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8話「かわいいにゃあ〜。すりすりするにゃあ」

「まさか主様がカンストしてらっしゃるとは……」


「っていうか、最高レベルでこのステータスって1だとどんなことになっていたのやら」


「残念だけどマスター、私たちには救いようがないわ」


ギルドホールに戻ったアリスは他の仲間に口々に言われ、意気消沈していた。


「……なんで〜? 異世界トリップって言ったら俺TUEEEが定番でしょぉ?」


「仲間が強いパターンね」


「……それ僕、本当の役立たずじゃん」


アリスがベッドで気を落としていると、シルビアが隣に座り頭を撫でた。


「大丈夫ですよ。マスターなら可愛さという武器があります」


「……それって慰めてるの?」


「慰めてるも何も本心ですっ! もし良ければ今晩お供したいくらいです!……します?」


ギュッと胸を寄せるシルビアの態とらしい挑発にアリスはカァッと顔を真っ赤にする。


そんなところを見ているレヴィアもただ黙ってるわけにはいかない。


「お待ちください主様。こんな氷野郎とワンワンすると衛生病の前に風邪引いてしまいます。そもそも犬なら犬らしく性器よりも骨をしゃぶるのが妥当です。ましてや主様の生ティンなどワン公に贅沢すぎます。ここは私が……」


「あんたが姦ったら痛みに我を忘れてマスターのチンチンどころか世界を崩壊させるでしょうが!」


「あなたこそ野生に任せて犯り尽くし、主様をテクノブレイクさせてしまうでしょう。私なら慎ましくお淑やかに行為を行えます」


「痴女みたいな格好して何言ってんのよ!」


結局、その後も卑猥な理由で行われたキャットファイトは収まることなく話はあやふやになってしまった。


*****


翌日、なけなしの資金で食事をとるアリスにクトゥルカが話を持ちかけてきた。


「えっと……昇格試験ですか?」


「ああ、お前ってランクD、E、F辺りだろう?」


アリスは頷く。実際Eランクに上がってからはそれ以上ランクは上がっていない。


「ということは平均のクエスト報酬は銅貨数枚あたりか」


「ええ……まあモンスターから出てくるアイテムを売るとそこそこ稼ぎになるのでなんとかやってますけど」


とはいえ、まだ倒すのには抵抗がある。


するとクトゥルカは大袈裟に腕を組むと本題を話した。


「昇格試験ってのはな、ランク別で定期的に行われるパーティークエストのことでな。内容は敵国との大規模戦闘(レイド)やドラゴン討伐……まあお前らのレベルだと洞窟の調査くらいだろう」


「あの、それって合格するとどうなるんですか?」


「ああ、特殊昇格措置……いわゆる飛び級だな」


「飛び級!?」


アリスが驚いて声を上げるとクトゥルカは嬉しそうに微笑んだ。


「通常ランクを上げる場合は規定数以上のクエストをこなす必要がある。またCランクからは功績や人望なども必要になってくる。それらを無視しいっきに上位のランクになれるのが今回の試験というわけだ」


「なるほど。……洞窟の調査くらいなら大丈夫かな。あっ……でもパーティーってことは、他にも人が必要ですよね……」


流石に召喚獣はパーティーメンバーにカウントされないと思うし、この世界に来てから全く日が経っていない。


「いや、そこは心配いらない。パーティーはクエスト参加者からランダムに組ませるつもりだ」


なるほど。それはまたボッチに優しい仕様……であるが。


「そんな初対面でパーティーとか組めるんですか?」


「新たなコモンを作るならともかく、その程度なら問題ないだろ。なんだ緊張してるのか? そのなりの上に可愛い性格もしてるんだな」


内面が読まれてしまい、肩を縮こませる。


「まあ緊張しないよう。なるべく年の幼いものを組ませてやる」


「……そうですか」


それの方が緊張しそうだけどなぁ。


「いいじゃない! やりなさいよ」


「……まあ戦わずに済むならいいかな」


*****


そして、決まったパーティーで待ち合う日。 手紙の通り、ギルドの前にある通りで待つことにした。


あと、今回他の冒険者と関わるに至って、ギルドに頼みギルドカードに書いてある年齢は伏せてもらうことにした。


召喚士や神託者なのは隠しようがないかもしれないが、年齢は隠した都合がいいと判断したためだ。


「……それにしても、隣の人美人だなぁ」


スッとした顔立ちに金髪を軽く結った髪型。もちろん自分(の見た目)よりも年上だろう。体格は中背、とはいえなかなかに締まった体をしているように見える。


「……? どうしたのボク」


声かけられた。コミュ障にはかなり高いハードルだ。


「え、あ……その、待ち合わせです」


「そうなの? 私もよ。偶然ね」


うう……バニラ連れてこればよかった。多分あいつ、まだ部屋で寝てるだろうな。


すると突然、エルフの人が目を凝らし始めた。


「……何か来たわ」


「えっ?」


すると、全速力で走ってくるネコ耳を着けた女性が向かってきた。


「だからサカナ盗んでないにゃあっ!!」


「そうじゃなくて冒険者さん、お釣りー!!」


なんとなく察しがついた。


「……どうやらドロボーを追いかけてるようね」


この人は察せてないらしい。というか、分かるだろ。


「私も加勢するわ! そこを止まりなさーい!!」


「にゃにゃーっ!?」


進路上に仁王立ちになるエルフさんだが、ネコの人はそれを猫の身軽さを出すようにヒラリと飛び越えた。


「なにっ!?」


「ちょっと危ないにゃ、エルフのひと! どこにつっ立ってる……」


そして、その着地地点にはぼくがいるわけで


▼ネコの人はアリスにつまづいた!

▼ネコの人は200のダメージ!

▼アリスは800のダメージ!

▼アリスは倒れた!

▼ネコの人は魚屋からお釣りを手に入れた!


*****


「だ、大丈夫かにゃ?」


「うー、まだ頭がジンジンします」


復活したアリスはその後、ベンチに寝かされ2人の冒険者に介抱されることになった。


なんとも恥ずかしい。


「むぅ、血圧上がってるわね。血が流れたのかしら」


出血したらむしろ血圧が下がりますが


それにしてもこのネコの人もなかなかに美人だ。

クリッとした天然そうな顔立ちに、ミドルショートをおろした髪型。身軽な体にも合わず意外にもスタイルは良く凹凸の激しい身体の線をしている。


しかも、ジョブがなんなのかは知らないけど、なかなかにレベルの高い服を着ており視線に困る。


「あ、そういえば第6パーティーのメンバーって誰にゃ?」


「それならぼくが……」


「わたしだけど……」


「「……えっ?」」


こんな怪奇なこともあるのだな。


*****


「いやあ、ギルドから第6には新人がいるからって聞いてたけど、坊やのことだったとはねー」


「かわいいにゃあ〜。すりすりするにゃあ」


ふはぁ恥ずかしい……


「でもあと一人足りないようだけど……」


「確か、その子も小さな女の子と聞いたにゃ」


すると、アリスたちは遠くからクトゥルカがこちらに向かってきたのに気がついた。


「わわっ! ギルマス!?」


「わ、私は何もしてないのにゃあ!」


「どうしたんですか?クトゥルカさん」


「いや、パーティーメンバーを紹介ついでに連れてきただけだ。……ほら、隠れずに出てこい」


すると、ひょっこりとクトゥルカの後ろから現れたのはまた動物の耳……多分キツネの耳を着けた幼い顔の女の子だった。

なんというハーレムパーティー。


「あ、そ、その……よろろろろ……」


「うん! よろしくねー!」


「にゃあ! ワービースト同士仲良くにゃ!」


「は、はひぃっ!」


なにやら凄く緊張しているようだ。


「彼女は新人というほどではないくせ、こう人と関わるのが苦手らしくてな。まあすぐに打ち解けるだろうから問題はないと思うが」


それにしても……


「あの、彼女の齢の方は……?」


「12だな。悪いが流石に……お前(の見た目)よりも年の若い奴はいない。多分ギルド内だけでなく冒険者規模で考えてもいないと思うぞ」


「っていうかボクちゃんの年で冒険者は早すぎるのにゃあ」


「憧れるのはわかるけど、もっと命は大切にするものよ」


「にゃっ!? もしかすると家族がなんとかでお金を集めるために……」


「そ、そうなの!? 可哀想……盗みに行かなかったのね……偉い偉い」


なんか変な誤解された。


*****


場所を移し、ギルドホールの近くの食事店に来た。

もちろんクトゥルカとは別れたが、お陰でキツネの女の子がビクビクしている。


「まず自己紹介するわね。私はデルタ。種族はエルフでジョブはアーチャー。よろしくね」


「次は私にゃ! クライスにゃ! 男みたいな名前だけど女にゃ! 種族はワーキャット! ジョブはモンクだにゃ! 前衛は任せろにゃ!」


次は流れ的にアリスである、が、流石に召喚士ということを言ってしまうと後に言う彼女が可哀想だ。


「……あの、先言えます?」


「へっ!? う、うん……。あの、その……」


「ゆっくりでいいにゃー」


「は、はい……。アルカです。ワーウルフでジョブはマジシャンです……。後衛ですがよろしくお願いします」


キツネだけど、種族的にはワーウルフになるんだ。まあキツネもイヌ科だからそうなるのかな。


「そういえば、クライスさんみたいに語尾になんか付いたりはしないの?」


「う、うん。っていうよりもワービーストも話し方は普通です」


「……そうにゃ! これはキャラにゃ! 悪いかにゃ!」


なるほどね。


「……取り乱して悪いにゃ。アルカちゃん、怖かったかにゃ」


「いいいいいいいいいええええ!!だ、だっだだっだっだいいいいええ!!!」


なんかテンション高い人みたいになってるけど、まあいいや。


「最後は坊やね。大丈夫? 言えるかな?」


「だ、大丈夫です……」


とはいえ、ここで明かさないとあとがしんどいからなぁ。仕方ない。


「……アリスです。種族は人間。ジョブは……サ、サモナーです」


……


「……しゃもにゃあ?」


「……いや、でもそれは神託者じゃない限りありえないし」


「??? あの、サモナアってどんなの?」


……いや、もしかして分かってないのか!?


「えっと、その、自分の代わりにモンスターを使役してバトルをするジョブですかね」


「へー、変わったジョブもあるんだね」


「にゃあっ!? 思い出したにゃ! 神託者にゃあ!!」


やはりバレちゃったか、いやそもそもバレてなくもないんだけどね。


*****


アリスはともかく自分が神託者でサモナーであること、レベルのことを話した。


「にゃあ……大変にゃ」


「若いのに凄いねー」


「若いっていうか、私よりも年下……」


……そこはまあいいや。


「よし! ここはお姉さんが面倒見てあげる!」


「にゃあ、私も面倒みるにゃ!」


「ア、アリスくん……お姉さんに頼ってもいいからね?」


12歳の女の子に言われてしまった。


…… 辛いなぁ。


*****


部屋に戻ると、思いっきりバニラにどつかれた。


「ピギャーッ!!」


「ちょ、ちょっとバニラ! 悪かったよ!」


「いっつもいっつも一人で勝手にいいいいいい!!」


「痛い痛い!!」


結局熱が収まるまでは結構な時間がかかった。


……


アリスはシルビアとレヴィアを召喚するとことの説明をした。


「ーーってことで、だから今度手伝ってもらうかもしれないから」


「……マスターまた他の女と会ったのぉ?」


「主様の魅力故仕方ないのかもしれませんねー」


うっ余計面倒だぞ。


「あっ! でもマスター幼いから暗い洞窟怖いかも……」


「大丈夫ですよー。 主様はその間、周りが見えないように私が抱きしめてあげますからねー」


「アンタが抱きしめても装備ゴツゴツで痛いじゃない! ここは私がギュッとして……」


「寒さで主様が死んでしまいますー」


「そんなことないもーん」


自分の召喚獣とはいえ居心地悪ぃ。


「……ねえアンタ、自分の召喚獣に実年齢伝えなくていいの?」


「いや、伝えたけど。そんなに背伸びして可愛いって言われただけだった」


「……アンタも根負け早すぎよ」

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