、ここは……」
神と別れの言葉を交わした優太は気づかぬうち草原の真ん中に立っていた。
「んー、あっちに壁みたいなのが見えるな。城壁都市、ってやつか? ということは中世くらいか」
十八歳、つまり高校三年生の優太は世界史選択であるくせに曖昧なことしかわからなかった。
「うん、ほかには森ぐらいしか見えないしこっちに行けばいいよね。安全な場所って言ってたし」
「結構遠そうだし『つみき』の能力使ってみようかな。確か魔力を込めるって言ってたっけ、……こうかな?」
さっそく『つみき』を使おうと優太は魔力をこめる。
「ブロックよ、来い! おっ、でた、けど四つだけか」
出てきたブロックはレゴブロックで、それぞれをつなげる丸い突起が2×3で存在する長方形のものだ。
「どれくらいブロックが出せるのか気になるけど何かあったらいけないし落ち着けるところに行ってからにするか」
カチャカチャとブロックのぶつかる音を鳴らしながら優太は歩き出す。
「やっぱり四つあるなら単純な四角の形が一番だよね。くるくる回したりできて楽しいし」
四角の形にした優太は指でくるくる回しながら街と思わしき所へ歩いていく。
「意外と近いな。えっと、門は……右のほうに行くか」
思ったよりの近いところにあったのか、すぐ壁のところまで行った優太は門のある場所を探す。
「おっ、人がいる。あそこだな」
「すみません、観光できたんですけど入っても大丈夫ですか?」
優太は門番らしき人に自然と嘘をつき、話しかける。
「もちろんだ。ようこそ、キャベの街へ」
どうやら街に入るのにお金はかから無いようだ。
「そういえばお金とかどうするんだろう。そういえば服とか街の人たちと似た感じだ。もしかしてお金もどこかに……あった! たぶんこれだよね」
この街で使われるお金は、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、とそれぞれに大とついた八種類で、1、100、10,000、1,000,000と大が付いたのはその十枚分の価値がある。
単位はGゴルで1G=1円だ。
「えっと、銅貨が十枚と銀貨が十枚と鉄みたいなのが十枚か。アルミじゃないよね? こんな感じの時代ではアルミを作るのはとても大変って授業で言ってたし」
「まずは宿屋探さないとだよね。お金の価値とかわからないしどうしようかな……」
「お兄さん、案内しようか?」
どうやって拠点を確保しようかと悩む優太に話しかける者が現れる。
その中学生ぐらいの子はあまりきれいとは言えない服装で、髪もぼさぼさだ。声色で何とか女の子だとわかる。
「えっ?」
「お兄さん旅の人でしょ? 良かったら案内するよ」
「えっと……じゃあお願いできるかな? あっ、チップとか必要だよね?」
突然のことに戸惑いつつも何とか返事をする
「そういうのは何も言わずに渡すものよ」
「そうなのか。でもお金の価値を知らないんだよね。良かったら教えてくれない?」
「そんなことも知らないの!?」
落ち着きを取り戻した優太はちょうど知りたかったことを聞くことにしたが、思いのほか驚かれてしまう。
「う、うん」
「なら仕方ないか……。その様子じゃあ結構遠くから来たのね? いろいろ教えてあげるからチップ二倍ちょうだいよ。銅貨二枚ね」
「わかった。じゃあまずはお金の価値から教えてくれる?」
「いいわよ。まず銅貨は……」
――
「なるほどねー。銅貨は全部なくなっちゃったけど、いろんなことが聞けてよかったよ」
貨幣価値や街の地理などを聞いてるうちに銅貨を搾り取られてしまった優太だったが、今回はそれだけの価値があり、少女も笑顔になってくれたので満足している。
「わたしもこんなに稼げたのは初めてだよ! お兄さんとならまたよろこんで案内とかしてあげるよ。わたしはいつもあの門の近くにいるから」
優太がこの街に入ってきた時の門は南門で、少女は普段、その近くにいるようだ。
「うん、きっとまた頼むよ。最後に君の名前を聞いてもいいかい? 今思うと、ずっと君って言ってるのもおかしいしね」
「ベリーよ。あなたは?」
「優太だよ。ユータっていえば言いやすいと思うよ」
「わかったわ。じゃあ宿屋は決まった?」
「うん、南門の近くのセイレーンって宿屋にするよ」
少々高めだがご飯がおいしく、安全だという宿屋セイレーンにきめた優太は少女、ベリーと宿屋へ向かう。
「じゃあね、ユータ」
「今日はありがとう。またね、ベリー」
「またね、か……」
「ん、なにかいった?」
「いいえ、なにも。じゃ、またね」
ベリーとまた出会うだろうと感じつつ、優太は宿屋へと入っていった