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夜は、午後十時半、私は、詩を五篇書いた。
あとは、もうちょっと、ここに居るので「春の華」という題で詩を書きつづってみようと構想した。
夜の音がさわやかに、ほのかなあたたかな風が部屋にながれてくる。
遠くから動物のおたけびの音。
わたしの興奮の気持ちの心は、高く燃えているのであるが、自然のこまかな妙な、雰囲気にやがて落ちていくのであった。
暗い室内に、月の光が、休みの中に眠りをさそうのでありました。
気づけば、沈黙の中に流れていった。
そして、意識は、消えて睡眠の中にはいっていくのでした。
風は、さわやかな、鳥のさえずりとともに私の頬をささやく。ほのかな春の香りに、目を覚ますのでした。
そうして、花を詩に書こうと、むくむくと起き上がるのであった。
もう、午前十時くらいになっていた。
春の香りの正体は、窓辺の花々であった。
今日は、その辺りの春を見つけに行こうと思い、詩を考えるのである。
朝食は、女中さんが用意してくれた。
お茶漬けでありました。
梅の香りが美しい丼で大盛りでありました。
「今日は、天気もよいので外へ出かけられるといいわよ」と女中さんは言う。
私はもちろんと答え。丼のお茶漬けを食べながら、食堂に飾られている抽象画を見ている。
その抽象画は、山口長男 氏の作品であった。
深いヴェネチアンレットの画面の地にエネルギーを持った生きた線が生々しく描かれている。題名は、女中さんにたずねたところ、無題であるそうだった。
山口長男さんの抽象画を拝見できて、ありがたいと思った。
春の陽気は不思議で恋の想い苦しむのと似ている。




