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10話「私は多分マスターを守るだけで精一杯かも……」

流石に閉じ込められたことで察しがついたらしく、皆焦り始めていた。


「ど、どうするにゃー! このままじゃこのままじゃあっ!!」


「お、落ち着いて! こういう時は扉の下を掘って抜ければ……」


それどこの脱獄犯だ。


「 だ、ダメです! 床全部岩で舗装されていて掘れるような感じではないですっ……」


多分、もうボスのエリアに入ったからには責任を取る必要があるらしい。


「……ねえバニラ……ボスって今、どこにいると思う?」


「……! すぐ下っ!」


するとすぐ地面が盛り上がり、ボスであると思われる巨大なモグラのようなモンスターが岩の床を砕いて現れた。


「っ……痛ぁっ!」


「とはいえ受身取れただけいいわよ。周り見なさい」


そこには死屍累々とでも言うように、デルタ、クライス、アルカが倒れていた。どうやら反応が遅れてしまっていたらしい。


「……い、生きてるよね?」


「大丈夫よ。 飛んできた岩に当たって気を失ってるだけ。まぁボスが直撃してたら死んでたと思うけどね」


相変わらず物騒なことを言う。


「とにかく今こいつの敵意(ヘイト)はあんたにあるの。 はやく彼女出さないと無駄に死ぬわよ」


「わ、わかってるっ! ……シ、シルビア」


シルビアを呼んだことで、部屋に明るい召喚の光が立ち込む。 どうやら例のモグラは光が苦手なようで目を擦ってもがいている。


「わぁいマスターっ! やっぱり怖くて呼んでくれたんだね!!」


「まぁ間違いじゃないけど、とりあえずその抱きしめるのやめてくれない……」


そして、俺は今の状況を伝えて助けてもらおうとしたが……


「……ごめんマスター。 アイツがいないから言うけど、私は弱い敵をまとめて攻撃するのに特化してるから、こういうのは向いてないの。それに、天井が低くて私変身できないし……。この人の姿のままではちょっと……」


もじもじしながら謝罪を告げるシルビア。アイツとはもちろんレヴィアのことだろう。


「私は多分マスターを守るだけで精一杯かも……」


「いや、いいよ」


誰にだって向き不向きがあるのは分かっていたことだ。


「でも、あのモグラを倒すのが優先だよね……。 あいつのことは嫌いだけど……仕方ないよね」


「ありがとう。 ……レヴィア来てくれるかな?」


シルビアと同じく光に包まれて現れたレヴィア。


「もーやっぱりワンコロ使えないじゃないですかぁ〜」


「……がるる」


「……でも、犬なら犬らしく主様を守るくらいなら出来ますよね」


「っ!」


すると、レヴィアはどこからともかく出した剣を構えた。


「主様を頼みますよ。少々激しいかもしれませんので」


「そんなの言われなくても分かってるっての!」


すると、レヴィアは助走して光で動けないモグラを挑発するように顎を足で蹴り上げた。


モグラはそれにより意識を戻すと、レヴィアを攻撃するために土煙を上げて突っ込んでいく。


しかし、それをレヴィアは踵一つで動きを止めた。


「そんな単純な動きだけでよく代々生きてこれましたね〜。 モグラなら土の中がお似合いですよー」


そして、レヴィアはその踵をグッと地面に向かって下げ、モグラを強引に埋めた。モグラは既に怯んで動けなくなってる。


「では種族代々根絶やしに……してもいいのですが、私は寛容ですからねー。生き埋め程度で許してあげます☆」


そう言うとレヴィアは手元の剣を天井に投げると、その部分だけ切り取られたように地盤がモグラに向かって降り注いだ。 多分生き埋めというか死んだと思う。


「ワンちゃん、お仕事できましたかー?」


「……私がちょっと被弾したけどね」


主にレヴィアの攻撃が激しかったせいで、岩の礫がこちらにも飛んできたのである。 他のパーティーメンバーも同じところに集めてあるため、怪我はないが、一番負傷してるのは結果シルビアだった。


「あんた激しすぎよ! もっと丁寧に攻撃できないわけ!?」


「攻撃に丁寧もクソもないですからねー」


そして、またいつものが始まった。


*****


「……うーん。あれ? ここ、外かにゃ?」


「私たち……どうしたのかしら」


「……んー……あうっ! 頭痛いですぅ……」


あの後、第6パーティーはシルビアとレヴィアに手伝ってもらいながら意識を失っているメンバーを運んで、無事脱出に成功した。


結果は最下位。迷子になったことで大きな失点になったようだ。


「よかった! 三人とも気がつきましたか!」


「……アリスくん……かにゃ」


クライスはアリスを手招きすると、近づいたアリスをギュッと抱きしめた。


「むぐっ!?」


「よかったにゃ……アリスくんは無事だったんだにゃ……」


鼻腔をくすぐるのは、汗と泥の混じった匂いと獣の匂い。決して、女の子らしい匂いはなかったが、柔らかい抱擁に何故か安心できた。


……


…………ん? いや待て待て!


抱きしめられて安心なんて、そんな考え方まで幼体化してどうする!


「とっ、ともかく無事で何よりです!」


悪いと思いながら、手を振り払って一歩後ずさる自分。


「……いたた。そういえば、結果はどうなったの?」


「あ、はい。最下位でした」


「……やっぱりかぁ」


そして。


「そして、第6パーティーは昇格です」


「……っ!?」


「さ、最下位なのにどういうことにゃっ!?」


アルカに至っては放心している。


「……え、えっとですね。あの後見つけた遺跡が実は未踏のエリアだったらしく大発見だったようで……」


あとボスを倒したことも含まれるのだが……これはギルマスのクトゥルカさんに頼んで隠蔽してもらった。


サモナーとか神託者とかで有名になることは避けたいのは分かってもらえてるようだ。


「それで、その新たなマップ発見により昇格したらしいです」


そう言うと、寝ていたメンバーは喜ぶというよりもさらにグッタリした。


「……信じられないにゃ。そんな現実あって良いのかにゃ?」


「わたしたち、適当に迷ってただけなのに」


「わ、わたしみたいのがCランクになって良いのでしょうか?」


「……」


どうやら素直に喜べないらしい。

まあ、自分は何もしてないというのが大きいとこうなるだろう。


……

…………


その後、ギルドカードの更新をして戻ってくると、みんな元気になっていた。


ギルドカードの更新を終えると、みんな気持ち悪い笑顔でカードを見ていた。


その後、第6パーティーで打ち上げを行った。

僕はひたすらお子様ランチを食べた、というかそれしか食べさせてもらえなかった。


なんで異世界にまでお子様ランチがあるのか。

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