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太陽が昇る朝に  作者: 中村中
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決着

『おおっとここでまさかの展開ぃぃぃ!!??

倒されたと思っていたウジm…もとい氏神が起き上がってきたぁぁぁ!!!

なんで起き上がってきたぁぁぁ!!!

そしてまさかの間奏がリタイアだぁぁぁ!!!』


「おま、ほんと後で覚えてろよ!!」


なぜだろう、フィールドにあの氏神がいるだけでとてつもなく騒がしく感じるのは…。


『残るは三人!

誰が勝ち残るのかもう誰にもわからない!!!』


「ほう、どうやらあのお嬢さんはまだ戦意を喪失したわけではなさそうだな。なのに倒れて動けない、と。お主、あのお嬢さんにいったい何をした。」


「いやぁまぁね、ちょっとね。でもそれをあんたらに教えちまったらさ、ネタバレになっちゃうじゃん?ネタバレしちゃって俺が不利になるのも嫌だし?正直、そこのピチピチ戦闘服くんも怖いし?」


氏神は開き直る。


だが彼の言うことももっとものことなのである。


戦闘中に己の能力をわざわざ明かす奴がどこにいるのか、という話だ。


「まぁ良い。どんな形であれワシはお主を倒す…、!?」


「なっ…!?」


ある程度離れていた氏神との間合いを一瞬で詰め、殴りかかる。


とっさのことに、殴りかかったハリーソン以外は反応し切れなかった。


ハリーソン自身にこれは獲った、と思わせるほどである。


しかし。


その拳は氏神の身体に届くことはなく。


逆にハリーソンが吹き飛ばされた。


「…っ!!」


「っぶねぇなぁピチピチにぃちゃん。人が喋ってんのに攻撃してくるなんざ常識はずれもいいところだぜ?」


いや、常識はずれというのならば戦闘中に喋っていることもそれに当てはまるのではなかろうか。


やはりハリーソンの動きは目では全く追えない。


あれは身体強化系の能力の一種なのだろうか。


ともあれなにが起こるかわからないので試合からは目が離せない。


「まさかあやつの今の攻撃もお主には届かんとは…。面白い、まっこと面白きかな青年よっ!なれば、まだ初戦だなどと出し惜しみはすまい。」


言った直後、その場から四ツ藤の姿が消える、否、氏神の背後へと瞬間的に移動した。


移動の動作と連携して手にしている日本刀で斬りつける。


しかし斬った感覚は愚か、刀を振り切ることさえ出来なかった。


挙げ句の果てに後方へと吹き飛ばされる。


四ツ藤は空中で体勢を立て直し再び斬りかかる。


「…四ツ藤、開花…!」


自身最大の奥義を打ち出さんと構え、己の持てる力をほぼ全て解放し、跳ぶ。


跳んだと同時、四ツ藤は横目でハリーソンを捉えていた。


彼も氏神を殴らんとして飛びかかっていた。


望むことならハリーソンの攻撃があと数刻遅ければ、という邪念が頭をよぎる。


邪念を残しつつ、四ツ藤はさらに加速する。


「あーあ、つまんねーなぁ…。馬鹿の一つ覚えみたいに何度もかかって来やがって…。」


氏神の背中は相も変わらず隙だらけである。


四連斬、たったそれだけのこと。


四ツ藤の持つ最大の奥義とは、最速の連斬。


四方向からの同時斬撃。


そのタイムラグはほとんどなく。


狙った獲物は必ず仕留める。


それが四ツ藤の誇る、最大の奥義であった。


しかし誇りとは時として無惨にもぶち壊されるものである。


「ほう、まさかこれを止められるとは…。」


四連斬撃を打ち出すどころか最初の一撃ですらまともに入らず、氏神の身体に刀身が触れることなく空中で勢いを殺された。


ハリーソンは四ツ藤の逆側、つまり氏神の真正面から懐に入り拳を叩き込んだがやはり氏神には届かず。


「あんたたちじゃ俺にはかなわねぇってのよ。たとえさっきあのタイミングでネタバラシしてたとしてもだ。だからもう諦めな…!?」


ツゥ、と氏神の口から赤い液体が流れ落ちる。


「何が…!?」


見ればハリーソンの口元が軽くゆがんでいるではないか。


どういうことだ。


こいつは身体強化系の能力じゃなかったのか…!?


いや待てよ。


じゃあなんで俺はあの時気を失うことになった!?


それはこいつが…


「お前、自然現象系の能力使いだな…?」


ごふっ。


今度は大きく血を吐く。


「なるほど。それじゃぁワシには何も出来んわけだ。ならあとはお若いの二人で何とかやりなさいな。ワシはここでリタイアするかいの。」


そう言って四ツ藤はリタイアの証として己の刀を消し、フィールドから立ち去る。


立ち去るついでに転がっている間奏を拾い上げて。


『なんとここでまさかの四ツ藤脱落だぁぁぁ!!!!!

俺のイチ押しがここで消えちまうとはホント俺は選手を見る目がないなぁぁぁ!!!!!』


それは選手たちに失礼だろうが。


あんたは礼儀ってものを知らんのか礼儀ってものを。


とは言っても今はお祭り騒ぎ状態、大会シーズンは無礼講が当たり前。


如何ともし難いのであった。



互いに距離を取る二人。


残るは氏神とハリーソンの一騎打ち。


どちらが勝ち残るのであろうか。


ハリーソンが、消える。


いや、一瞬で氏神の懐に入り込む。


「くっ、速え…!」


氏神は為す術もなく、ただハリーソンに殴られ続けている。


氏神もわかってはいた、こいつの攻撃を受けるのはヤバいと。


だけど速すぎて躱しようがない。


「くっ、そ…!」


自分の身体の外側、ではなく内側から壊されていっているイメージ。


イメージではない、現在進行形で成されている。


おかげでさっきから吐血が止まらない。


この状況を早くなんとかしなければ負けが確実になっちまう…!


「…ぅうお、ラァッ!!!」


今出せる最大のエネルギーを瞬間的に放つ。


恐らくこんなことをして吹き飛ばしてもまた向かってくるだろう。


だからあいつが吹き飛ばされてから俺のところへ来るまでの間に打開策を探る。


思ったとおりハリーソンは吹き飛ばされ、空中で体勢を立て直しこちらへと向かってくる。


ここへ辿り着くまでの時間、約2秒と見た。


その間にありったけの能力における力を右の拳に込め、一か八かあの顔面にカウンターを入れてやる。



得てして理想は理想のままに終わるものである。


氏神が抱いた理想は、次の瞬間には脆く儚く崩れ去ることとなった。



空中で体勢を立て直したハリーソンは足の裏側に能力を集中させ、地に足がついたと同時に開放した。


その勢いで地面が思い切りめくれ上がり、凄まじい砂埃が舞った。


この行為によって得られるのは爆発的な推進力。


今までもこれを用い、対戦相手の他三人を翻弄して来た。


氏神の考えていることは読める。


こちらが飛び込んで来る前に準備を済ませ、カウンターを決め込んでくる、と。


だからその裏をかく。


ヤツが思った以上の速さで懐に飛び込み、それでいて爆発的な推進力の恩恵と、己の能力を込めた右拳で強烈なボディブローを叩き込む。


これで自分の勝利は確定する、と。


だから思い切り飛び込む、氏神の胸を借りるるもりで。


「んな…っがっ…!!!」


思ったとおり氏神は反応しきれず自分の渾身の一撃を腹部に受けた。


だがそれでもやはり氏神の身体に拳が触れることはなかった。


でもこれで十分だ、十分なはずだ。


勢い良く氏神は吹っ飛び、スタジアムの壁に激突した。


その際、ずぅぅぅぅぅん、と大きく地響きが起こったのは言うまでもない。


『やはりウジ虫はウジ虫だったぁぁぁ!!!!!

期待を裏切らない結果で脱落ぅぅぅ!!!!!

予選の初戦は、エントリーナンバー12、トゥーベル・ハリーソンが勝者だぁぁぁ!!!!!』


うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、と今まで以上にひときわ大きな歓声がスタジアムに響き渡る。



皆藤は思う、こんな試合に出られることだけでも幸せなのだと。


でも自分は何も出来ないし何も持ってはいない。


だから出ることさえ叶わないと。


今回の大会を見るのはこれで満足だ、帰ろう、と席を立つ。


またバイトをしなければ。


でないと生活がやっていけなくなる。


少しでも多くのお金を稼がなければ。


そして皆藤はスタジアムを後にする。


スタジアムから少し歩いたところで不意に背後から声をかけられた。


「あなたが皆藤、皆藤善十郎さんですね?」


皆藤は振り返る、誰だ自分の名を呼ぶ奴は。


そこには顔を隠すまで目深にフードを被っている、淡い紫色をしたオーブを身に纏っている得体の知れない何者かがいた。


こんなヤツに声をかけられる覚えはないのだが。

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