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春の花  作者: 本多裕樹
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              7

夜は、午後十時半、私は、詩を五篇書いた。


あとは、もうちょっと、ここに居るので「春の華」という題で詩を書きつづってみようと構想した。

 夜の音がさわやかに、ほのかなあたたかな風が部屋にながれてくる。


遠くから動物のおたけびの音。


わたしの興奮の気持ちの心は、高く燃えているのであるが、自然のこまかな妙な、雰囲気にやがて落ちていくのであった。


暗い室内に、月の光が、休みの中に眠りをさそうのでありました。


 気づけば、沈黙の中に流れていった。


そして、意識は、消えて睡眠の中にはいっていくのでした。




風は、さわやかな、鳥のさえずりとともに私の頬をささやく。ほのかな春の香りに、目を覚ますのでした。


そうして、花を詩に書こうと、むくむくと起き上がるのであった。


 もう、午前十時くらいになっていた。


 春の香りの正体は、窓辺の花々であった。


今日は、その辺りの春を見つけに行こうと思い、詩を考えるのである。



朝食は、女中さんが用意してくれた。


お茶漬けでありました。


梅の香りが美しい丼で大盛りでありました。


「今日は、天気もよいので外へ出かけられるといいわよ」と女中さんは言う。


私はもちろんと答え。丼のお茶漬けを食べながら、食堂に飾られている抽象画を見ている。


 その抽象画は、山口長男 氏の作品であった。


深いヴェネチアンレットの画面の地にエネルギーを持った生きた線が生々しく描かれている。題名は、女中さんにたずねたところ、無題であるそうだった。


山口長男さんの抽象画を拝見できて、ありがたいと思った。


 春の陽気は不思議で恋の想い苦しむのと似ている。


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